ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

山本 五十六

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

一生に読める本って

いったい何冊くらいなのでしょうね?

 

私自身、だいたい年間に読むのは

70~80冊くらいでしょうか。

 

ここ30年くらいはこのペースですので、

2000冊以上は読んでいる計算になりますが、

あと30年生きられるかは微妙なので

子供時代も含めて

生涯読める本って5000冊が精一杯かなあ。

 

そんな事を考えていたら

いつか読もうと思って購入したけど

しばらく読めていない本が読みたくなって、

それで本書に手が伸びました(笑)。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 山本 五十六 】 です。

 

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本書をピックアップした理由

『 山本 五十六 』

阿川 弘之 新潮文庫 を読みました。

 

山本五十六と言えば…

 

やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、

ほめてやらねば、人は動かじ。

 

話し合い、耳を傾け、承認し、

任せてやらねば、人は育たず。

 

やっている、姿を感謝で、見守って、

信頼せねば、人は実らず。

 

あまりにも有名なこの言葉がありますね。

最初のやってみせ…から人は動かじが

広まり過ぎてしまってますが、

私はその後が結構好きです。

 

人材育成の場でもよく使われますし、

部下を持ったら

この言葉を噛みしめるのが良いと思います。

 

それともうひとつ…

 

苦しいこともあるだろう。

云い度いこともあるだろう。

不満なこともあるだろう。

腹の立つこともあるだろう。

泣き度いこともあるだろう。

これらをじつとこらえてゆくのが男の修行である。

 

この名言も好きなんですよね。

まさに当時の山本自身の心境ではないでしょうか?

 

今どき、男の修行だなんて

若い方には受け入れがたいかもしれませんが、

きっといつか

この言葉の意図が理解できる時が来ると思います。

 

さて、山本五十六です。

私はかなり好きなタイプの方です。

 

しばらく前に下記の映画を観ました。

 

eiga.com

 

役所広司さんの演技が

私の山本五十六のイメージとちょっと合わなくて

微妙な感じを持ちましたが、

そうは言っても大俳優、

しっかり見どころは作ってくれて、

山本五十六っぽい雰囲気は出ていましたし、

ストーリーがしっかりしていて

かなり楽しめて、心に残っておりました。

 

たぶんその頃に本書は購入しました。

そのまま積ん読になっていました。

 

もっと山本五十六の詳細を知りたい!と思い、

実は他にも山本五十六の本はあったのですが

やっぱり大御所の阿川弘之さんがベストだろうと考えて

本書を読み始めたのでした。 

 

目次

山本五十六 上巻

山本五十六 下巻 

 

感想

う~ん、いい。

本書は個人的に物凄く気に入りました。

 

理由はただひとつ。

山本五十六という人物像が

手に取るように理解することができたからです。

 

先を見通す目を持ち、

海軍の中でも優秀であり

なおかつ当時としては稀な世界をよく知る人物。

 

人望、人徳もあり、人格に優れ、

でもその一方で女性関係や賭け事など

プライベートでは少しだらしない所もあったりして

正直、私は「人」として魅力を感じました。

 

本書では生い立ちから

ロンドン軍縮会議三国同盟大東亜戦争

時が流れていくのですが、

軍人としてスゴイところもあれば

私人として普通の男であるところもあり、

変に持ち上げるだけではなく

史実を淡々と描いていく姿勢に好感を持ちました。

 

五十六は人たらしの側面も持ち、

現代を生きる我々から見ると

誰からも愛された人物のように思えますが、

陸軍との確執ばかりか

海軍内でも賛否両論であったことが

本書を通してよく理解できます。

 

日独同盟、日独伊の三国同盟には反対し、

日米戦争などもってのほかと考えていた五十六。

 

偶像化されるような聖人ではなく

とても人間味があり、

知れば知るほどに愛されるタイプであるので

部下や同僚からも一目置かれていたし、

海軍の中でトントン拍子に出世をしていったのに

結局は時代の流れに翻弄される…。

 

山本五十六が恐れていた方向に

時局は進んでいき、

私たち日本人にとっては痛恨の戦争に巻き込まれ…。

 

これだけの人物がいても

時代の流れに抗うことはできず、

海軍から見れば当たり前の負け戦に突入してしまうのが

当時の政府、国民の持っていた

国力増進最優先主義であったのでしょう。

 

真珠湾攻撃は成功し、

(今となれば成功と言えるかどうか)

その戦略、戦術に五十六はかなり深く関わったようですが

彼の本音は早期講和であり、

決定的な一撃を加えて

早く戦争を終えたかったにも関わらず、

奇襲成功があだになり

戦争は長引き、

五十六自身も戦死してしまう。

 

なぜ駐留兵を慰安激励するだけのために

連合艦隊司令長官

敵機の襲来が予測され、

暗号が解読されている可能性もあり、

周囲の中止勧告があったにも関わらず

敢えて視察に出掛けたのか?

