ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

医師が教える幸福な死に方

 

おはようございます。

 

医師に転職や開業の有益な情報提供をしている

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

「医師が教える幸福な死に方」

川嶋 朗 角川SSC新書 を読みました。

 

医師キャリア幸福

 

少し前の事ですが、

あるドクターとお話ししていた時に、

最近亡くなる方がだらしない…

という話題になったのです。

 

まあこれだけ言うと誤解を生むかもしれませんが、

私は先生の言わんとしている事が

手に取るようにわかりました。

 

突き詰めて考えると、

考えたくない事でも考える事ができるか?

考えたくない事はやっぱり考えないで、

挙句の果てには責任を他者に転嫁して

自分だけは安泰でいようとするのか?

 

ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、

ここに尽きるのだと思うのです。

 

ついでに言うと、

先日ある先生方と飲んでいた時にも

似たような話題になりました。

 

私は祖父母が青森と秋田に住んでいたので

臨終の場に立ち会う事ができずに、

何とか葬儀にだけ出る事ができたという、

ある意味非情な人間であり、

遠くの家族の一員として、

「良く聞く話しですが遠くの家族ほど

 やっかいな存在はないらしいですね?」

と申し上げてみると、

2人で顔を見合わせて

苦笑いをしていらっしゃいました。

 

我々はそこで散々嫌な目に合ってるからね~。

それを理解してくれる人が

存在するだけで有難いよ…なんて、

おっしゃってましたが、

終末期に携わる医師には共通した

思い出したくない経験ってのがあるのでしょうね…。

 

まあ人生観とか、死生観というのは

パーソナルな問題ですから

私ごときがどうこういう問題ではないと思いますが、

それにしても私たち現代人は「死」から

あまりにも遠ざかり過ぎてしまって

感覚が鈍くなり過ぎているように思います。

 

その結果、臨終の場に立ち会う医師や看護師に

負担を丸投げしているんだろうな…と痛感するのです。

 

それでいい…という考え方は

あまりにも無責任過ぎると思います。

 

その結果が41兆円という医療費であって、

結局私たち自身に負担がのし掛かっているのですから

もっともっと我々はどう生きるか、

どう死ぬかについて

個々考えなければならないんだろうな…と

強く強く思うのです。

 

さて、本書はタイトル通り、

医師が幸福な死に方を教えてくれます。

 

著者の考えが全てではないものの、

ここには大きなヒントや

考えるきっかけがあるように思いました。

 

医療技術の進歩により、

私たちは世界でもトップクラスの

平均寿命を手に入れました。

 

ですがまさにパラドックス…。

 

裏腹に世界でも有数の医療費を

負担する事になっています。

 

国民皆保険制度は

私たちに安心をもたらす一方で、

みるみる医療費は膨れ上がっています。

 

医療者は「死は敗北で、命を救う事が勝利」と考え、

内心疑問を持ちながらも、

患者や家族の思うがままに、

場合によっては

無駄な医療を提供している訳です。

 

最近では平均寿命よりも

健康寿命が求められるようにもなってきています。

 

現在の我が国の平均寿命と

健康寿命のギャップは

何と7~9年と言われているそうです。

 

つまり7~9年は、

自立できずに、日常生活でも

介護など人の手を借りて生きているのですね。

 

場合によっては医療の力で無理矢理に

生かされているケースもあるのでしょう。

 

著者は、QOL(クオリティオブライフ)だけでなく、

QOD(クオリティオブデス)を高める事が

必要だと主張しています。

 

その通りだと私は考えます。

 

人間らしい日常生活を送るのも大事ですが、

その為には、

「本人の理想とする生き方をし、

 残された家族にも後悔の念を残さない

 死に方をする」

こういった発想もあって然るべきだと思うのです。

 

着陸態勢に入った後にどう生きるか?どう死ぬか?

ロスタイムに入った後にどうすべきか?

 

この考えたくない事を

いかにして考え、自分らしく生き、死ぬか?

ここが問われているのでしょうし、

ここに切り込まない限り

医療費の削減はないでしょう。

 

そもそも私たち日本人は、

死に対して

美学を持っていた民族だと思うのです。

 

別に切腹したり、

斬首したりする事が

良いなんて決して思いませんが、

死というものに対して、

考えたくないから考えないのではなく、

考えていかにして価値ある死にするのか?を

実行せねばならないのではないかと思います。

 

本書は「死」に対して

考えるきっかけをくれるばかりではなく、

死を考える事によって

「生」に対しても考えさせてくれる

有益な1冊です。

 

最後に目次をご紹介します。

 

第1章 崩壊への道をたどる日本の医療

 

第2章 日本の医療は矛盾だらけ

 

第3章 自分の寿命と死を考えれば、

    人生がより良くなる

 

第4章 死ぬ間際まで健康寿命を保つためには

 

第5章 元気なうちに死についての準備を

 

第6章 延命治療は拒否できる

 

おススメ度は ★★★★☆ と致します。

 

自分自身の死、

家族の死、

生を充実させるためにも、

国家の財政のためにも、

ひいては我々の社会保障負担のためにも、

哲学的に、倫理的に、経済的に、

多角的に考察せねばなりませんし、

本書はそのために実に有用な書だと思います。

 

それでは、また…。

 

 

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