おはようございます。
医師が本業に専念できるように、
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ジーネット株式会社の小野勝広です。
「監察医の涙」
上野 正彦 ポプラ文庫 を読みました。
監察医として著名な方ですよね。
ただ私の仕事的には
あまり関わりがなさそうですし、
臨床…と言っていいのか
何ともわからないので、
なかなか手が出なかった本書ですが
医療の違う形も勉強しなきゃと思い
読み始めてみました。
そして読んで良かったと
素直に思える本でした。
著者が監察医として
体験してきた様々な人間模様。
思わず目頭が熱くなってしまうような悲しい事件、
実に腹立たしい残虐な事件、
いろいろ考えさせられてしまう人間の奥深さ。
監察医として人の死に何度も立ち合い、
死者の声なき声に耳を傾ける暖かさ、優しさ。
その裏側で冷静さと真相を解き明かす断固たる思い。
法医学という領域の
深さを思い知らされるとともに、
人間の長短を織り交ぜた現実の切なさ。
正直涙なしでは読めない１冊です。
医療は人を治すものだと考えていましたが、
こういう医療（？）もあるんだと学びました。
そして本書で「死」についても
深く考えさせられました。
病気で亡くなる、事故で亡くなる。
そういう「死」ではなく、
何らかの事件に巻き込まれたり、
無理心中をしたり、過労死をしたり、
虐待死であったり、自殺だったり…。
そう…これも「死」には変わりありません。
おそらく自分にはないだろうとは思いますが、
いつ何時何かに巻き込まれてしまう可能性は
誰にでもあるんですよね。
そして本書にあるような複雑な人間模様、
人の怖さ、難しさ、訳のわからなさ、
そんなものを味わう事があるのかもしれません。
またこういう歓迎できない「死」があるからこそ
「生」の大切さをしみじみ感じますし、
「死」があるからこそ「生」がある。
現実の社会は思うように行かない事も多いし、
不幸な事だって起こり得るし、
だからと言って死んでいいなんて事にはならないし、
一生懸命に生きる必要がないとも言えないですよね。
現代社会は複雑にこんがらがっています。
恐ろしい出来事と紙一重とも言えなくもないです。
監察医とは、法医学とは、
社会の表ではなく、
裏側とも言えるかもしれません。
しかしそれも現実。
こういう世界があって、
そこにも様々な人間模様があって、
リアルな描写に心を揺り動かされました。
とにかく凄い本です。
一読の価値はあります。
最後に目次をご紹介します。
・はじめに
・死体は語る
・刑事の涙
・夫の献身愛
・涙で運転ができない
・炎の中に
・偽りの発表
・隠された真相
・父子心中
・コインロッカーベイビー
・分娩
・虐待
・おかあさんといきます
・父の背中
・君１人で逝かせるわけにはいかない
・同性愛
・過労死
・インターネット自殺
・行為中に老婆は死んだ
・信者
・親の愛
・独占欲
・完全犯罪
・おんぶ紐
・アメリカでの母子心中
・死生観
・お父さんを許せない
・いじめ
・涙をこらえて
・我が子を殺めた母親
・物体検査
・お世話になりました
・同居していたミイラと白骨死体
・バラバラ殺人事件
・歪んだ愛
・セレブ妻
・知人の検死
・妻の死
おススメ度は ★★★★☆ と致します。
あとがきで法医学の講義は
大学で人気があると書かれていました。
そして同時に学校を出た後に
法医学に携わろうという学生はいなくなり、
外科、内科など臨床医になるのが現実だとも…。
医者になったら生きた人を診たいというのが
主流だともおっしゃっています。
そりゃそうなのでしょう。
でも必要な職業でもありますし、
待遇面も含めて、社会として、
法医学、監察医を育成していかねば
ならないのでしょうね。
いろいろ考えさせられ
複雑な気分になりましたが、
読んで良かった…、知って良かった…、
素直にそう思う良書でした。
それでは、また…。
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