おはようございます。
医師のより良い未来の為に
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ジーネット株式会社の小野勝広です。
新年2回めの書評ブログは
私の敬愛する内田樹さんの著書としました。
本日のブログのタイトルは、
【 そのうちなんとかなるだろう 】 です。
本書をピックアップした理由
『 そのうちなんとかなるだろう 』
内田 樹 マガジンハウス を読みました。
私の場合、内田さんの著書は
ダブらない限り
見つけたら即買う…が大原則なのですが、
ちょっと本書は躊躇しました。
そのうちなんとかなるだろう…。
え~、内田さんらしくない浅はかなタイトル。
今の世の中そうそう何とかなんてならないし、
大丈夫なのか?
この本は…と思ってしまったんですね。
まあそうは言っても敬愛する内田さんの著書ですから
中をパラパラっと捲ってみましたら
何と珍しい…。
本書は内田さんの自叙伝です。
これは買いだな…と結局購入しまして(笑)、
どんなもんかね~と思いつつ読み始めたのでした。
目次
第1章 生まれたときから、嫌なものは嫌
第2章 場当たり人生、いよいよ始まる
第3章 生きていくのに一番大切な能力
感想
率直に申し上げますと
やっぱり面白かったです。
でも今まで読んできた内田さんの著書とは
どうしても趣が違う。
そして私にとっての内田樹さんは、
雲の上の存在であり、
ある意味ではメンターでもあり、
またある意味では心から尊敬する方なのですが、
本書では多少裏切られた感があります。
しかも良い方向に…。
どのあたりが?というのは後程書きますが、
まずは恒例の私がグッときた箇所をご紹介します。
学術論文というのは、
同じ研究主題を論じる人が後から読んだときに
手がかりになる「地図」のようなものです。
「ここには谷がある」
「この道は行き止まり」
「この道を進むと、この尾根に出られる」と
ちゃんと書かれていないと地図の役目は果たせません。
失敗であっても、
「こういう仮説を立てて論証しようとすると失敗する」
ということを書いておけば、
後から来た人は手間が省ける。
(P.71)
武闘家は勝敗を争い、
強弱を競うために修行するのではない。
そのような相対的優劣を競う境位を離脱し、
自分の蔵する生きる知恵と力を最大化し、
「いるべきときに、いるべきところにいて、
なすべきことをなす」人間になること、
それが修行の目標である。
(P.91)
人間は学ぶことをほんとうは願っている。
教師がするのは
「学びのスイッチ」を入れることだけです。
何がきっかけになって、
学びが起動するのか、それは予測できません。
誰にでも同じ教育法が
効果をもたらすということでもありません。
(P.133)
しなければならないことは
「苦役」だと思わない。
(P.153)
あらゆる仕事には、
「誰の分担でもないけれど、
誰かがしなければいけない仕事」
というものが必ず発生します。
誰の分担でもないのだから、
やらずに済ますことはできます。
でも、誰もそれを引き受けないと、
いずれ取り返しのつかないことになる。
そういう場合は、
「これは本当は誰がやるべき仕事なんだ」
ということについて
厳密な議論をするよりは、
誰かが「あ、オレがやっときます」と言って、
さっさと済ませてしまえば、
何も面倒なことは起こらない。
(P.154)
人にほんとうに才能を発揮してほしいと思ったら、
その人の「これまでの業績」についての
正確な評価を下すことよりも、
その人がもしかすると
「これから創り出すかもしれない傑作」に対して
期待を抱くほうがいいということです。
(P.188)
「しなかった後悔」には打つ手がありません。
というのは、「しなかった後悔」には
後悔する主体がいないからです。
「あのとき、ああしておけばよかった」と思うのは、
「あのときああしていた自分」が
「本当の自分」だと思っていることです。
でも、今の自分は
「あのときあれをしなかった自分」です。
だから、論理的に言うと、
今の自分は「本当の自分」じゃないということになる。
「オレはほんとうはこんなところにいて、
こんなことをしているはずじゃない」と
思っている自分です。
そういう人はその失敗を糧にすることもできないし、
それを通じて人格陶冶をすることもできません。
(P.208~209)
稽古をしていると、
「真偽・当否・善悪・美醜」というような
二項対立でものごとを把握するのが
ずいぶん不自由なことに思えてくる。
真でもあり、
偽でもあるということってあるじゃないですか。
ある場合には善だが、
条件が変わると悪になるとか。
見方を変えると美しかったり、
醜かったりするということだってある。
だから、どちらかに決めるということができない。
したくない。
それよりは、色の濃淡とか、密度の差とか、
温度差というようなアナログな、
グラデーションの違いのほうが気になる。
例えば政治的な問題について、
「AかBか、どちらがいいですか」というような
問いをつきつけられても、
「う~ん、どちらかには決め難いなあ。
その中ほどがいいんじゃないですか」
というようなことばかり言うようになる。
気がつくと、何についても、
「湯加減」とか「さじ加減」とか「いいあんばい」とかいう
言い方ばかりしている。
どんな話題についても、
「いいから話をシンプルにしてくれ、
良いか悪いかどっちなんだ」という人が今の世の中、
ほんとうに多いですけれど、
それは「子どもの言い分」です。
複雑なものは複雑なまま取り扱うのが
大人の作法だと僕は思っています。
(P.216~217)
少し長くなりましたが、
内田さんらしい
さすがの達観だと思います。
読んで良かった…。
素直にそう思える内容なのですが…。
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
相変わらず私にとっては
学びの連続ではあったのですが、
前述の裏切られた感について…。
私はここ数年で相当の内田さんの著書を
相当に読み込んできました。
そして間違いなくこれからも読み続けると思います。
すでに購入してある本は15冊ほどありますんで(笑)。
こんな状況ですから
私にとっての内田樹は
いつの間にやら聖人君子になってしまっていたんですね。
でも本書は自叙伝ですから、
子供の頃から、紆余曲折を経ての成長、
そして今がある。
さすがの内田さんだって
人生のすべてが成功ではない。
いやそれどころか意外と失敗も多かったり、
結構だらしなかったり、
いわゆる普通の人なんです。
聖人君子から普通の人になってしまったら
そりゃ裏切られた感は持ってしまいますね。
ただそれを悪い方に捉えているのではなく、
何となく安心した感もあります。
スーパースターのような人だと思っていたけど
意外と普通の人だった。
この普通の人が、
これだけの学びを与えてくれるのですから
自分も近づけるかも…と思った次第です。
私は医師のキャリアの専門家。
キャリアプラン上で言うと
内田さんの人生は決して合格とは言えません。
いや不合格と言わざるを得ません(笑)。
それが本書のタイトル…
そのうちなんとかなるだろうに繋がるのですが、
そうなんですよね、
人生何とかなっちゃうとも言えます。
でも主導権を持って
何とかするという意気込みも必要です。
なんて事を考えてしまい、
いろいろ複雑な思いを持ちつつも
自分の発想を広げる事のできた良書でした。
それでは、また…。
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