おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
以前に何かのニュースで見たのですが、
最近の若い方は出世欲がないというデータを見ました。
まあ気持ちはわかります。
これだけ先行き不透明な時代のなかで
責任が大きくなるのは負担ですよね。
まして価値観は多様化し、
マネジメントは難しくなるばかりですし
何が起こるかわからないなかで
自分のことだけでも精一杯なのに
人を管理するなんて無理と思うのも致し方ないです。
でも、それでも、
私は出世のチャンスがあるなら
やってみるべしと思ってます。
自分自身がそうでしたから。
出世欲なんてこれっぽっちもなかったのに
やってみたら大きなやりがいを手に入れました。
今回ご紹介する書籍は、
【 社長って何だ! 】 です。
本書をピックアップした理由
『 社長って何だ! 』
丹羽 宇一郎 講談社現代新書 を読みました。
日本を代表する総合商社である
伊藤忠商事の元社長である丹羽氏。
その後、中国大使を務めたり、
80才を超えた今でも多方面でご活躍中。
著書も多く、
随分前に数冊読んだ記憶があります。
今回は社長って何だ!というタイトル。
小さな企業ですけど
一応社長である私としては
これは読まねばあかんだろうと思い、
素直に手に取りました。
目次
はじめにーーリーダー不信の時代に問う
第1章 孤独と覚悟
第2章 資質と能力
第3章 報酬と使命
第4章 自戒と犠牲
第5章 信頼と統治
第6章 後継と責任
おわりにーー社長の器以上に会社は大きくならない
感想
ひと言で申し上げますと、
非常に優れた経営者論であり、
リーダー論であります。
いつか社長になろうとか
起業しようとか、
そういう方は一読することをお勧めしますし、
トップに立つ意欲はなくとも
部長、課長などリーダーシップを発揮するポジションにいるなら
本書から学べることは多いと思います。
別にビジネスパーソンだけではなく、
病院長、開業医、診療部長なども含めて
医師の皆さんにとっても読む価値のある良書です。
おそらく丹羽さんの目には
現代だけでなく未来が映っているように感じます。
今はまだ問題となっていなくとも
これから問題となるだろうこと、
その時の解決方法なども
あちこちに散りばめられています。
気づける人は多くないかもしれませんが、
10年後、30年後の経営論についても
しっかり書かれていると思いました。
それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。
「お金を追いかける」というのは、
常にお金中心に物事を見て、
お客様や世間にも益となる「三方よし」の精神もなく、
自己の利益になるかどうかの損得勘定だけで判断することです。
つまり、いつも「お金を儲けること」しか念頭にない。
ところが、「どう儲けるか」も明確にわからないまま
お金に執着するとなると、
お金を貯めようとひたすら支出を抑え、
他を考える余裕もない。
これでは大きな果実など絶対に得られません。
(P.29)
資本主義社会の誤解でしょうか。
お金の魔力に取りつかれている人は多いですし、
お金というわかりやすい指標でしか
物事を考えられない社長など
一刻も早く退任すべきと思います。
だって世のため人のために役だっていれば
お金なんて後から付いてきますもん。
最大の資産である人間をどのようにして生かし、
動かし、活用するか。
これが会社組織のトップたる社長の最大の仕事になります。
(P.47)
働く側に問題がないとは言えませんが、
少なくとも派遣労働者が増えて
非正規雇用が増えた頃から
この国の経済は右肩下がりになっているんですよね。
そろそろ気づかないと
確実に先進国から脱落するんじゃないでしょうか。
会社の業績が絶好調の時こそ、
最悪の事態を想定しておかねばいけません。
好事魔多し。
経営幹部が意気盛んに闊歩しているような時こそ、
すぐそばに落とし穴があるものです。
そんなときは隠忍自重して自らを律することです。
(P.57)
そういうものなのでしょうね。
晴れている時に傘を買い、
雨が降った時には晴れに備える。
経営者たるもの常に1歩先を行きたいものです。
「経営者の第一条件はなんですか?」と聞かれたとき、
私はこう答えることにしています。
「自分は物事を何も知らないということを自覚していることです」
(P.62)
無知の知ですね。
これがあるから謙虚な姿勢を保ち続けられますね。
京大アメフト部の監督だった水野弥一さんは、
学生たちにこんなふうに声を掛けていたと聞きました。
「今、自分ができる精一杯のことをやれ。
今日は疲れたからここでやめる、と思えばやめろ。
疲れたけど自分はやりたい、
やったほうがいいと思うのならやれ。
もうちょっとやればよかった、というのは許さない。
自分はこれだけやった、
これで負けてもしょうがない、
これが自分の力だ、
そう思えるまでやれ。
それがベストを尽くすということだ」
(P.78)
やりきった。
ここまでやれば勝っても負けても後悔はない。
そこまで自分を導ければ
確実に勝者でしょうね。仮に負けても。
だからトップの条件として
「忘れる」ことを挙げます。
過去は振り返らない。
(P.82)
大事な要素ですね。
そうじゃないとやってられないというのもありますけど
過去ではなく、未来志向が必要ですね。
「社長が孤独でなければ、
その会社はうまく回っていかない」
というのが私の信念です。
(P.83)
おそらく組織のために
孤独に耐えられる人が必要なのでしょう。
