おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
私の勝手な印象ですけど、
医師の働き方改革は遅々として進まず
またその内容も発表されているものを見ると
ピントがズレているように感じて
仕方がありません。
これはビジネスパーソンも一緒ですけど
医師と比較すれば
ま~だ正常化のスピードは早いように感じます。
やはり医療はステークホルダーが複雑ですし、
人の命が掛かっているだけに
例えば手術の最中に
定時なので帰りますとはいきませんし、
主治医になっている患者が急変すれば
日曜日でも呼び出されることもあるのですね。
とても難しい問題だけに
もっとシンプルに根幹だけ決めて
あとは各現場に権限と責任を持たせたほうが
いいんじゃないかと思うのです。
転職支援を20年も続けている私としては
この「働く」ということに関しては
貪欲に学ばねばなりません。
今回ご紹介する書籍は、
【 2022年、「働き方」はこうなる 】 です。
本書をピックアップした理由
『 2022年、「働き方」はこうなる 』
磯山 友幸 PHPビジネス新書 を読みました。
2022年か、ふむ、来年か。
来年の働き方…。
そりゃ興味ありますよね。
ただ本書が出版されたのは
2017年9月なんです。
5年後の予測をした本書を
出版されて4年後にチェックする。
これは面白そうだなと思い、
まさに予言通り!というところもあるでしょうし、
残念ながら予想通りには行かなかったねというところもあるでしょう。
むしろそこに私は興味を持ったんです。
当たるにせよ外れるにせよ、
そこには2017年時点で予想される理由があったでしょうし
2018年、2019年、2020年と月日が経つなかで
何らかの変化が起こった可能性も高いのですね。
人々の働き方に関心が高い私としては
その経緯と来年に向けての動き、
まあコロナで相当に変わらざるを得ないでしょうけど
良い勉強になるんじゃないかと思い
本書を読み始めたのでした。
目次
第1章 日本の職場が激変する
第2章 日本人の働き方の「何が問題」なのか
第3章 近未来の「働き方」
第4章 世界と戦える生産性を創造せよ
第5章 「人しかできない仕事」への人材シフト
第6章 どうする?外国人受け入れ
感想
その後に独立された「記者」なのだそうです。
さすがに経済ジャーナリストらしく、
政・官・財ともに綿密な取材をして
丁寧な情報収集をされたのであろうことが
よくわかります。
現代日本社会の「働く」にフォーカスし
過去・現在・未来と時間軸をしっかり追い掛けて、
読者に対してわかりづらい労働行政と
現場で働く多くの方との認識のズレを埋めながら
これからの働き方を模索しており、
個々それぞれが「働く」を検討するには
相応しい良書であると思いました。
特に目新しい議論はなかったですが、
記者視点ならではのバランス感覚の良さは
全般的に感じることができました。
誰かに忖度するわけでもなく、
当時の政・官・財のそれぞれの事情を冷静に伝え
現在、また未来を予測する。
普通に読んでいて面白かったですし、
特に政権と行政のつばぜり合いは興味深かったです。
本書を読めば
これからの働き方がわかる!なんてものではありませんが
自分自身がどう働けば良いのか?を考える
ヒントはあちこちに散りばめられていますよ。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介します。
十年後の仕事は、
「人間がやるべき仕事」
「人間しかできない仕事」が中心になる。
機械と競合する仕事も残っているが、
機械と「コスト」競争しなければならない世界は過酷だ。
いうならばロボット導入に伴うコスト(減価償却費)と、
それを動かすための電気代の合計が、
仕事をロボットにやらせるか、
人間を雇うかの「分岐点」になる。
一方で、ロボットには代替できない
人間が携わることによって付加価値が増す、
そんな仕事、働き方が求められるようになる。
(P.22)
「いつでもどこでも」働ける仕組みや、
労働時間ではなく成果で評価される仕組みに
シンパシーを覚える働き手が急速に増えている。
仕事の中身自体が
「決まった時間内に、
決まった分量の作業をこなす」ものが激減し、
よりクリエイティブな作業が増えているのだ。
(P.24)
一番目
二番目
賃金引き上げと労働生産性の向上
三番目
時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
四番目
雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、
格差を固定化させない教育の問題
五番目
テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
六番目
働き方に中立的な社会保障制度・税制など
女性・若者が活躍しやすい環境整備
七番目
高齢者の就業促進
八番目
病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
九番目
外国人材の受入れの問題
(P.66~67)
バブル崩壊後は「価格破壊」が当たり前になり、
