ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

後藤田正晴と十二人の総理たち もう鳴らない”ゴット・フォン”

 

おはようございます。

 

医師のライフ・キャリアのプランニングを

オーダーメードで丁寧に一緒に考えていく

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

後藤田正晴と十二人の総理たち

    もう鳴らない”ゴット・フォン” 』

佐々 淳行 文春文庫 を読みました。

 

医師キャリア相談

 

いやはや実に評価の難しい本です。

 

このタイトルで本書を購入したならば

後藤田正晴氏を知ろう、学ぼうと思う訳ですよね。

 

でも本書はタイトルと違って、

後藤田氏は脇役です(苦笑)。

 

著者である佐々淳行氏が

完全に主役になってます。

 

故・後藤田正晴さんのお別れの会での

竹下登から小泉純一郎までの

歴代総理の挨拶に絡めて、

まさに国家的な危機と言えるような事件、

事故に対して、

いかにして対応をしてきたのか…

(著者が…笑)。

 

近現代史を学ぶとか、

そろそろ記憶が薄くなっている

事件、事故を思い出すとか、

危機管理の心構えや手法を知るとか、

そういう事を学ぶには

かなりのレベルで可能ですが、

後藤田正晴さんは少ししか出てきません(苦笑)。

 

ただ、天安門事件湾岸戦争阪神淡路大震災

オウム真理教地下鉄サリン事件

ペルー大使公邸占拠事件、沖縄サミット、

911同時多発テロ北朝鮮拉致問題

テポドンなど、各時代の事件、事故を

思い出す事自体は必要だと思います。

 

著者は危機管理のスペシャリストで

名を馳せた方ですから、

事件や事故の詳細や、

その裏側で行われていた事などは

ドキドキしながら読みましたし、

その際の各総理大臣の対応なども

非常に興味深く感じました。

 

各総理をはじめ、

著者の人脈とも言える

アメリカや中国、台湾などのリーダー層も含めて、

その人間模様とか、

それこそ人柄なども触れられており、

まさに著者ならではの優れた内容と思いました。

 

ただ主役の後藤田さんはポイント、ポイントで

多少登場するというのが若干残念でした。

 

まあ第10章、終章では

ようやく出てきたか…という感じで

真打ち登場となりますので

ギリギリ許せますが(笑)。

 

私としては

もう少し後藤田正晴という人物を学びたかったのですが、

どちらかと言うと

各政権を陰で支えてきた方でもあり、

警察庁長官から政治家に転身した方でもありますので

オープンにできない話しが多いのかもしれませんね…。

 

ただその中でも

「後藤田五訓」という訓示が紹介されていて、

 

1、省益を忘れ、国益を想え。

2、嫌な事実、悪い情報を報告せよ。

3、勇気を以って、意見具申せよ。

4、自分の仕事に非ずと言うなかれ。

  自分の仕事であると言って争え。

5、決定が下ったら従い、命令は直ちに実行せよ。

 

この五訓は結構私の心に響きました。

 

後藤田氏が中曽根内閣の官房長官時代に、

内閣官房6室制度発足の場で

室長達に与えた訓示ですが、

これは官僚はもちろんの事、

どんな組織でも通用する

組織論ではないかと思いました。

 

特に危機管理の場では

最重要でしょうし、

著者曰く、

これをひっくり返すと官僚主義になるとの事ですが、

まさにその通りですよね。

 

残念なのは、官僚の世界では

この五訓が活かされていないように思える事です…。

 

最後に目次をご紹介します。

 

序章  後藤田さん逝く

 

第1章 台湾騒擾と天安門事件

    ー機動隊「二都物語

    《竹下登内閣・宇野宗佑内閣》

 

第2章 湾岸戦争ソ連邦崩壊

    ―冷戦終焉と世界新秩序《海部俊樹内閣》

 

第3章 PKO文民警察官殉職事件

    ―「行かせた者」と「行かされた者」

    《宮澤喜一内閣》

 

第4章 対露ODA「ポチョムキン村」騒動

    ―55年体制の崩壊、自社倒れ「日本新党」誕生

    《細川護熙内閣・羽田孜内閣》

 

第5章 阪神・淡路大震災オウム真理教地下鉄サリン事件

    ―自社連立政権下日本の運命《村山富市内閣》

 

第6章 ペルー青木大使公邸占拠事件

    ―国際テロの世紀へ《橋本龍太郎内閣》

 

第7章 テポドン、ハイジャック、不審船、沖縄サミット

    ―惜しみてもあまりある未生の危機管理宰相の急死

    《小渕恵三内閣》

 

第8章 えひめ丸衝突沈没事故

    ―ガルフ危機ならぬゴルフ危機《森喜朗内閣》

 

第9章 9・11同時多発テロ、拉致、不審船、イラク人質事件

    ―織田信長型危機管理宰相と後藤田正晴小泉純一郎内閣》

 

第10章 等身大の後藤田正晴

    ―晩年に見せた意外な笑顔

 

終章  最後の内務官僚

 

おススメ度は ★★★★☆ と致します。

 

後藤田正晴氏の事を学びたい方は、

きっと良くて星2つでしょう。

 

現代史やその危機管理について学ぶなら

星4つで大丈夫です。

 

そういう期待感で

お読み頂ければと思います(笑)。

 

それでは、また…。

 

 

医師キャリア相談

 

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