おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
誰にでも「読書傾向」というものは、
知らず知らずのうちにあるのではないかと思います。
当然、私にも独自の傾向があるのでしょうけど、
できるだけ凝り固まらないように
あえてチャレンジすることも少なくありません。
死ぬまでに、あと何冊の本が読めるのか、
ちょっと寂しくもあり、
残念な気もしますけれど、
それでもいいんです。
できるだけ他分野の本を読み、
自分を広げてまいりたいと考えております。
今回ご紹介する書籍は、
【 人材ビジネス
採用人事担当者から経営者まで総合的に業界がわかる 】 です。

本書をピックアップした理由
『 人材ビジネス
採用人事担当者から経営者まで総合的に業界がわかる 』
水野 臣介 クロスメディア・パブリッシング を読みました。
本書を見つけたときには、
一応、私は人材ビジネス業を
20年以上続けてきた人間ですから、
さすがに読んでおかねばいけないよねと思い、
すぐさま購入しました。
本当は他にも読みたい本が
たくさんあるのですけど、
「キャリア」とか「転職」とか、
「人材」に関わる本は、
できるだけ目を通すようにしています。
ただ、当然、私自身にも
知識や経験、そしてノウハウがありますから、
わりと厳しい視点で見ることが多いです。
以前に読んだ下記の本なども、
タイトル的には興味深かったのですが、
残念ながら厳しい評価をせざるを得ませんでした。
これはどうだろうか?と
若干、不安はあるものの、
自分のビジネスのためにも読んでおこうと思い、
こわごわと読み始めたのでした。
目次
第1章 ライフステージから学ぶ人材ビジネスの世界
第2章 学生から学ぶアルバイトの世界
第3章 就活生から学ぶ就職活動の世界
第4章 悩める若者から学ぶ転職活動の世界
第5章 出産・育児世代から学ぶ人材派遣の世界
第6章 職場復帰から学ぶ無期雇用派遣の世界
第7章 働く子育て世代から学ぶ副業・兼業の世界
第8章 40〜50代のプロフェッショナル世代に学ぶスカウトの世界
第9章 定年後の第2の人生から学ぶ再就職支援の世界
第10章 これからの人材ビジネスの世界
感想
正直に言いますと、
あんまり期待はしていなかったのですが、
意外と面白かったというのが本音です。
「人材ビジネス」とひと言で表しても、
実は守備範囲はかなり広いのですね。
私はそのなかのひとつである
職業紹介(人材紹介)をしているのであって、
以前に少し人材派遣もしたことがあるだけで、
それ以外の近い業界については
多少の知識は持っていても
最新の事情まで抑えられているわけではないし、
人材ビジネス業界も日進月歩で進化しています。
素直に読んでおいてよかった。
自分の視野が広がったと思いました。
ただ人材ビジネス業界の内側で働く私だから
わりととっつきやすかったですし、
理解もしやすかったというのはあります。
他業界の方から見たら、
はたしてどんな感じなのでしょうか。
一応、本書はサブタイトルに
「採用人事担当者から経営者まで総合的に業界がわかる」
と謳っていますから、
できるだけ多くの人に人材ビジネスを
理解してもらうという趣旨なのだとは思います。
ところが人材ビジネスの守備範囲があまりにも広く、
おそらく読者の方にとっては
ごく一部は理解できるけど
それ以外はよくわからんという感じかもしれません。
どうしても一般化しようと思うと、
幅広く取り上げなければならず、
そこは著者も悩ましかったのではないでしょうか。
本当はもっと掘り下げたい部分もあったでしょうし、
でも掘り下げると難しくなり、
さらに一部の人しか理解できないというジレンマ。
こういう本の難しさですね。
でも、総体的に見ても、
なかなか出来の良い一冊と感じましたし、
弊社におきましては
課題図書としてみんなに読んでもらおうと思います。
また人材ビジネス業界への就職を考えている
学生さんなどには参考になりそうです。
業界研究として役立つことでしょう。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
「あなたのキャリアを正しく評価してくれる会社があります」
「プロのエージェントがあなたの未来をサポートします」
――耳触りの良いキャッチフレーズのCMが、
毎日流れてきます。
「転職すれば幸せになれる」という考えは、
はっきり言って錯覚です。
確かにキャリアアップして
新しい職場でのリスタートに期待を抱くことは
自然なことです。
しかし、転職が必ずしも幸せにつながるわけではないという
現実を知っておくことが重要です。
(P.97)
求人サイトや、転職エージェントは、
いつまでこんな陳腐な宣伝広告をするのでしょうか。
私は同業者として、
非常に恥ずかしいですし、
法的な規制を入れてでも、
やめさせるべき重大な事案であると考えています。
転職は必要な人だけがすればいいのです。
本当はしないほうがいい人に
転職をすればバラ色の世界があると勘違いさせて、
自社の売上につなげようとする姿勢は
百害あって一利なしです。
最近のテレビでも、
ビズリーチさんや、リクルートエージェントさんが、
モラルもへったくれもないCMを流していますが、
こういう会社は実に問題があります。
賢明な皆さんは、
余計な宣伝広告費用をかけて
自社のことだけ考える会社を避けていただき、
真っ当な情報提供をする会社を
是非ともお選びいただきたいです。
日本の派遣労働者の高齢化は、
人材ビジネス業界だけでなく
労働市場全体においても
重要な課題となっています。
派遣労働者の平均年齢は45.7歳で、
全体の約70%を40~50代が占めています。
女性の派遣社員数は
男性の派遣社員数の約1.5倍で、
30代後半から50代前半の子育て世代で
特に多くなっています。
一方で男性の派遣社員は
60歳以上が多くを占めています。
(P.119)
実は私が人材ビジネス業界に入ってきた当初は、
派遣の営業もしておりました。
もう20年も前のことですし、
ここしばらくは紹介しかしていませんでしたので、
こんなふうに状況は変わっていたのですね。
これは個々の問題というよりは、
社会構造やビジネス環境の問題だと思います。
このあと20年後にはどうなっているでしょうか?
