おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
趣味は?と聞かれたときに
普通に「読書です」と言えるようになったのは
30代半ばくらいでしたでしょうか。
もともと小学生から大学卒業まで
ずっと野球をやっていた私ですから
私の脳は筋肉のようでした。
ただ子供の頃から本は好きでしたし、
極端に成績が悪いわけでもありませんでしたので
(極端に良いほうでもなかったですが 笑)
社会人になる頃から
体育会系を脱したいとか、
知的な自分になりたいという思いが
どんどん強くなってきたのです。
その頃は通勤時間が長かったこともあり、
電車のなかで本を読み漁りました。
次から次へと…。
時には行き帰りで1冊読み終えるなど
物凄い集中力で実に様々な分野の本を読みました。
こんなことを10年以上も続けていると
そりゃそれなりの知識は身に付きますね。
30代半ばくらいには
まあまあの自信を持てるようになったんです。
だいたいの話題にそれなりのことが言えるようになり、
趣味は読書ですと誇れるようになったのかもしれません。
そしてさらに20年近くが経ちました。
読書に本気で取り組むようになり
30年以上が経ちます。
この書評ブログを書くようになってからは
まだそれほど経っていませんけど、
読書だけは真面目に取り組んできたなあと
胸を張って言えるかもしれません。
今回ご紹介する書籍は、
【 医師としてできることできなかったこと
川の見える病院から 】 です。
本書をピックアップした理由
『 医師としてできることできなかったこと
川の見える病院から 』
細谷 亮太 聖路加国際病院 小児科部長
講談社+α文庫 を読みました。
本書は少し古いんです。
2003年に発行されています。
例の如くブックオフで物色していましたら
このタイトルが目に飛び込んできて
あ、これは買い!と思い即決しました。
医師として、
できること、できなかったこと、
医療本を何冊も読んできた私には
何となく内容が予想できます。
そしてもし思っている通りなら
絶対に私は好きな感じだろう…と。
まして著者は聖路加国際病院の小児科医。
そのなかでも専門は小児がん。
たぶん私は泣くな…と思いつつ
私が医師をサポートする仕事をし続けている
「原点」が思い起こされるだろうとも思いました。
こういう本を読むと
先生方のために…という思いが強くなるのですね。
かなり高い期待を持って
本書を読み始めたのでした。
目次
1 生きることを子どもたちが教えてくれた
2 子どもたちはいつも未来へ向かう
3 病気の子どもと共に生きる人びと
4 忘れられない子どもたち
5 泣き虫な医者
6 番外編・二百人の子を背負ってー四国歩き遍路の十日間
感想
著者は、細谷亮太医師。
名門病院である聖路加国際病院で長く勤務する
小児科医師で、専門は小児がん。
本書執筆当時は小児科部長という肩書でしたが、
現在は副院長を兼務しつつ
小児科の顧問という形になっておられるようです。
内容は…
案の定、期待通り。期待以上。
素直に読んで良かったと思いましたし、
心が現れるような思いでした。
もう少し正確に言うと
電車の中でホロリと涙がこぼれました。
細谷先生の自然体の文章が
とてもいいんです。
難病に侵されて
小さな命が失われていくプロセス。
そこに寄り添っている細谷医師。
子供たちの生きざま、そして死にざまから
私たち大人は学ぶことが多いはずです。
生きたいのに生きられない。
耐えられない痛みに耐えねばならない。
クレーマー社会の昨今では
この子供たちと比較して
何とつまらないことで大騒ぎをしていることか。
生きるって何だ?
家族って何だ?
人と関わるとはどういうことか?
医療とは?
医師とは?
病気とは?
