ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

橋本治と内田樹

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

「知性」が人生を決める。

そういう時代になってきているように感じます。


いや人類の歴史上、

常にそうだったとも言えるんですけど

現代社会って確実に変革期と感じますし、

過渡期とも言えるのではないでしょうか。

 

いやこれも常に変革期、過渡期とも言えますから

何を今さらという話しではあるんですけど

それでもやっぱり「知性」は持っておいたほうがいいですよね。

 

では知性を身に付けるためにどうするか?

私は自分と意見を異にする人、

自分とは違う発想をする人、

こういう人から学ぶことが

非常に重要であると考えています。

 

自分の頭の中だけで判断していては

とても知性的とは言えないですからね。

 

視野を広げて

無知の知を発揮して、

幅広い勉強が必要ですね。

 

今回ご紹介する書籍は、

橋本治内田樹 です。

 

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本書をピックアップした理由

橋本治内田樹

橋本 治 内田 樹 ちくま文庫 を読みました。

 

先日アップした内田樹さんの著書に

橋本治さんのことが書かれていました。

コロナ後の世界 - ある読書好き医療コンサルタントの書評ブログ!

 

残念ながら

そして恥ずかしながら

私は今まで橋本治さんの著書を読んだことがありません。

 

敬愛する内田樹さんが

とてもリスペクトしているのを感じて

橋本治さんに少し興味が出てきました。

 

そこで「あ!」と思い出したんです。

 

そう言えば確か2人の対談本があったはずだ。

私の積ん読用の書棚を探ってみましたらありました。

 

おお、これは何かの縁かな?と感じて

まさに今読めってことだよなあと思いながら

楽しみに読み始めたのでした。

 

目次

#1 くだらないことに命懸けるところあるんですよね。

#2 うっかりするとね、

  「美しい」の上に「とても幸福だ」があるんですよ。

   それはあえてやってる。

#3 僕らの小学校のとき、

   教育空間の一部は江戸時代と地続きだったんですよ。

#4 メルロ・ポンティは知らないけど、

   カルロ・ポンティなら知ってる。

#5 「本を読むときに眼鏡をかけると、

    なんかインテリになったみたいな気がして」

   「先生、それ中学生ですよ(笑)」

#6 「あっ、君の中にはずらしい“バカ”があるね」と言って、

   ピンとくる人ってどれだけいる?

#7 人間の話は全部講談だから、

   講談が扱ってないことに関して、

   日本人は何も知らないんですよ。

#8 光源氏がセクハラ親父になって孤立していくあたりが、

   すごく哀しくてね…。

#9 竹垣の向こうに人が住んでるから、

   秋になると秋刀魚をくれるんですよ。

#10 ちゃんとした紹介が、

   最大の批評だと思うんです。

#11 アメリカの不幸は土地の神様がいないこと。

   ジャパニーズ・ホラーで「祟りなす神」まで輸入している。

 

感想

対談本って好き嫌いがあるように感じます。

ちなみに私はかなり好きなのですが

うちの妻はあまり好きではないようです。

 

でも本作品は私が敬愛する内田樹さんと

内田さんが敬愛していそうな橋本治さんの対談です。

 

かなりワクワクしながら読んだのですが

もうひと言、「当たり!」です。

 

メチャクチャ勉強になりましたし、

とても面白かったです。

 

真面目な話しからユーモラスな話しまで

いろんな感情を持ちながら読めました。

 

案の定、橋本治さんの著書も読まねばアカン!と

素直にそう思いました。

とても魅力的な方です。

 

まあまあ私があーだこーだ言うよりも

恒例の私がグッと来た箇所をご紹介しながら

少しだけ解説します。

 

僕たちのいる世界をきびしく批評する人はたくさんいる。

「社会はこんなふうにあるべきではない」と言う人はたくさんいる。

けれども、僕たちの日々が

「こんなふうにあることは、

 もしかすると奇跡的なことかもしれない」というかたちで

「祝福」を贈ってくれる書き手はほんとうに少ない。

(P.10~11)