 

先が見える五十六だからこそ

今後の成り行きを悲観し、

国家や海軍や自分自身の運命を悟り

ある意味では自ら死を選んだのかもしれない。

そう受け止めることもできるかもしれません。

 

本書が執筆されたのは1965年。

 

まだ敗戦から20年程度しか経っておらず

当時は生き残った関係者も少なくなく、

山本五十六と親しく接していたり

軍学校の同期や後輩、部下なども存命であり、

著者は100名以上の関係者に対して

綿密な取材を行い、

また丹念に資料を分析したであろうことが

よくわかるような深い内容です。

 

今では歴史の1ページになってますが、

敗戦後の動乱の中で書かれただけに

その熱さというか、

まだ冷静に歴史を振り返る

フェーズに来ていない感があって

その点も本書の魅力のひとつでもあるでしょう。

 

とにかく戦前の政界と軍部の関係性、

それに陸海軍の軋轢など

立場や主張が入り乱れ、混乱のなかで

戦争に突入していく詳細な記述は一読の価値ありです。

 

特に日独伊三国同盟の締結から

真珠湾攻撃に至る経緯は

結果がわかっている現代を生きる我々にも

これでいいのか?

これ以外にないのか?と

葛藤しながら感情移入しつつ読み込めます。

 

歴史に詳しくない方でも

このあたりは非常に興味深く思えるでしょう。

まさに目から鱗が落ちるような。

 

ただ1点だけ

もう少し深掘りして欲しかったのは

ミッドウェー海戦での大敗北です。

 

連戦連勝中の油断だったのか、

暗号が解読されていたからなのか、

山本五十六や戦略立案者のミスなのか、

この点にはもっと切り込んで欲しかったですね。

 

何となく負けちゃった感があり、

後々振り返るとここが分岐点になるわけですが、

なぜ?という疑問が残ったままです。

 

山本五十六はイチ早く、

これからは航空機の時代と読み、

実際に航空本部長時代には

技術革新に邁進していたにも関わらず、

空母ではなく戦艦を艦隊の旗艦にしていた事も謎です。

 

当時の時代の風潮では、

大和や武蔵など巨艦が強さの象徴であったのでしょうが、

五十六の本音は空母を中心に、

航空機での戦いを望んでいたでしょう。

 

日独伊三国同盟にしても

日米開戦にしても

五十六の思いとは逆の方向に動いたことが

今思えば重ね重ね残念です。

きっと巨艦至上主義でもあったのでしょうね。

 

もし五十六に圧倒的な権限があれば

この戦争は防げたのかもしれません。

まあ歴史に「たられば」は禁物ですが。

 

ただ戦争準備を粛々としながらも

早期に戦争を終わらせるような準備も行う

五十六の用意周到さはいい意味で日本人らしくない。

 

あの時代にもこういう考え方の人が存在していた事は

少し救われる部分でもありますが、

結局それを活かせなかったという事でもあり、

これは現代にも通じる

我が国社会の大きな欠点であると思います。

 

茶目っ気のある人物像がその根底にあるだけに

五十六の戦死の報は国民に失望感を与えたのでしょう。

 

もうこの時点からは敗戦の道をまっしぐら。

おそらく国民も大本営発表に疑問を感じ、

この戦争は負けるのではないか?と感じ始めたようです。

 

まあ本書にはあまり出てきませんが、

陸軍は徹底抗戦を求めており、

海軍ほどには世界を知らない事もあり、

さらに不幸の道を歩んでいくわけです。

 

止まらない時代の流れ。

恐ろしいものです。

 

五十六は生涯故郷の長岡を思い、

何度も長岡に帰省していますし、

家族や親せきだけでなく

長岡の人々、風土、文化を愛していたようです。

 

1人の人間としては

とても普通なところがあり、

チャーミングなところもあり、

本書を通して最も心に響いてきたのは

山本五十六の人格です。

 

この人の下で働いてみたいと思わせる

何かがあるんですよね。

 

それが冒頭の現代にも残る名言なのですが、

きっといい人だったんだろうなと感じさせます。

 

ただ時代の波が五十六とは合わなかったのかと。

1歩先を歩みつつ

ある種の諦めモードもあったのかもしれません。

 

彼の思想や生き方は

現代にも学びとなるところも多いです。

 

史書歴史小説、伝記という範疇を超えた

本書にしかないユニークさがある1冊です。

 

歴史好きの方にはおススメです。 

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

満点でも全然良いのですが、

ミッドウェー海戦のところを

もう少し突っ込んでくれたら…という点で

星1つ欠けました。

 

著者は、もともと海軍の中尉だったそうで、

陸軍嫌いであったようです。

 

本書の最後には、

執筆に至る経緯や

執筆中に起きたこと、

また出版後に遺族などから

訴訟を起こされた事などが書かれており、

ここも非常に興味深かったです。

 

また本書にも度々登場する

米内光政や井上成美に関する本も書いているようで

こちらもいずれ読んでみたいと思いました。

  

最後に本書の中で最も印象的だった箇所をご紹介します。

 

これも山本五十六の言葉として

かなり有名ではありますが…

 

それは是非やれと言われれば

初め半年や1年の間は随分暴れてご覧に入れる。 

然しながら、2年3年となれば全く確信は持てぬ。

三国条約が出来たのは致方ないが、

かくなりしは日米戦争を回避する様

極力御努力願ひたい。

 

当時の総理大臣である近衛文麿に対して

日米戦争の見込みを問われた五十六がこう述べたそうですが、

戦後、井上成美は、

「海軍は戦争をやれません。戦えば必ず負けます。」

山本はこう述べるべきだったと言ってます。

 

歴史に「たられば」はいかんのですが、

もし五十六が近衛にこう言っていたら

果たして戦争は回避できたのか?

この点は実に興味深いところです。

 

それでは、また…。 

 

 

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