おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
現代社会には多くの問題がありますよね。
我が国はもちろんのこと、
世界的に見たらあまりにも多くの課題があります。
人類はまだまだ解決すべき問題があるわけですが、
まあ全てを解決しようと思っても
そう簡単ではないでしょうね。
こればかりは粘り強く
少しでも、1つでも、
現代を生きる我々が解決すべく努力しなきゃなりませんよね。
今回ご紹介する書籍は、
【 人口減少社会の未来学 】 です。
本書をピックアップした理由
『 人口減少社会の未来学 』
内田 樹 編 文芸春秋 を読みました。
現代日本が抱える最も大きな問題。
これは少子高齢化であると
個人的には考えています。
それなのに意外と軽視されていますよね。
それはなぜか?
簡単に解決できないからではないでしょうか?
政府や各自治体も手は打っています。
打っていますけど、
それが効果的かと問われれば
残念ながらそうは言えません。
とは言え私自身も大したことを知っているわけでなく、
本書を見つけた時は
あ!これだ、これを読まねば…と思いました。
敬愛する内田樹さんが編者になっていますし、
これからの10年、50年、100年を考えるためにも
必読の書のように感じて
気合いを入れて読み始めたのでした。
目次
・序論 文明史的スケールの問題を前にした未来予測
(内田樹)
(池田清彦)
・頭脳資本主義の到来
ーAI時代における少子化よりも深刻な問題
(井上智洋)
・日本の“人口減少”の実相と、
その先の希望ーシンプルな統計数字により、
「空気」の支配を脱する
(藻谷浩介)
・人口減少がもたらすモラル大転換の時代
(平川克美)
・縮小社会は楽しくなんかない
(ブレイディみかこ)
・武士よさらば
ーあったかくてぐちゃぐちゃと、街をイジル
(隈研吾)
ー「文化による社会包摂」のすすめ
(平田オリザ)
・都市と地方をかきまぜ、
「関係人口」を創出する
(高橋博之)
・少子化をめぐる世論の背景にある「経営者目線」
(小田嶋隆)
・「斜陽の日本」の賢い安全保障のビジョン
(姜尚中)
感想
う~ん、大当たり!
読んで良かった。
いやもっと早く読まねばならなかった。
でも遅かったとしても読んで良かった。
期待通りどころか、
期待以上でした。
少子高齢化の本質というか、
人口減少社会をどう考えればいいか?が
本書を読めばよくわかります。
生物学的に捉えたり、
資本主義、統計学、モラル、
歴史、社会学、行政、安全保障など
多角的に取り上げてくれており、
これが思考のためには実に有効です。
大した知識がなかった私でも
本書を読めばそれなりの勉強ができた感があります。
とても参考になりました。
それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。
国立社会保障・人口問題研究所の報告によれば、
日本の21世紀末の総人口は
中位推計で6000万人と推計されています。
これから80年間で人口がおよそ7000万人近く減る。
これは政府や自治体が行っている婚活や
育児支援のようなレベルの政策で対応できる
スケールの変化ではありません。
とりあえず人口減少による市場の縮減は
現在のビジネスモデルの多くについて
根本的な変化ないしは市場からの退場を要求することになるでしょう。
それは国民生活の激変をもたらすはずですけれども、
人口減によって何が起きるかについての、
科学的予測を踏まえた「国のかたち」についての
国民的な議論はまだ始まっておりません。
(P.12~13)
こうして数値にすると
ちょっと衝撃的ではないでしょうか。
少子化とか、高齢化とか、
もうそれどころではない感じですよね。
来たるべき時代にどう備えるか。
国家としても、個人としても、考えなきゃいけませんね。
「これまで起きなかったこと」は
これからも起きない蓋然性が高いけれど、
それはあくまでも蓋然性に過ぎない。
蓋然性の見積もりに主観的願望を関与させてはならない。
これはおそらくはアングロ=サクソン的知性にとっての
「常識」なのです。
でも、これは日本では常識ではありません。
日本では話がみごとに逆転します。
起こる確率の低い破局的事態については
「考えないことにする」。
それが本邦の伝統です。
(P.21)
要はリスクマネジメントですけど
変なところで日本人は楽天的で、
変なところで悲観的なんですよね。
そういう雰囲気に惑わされずに
淡々とリスクを計算し備えるべきですよね。
21世紀になってからの急激な人口減は
すでに1980年代には予測されていたのです。
(P.29)
95%の女性は20歳から39歳の間に
子供を産むそうですから
出生数の増減は20年前から予測が可能だった…。
こういうごく当たり前のことを
政治や行政こそ見逃さないで欲しいところですけど。
人間の成熟のために創り出された制度が、
その本来の使命を忘れて奇形化したのが金融経済です。
だから、論理的に言えば「金で金を買う」マネーゲームが
人類学的には存在理由がありません。
人類学的に存在理由のないものが惰性で生きている。
(P.44)
金融に関しては
お金がお金を生むこと自体に
疑問があるんですよね。
別にお金が欲しいのはいいんです。
でもお金がお金を生んで
私たちの社会にどんな影響があるのかを
冷静に研究しなければならないと思うんです。
産業用のロボットが安価になって、
労働者を雇うよりもコストが下がれば、
失業者が増えていくだろう。
労働者に賃金を支払う必要がなくなった企業は
低コストで製品を作れるようになるが、
問題は誰が買ってくれるのかということである。
現代社会では、消費者の大部分は労働者であるから、
大半の労働者が失業すれば、
買ってくれるお客様が激減する。
(P.73)
経済って回り回るものなんですよね。
だから社会のイチ機能としてあっていいのですが、
経済至上主義になると
どこかで歪が出てきそうです。
これは金融も同じですが。
汎用型AIが実現されれば、
あらゆる産業で
生身の労働者の代わりに用いられるようになるので、
経済や社会に劇的な変革がもたらされる。
実現が2030年頃だとしても、
普及するまでには時間を要するので、
汎用AIが経済や社会を様変わりさせてしまうのは、
早くて2045年頃、遅くて2060年頃と予想される。
(P.86)
AIは間違いなく近未来に
私たちの生活を激変させますよね。
まだ過渡期の初期みたいなものなのでしょうけど
さらに浸透してきた時に
人口減少社会にどんな影響があるのか?