 

物事をネガティブに受け止めて

他者に攻撃的になっている人が多いだけに

この「祝福」というワードには惹かれました。

 

自分が生まれたことに

意味を与えるのは自分自身の思考なのでしょうね。

 

いまどきの少年少女に何をまず言いたいですか?と訊かれたら

やっぱり第一には

「幸せに生きてほしい」ということが来るし、

その次には

「そのためにも、

『学ぶ』という構えを身につけてほしい」ということが来る。

(中略)

どうせ子ども時代には

嫌でも学校に通わなくちゃいけないわけだから

その一日一日を

「けっ、やってらんねーぜ」というふうに

毒づきながら生きるよりは、

できるだけ愉快に生きて、

そこから引き出せる限りの「よいこと」を

探し当てた方がいいんじゃないかな。

(P.12)

 

自分の娘に伝えます。

「よいこと」は必ずあるわけで、

それに気づけないと自分が損しますね。

 

それはやっぱし、

「”そうだよね”と言ってくれる相手がいなくちゃヤだ」って思う人間に、

「そうだよね」って言ってやるっていう、

そういう感覚になっちゃうんです。

(P.41)

 

承認欲求が強いのに

承認されずに悶々としている人って多いですね。

自分も「そうだよね」って言ってあげられる

人間になりたいと思いました。

 

持っていないってことを自覚してしまうと、

すごく苦しいんですよ。

「でもその苦しさを、抱えていない限り何もないじゃない?」

みたいなところがあってね、

それがあるから、

最後は笑いにしちゃってもいいかなっていうのがあったんですけどね。

(P.48)

 

苦しさを笑いに変えられる人って

大きな存在価値を手にすると思います。

そのプロセスこそが

大人への成長と言えるのかもしれません。

 

変ですよね、

自分が生きていない時代や

見たこともない場所に「懐かしさ」を感じるのって。

でも、人間の想像力って、

やりようでいくらでも拡大できるような気がしてるんですよ。

(P.72)

 

これ、すごくわかります。

歴史好きの私としては

戦国時代や江戸時代、明治や昭和初期など

なぜか懐かしさを感じます。

 

悪しき伝統を引きずらずに

歴史に自分をアジャストすると

発想が豊かになるような気がします。

 

大きな設計図は、

変なところで小細工すると

大きくならないんですよ。

(P.79)

 

日本の政治家や官僚に聞かせてあげたい。

小細工ばかりで効果なし…。

 

なんか、勉強をすれば感覚って身につくって、

うっかり錯覚してるじゃないですか。

絶対嘘ですよね。

感覚って勉強する前に身についているもんですよ。

身についているんだけど

その感覚が不安だから、

感覚に関する本を読んで、

「ああ、やっぱりそれでよかったんだ」っていうふうに、

後付けするようなものでしかないんですよね。

今、「こうすれば感覚が、ああすれば感覚が」って言ってるけど、

そんなのは感覚でも何でもなくて、

一時の流行り廃りで消えてしまう。

(P.92)

 

こんなこと考えたことなかったですが、

感覚は身についているというのは確かにそうかもと思いました。

私たちはもっと本質的な感覚を意識せねばなりません。

 

「嫌い」があるから、

「好き」が際立つんですよね。

(P.138)

 

あはは、その通り。シンプル。

 

僕ね、”善”ていうのはすごく難しい、

定義しにくい概念だと思うんですけど、

要するによくわかんないことに対して、

とりあえず”YES”っていうふうに言えるってことが、

たぶんその”善”ということの、

起源的な形態だと思うんですよ。

「俺は何が善か悪かわかっている」っていう人は、

たぶん善はなしえない。

だって「俺は何が善か悪かわかっている」と言いきってしまったら、

それから後は自分と意見の違うものに関して

”NO”っていう反応をせざるを得ないんだから。

(P.164)

 

なるほどなあ。

「善」は生き方や考え方、

その人の性格や本能なのかもしれませんねえ。

 

若いときって、時代と違和感がある。

(P.173)