良いサービスも「無料」が当たり前になっていった。
売り上げが落ちるなかで雇用を守ろうと思えば、
無料サービスを増やしていかなければならない。
それが最後は「サービス残業」にまで発展、
働き手にしわ寄せが行くこととなった。
ようやくデフレから脱却しつつある中で、
しかも人手不足が深刻化している今こそ、
この「サービスはタダ」という悪習を断つ好機だろう。
良いサービスにはきちんと対価を払う。
逆にいえば、良いサービスの料金は高くても仕方がない、
という認識が一般化して、
その収入増が働き手に還元されるようになることが、
生産性向上に結びついていくだろう。
(P.117)
「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」
そう憲法二十七条には書かれている。
(中略)
おおむね理解できるのだが、
ひとつだけどうしても気になった点がある。
(中略)
「勤労の権利」はわかるとして
「義務を負う」というのはどういう意味か。
働かないで遊んで暮らすのは憲法違反ということなのだろうか。
(P.134~135)
人々がより自律的に働くようになれば、
企業と働く人が対等な立場で
「契約」を結ぶことが重要になり、
それを可能にするための仕組みが
不可欠になるとしているのだ。
具体的には、企業が労働条件だけでなく、
働き方に関する「基本姿勢」を開示する
仕組みが必要になるほか、
人々がキャリアアップしたり、
キャリアチェンジするための職業教育や
財政支援など「セーフティネット」が重要になるとしたのだ。
(P.140)
従来から労政審は、
使用者側の代表である経団連と、
労働者側の代表である連合の意見を聞き、
公益代表の学者が意見をまとめる
「公労使」三者の利益調整の場だった。
いわば、厚労省の労働官僚は
労使双方の主張は水面下ですり合わせ、
妥協点を探ることが仕事。
逆に労政審で決まったことは、
与党議員はおろか、
大臣ですら口をはさめないという
”労使談合”の牙城となっていた。
(P.155)
人は人らしく生きるために働くのではないでしょうか。
ところが今の社会では、
会社という『法人』が
生身の人間に様々な命令を出してくるわけです。
「何時から何時まで働け」とか、
「転勤せよ」とか、
「副業はするな」とか。
なぜ『法人』がそんな権限を持つのか、
注目して考えるべきだと思っています。
(P.166)
「働き方改革というのは、
生き方を変えることだと思っているんです」
(中略)
「日本人は、自分で決めることがものすごく少ない。
教育も何もかも、こうしなさいといわれる。
それで回っていた時は良かったのですが、
そういう時代ではなくなった」。
(P.171)
今の会社で五十代は問題だといわれ続けながら、
それでも会社にしがみついていくのは幸せでしょうか。
(P.181)
五十歳でリセットできるかどうか。
問題は自分のやりたいことをやるという
気概が持てるかどうかだ。
つまり、会社を辞めてやりたいことがあるかどうか、である。
(P.183)
ではなぜ、社員が不正を働くのか。
自分自身の利益を追求して、
というケースは日本企業の場合、意外に少ない。
ほとんどが「会社のため」に不正を行い、
あるいは役員に言われたことを
「会社のためだ」と信じて
素直に実行しているのが圧倒的に多い。
海外企業の不正の多くは
「個人の利益」を図るために行われるケースが圧倒的に多い。
(P.200)
「他者との協調や、他者の理解、説得、
ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、
人工知能等での代替は難しい傾向」があると指摘している。
(P.221)
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
結局、日本の労働観って
高度経済を果たした
昭和のモーレツ社員の頃の常識を引きずっていて
平成、令和と時代が進む中で
益々通用しなくなっているのを
変えるに変えられず
ここまで来てしまった…という感じなんですよね。
私はあまり評価していない安倍政権が
そこに切り込んでいたというのは意外でしたが、
その点は素直に評価せざるを得ません。
どう考えても世界に後れを取っている労働行政に対して
強烈なプレッシャーを掛け続けていたわけですからね。
また連合をはじめとした労働組合、
財界を中心とした大企業、
ハッキリ言えばこの両者は自組織を守るために
長年詭弁を弄し続けてきたわけで
その罪はあまりにも大きいのではないかと思います。
我が国の「働く」は
おそらく二極化がさらに進む事でしょう。
自分が主導権を握れる人。
社畜。
明確なキャリアプランを持たねば
組織に翻弄される
苦しい働き方を続けるしかなくなってしまうかもしれません。
少しずつ変わってきているとは思いますけど
まだまだ変化は充分ではなく、課題も多いです。
1人でも多くの方が
自分らしい働き方を手に入れて
充実した毎日を過ごせることを祈ります。
本書はその考えるきっかけになるかもしれません。
それでは、また…。
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