ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

明治十年 丁丑公論・瘦我慢の説 

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

あ!この本読みたい…と思っても

古い本ですとなかなか出会えないことってありますよね。

 

知人からおススメされたり、

好きな作家が激賞していたりすると

つい読みたくなってしまう私としては

そんな本がかなりあるんです。

 

いつもスマホのメモアプリに登録しておき、

ブックオフに行ったりする時や

Amazon楽天で書籍を購入する際には

確認して検索かけるのですが

見つからない本はなかなか見つかりません。

 

今回はそんな中で

ようやく見つけた本をご紹介いたします。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 明治十年 丁丑公論・瘦我慢の説 】 です。

 

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本書をピックアップした理由

『 明治十年 丁丑公論・瘦我慢の説 』

福沢 諭吉 講談社学術文庫 を読みました。

 

実は本書の「瘦我慢の説」が読みたくて

何度となく探していたのですが

なかなか見つけられずにいて、

ずっとメモアプリに残っていたのですが

ようやく購入することができました。

 

喜び勇んで読み始めてみたのですが

私の読みたかった「瘦我慢の説」は

本書のなかでも大したボリュームではないんですね。

 

若干ガッカリしましたけど

なにせ福沢諭吉さんの書いたものですから

他のところもしっかり読んでおくか…ということで

読み始めました。

 

目次

・明治十年丁丑公論

・瘠我慢の説

・旧藩情

 

感想

う~ん、なかなか難しい本です。

とても薄くて150ページ弱なんですよ。

 

まずは現代語ではないので

それが読みにくくて…。

 

以前に「福翁自伝」を読んだときに

現代語訳を読んだのですが、

わかりやすくてよいものの

時代の熱さというか、

やはり当時の息吹のようなものが感じられなくて

それが残念だったので

今回は現代語じゃなくていいと思ったのですが

(そもそも現代語訳はないのか?)

かなり苦戦しましたね…。

 

ちなみに以前読んだ福翁自伝は下記です。

 

ka162701.hatenablog.com

 

もうひとつ「学問のすすめ」に関しては

「超」入門を読んだこともありました。

 

ka162701.hatenablog.com

 

さらに余談ですが、

学問のすすめは漫画も読みました(笑)。

これはこれで良かったです。

 

ka162701.hatenablog.com

 

さてさて本書ですが、

まず最初は「丁丑公論」です。

 

こちらは西南戦争後に

福沢諭吉が密かに書いたものの

ずっと隠されていたレポートのようなもののようです。

 

とにかく熱い。

怒りとか、不条理とか、

当時の福沢諭吉の感情が手に取るように伝わってきます。

 

西郷隆盛好きの私としては

まるで西郷を擁護してくれているようで

かなり嬉しくなりつつも

批判するところは遠慮なくガッツリ批判しており

もしかしたら当時の人々は西南戦争に対して

こんな感じに受け止めていたのかも?と思うと

これはこれで非常に印象に残る内容でした。

 

続いて本命の「瘦我慢の説」です。

 

正直、どんな内容なのかは全く知らずに

何かの本でこの一部を紹介しており、

それが心に残って読みたいと思っていたのですが、

勝海舟榎本武揚に対する批判の書だったんですね。

 

それくらい知っておけという話しですが、

むしろ知らないだけに貪るように読みました。

 

個人的には勝海舟にしても榎本武揚にしても

そう悪いイメージはないどころか、

江戸無血開城の立役者とか、

函館戦争に敗れるまで

幕府を守ろうとした義理堅い人と思ってましたし、

幕臣のエリート中とエリートで

江戸幕府を守る側だったにも関わらず

その優秀さが明治政府にも買われて

大抜擢された優れものと思ってたのですが

福沢諭吉から見たら全く違い、

不届き者、不忠者という烙印を押していたのですね。

 

おそらく私が何かの本で読んだのは、

勝と榎本を批判するなかで

その論理構成で使われていた部分のようです。

 

もう鋭利な刃物じゃないですけど

鋭い切れ味でスッパスッパと斬り崩していきます。

 

読んでいてある種の清々しさを感じましたが、

とはいえ福沢の主張に全面的に賛成とはならず

そこまで言わなくてもいいのに…とか

ちょっと決めつけが強すぎるのでは?と

疑問に思うところも多かったですね。

 

最後の「旧藩情」についても同様で

江戸時代の武家社会に対する分析と批判、

一種のアンチテーゼのような感じでしょうか。

 

福沢の出身地である中津藩を例に取り、

格差社会をぶった斬りです。

 

少なくとも私は福沢諭吉の本性というか

熱い言葉には好感を持ちましたし、

時代の本質が見え隠れするようで

かなり心を揺さぶられました。

 

