ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

村上春樹、河合隼雄に会いにいく

 

おはようございます。

 

医師のキャリアプランを研究し続ける

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

我が国トップレベルの小説家と

我が国の心理療法の第一人者である心理学者の対談。

そりゃ関心持つでしょ…。

 

 本日のブログのタイトルは、

【 村上春樹河合隼雄に会いにいく 

といたしました。

 

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本書をピックアップした理由

『 村上春樹河合隼雄に会いにいく 』 

 河合隼雄 村上春樹 新潮文庫 を読みました。

 

実につまらない話しをしますけど、

私が学生の頃だったでしょうか…。

 

村上春樹村上龍の 2人は

若手の作家として飛ぶ鳥を落とす勢いであり、

ダブル村上なんて言われていました。

 

当時の私は断然「村上龍」派。

おそらく村上龍の著書はほとんど読んでいるはずです。

とは言いながらも

村上春樹が嫌いな訳ではなくて、

何だか龍さんを裏切るような気がしてですね(笑)、

村上春樹の著書は読んだ事がないのです。

ホント恥ずかしながら…。

 

あれから30年ほど経ちまして、

充分龍さんへの義理は果たしたと思ってまして

そろそろ春樹さんも読みたいなあ…と。

 

やっぱりノルウェイの森から行く?

それとも海辺のカフカ1Q84?なんて考えていて

そこで目に付いたのが本書です。

 

河合隼雄さんの著書は数冊読んだ事があり、

その視野の広さ、思考の深さには感銘しておりましたので、

あ、この2人の対談なら外す事がないだろうと考えて

おっかなびっくり読み始めたのでした。 

 

目次

第1夜 「物語」で人間はなにを癒すのか

・コミットメントということ

阪神大震災と心の傷

・言語かイメージか

・「理屈」で回答するか、「人情」で答えるか

・小説家になってびっくりしたこと

・日本的「個」という歴史の縦糸

・「言語の違い」の深層

・いまは発熱の途上

・自己治療と小説

・物語を作る、物語を生きる

・結婚と「井戸掘り」

・夫婦と他人

第2夜 無意識を掘る“からだ”と“こころ”

・物語と身体

・作品と作者の関わり

・結びつけるものとしての物語

因果律をこえて

・治ることと生きること

・個性と普遍性

・宗教と心理療法

ノモンハンでの出来事

・暴力性と表現

・日本社会の中の暴力

・痛みと自然

・われわれはこれからどこへいくのか 

 

感想

何の事前知識もないままに読み始めたのですが、

どうやら本書は

ねじまき鳥クロニクルの出版後に行われた対談のようで 

当然読んでいない私は大丈夫か?と困惑しながら

読み進めました。

 

ところがノモンハン事件がテーマなんですね。

歴史はそれなりの知識を持ってますので

何となく話しの流れは理解できて助かりました。

 

そして河合隼雄さんが

いつもよりテンション高めな感じがして、

きっと村上春樹さんとの対談を

心から楽しんでるのだろうな…とわかり、

2人がリスペクトし合っているようで

それは読者側にも伝わってきますね。

 

何て言うのでしょうか…

知性と知性がぶつかってインスパイアする感じ。

 

さっきまで雑談していたのに

急にズコンと深いエリアに2人で行ってしまうような。

それが読み手としても心地よくて

お、ここでスイッチ入ったのね…と

素直に楽しむ事ができました。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。

 

ぼくが思ったのは、

日本における個人を追求していくと、

歴史に行くしかないんじゃないかという気がするのです。

(中略)

現代、同時代における個人というのをもし描こうとしても、

おっしゃるように日本における個人というものの

定義がすごくあいまいなのですね。

ところが、歴史という縦の糸を持ってくることで、

日本という国の中で生きる個人というのは、

もっとわかりやすくなるのではないかという気が、

なぜかしたのです。

(P.56~57 村上春樹

 

ぼくがずるさと言っているのは、

もう少し違う言い方をすると、

人間の思想とか、

政治的立場とか、

そういうものを論理的整合性だけで守ろうとするのは

もう終わりだ、というのがぼくの考え方なのです。

人間はすごく矛盾しているんだから、

いかなる矛盾を自分が抱えているかということを

基礎に据えてものを言っていく、

それは外見的に見ると

やっぱりずるいわけですね。

(P.74 河合隼雄

 

ぼくという人間は、

ある程度病んでいると思う。

病んでいるというよりは、

むしろ欠落部分を抱えていると思います。

人間というのはもちろん、

多かれ少なかれ、

生まれつき欠落部分を抱えているもので、

それを埋めるためにそれぞれにいろいろな努力をするのですね。

(P.128 村上春樹

 

人間の根本状態みたいなものは

ある程度普遍性をもって語られうるけれども、

その普遍性をどう生きるかというところで

個性が出てくる。

だからある人は海に潜るよりしかたがないし、

ある人は山に行くよりしかたないし、

ある人は小説書くよりしかたがない。

(P.167~168 村上春樹

 

結局、日本のいちばんの問題点は、

戦争が終わって、

その戦争の圧倒的な暴力を

相対化できなかったということですね。

みんなが被害者みたいになっちゃって、

「このあやまちはもう二度とくり返しません」という

非常にあいまいな言辞に置き換えられて、

だれもその暴力装置に対する内的な責任を

とらなかったんじゃないか。

(P.200~201 村上春樹

 

あと、ぼくの場合は、

一人の人間のことに必死になっていたら、

世界のことを考えざるをえなくなってくるんですね。

結局、深く病んでいる人は

世界の病いを病んでいるんですね。

それでぼくはなんとなく

社会に発言するようになってきたんですよ。

だけどぼくの発言のベースはみんな個人ですよ。

統計とか、世界の動静をにらんで、というのは一つもなくて

個人のことだけから発言している。

(P.216 河合隼雄

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

人生初の村上春樹…(笑)。

 

対談本という事もあり、

春樹ワールド全開ではないと思われますが、

やっぱり私は村上龍派なのかもしれないなあと

思いながら読んでおりました。

 

まあ最初は違和感持つのも普通かな。

 

ただ物語を紡ぐ人、

人の心を問い続けている人、

こういう方々が腹を割って話し合えば

そりゃやっぱり味わい深い話しになりますね。

 

私たち個人個人は

自分を主人公として

どんな物語を紡げばいいのか?

 

キャリアプラン上でも

非常に参考になる考えが披露されており、

私はとても楽しめました。

なおかついろいろ考えさせられました。

 

そして村上春樹さんの苦悩が垣間見えて、

しかも春樹さんは村上龍さんを買っている事もわかり、

いずれ村上春樹さんの小説も読んでみようと

今さらながらに思いました。

 

それでは、また…。 

 

 

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