実に様々なことを考えさせられます。
その一部始終に携わってきた
細谷先生にしかわからないことって
かなり多いと思うのですが、
それをひけらかすのではなく
自然体で、ありのままを文章にしており
その感覚が心地いいです。
例えば…
人生で、
ー あんなことをしなければ良かったな ー
ということはたくさんあります。
ー あのとき、ああして本当に良かったな ー
と思えることなんて、めったにありません。
(P.17~18)
ある意味では人生訓として
頭に叩き込むべき名言とも言えますが
こんなふうに平易な言葉で
サラッと語られてしまうと
思わず見逃してしまいそうですが、
いやいやこれは見逃してはいけない。
私は二度見するような感じで
立ち止まりました。
人の一生なんて
後悔ばかりなのかもしれませんね。
まして自分の子供ががんに侵されて
命を失うようなことがあったら
もうその先は生きていけないくらいの
大きな後悔をすることでしょう。
でもそうじゃない。
後悔でいい。
できることはすべてやったはず。
我が子を心に刻み付けて
後悔とともに生きていく。
そんな人生の辛さというか
生物としての本能というか、
生きることの大変さを私は感じました。
また…
話しながら、こちらもつらくなってきます。
私は、悲しいときに泣けなくなったら
医者をやめるべきだと思っています。
(P.43)
人の死にわりと近い職業である医師だって
何度味わったって看取りは辛いものだと思うんです。
事実、知人医師の何名かから
精神的なショックや辛い話しを伺っています。
心を凍らせていかねば
人の死に携わり続けられないのかもと思ってましたが、
むしろ悲しい時には泣くという細谷医師の言葉には
人の生死に近い医師だからこそ、
まして子供の死という心が痛むシーンに挑み続けるからこそ
心をコントロールする達観があるように感じました。
そして…
しかし大すじではだれもが、
医師がすべてを選択すべきではなく、
患者さんの意思が
より尊重されるべきであると考えていました。
毎日がドラマの臨床の現場では、
内科、外科、小児科の区別なく、
ひとりの医師が対応するには
むずかしすぎるケースがどんどん増えています。
そのための倫理委員会が
わが国においても絶対必要な時代になってきたのです。
(P.192)
医療の形も変わり続けています。
ひと昔前と比較すれば
患者の権利意識が強くなり、
それは良い面も悪い面も出ていると思うのですが
このコロナ渦でさらに医療の形は
大きく変わりつつあるように感じます。
医療の根幹には
時代の要請や国民の望むもの、
それを支える医療制度など
実に多くのことが関わってくるわけですが、
もっともっと言えば、
私たちがどう生きたいか?
どう死にたいか?
ここに行きつくんだろうなと思います。
つまり私たちは自分の人生を大切に
もっと深く深く熟慮しなければならないと思いますし、
その先にしか適切な医療は見い出せないのかもしれないと
強く思います。
おかしな権利意識を振りかざすのではなく、
医療従事者とともに最適な形を作りあげる。
医師と患者がタッグを組んで
国や自治体、為政者にプレッシャーを掛ける。
そうしないと
医療現場に責任を転嫁して
国民を騙すような構図ができあがってしまいます。
これでは本末転倒です。
冒頭申し上げましたが、
私が医師をサポートしたいと思う原点。
やはり本書にはありました。
医療現場の踏ん張りこそが
私たちの支えです。
しかし今までのように
心身を削って、家庭を犠牲にして、
という医療人の負担を前提にするのではなく、
持続可能な働き方を
医療者たちが手に入れられるように
今後、患者側である我々が支えなければならない。
そういう社会であるべきと
私は強く願っています。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
もともと高かった期待を
まったく裏切ることなく、
非常に満足できた1冊でした。
そしてもっと驚いたのは
Amazonの評価です。
何とオール5なんです。
どんな本だって、商品だって、
オール5なんてなかなかないですよね。
特に書評はなぜ?と思うような
低評価を付ける人が少なくないものです。
しかし本書はそれほど多くはないですけど
8人が全員オール5なんてスゴくないですか?
私も5なので、
少なくとも本書を読んだ9名が最高評価です。
たぶんですね、
本書に興味を示す方というのは
やけに否定的な視点であったり
マウント取るのが好きだったり、
批判すれば満足みたいな人ではないのでしょう。
人生をしみじみと考えて、
心穏やかに生きている人なのかもしれません。
いや逆も然りか。
本書を読むと心が洗われて
高評価を付けてしまうとも言えます。
本書は素直におススメできます。
少し古いですけどね。
医療従事者の皆さんはもちろんのこと、
家族が難病であったり、
受け入れがたい死に直面してしまったり、
こういう方には本書をおススメいたします。
きっとどう向き合えばよいのかのヒントが
本書にはあると思います。
それでは、また…。
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