ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

デザインが日本の未来を創る

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

ビジネスシーンでも

アート的な発想が必要だと言われて久しく経ちますが

皆さまの周囲ではいかがでしょうか?

 

アートだ!と経営陣や上司が騒いだところで

サクっと組み込めるものではありませんから

アートって何だ?というところから

どうすりゃいいんだ?と喧々諤々し、

よくわからないままに時が経ち、

いつの間にか忘れ去られていくというケースも

わりとあるんじゃないかと思うんですね。

 

やはり仕掛けとか仕組みの問題ではなく、

私たち1人1人の心の中にあるアート的なセンスを

磨いていかねばその先に繋がらないのでしょうね。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 デザインが日本の未来を創る 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 デザインが日本の未来を創る 』

ふなびき こうこ ライフデザインブックス を読みました。

 

なぜかこのタイトルに惹かれました。

 

私自身、デザインとかアートとか、

そういうセンスはあんまりなくて

子供の頃も図画工作とか苦手でしたし、

美術とか彫刻とか、

正直あまり興味も持てなかったです。

 

ただ美術館や博物館に行くのはなぜかわりと好きで

わからないなりにも解説を読みながら

時間を掛けて鑑賞することがありました。

たまにですけど(笑)。

 

仕事でも特にアートスティックなものに触れたことはなく、

何かを創るとか、そういうこともありません。

 

でも何となく興味が持てるようになってきた感じです。

長く生きてきて

ロジックでは説明が付かないものを

たくさん見てきたのかもしれません。

 

人と人。

人の思いを受け止める。

人を理解する。

人を感動させる。

人に喜んでもらう。

 

その根幹にはアート的なものが

必要なんじゃないかと思い始めてもいます。

 

そんなこんなでこのタイトルを見た時に

あ!読まなきゃと思った次第です。

 

理解できるかな?と心配もあったのですが、

少しでもいいからデザインの世界を知りたくて

本書を読み始めたのでした。

 

目次

第1章 地域資源を活かした循環型社会

    /岡田贊三(飛騨産業株式会社代表取締役社長)

 

第2章 活用を促進して環境を守る

    /杉本洋文(東海大学工学部建築学科教授)

 

第3章 景観をデザインするということ

    /内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

 

第4章 伝統産業のこれからの道

    /杉原吉直(株式会社杉原商店 取締役社長)

 

第5章 地域力を発掘する

    /安次富隆(有限会社ザートデザイン 取締役社長)

 

第6章 デザイナーの役割について考える

    /小泉誠(Koizumi Studio代表)

 

第7章 地場産業の海外市場展開を考える

    /島村卓実(クルツインク 代表)

 

第8章 コンソーシアムブランドからソーシャルデザインへ

    /ムラタ・チアキ(株式会社ハーズ実験デザイン研究所 代表取締役

             京都造形芸術大学SDI所長)

 

第9章 人を育てる美術デザイン教育

    /大月ヒロ子(有限会社イデア 代表取締役

 

第10章 中小製造業がエコ・エネルギーを実現させる

    /山村真一(株式会社コボ 代表取締役社長)

 

感想

いや~、想像していたのとは

ちょっと違いましたけど

物凄く勉強になりましたし、

頭の回路が増えた気がします。

 

自分にない発想というか、

全く知らなかったデザインの世界を知ることができ

とても満足しております。

 

ふなびきこうこさんは

正直、存じ上げておりませんでしたし、

対談相手であるデザイナーの方々も

1人も知りませんでした。

 

それでも本書は楽しめます。

 

おそらくビジネスパーソンの方は

かなりの刺激になるでしょうし、

もっとも読まねばならないのは

政治家や官僚なのかもしれません。

 

なぜなら本書で語られているのは

「デザイン」のことだけではなく、

「デザイン」を通した日本社会のことなんですね。

 

特にボリュームが多かったのは

国土と環境、地場産業と伝統産業の再生、

自然エネルギーやデザインを活かした次世代教育と

多方面に議論が飛んでいきます。

 

きっと多くの人が何らかの関わりを持っていたり、

問題意識がある領域とも言えるでしょうか。

 

自分の人生や生活、仕事や趣味、

デザインが関わらないものはないとも言えますが

意識しなければ「ない」と同じかもしれません。

 

本書にはデザインを通しての「〇〇」が

様々な観点から語られています。

 

今まで考えたことすらなかった問題にも

鋭く切り込んでいます。

 

私自身、身の回りにあるものから

デザインを意識することで

そこから未来に繋がる展望を拓きたいと思いました。

図々しいですけど、その1歩が掴めたかもしれません。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。

 

都会の方は地域の田舎の恩恵を受けて

都会が成り立っていることを自覚してほしいです。

漁師の人も山が荒れると魚が育たないと

植林活動をしている人もいます。

それは都会に住んでいる人でもそうです。

わかっている人はわかっている。

我関せず、という立場ではなく、

都市の人たちも故郷を見れば、田舎があるはずです。

そこに私は、不公平感を覚えます。

日本という国土に住んでいるのは人間だけではないはずです。

動植物が存在してこそ、

人間の生活が成り立っていることを踏まえて

議論していくべきだと思っています。

動物たちの住み処を減らし、

地域の生態系を崩壊させてまでも

人間だけで生活していけると思っていること自体、

おかしな話だと思います。

(P.28)

 

これ大事な視点ですよね。

しっかり認識しておかねばなりません。

 

ガチガチに固まった基準を作ってしまって、

そぐわないものは全てそぎ落としていくのが産業社会です。

そうではなく、逆に素材にあわせて

デザインの考え方を変えるべきですね。

(P.41)

 

柔軟性を失うと

組織も個人も衰退しますよね…。

 