楽しみなような、怖いような…ですね。
わたしたちが何かを「考える」というときに、
多くの場合、それが得なのか、損なのかという
損得勘定で考えてしまう傾向だろう。
しかし、実のところ、
損得勘定というのはまさに、
「いま・ここ」についての勘定であって、
長期的な課題に対しては
ほとんどどんな意味も持たなければ、
指南力を発揮することもできない。
損得勘定には時間というものが入っていない。
歴史的な問題は、損得勘定では扱うことができない。
(P.130~131)
これ、物凄い重要な指摘だと思います。
損得勘定って今ここには強いですけど、
中長期的な視点で見ると
あまりにも脆弱な行動なんですよね。
人口減少は、
経済に重大な影響を及ぼすことは間違いのない事実だが、
経済が人口問題に対して与えられる影響は
わずかでしかないのである。
その理由は、人口問題と経済問題では、
問題が抱えている「時間の幅」が
全く異なっているということにある。
経済は短期的な損得勘定の問題だが、
人口減少は、
長期的な文明の発展段階に起きる
社会構造変化の結果なのだ。
(P.135)
生活があっての経済か、
経済があっての生活か。
もちろん両者のバランスだと思いますけど
しばらくは経済に振り子が振れ過ぎたかもしれません。
わたしは、少子化という現象そのものが、
社会構造を変え、
モラルを変えてゆくことになるだろうと予測している。
しかし、だからと言って、
何もしなくてよい、
ただ自然にまかせていればよいということではない。
なぜなら、少子化や老齢化は、
生産性の低下を意味することになり、
損得勘定に支配されている人々が、
効率化のために、
社会を分断し、
非効率的な部分を切り捨て、
結果として非寛容な格差社会に作り上げてしまう
可能性を排除できないからである。
そして、その動きはもうすでに
始まっているといわなければならない。
(P.146)
社会の分断…。
確かに嫌な感じがありますね。
人をマウント取って自己満足する。
否定、非難、批判に価値を置く。
人類って共存共栄しなきゃ
生き残っていけないと思うんですけどね。
社会という場所は
「世界のどこでも生きて行ける人」だけで
構成されているわけではなく、
「どこかに定住して生きて行きたい人」のほうが
数的には多い。
(P.176)
究極的には自分以外の他者とともに
どうサバイバルするかだと思うんです。
でも現代社会は自分だけ生き延びようとして
結果的に自分も生きにくくなっているような気がします。
日本の建設産業は、
1970年代以降も、
脇役へと降りることはなかった。
経済の主役であった彼らは、
政治と結託することによって、
70年代以降も、日本の主役の座をはり続けたのである。
(P.184)
これは建設業だけでなく、
政治と結託する勢力は
だいたい既得権を守ろうとする守旧派であり、
ロクなことをしないんですよね。
江戸時代のお代官様と越後屋みたいなものです。
基本的には高度成長の拡大の時代に対応したシステムになっていて、
現代の少子高齢化社会には、
適合しない部分がたくさんある。
(P.193)
ほとんどが高度経済成長期を基準にしているのでしょうね。
そこを変えることで発展は期待できますが、
お役所がそこに気づけるか?でしょうか。
現代人は普段の食生活に関心を払わず、
安全のコストも払わない。
そうしてあるとき病気になり、
多額の医療費を払い、
最後はベッドの上で悲惨な終わり方をする人も多い。
同じお金を払うならネガティブなコストではなく、
安全な食べ物を買うことに
ポジティブなコストをかけて、
健康寿命を伸ばしてはどうだろう。
私たち自身の消費行動を変えることが、
人生百年時代に相応しい低コストな
医食同源の社会づくりとなる。
(P.222~223)
医食同源。
私たちの身体は食べ物で作られるわけで
もっと安全な食べ物を選ぶべきですね。
食品会社の課題でもあるでしょうか。
私は、人口減少社会の到来を
動かしがたい所与の条件としているタイプの議論には、
うっかり乗っからないようにしている。
というのも、その種の立論は、
ハルマゲドンの到来を前提としているドグマに似て、
人々をいたずらに混乱させるからだ。
(P.259)
人口問題って
ここ数年の話しではなく
何十年も掛けての変化であり、
それこそ30年、50年、100年という
長期的な視点が欠かせません。
訳知り顔で評論する人を頭から信じるのではなく、
真の知性が問われるのでしょうね。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
まさに未来学です。
これからどうなるか?
今後どう生きるか?
人口問題はそのベースとも言えますし、
知っておいて絶対に損のない内容です。
まして社会学的にも
大人の嗜みとしても
必要不可欠な知識だと思います。
絶賛おススメいたします。
それでは、また…。
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