また今の流行りの働き方も
20年も経てば相当に変わっていることでしょう。
いや20年もいらず、5年、10年でも変わっているかな。
最近は、AIを搭載することで、
マッチング精度がさらに高くなり、
利用者のキャリアをAIが分析し、
求人案件をレコメンドするサービスが増えてきました。
(P.173)
さらっとした文章ですが、
ここは言いたいことがあります。
キャリアや転職とは
ロジカルでは解決できない点が多いです。
よってAIに100%の信頼は置けません。
たとえばある転職エージェントに
100人のコンサルタントが在籍しているとします。
おそらくその成績は、
「2:6:2の法則」通りに上位20%と
中位、下位に分かれると思われます。
AIは中位、下位のコンサルタントに
成績をあげるためのサポートはできるでしょう。
でも上位20%の人たちは
AIよりも高い能力を持っていると思います。
その人間性、人間力を軽視して、
AIを頼り過ぎると
思わぬ事態が出てきてしまうことでしょう。
AIはあくまでもツールです。
「人」と「人」を舐めてはいけません。
大企業の多くは一律的な報酬体系を採用していますが、
プロフェッショナル人材は市場価値が高く、
より高い報酬を求める傾向にあります。
こうした人材を引き留めるためには、
業界平均以上の報酬や
インセンティブを提供する必要がありますが、
既存の報酬体系では限界があり、
結果として転職・離職に至ってしまうのです。
(P.177)
難しい問題ですね。
私は大企業にはプロフェッショナル人材は
居場所がないと考えていますので、
むしろよい傾向と言えるかもしれないと考えます。
だって本物のプロフェッショナル性よりも、
組織への忠誠が求められるわけじゃないですか。
そんなの優秀な人には無理ですよ。
日本の大企業が埋没していく理由の一つです。
「人生100年時代」の今、
若いうちから長期の視点を持ち、
キャリア設計していかなければいけません。
人生という大海原を安全に航海するためには、
人材ビジネス会社に伴走してもらうことも、
選択肢のひとつとしておすすめです。
(P.215)
これはどうでしょうね…。
業界の内部にいる人間として、
人材ビジネス会社の汚いところも
たくさん見てきました。
本当の意味でキャリアに伴走する会社など
圧倒的な少数派だと思います。
むしろどうやって「カネに変えるか」と
邪な考えを持つ会社のほうが多いのではないでしょうか。
KPIやノルマでがんじがらめにされてしまえば、
キャリア設計に伴走するなんて
したくてもできないと思いますよ。
ここらが人材ビジネス会社の
大きな課題であると言えるでしょう。
評価
おすすめ度は ★★★★☆ といたします。
人材ビジネス業界のいずれかに関わっている方は、
自分の幅を拡げるためにも
読んでおいたほうがいいと思います。
今後ますます人材ビジネスのなかにも
AIが実装されていくことでしょう。
しかし最後の最後は
「人」と「人」であるのが
人材ビジネスの世界です。
そこを無視して、
仕組みや仕掛けをつくっても、
イチ時期は流行るかもしれませんが、
10年後には廃れているのではないでしょうか。
最後は人と人。
この原点を見失ってしまうと
お金儲けはできたけど、
そこに意味や意義がないということに
なりかねないように私には思えます。
AIに頼りっ放しになるのではなく、
AIを上手に活用しながらも、
AIが苦手とする感情面だったり、
生活、暮らし、人間関係、やりがい、生きがいという
エモーショナルな領域を丁寧にケアしていく。
こんな考えも大事だと思いますし、
それを見失わないためにも
人材ビジネスの変遷であったり、
他領域を学ぶことにも価値があると思います。
それでは、また…。
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