ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

歌うクジラ

 

おはようございます。

 

医師、看護師の人生の転機でお役に立つ

転職コンサルタント歴13年の

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

「歌うクジラ」

村上 龍 講談社文庫 を読みました。

 

医師将来設計キャリアプラン

 

私にとっては

最も好きな作家である

村上龍さん…。

 

本作品も非常に楽しみに読み始めたのですが…。

 

えっと、大の村上龍ファンの私ですら

ん?ん?と思ってしまった当作品…。

 

正直に申し上げると、

いわゆる村上龍テイストが

炸裂している箇所もあり、

龍さん、さすがだぜ!と

思うところもあるんだけど、

ちょっと行き過ぎというか、

ぶっちゃけ読みにくい箇所もあり、

SF的な要素も満載なんだけど

村上龍作品にそれはあんまり求めてないし、

100年先の未来を描いているのはわかるけど

どうも臨場感が湧かなくて

何となくいかにも物語を作りました的な感じが

してしまったんですね。

 

他の人は

この作品をどう評価したのかが

とても気になったので

アマゾンの評価を見てみたら、

案の定の賛否両論…。

 

う~ん、この作品はかなり好き嫌いが

分かれてしまいそうですね…。

 

それでも毎日芸術賞を受賞していたりするので

わかる人にはわかる…という事なのでしょうか。

 

まあそうは言っても龍さんの言葉には

唸らせられる部分があります。

 

本作品では

私は下記の2箇所がグッときましたので

ご紹介します。

 

**********************

 

直立二足歩行をはじめた

わたしたちの遠い祖先の

平均的な寿命は二十歳前後だった。

 

農耕がはじまり規則的な食事が可能になり

国家が誕生して

社会と個人に規律と規範ができて

平均寿命は十年ほど長くなり、

産業革命と近代初期の医学の発達で

さらに十年ほど延びた。

 

そして偉大な発明が続いた。

最初の人工臓器である

入れ歯と体温計と光学顕微鏡だ。

 

原始時代において歯がなくなるのは

死期が近いことを意味したが、

入れ歯がその伝統を変えてしまった。

 

体温計が病という概念を浸透させ

治療が祈祷から薬と手術に変わった。

 

次に電子顕微鏡の発明によって

遺伝子が発見されて平均寿命は

さらに数十年長くなり、

宇宙空間の無重力を利用することで

さらに数十年延びた。

 

**********************

 

いかがでしょうか?

 

科学的には正確ではないかもしれませんが、

人類の歴史をこれ以上ないくらいに

簡潔に説明しているように感じました。

 

これは科学者にはできず、

小説家だからこその

スキルではないかと思いました。

 

最後の一文は

小説の中の未来像なので

さあ果たして?ってなところですけどね。

 

それともうひとつが、

 

**********************

 

生きる上で意味を持つのは、

他人との出会いだけだ。

 

そして移動しなければ出会いはない。

移動が、すべてを生み出すのだ。

 

**********************

 

出会い、そして移動…。

ここは考えさせられました。

 

確かに私たちは日々誰かと出会い、

日々目的があろうがなかろうが移動している。

 

移動自体に意味は大してないけど、

移動するからこそ新たな出会いがあり、

出会いが何かを生み出していく。

 

生きる意味をとてもわかりやすく

教えてくれているように思いました。

 

冒頭に書きましたように

作品全体としては高評価はできないですが

村上龍さんならではの刺激は

しっかりと頂きました。

 

おススメ度は ★★★☆☆ と致します。

 

それでは、また…。

 

 

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