安全基準と検査機関が、

実は既得権益からの圧力や省庁の天下り先になっている。

せっかく努力して経営できているにもかかわらず、

こうした検査を受けた瞬間に利益がなくなってしまうのは、

バランスに欠けているとしか思えません。

(P.47)

 

大きな問題です。

天下りは何度も問題になっているのに

一向に改善されていません。

既得権益はぶっ壊さないといけませんね。

 

日本の車、工業製品、ヘアスタイル、ファッションなどのデザインは

世界に誇るべき一流のデザインなのに、

都市に暮らしている人々のライフスタイルと

景観をつくっている建築のデザインがばらばらで、

街が断片的になって総合的な魅力をつくりだしていない。

あらゆる規制がそのままデザインに表れ、

素敵な関係をつくり出すデザインが失われています。

(P.61)

 

縦割り行政が改善されないと

いつまで経ってもこのままでしょうね。

何とかしないと…。

 

都市はインフラで支えられているのに、

それを表に出さないのはウソだ。

インフラをもっと外に出せば

人々はそれにどう寄りかかってるかを

日々の暮らしの中で思い起こすはずだ、と。

(中略)

近代的な思考の根底にある矛盾を言ったつもりだったんです。

確か上下水道の話をしたと思うんですけど、

蛇口をひねって出てくる水が

どこから来ているか知らないで過ごしている。

お手洗いで流したものがどこに行くのかも知らない。

そういうことを知った上で

初めていろんなことの本質がわかるはずなんだけど、

都市の日常というものは、

そういう部分を無いものとして消そうとしているんですね。

(P.82)

 

都会人は想像力が欠けているのでしょうか。

当たり前のこととして意識すべきですよね。

 

公が土木をやって実現しようとするものと

民の側が求めているものは、

おそらく1970年ぐらいまでは一緒だったと思います。

高速道路にしても新幹線にしても求めているものは一緒だった。

しかし、70年以降、そこにズレが生じてくる。

それでも公は同じやり方をずっとやってきた。

それが基本的な問題で、土木も変わっていかなきゃいけない。

(P.85)

 

変わらない。変われない。

その痛みを現在は受けているのでしょう。

情けない限りですが…。

 

伝統産業もハイテクなんだという認識になりました。

一般的には手仕事であるから

ローテクという考え方をもたれているのですが、

工業的なロボットでは作り得ない、

人の手でしか作れないものも

ハイテクノロジーではないかという解釈です。

(P.122)

 

伝統産業もハイテク。

厳密に言うと違うでしょうけど、

考え方としては面白いです。

 

テクノロジーではなくとも

「ハイ」なものはたくさんありますからね。

 

当時、多くのメーカーのスタンスは定番ではなくて、

すぐに売れるものを求めていました。

多くの作り手は、

デザイナーに頼めば売れて

世間にも宣伝してくれるんじゃないかという

イメージが先行していました。

それに応えられない場合には、

関係が悪くなったりもするんですが、

そうではなくて、

互いに納得して本当にいい物を作るという信念をもっていれば、

必ずユーザーにつながる商品が出来上がるはずです。

(P.153)

 

資本主義社会や企業の抱える構造的な欠点ですね。

サステナビリティが分岐点になればいいのですが…。

 

新しい、面白い、と思われる製品に

国境はなくなったということだと思います。

(P.174)

 

ネット社会は益々進むでしょうし、

Amazonを見ていても

さらに国境の意味は薄れるでしょうね。

 

今まで私らが初等教育で習ってきた5教科。

算数国語理解社会、そして図工がありました。

多分、その図工の中にデザインがあると

企業も行政も思っています。

でも、そうじゃない。

図工というのはスキルです。

算数も国語も全部スキルで、

教養として覚えることによって

いろんなことに対処できるツールだったのです。

しかし、初等教育で抜け落ちていたのは「ウィル」、

つまり意志であり目的ですね。

子どもたちは、ただスキルだけを詰め込まれていった。

そして気が付いたら、

目的のために動く子どもがいなくなっていたのですよ。

(P.208)

 

教育論として興味深いです。

やらされではなく、自主的に。

ずっとこの国の教育の課題ですよね。

 

日本は素材で切り込んでいくべきなんですよね。

そうすれば製造単価の安いアジアに対しても、

こちらから素材を供給する形が取れますから、

完全に首根っこをつかむことができます。

だから、最も日本らしい産業である基礎研究開発は、

やめてはいけないと思っています。

(P.212)

 

素材。ふむ確かに。

研究開発を止めたら終わるでしょうね、この国。

バカな政治家に任せてられません。

 

IT関係のエンジニアは物凄く寿命が短いわけで、

活躍できるのはせいぜい10年でしょ。

日進月歩で変わっているんだから。

途上国であれば、それだけで一生分くらい稼げるかもしれない。

日本ではその10年だけで一生分の稼ぎができないわけですよ。

そういう情報系の単純労働者を育てるような

教育システムをよしとしているのは、

本当にものを知らないなと思っています。

本当に育てるべきは、総合力。

もっとトータルに人間力を高めるほうに持っていかないと。

(P.232)

 

これもユニークな考え方ですね。

ジョブ型雇用とか言われてますけど、

私は物凄く懐疑的です。

 

総合力なきスキルでは

あっという間に職を失うんじゃないかな。

永遠の学び直しが必須です。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

本書で何度か指摘されていましたが、

この国の停滞の理由がよくわかります。

 

そして発想の転換が必要なのに

既得権を守ろうとする人たちの私利私欲が

国全体の足を引っ張っています。

 

政治家や官僚こそが

ネックになるのでは愚の骨頂ですよね。

 

デザインを通して

とても多角的に社会問題に切り込んでおり

私自身、大変に勉強になりました。

おススメです。

 

それでは、また…。

 

 

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