ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

眠れぬ夜の精神科 医師と患者20の対話

 

おはようございます。

 

医師の転職、開業の情報提供をしている

医師転職相談センターを運営する

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

「眠れぬ夜の精神科 医師と患者20の対話」

中嶋 聡 新潮新書 を読みました。

 

精神科医転職相談

 

本書を手に取った理由は、

サブタイトルにある

「医師と患者20の対話」という箇所が

気になったからです。

 

対話…というのは、

どんな仕事をしていても

必要不可欠でしょうし、

精神科医が行う対話は

相当に切羽詰った

ギリギリのシチュエーションも少なくないと思います。

 

そんな時に、何を考え、

何を目的に、何を伝えるのか?

関心があったのと、

私は仕事柄、個人個人の悩みや

不安に寄り添う事も多いので、

万が一似たようなケースがあれば

参考にしたいという目的もありました。

 

実際に勉強になりました。

 

何らかの精神疾患を抱える患者さんと

精神科医である著者のやり取りが

具体的に書かれていて

非常に興味深く読めました。

 

著者は、学問的、体系的、網羅的であろうとはせず、

あくまで臨床的、実用的な立場から

執筆したと言っており、

また精神科医にも

いろいろな個性の方がおり、

学問的にもいろいろな立場の人がいるので、

自分の言っている事は

あくまでも一例だとも述べています。

 

そんな著者のスタンスは非常に好感が持てましたし、

「一般論として言えることでも、

 それがあなたという個人に該当するとは限りません。

 もしあなたが治療を受けている場合には、

 主治医の先生に意見を尋ねてください」

とも述べており、

冷静さと客観性をきちんと持っている点に

信頼が置けました。

 

昨今では、

ご自身の主張以外は認めず、

自分の主張に都合の良いデータを羅列し、

正直、医師仲間からも疎んじられている方や

そんな書籍も少なくないですからね。

 

それと違って、

スクエアなスタンスが安心できましたし、

内容もあくまでも一般論だとしても、

なるほど、確かに…と参考になりました。

 

目次をご紹介します。

 

Ⅰ、心の病気に関する12の疑問

1「眠れないんです」ー不眠症

2「ゆううつで、朝起きて会社に行くのが辛い」ーうつ病

3「車を運転していると、突然胸が締めつけられて、

 死んでしまうのではという恐怖に襲われる」ーパニック障害

4「一人でいるのに、

 知らない人の声が聞こえるんです」ー統合失調症

コラム① 依存症について

5「妻が急におしゃべりになり、また怒りっぽくなってきた」ー躁病

6「人前に出るとドキドキして、顔が赤くなる。

 会議の日などは逃げ出したくなる」ー対人恐怖症

7「あちこちで何でもないと言われるが、

 それでも癌じゃないかと心配だ」ー心気神経症

8「馬鹿らしいとわかっていながら、鍵をかけたかどうか気になって

 何度も確認してしまう」ー強迫神経症

9「最近顔のほてりやのぼせが気になる。

 更年期と関係あるんでしょうか」ー更年期障害

コラム② 不登校について

10「上司との関係がうまく行かず、

  毎朝仕事に行くのがゆううつ」ー適応障害

11「彼が毎日決まった時間に電話をくれないと、

  見捨てられた気がして不安。何度か薬をまとめ飲みして

  救急治療室に運ばれてます」ー境界性人格障害

12「気がつくと手首を切ってしまっている」ー自殺念慮・自殺企図

  コラム③ 性同一性障害について

  Ⅱ、治療に関する8つの疑問

   1「僕の病名は何でしょうか」ー病名について

   2「原因は何でしょうか」ー原因について

   3「治りますか」ー転帰について

   4「遺伝しますか」ー遺伝について

  コラム④ 沖縄で精神科を開業するということ(その1)個人的体験編

   5「薬はいつまで続けるのでしょうか」ー服薬について

   6「薬をのんでいて妊娠しても大丈夫でしょうか」ー服薬について

   7「カウンセリングを受けたいのですが」ーカウンセリングについて

   8「今かかっている医師は話をほとんど聞かないで薬を出すだけなので、

    病院を変わりたいのですが」ー転院について

  コラム⑤ 沖縄で精神科を開業するということ(その1)精神医学編

 

と、このようになっています。

 

精神科医に言わせれば

疑問や指摘もいろいろあるのでしょうが、

著者は、

「この本は一般の方々に向けて書かれたものですが、

 医学生や研修医、看護学生、

 その他医療を志す皆さんにも

 読んでもらえればと思います。」

と言っています。

 

そして、

「まずは体系的な理論や一般論を

 講義や教科書を通じて

 しっかり学び、

 身につけておく必要があるのですが、

 それにしがみついていたのでは、

 臨床の現場では通用しません。

 それに加えて必要な、

 臨床家としての勘所というものもあります。

 また、一見正しそう、

 あるいは立派そうに見えて臨床の現場では通用しない、

 まがい物の知識や理論も、実際にはたくさんあるのです」

と述べ、

著者が経験してきたことから

何かを感じ取って、

これからの歩みに

役立てて欲しいと言っています。

 

難しい事は私にはわかりませんが、

そもそも精神疾患の知識もなく、

それほど関心が高い訳でもない私でも、

大変にわかりやすく書かれていたのは確かです。

 

医療の本も数多く出ていますが、

こういう一般人にもわかりやすく、

中立的なスタンスの本が

増えるといいなあと思いました。

 

ただ残念なのは、

眠れぬ夜の精神科なんて

タイトルを付けると

真夜中の精神科病棟で起きている

あんなこんな…みたいな事を想像してしまいますが、

実際には著者のクリニックで起きている事が大半であり

オドロオドロシイ事などは

書かれておりません。

 

もっと普通のタイトルの方が

相応しいと思いました。

 

おススメ度は ★★★☆☆ と致します。

 

それでは、また…。

 

 

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