この辛い立場に立つべきなのは
やはりトップしかいませんよね。
弱者の立場に立つのは、
社会的な地位にあるものの責務です。
それが「ノーブレス・オブリージュ」の意味するところでしょう。
「強い心」とは、負けない心であると同時に、
弱者に寄り添える心のことです。
(P.88)
こういうところですね。
プライスレスな存在価値とは。
強欲な人にはできないことです。
経営は自分の身を捨ててでもやるという
不退転の決意がなければできません。
社長は自分の身を第一に考えてはいけない。
経営成功のカギは、
私心や私欲を捨てて事に当たったかどうか、
名誉やお金を顧みずに
大義のために決断したかどうかだと思います。
(P.92)
身に沁みます。
最も人を幸せにする人が最も幸せになれるのですよね。
利他の心。
儲けたらプレミアムで多額の報酬をもらうのに、
大損しても少々の減俸で済むなんて、
こんな楽な仕事はないでしょう。
「社長と乞食は三日やったらやめられない」
と言われる所以です。
(P.105)
私は「社長は3年で馬鹿になる」と
先輩社長から諭されました。
社長は余程謙虚でないと
傲慢になってバカになるものですね。
バカにならないためには
現場の第一線から離れないことでしょうか。
もちろん例外はあるにせよ、
私の経験で言えば、
大企業より中小の社長のほうが
経営の何たるかがわかっているし、
トップとしても性根が据わっています。
(P.113)
私もそう思います。
創業社長を別にすれば
大企業の社長なんてサラリーマン社長です。
出世競争を勝ち抜いたのはスゴイことですけど
経営者として一流なわけではありません。
稀に有能な方はいますけど
だいたいがスゴイ人は創業社長ですよね。
なぜこうした不祥事は後を絶たないのでしょうか。
一つは、利益を上げることに血道を上げ、
株価や市場を意識するあまり
目に見える成果を追い求める風潮が蔓延っていることにあります。
会社の中に過度の成果主義が蔓延し、
簡単に数値化できる利益など
目に見えるものが幅を利かすようになっています。
(中略)
すると、目の前にある数字だけに心を奪われ、
やがてデータ改ざんや不正会計に手を染めて、
小さな嘘を隠すためにさらに嘘を重ねるようになります。
(P.172)
本当に大手企業の不祥事が続いていますね。
上場廃止するなり、市場が退場させるなりしないと
まともな企業は育ちません。
不祥事を起こす会社のせいで
これから成長できる会社に「蓋」をしているのですから
不祥事を起こす会社など躊躇なく潰すべきだと
個人的には思うのです。
こうした諫言の士を重用し、
後継者としなくても活用していくことは
大変重要です。
長幼の序や学閥、派閥を重んじるような
官僚的な会社であれば、
諫言の士を生まれることはないでしょう。
(P.190)
自分の命を懸けて諫言するような人は
組織においても超重要です。
しかし諫言が私利私欲であれば
そんな人は重宝されません。
魂を込めて、世のため人のために
自分の首を掛けて諫言できるような人が
必要とされているのですよね。
不祥事の元にあるのは、
人間の本性にある自己中心主義や我欲です。
それが人をして嘘をつかせるのです。
嘘は人生を暗くし、会社を暗くする。
そして社会を暗くします。
(P.203)
正義感を失った組織など救う必要がありません。
大きすぎて潰せないなどと言われますが、
思い切って潰したほうが社会が健全化すると思います。
働く人間の喜びは、
仕事をやり遂げた達成感にあります。
だから若い世代にも夢とビジョンと目標を持たせて、
達成の感動と喜びを共有できるようにするのです。
(P.211)
今は働く喜びを持てていない人が多いですよね。
それはつまりトップが
喜びを持たせていないということなのですね。
経費削減を金科玉条のように掲げて、
会社にとって最大の資産である人材に投資せず、
何に投資するんですか。
会社や仕事をいとおしむ気持ちや働く意欲がなくて、
業績が上がるわけがありません。
(P.214)
もうおっしゃる通りですよね。
先進国最低の年収と言われる我が国の最大の失敗は
人材に投資をしてこなかったことでしょう。
箱モノをいくら作ってもそれは何も生み出しません。
リーダーが絶えず肝に銘じるべきは、
権力を持つ者が誤りを犯す前に
できるだけ早く身を引くということです。
だからこそもう1度、
「社長はそれほど長くやるものではない」と
私は言うのです。
(P.226)
そうそう、社長なんて長くやるものじゃない。
でも大企業と違って
中小企業は長くやらざるを得ないケースが多いです。
バカにならぬよう謙虚に学び続ける姿勢が必要です。
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
また先日お亡くなりになられた京セラの稲森和夫さん。
こういった日本を代表する名経営者の1人と
言っても過言ではない丹羽氏。
ビジネススキルや経営センスだけでなく、
その根底に「人間力」があってこそであり、
名経営者には必須なのでしょう。
とても学ぶことの多い1冊でした。
経営者も、経営者を目指す方も、
経営者が何を考えているかを知りたい方にも
すべからくおススメできます。
それでは、また…。
<ジーネットが発信する情報提供サイトはこちらです!>
・ジーネット株式会社 公式ホームページ
・医療ビジネス健全化協議会<IBIKEN>ドクター向け情報提供サイト
・ジーネット株式会社 <社長のtwitter>
・ジーネット株式会社 <社長のfacebookページ>