おはようございます。
医師のキャリアプランを軸にして
転職やクリニック開業で希望を叶えるサポートをする
ジーネット株式会社の小野勝広です。
当ブログをご覧になって頂いている読者様は
この書評ブログも楽しみにして下さっている方も
少なくないようです。
私自身、読書が好きで、
どんな本を読んでいる人間なのかを知って頂く事は
コンサルタントとして必要な情報発信だと考えておりますので
最近は毎週日曜日は書評ブログになっています。
ただ最近思うんですよね。
人間は一生の中で何冊くらいの本を読めるのだろうか?と。
できるだけ多く読みたいけど、
せいぜい数千冊なのかなと考えるとさみしくて…(笑)。
本日のブログのタイトルは、
【 真贋 】 といたしました。
本書をピックアップした理由
『 真贋 』
吉本 隆明 講談社インターナショナル を読みました。
吉本隆明さんについては
今まで数冊の著書を読みましたが、
とても勉強になっているのに
なぜか積極的に探して読むという感じではなく、
たまたま出会ったら読むというスタンスです。
吉本さんの思想はわりと好きなので
別に避けている訳ではないのですが、
単に優先順位が他の作家さんなどの方が高いだけです。
なんて言いながらも
ブックオフで著書を見掛けると
わりと良く買っています。
まだ読めていないだけです(苦笑)。
今回は「真贋」ですからね。
どこまで深く考察されているのか…
楽しみにしながら読み始めた次第です。
目次
1 善悪二元論の限界
2 批評眼について
3 本物と贋物
4 生き方は顔に出る
5 才能とコンプレックス
6 今の見方、未来の見方
感想
読後の感想、
ちょっと拍子抜けです…。
いい意味で…です。
私ごときが言うのも何ですが、
吉本さんの水準が数段階上がったというか、
いよいよ達観の域に入ったというか、
まるで仙人の著書を読んでいるようでした。
それこそ神の領域とでも言うのでしょうか…。
イメージとしては、
社会に対して斬り込んでいく
切れ味鋭い批評家という印象を持っていたのですけど、
本作品においては違います。
柔らかさというか、
しなやかさが前面に出ていて、
逆にそれが強い共感を生み出しているように思いました。
わかりやすさだけでなく、
何だろうなあ…ホント突き抜けた人だからこそ
言葉に価値が上乗せされている感じ。
吉本さんの思想を押し付けるのではなく、
まるで独り言のように話している事を
こちら側が勝手にこの人スゲー、
言ってる事スゲー、
何だかスゲーという感じで
1人スゲー人に出会って興奮している感じです。
えっとわかりにくい事を申し上げていると思いますが、
何となく今までの吉本作品より「上」にある気がしました。
それでは恒例の私がグッときた箇所のご紹介です。
幸福や不幸の体験というものは、
ある一方からのみ見ていると
見誤ることがよくあります。
(P.19)
無意識のうちに答えが決まっている価値判断は、
無意識のうちに人の心を強制します。
(P.19)
人間自身もそうですが、
すべてのものは善と悪を併せ持っています。
どちらの面が強く出るか、
それだけの話しです。
物事のいい面だけを見てもいけませんし、
悪い面だけを見ても不十分です。
いまという時代は、
善悪両面から見る、
あるいは善悪という価値観を脇において
物事自体を見ようとする、
そういう見方が必要な時代なのです。
(P.31)
僕は噂話や消息筋の話などを一切信用せず、
自分の目や感覚で人やものを見るようにしてきました。
よし悪しというのは、
バランスのようなもので、
全否定も全肯定もなかなかできないものだと考えています。
ただ、僕が唯一全否定できるもの、
空くと認めてはばからないものに
「戦争」というものがあります。
(P.97)
僕は、虚業が実業かという視点で職業を見て、
そのよし悪しを判断するのは危ないと言いました。
きれいごとを言ってしまえば職業に貴賤はありません。
むしろ問題なのは、
どんな職業にも利と毒の両面があり、
その利・毒と人間とがどうからみあうかのほうだと思うのです。
たとえば、ある職業によって、
すばらしい経験をして幸福な人生を送る人もいれば、
同じ職業に就いても、
過酷な思いをして
失意にうちひしがれる人生を送る人がいます。
職業の差が、
そのまま人生の差にはならないのです。
(P.136)
大切なことはその都度変わっていきます。
だから何が人生で重要だというように言われたら、
ずっと一貫して、
大切なものと現状の自分との距離について
考えていくことだと思うのです。
(P.194)
自分がなりたい仕事と、
他人から見た向き不向きが違うことはよくあるものです。
そういうときには両方やって、
両方の修練をすればいいと僕は思います。
一方が陰になれば、
もう一方が陽になり、
逆に、一方を表にしたら、
もう一方は裏にまわすような
修練の仕方をすればいいのです。
そうすれば、
どちらになるにしろ必ず役に立つはずです。
(P.196)
いまの状態は、
社会主義国だと言ってる国も、
資本主義国だと言ってる国も
そう変わりばえのあるようなことをしているわけでもありません。
ひと昔前に声高に論争しあった思想や
政治システムといったものよりも、
人間性や人間の本質のようなものが生み出すものや、
人間性そのものが問われる
時代になっているのではないでしょうか。
(P.231)
1つはっきり言えるのは、
いいことをいいと言ったところで無駄だということです。
それは歴史が何回も証明してきました。
いいか悪いかではなく、
考え方の筋道を深く追わなければ、
問題の本質が見えてきません。
考え方の微細の筋道をたどっていかないと、
解決の糸口を見失ってしまうでしょう。
何はともあれ、
いまは考えなければならない時代です。
考えなければどうしようもないところまで
人間がきてしまったということは確かなのです。
人間というのは善も悪もやり尽くさない限り
新しい価値観を生むことができないのかもしれません。
(P.232~233)
いかがでしょうか?
すごく難しい深い事を
すごく平易な言葉でわかりやすく
教えてくれているように感じませんか?
生きる上で、
とても大切なことを…です。
他にも考えさせられる点が満載の良書ですよ。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
現代社会では
絶対的な正解が全く見えてこず、
これからどう生き抜くか?に
悩んでいる方も少なくないかと思います。
安易な答えなんて大概誤りですし、
そんなものに振り回されてしまっては
自分自身にとって損ですもんね。
本書は正解を教えてくれる訳ではありませんが、
正解への辿り着き方を教えてくれます。
世知辛い社会のサバイバル戦略が
本書には書かれているように感じました。
それでは、また…。
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