ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

65歳、医師はじめて挑む病院経営

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

人間、一生勉強だと思います。

 

でも大人になってからの勉強は

子どもの頃と違って

テストで100点を取るようなものではありませんよね。

 

自分の興味関心を広げ続けて、

人生や、仕事や、趣味や、

様々なものを自分なりに掘り下げていくのが

やはりいいんじゃないかと考えております。

 

当ブログの書評も

かなり他分野に渡りますし、

正直、首尾一貫したものではありませんけど

でもそれでいいと思うんです。

 

大人として

人をもっと深く知りたい、

社会の仕組みをさらに知りたい、

その連続であります。

 

私自身にもいろんな顔があるわけで、

それは皆さんも同じでしょうし、

そのいろんな顔同士がぶつかり合うと

いい意味での化学反応が起こったりするものなんですよね。

 

私自身、ずっと読書は続けたいですし、

それを書評という形で残すことで

自分の頭に叩き込みつつ

多少なりとも参考にして下さる方がいらっしゃれば

それはとても嬉しいことだなと常々思ってます。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 65歳、医師はじめて挑む病院経営 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 65歳、医師はじめて挑む病院経営 』

川村 一彦 幻冬舎 を読みました。

 

たまたまブックオフで見つけた本です。

 

私自身も経営者の端くれですし、

クリニックの開業支援を生業としていますし、

病院経営には関心があります。

 

本書を見つけた際には

1秒で購入を決めました。

 

個人的な見解ですけど

病院経営は医師がすべきと思います。

 

行政上がりの人や

企業出身者やコンサルタント

経営「権」を握るのは疑問です。

 

あくまでも経営「陣」の一角として

サポートする側に回るならありだとは思いますけど。

 

とはいえ医学部のカリキュラムには

病院経営を学ぶものはなく、

(最近はあるかもしれませんけど)

いくら優秀な医師といえども

いきなり経営というのは

ハードルが高いかもしれませんね。

 

実際にクリニックの開業を目指す先生も

この「経営」に関しては不安が大きいです。

 

しかし1年から1年半を掛けての開業準備期間中に

段々と経営者らしくなっていくのも確かです。

 

つまりその気になって

実際に準備期間を経れば

充分に経営者としてやっていけるのですね。

 

ただ病院経営には

いつも準備期間があるわけではありません。

本書もまさに急転直下の理事長就任。

 

これは勉強になりそうだと思い

楽しみに読み始めたのでした。

 

目次

プロローグ 65歳の新人経営者

第1章 病院経営の裏側

    ー理事長になって初めて知った多額の負債

第2章 病院再建を誓いゼロからのリスタート

    ードクターから経営者になるために猛勉強

第3章 人員整理にもつながった診療方針の変更…

    ー「患者第一」の理念を浸透させて病院を大改革

第4章 病院を縛る「MS法人」との闘争

    ー黒字化を実現した病院買い取り大作戦

第5章 大局観を持ち「不撓不屈の精神」で経営に取り組む

    ー10年間で培った経営者としての知見を実践し続ける

エピローグー仲間と走り続けた10年

 

感想

いや~面白い。

とても勉強になりました。

 

医療機関にはそれなりに詳しいはずの私ですが

相和病院さんは存じ上げませんでした。

 

神奈川県の相模原市にある療養型病院なのですね。

 

著者である川村一彦先生が

よくわからないままに理事長に就任してからの

七転び八起きのストーリーが展開されます。

 

あくまでも180ページ程度の新書ですから

もっと詳細に渡る経緯が書かれていると

さらに良かったとは思いますけど、

まあセンシティブな話しが多いでしょうし

言えないこともあるでしょうから

概要が書かれているという感じです。

 

そうは言っても経営者の経験は全くなく、

少しも望んでいない状況でしたので

他に適任者がおらず

致し方ないか…くらいで

川村先生は理事長に就任したのですね。

 

ところが蓋を開けてみると

まずは完全なる赤字経営であることが発覚し、

その上で多額の債務があることも判明しました。

 

このままでは潰れる…。

 

そう危機感を持った理事長は

イチから経営を学び、

少しずつ病院を改革していくのですね。

 

経営再生のプロセスでは、

思い切った方針変更があり

それに不満を持つスタッフは退職していき、

かなり苦労があったことと思います。

 

しかし不撓不屈の精神で、

率先垂範して現場を率いていくなかで

ようやく目途が見えつつあったなかで

MS法人の問題が出てきます。

 

一般の方はMS法人と言われても

何それ?というところでしょうが、

医療業界ではわりとポピュラーな組織ですね。

 

医療法人を陰に陽に有効に機能させるための

特殊な法人でして、

少し前までは医療機関の規模が大きくなると

設立することが多かったですが、

最近では効果が疑問視され

少なくなってきているでしょうか。

 

本書においてのMS法人は

病院の所有権を持っており、

多額の家賃の支払いをしていたようです。

 

これが事業再生にとっての重荷になるなか

MS法人自体も無理な設備投資の結果として、

赤字経営債務超過の状態であり

このままでは共倒れになりかねない状態だったようです。

 

しかも関東信越厚生局の立ち入り検査で

診療報酬の返還と減額が決まり、

収入面でも難問が降り掛かります。

 

ここからの脱却が本書においての

クライマックスと言えるでしょうか。

 

最終的には奇跡的に銀行からの融資を受けることができ、

MS法人から病院の所有権を買い取り、

なおかつMS法人側の債務も帳消しにして

完全に病院の経営権を握ることになったのですね。

 

ここからは現場で手を打ってきた施策が効を奏し

病院の経営状態は劇的に良くなった…という

病院再生のストーリーです。

 

非常に興味深かったです。

 

病院も今は倒産する時代ですし、

経営状態があまりにも悪いケースは少なくありません。

 

しかし本気で再生しようと思えば

できないことはないというリアルストーリーなんですね。

 

しかも全く経営経験がない川村先生が

孤軍奮闘しているさまがよくわかり、

応援したくなりますし、

立て直しができた時には思わず拍手したくなりました。

 

本書が発行されたのが

2017年8月ですし、

理事長就任したのが2007年でしたので

病院再生までの戦いは

この10年だったのですね。

 

すごいのはこの10年は

65歳から75歳であったということです。

 

人間にはとてつもないポテンシャルがあるのですね。

やろうと思ってできないことはない。

 

何が何でも病院を立て直すという

強い意欲があってこそだったのでしょう。

 

素直にリスペクトできました。

 

現在、病院の経営に携わっている方や

これからご自身で開業をしようと思うドクターの皆さまには

絶賛おススメいたします。

 

ここまで大変なケースは

それほどないと思われますので、

経営者としての心意気が学べると思います。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

第5章では、

川村一彦先生の経営者としての振り返りや

根底にあるポリシーや考え方が書かれています。

 

素直にそうだな…と思える

経営者としての「大」原則が書かれているように思いました。

 

病院がなくなるというのは

地域社会にとって大きな痛手ですし、

そう簡単に潰せないものです。

 

一般の企業とは

その影響は天と地ほどの差がありますし、

経営者としての苦労も相当なものだったでしょう。

 

このままドラマになるような

劇的なストーリーでしたが、

私としてはとても良い学びとなりました。

 

それでは、また…。

 

 

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