ただ「丁丑公論」も「瘦我慢の説」も

書いてすぐに発刊はせずに

数十年の時を経て発行されたのが興味深いです。

 

さすがの福沢も「今」出すのは憚られたのでしょうけど

そういった戦略も当時の「忖度」であり、

それこそ命を懸けての執筆でもあったでしょうから

明治の世の不安定な世情が垣間見えて面白かったです。

 

ではここで恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。

 

西郷は天下の人物なり。

日本狭しといえども、

国法厳なりといえども、

豈一人を容るるに余地なからんや。

日本は一日の日本に非ず、

国法は万代の国法に非ず、

他日この人物を用るの時あるべきなり。

これまた惜むべし。

(P.46)

 

「丁丑公論」をひと言で表すなら

この文章で充分でしょう。

 

福沢の西郷に対する評価、思いが

ここにグッと凝縮されています。

 

私もそう思いますし、

もし西郷が西南戦争で死んでいなければ

この国の明治、大正、昭和は

また違った形になったのではないかと

非常に残念な思いを持ちます。

 

立国は私なり。

公に非ざるなり。

地球面の人類、

その数億のみならず、

山海天然の境界に隔てられて、

各処に群を成し各処に相分かるるは

止むを得ずといえども、

各処におのおのの衣食の富源あれば、

これによりて生活を遂ぐべし。

また或は各地の固有に有余不足あらんには

互にこれを交易するも可なり。

すなわち天与の恩恵にして、

耕して食い、製造して用い、交易して便利を達す。

人生の所望この外にあるべからず。

なんぞ必ずしも区々たる人為の国を分て

人為の境界を定むることを須いんや。

いわんやその国を分て隣国と境界を争うにおいてをや。

いわんや隣の不幸を顧みずして自から利せんとするにおいてをや。

いわんやその国に一個の首領を立て、

これを君として仰ぎこれを主として事え、

その君主のために

衆人の生命財産を空うするがごときにおいてをや。

いわんや一国中になお幾多の小区域を分ち、

毎区の人民おのおの一個の長者を戴きて

これに服従するのみか、

つねに隣区と競争して利害を殊にするにおいてをや。

(P.50~51)

 

この「立国は私なり」から始まる

「瘦我慢の説」ですが、

私はここが読みたかったのです。

 

ここから始まる2~3ページは

何度も何度も読み返しました。

 

さて、この立国立政府の公道を行わんとするに当り、

平時に在ては差したる艱難もなしといえども、

時勢の変遷に従て国の盛衰なきを得ず。

その衰勢に及んでは

とても自家の地歩を維持するに足らず。

廃滅の数すでに明なりといえども、

なお万一の僥倖を期して屈することを為さず、

実際に力尽きて然る後に斃るるは

これまた人情の然らしむるところにして、

その趣を喩えていえば、

父母の大病に回復の望なしとは知りながらも、

実際の臨終に至るまで医薬の手当を怠らざるがごとし。

これも哲学流にいえば、

等しく死する病人なれば、

望なき回復を謀るがため

いたずらに病苦を長くするよりも、

モルヒネなど与えて臨終を安楽にすることこそ

智なるがごとくなれども、

子と為りて考うれば、

億万中の一を僥倖しても、

故らに父母の死を促がすがごときは、

情において忍びざるところなり。

(P.52)

 

ここなども前の文章の続きですが、

私は実に感じ入りました。

 

福沢は「理」だけでなく、

「情」も持ち合わせつつ

その上で日本国民を

新たな世に導こうとしていたのではないかと

現在でも通じる啓蒙活動のように思いました。

 

故に人間社会の事物今日の風にてあらん限りは、

外面の体裁に文野の変遷こそあるべけれ、

百千年の後に至るまでも

一片の瘦我慢は立国の大本としてこれを重んじ、

いよいよますますこれを培養して

その原素の発達を助くること緊要なるべし。

(P.55)

 

これが福沢の国家観になるでしょうか?

瘦我慢が悪いとは思いませんし、

必要な時には必要なのでしょうが

前提条件のようにされるのはちょっと怖いですね…。

 

今回は少ないですけど以上です。

 

評価

おススメ度は ★★★☆☆ といたします。

 

私はそれなりに勉強になりましたけど

よほど好きな方、興味をお持ちの方でないと

読む気にはなれないでしょうし、

読み始めても妥協してしまうかもしれません。

 

歴史好き、特に幕末好きな方か

福沢諭吉好きの方には

とても興味深い内容ですが

おそらくそういうマニアの方は

すでにお読みになっているのでしょうね。

 

まあ今回は私の個人的趣味として

大変に満足しました。

 

それでは、また…。

 

 

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