 

それが若さ。

時代に迎合してしまっては老人と同じ。

いいんじゃないですかね。

その違和感こそが新たな時代を切り拓くかも。

 

自分が知っていることを抜いて、

「知っていることを知らないふり」して

ものを考えるのって、

めちゃくちゃ難しいんですから。

(P.231)

 

このスキルを身に付けたら

人間関係は劇的に良くなるような気がしますし、

社会の中で自分の望む立ち位置を

手に入れられるかもしれませんね。

 

若いときには、

自分がそんなにないから、

簡単に消せるんです。

(P.233)

 

逆に言えば

年を取るごとに自分が出てくる。

60代男性のクレーマーが多いのは

これが要因なのでしょうか。

 

アインシュタインが後ろを向いて

ベロを出している写真があるじゃないですか。

あれを見て

「あっ、こういう人が偉いんだから、

 俺生きてていいんだ」と思いました。

(P.239)

 

自分が死にたいから他人を巻き込む。

そういう人にはこういうメンタルが必要です。

だいたい死ねてないし…。

 

偉い人は意地を張ってでも偉くなくちゃ駄目。

偉いことをやっていなくてはいけない。

(P.269)

 

この心意気は大事です。

経営者は特にそうだと思います。

そういう踏ん張りができないと

リーダーとして相応しくありません。

 

祖父は何もしないで軍国主義をやっていて、

両親は民主主義でアッパラパーになっていて、

孫の代になると権利で主張して何も出来なくても構わない。

嫌になるね。

(P.301)

 

どこかでもこのサイクルを断ち切らないと…。

社会の中では個人的な我儘なんて通用しません。

 

何かを作ると、

ちゃんと壊れるんですよ。

最大の破壊は建設なりと思っていますから。

(P.316)

 

う~ん、すごい。

昨今では自分を壊してしまう人が増えていますが

まずは作るほうを優先したほうが良さそうです。

壊れる必要がなくなるでしょうし、

壊すとしても良い壊し方になる気がします。

 

人と人との間に微妙な距離を置かない限り、

人との関係は深まらない。

(P.319)

 

これもよくわかります。

人間関係って良くしようと思うと

意外と良くならなかったりするんですよね。

近づこうとすると離れていくみたいな感じです。

 

むしろ適度な距離を置いたほうが

結果的によい人間関係が築けると思います。

 

たぶん死ぬときって、

ドア開けて隣の部屋に行くような感じじゃないかな。

(P.349)

 

こ・この感覚…すごくないですか?

う~ん、私もこんな感じの死生観を持ちたい。

そのためには今世を充実させることなのでしょうね。

 

理論がなくなっちゃった時代は

人が生きやすくなるけれども、

生きやすくなった人たちが

もういっぺん理論を再構築しないかぎり、

集団をまとめられないんですよね。

(P.361)

 

これはですね、

正直理解しきれてないんです。

ただとても大事なことであるような直感が働きました。

もう少し自分の中で深掘りします。

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。

 

このお2人の掛け合いは面白すぎます。

内田さんは対談に慣れているようですが、

橋本さんの考えは内田さんの理解の範疇を超えていて

おそらく質問に対しての答えは

かなり肩透かしのようなケースが多かったはずです。

 

しかしそこは内田さんもさすがの人であり、

期待していた答えとは違っても

瞬時に切り替えて想定外の対応もスムーズに行っています。

 

ボケ、突っ込みの関係があまり成り立っておらず(笑)

橋本さんの脳裏にあるものは

一般人には理解不能のところも多いのに

内田さんも理解できていないのに

それを上手に巻き込みながら話しを展開していて

知の巨人同士の話しってのは

こんな感じなのかな…と思いました。

 

でも別に難解な議論をしているのではなく、

とてもわかりやすい話しですので

これからの時代をどう生きるか?など

未来に悩んでいる方には

本書のどこかのフレーズが

相当の道標になるんじゃないかと思います。

絶賛、おススメいたします。

 

それでは、また…。

 

 

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