おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
ラジオって聞きますか?
私が中学生とか高校生の頃は
友達がオールナイトニッポンなど
当時人気だったラジオを聞いてましたけど
全然興味が持てなかったんですよね…。
千葉県出身の私は
ちょうどベイFMなどが開局されて、
ごく稀に聞くことはあっても
カーステレオでカセットテープを聞くことが大半でした。
まあカーステレオとか、
カセットテープって何だ?と
今の方々には疑問を持たれてしまうでしょうけど(苦笑)、
私の前の世代ですと
ラジオを聞いた人は多いかもしれませんが
ちょうど私の世代くらいから
聞く人と聞かない人がクッキリ分かれ始めた気がします。
今はインターネットラジオなどもあるようですが、
ひと頃と比較すれば
ラジオを聞く人ってそんなに多くないんじゃないかな?
今回ご紹介する書籍は、
【 辺境ラジオ 】 です。
本書をピックアップした理由
『 辺境ラジオ 』
内田 樹 名越 康文 西 靖 140B を読みました。
冒頭ラジオが云々と語りましたが、
何と本書はラジオで話したことが
そのまんま1冊の本にまとめられたそうです。
それが上記に記したお三方、
敬愛する内田樹さんと
一緒にお仕事することが多い精神科医の名越先生と
毎日放送のアナウンサーである西さん。
どんな話しになるのやら。
正直、このタイトルには興味が持てなかったのですが
そこは内田樹さんが絡んでいるのですから
つまらないわけはないだろう。
2012年9月に発行された本ですから
早く読んでしまわねば…とも思い、
読み始めた次第です。
目次
・守るにせよ、崩すにせよ、「定型」はやっぱり大事。
・2010年の重大ニュースをふり返る。
・大阪を元気にするには、「うめきた大仏」しかない!
・被災地に向けて、大阪からできることは。
・立ち止まり、祈ることから始める、震災後の新しい生き方。
・下り坂にさしかかった日本で、機嫌よく生きるために。
・「おせっかい・アハッ!ラジオ」
感想
案の定と言ったら何ですが、
さすがに内田樹さんは外しません。
非常に面白かったですし、
とても勉強になりました。
辺境ラジオというタイトルの意味合いも
なるほど…と腑に落ちましたし、
個人的にはこういう見方が
現代社会には求められているんじゃないかとも思いました。
アメリカや中国ではなく日本、
東京ではなく大阪、
テレビではなくラジオ、
中心ではなく端っこだからこその
本質を語り合うというのはいいんじゃないでしょうか。
内容は上記の目次をご覧になっていただければ
おわかりの通り、
かなりあっちこっちに飛んでいます。
でもそれがいいんです。
本書が発行されたのは東北の震災後ですから
その話題が多いですけど
今だからこそ冷静に振り返ることもできますし、
逆に忘れてはならないことだとも思えますので
振り返りの意味も込めて
お読みになってみるのも良いと思います。
それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。
「型」っていうのは、
発信力の非常に強い
身体運用が伝えられて残ったものだと思う。
自分自身の中にも影響するけど、
周りに対しても、
自分が分節した思考や感情が伝播していく。
そういう強い身体の構造があるんですよ、やっぱり。
ある形を身体がとると、
周りがそれに影響される。
そういう身体の形って、あるんです。
(P.34)
人として生きるための原理原則とか
基本基礎のようなものを
見失ってはいけませんね。
先端科学は従来の理論では説明できない
「見えないもの」「触れられないもの」を
必ず追求するんですから。
(P.43~44)
どうしても私たちはわかりやすい指標に
目が向きがちですよね。
その代表的なものが「お金」なのですけど
それ「だけ」になっては
見えないものや触れられないものを
理解することができなくなってしまいますね。
「型」も善し悪し、
「放任」も善し悪しで。
「型にはめればいいんだ」という議論も乱暴だし、
「はめちゃいけないんだよ」という議論も乱暴。
「型」ははめたり外したりしなきゃ使えない。
(中略)
現場に出てない人に教育については語ってほしくない。
こっちは「生もの」を扱っているんですから。
こうすれば絶対うまくいく方法なんてあるわけないでしょう。
(P.59)
学校教育について語られていた箇所ですが、
現場の意見として貴重と思います。
文科省は机上の空論ではなく、
現場を尊重し、現場目線で政策を練って欲しいですね。
僕が「今の学校はどうなってるんだ」とか
「若者はこうだ」と言うと、
結局のところ、
若者が考えるべき問題を大人が矯正したり、
ある枠に入れるような構造になってしまう。
ただでさえ僕は
若者の力がもっともっと出てきてほしいと思っているのに、
正しいことを言えば言うほど、
構造的にはどんどん若者を抑圧することになる。
(P.63~64)
時には黙って見守ってあげるのが
大人であり、賢者ではないでしょうか。
改めて感じるのは
人の感情というのは
ほとんど「物質」であるということですね。
(P.68)
すごく難しい表現ですが、
物質と捉えることで見えてくるものがあるのかな…と。
精神科医の名越先生ならではの物言いですね。
ヒューマン・スケールを超えた規模で
情報が流れてくることに対して、
人間的な価値基準で善悪を論じるのはどこかずれている気がする。
スーパー・ヒューマンスケールの問題が起きているのに、
それを論じる方は人間的の等身大の感覚で
「良い・悪い」を言っている。
人間的な善悪正否の基準を当てはめて論じるのって、
ちょっと使う「ものさし」が違っているような気がする。
(P.73)
何でもわかっていると思うと
だいたい間違えるのですよね。
私たちには謙虚さが必要不可欠なのでしょう。
そう。公開対話。
他人が聞いているところで
個人的な話しをする方が、
情報伝達の精度が上がるような気がするの。
(P.82)
これ、面白いです。
twitterについて書かれていたのですが、
公開対話こそが質向上。
政治家に考えてもらいたい。
リーマンショックだって、
要するに「とにかく目先の金が欲しい」という
欲が起こしたカタストロフ(破滅)でしょう。
日本の今の雇用状況が悪いのだって、
企業が収益を上げるために、
雇用条件をどんどん切り下げて、
結果的に非正規雇用や失業者が出ている。
それも元をたどれば、
目先の金が欲しいからなんです。
金がほしい一念でみんなが必死に動いた結果、
こういう「元気のない社会」ができてしまった。
バブル期の「異常に元気な人たち」が、
中産階級がゆったり暮らせる生活基盤を
ばらばらに打ち壊してしまったせいで、
ハイパー・アクティブな東京と、
それ以外の元気のない場所に二極化してしまった。
(P.115~116)
50年先、100年先を想像できなければ
トップリーダーとして失格です。
失格者が権力を握り続けているのが
我が国の不幸と言えるでしょうか。
「人間の個性は商品選択でしか表現されない」というのは、
明らかにある時代に取り憑いた妄想ですよ。
ほとんど狂気と紙一重ですよ。
だって、少なくとも1950年代までは自分らしさというのは、
自分の生き方、自分の労働、
自分が作り出したものを通じて示すべきものであって、
金で買った商品に託せるようなチープなものじゃなかった。
金で買えるもので、
自分の個性や唯一無二性が表象できるなんて
考えていた人間はいなかったでしょう。
(P.120~121)
商品が個性。
そう言われるとおかしな話しですよね。
逆に言うとそれだけ個々の生き方が
スポイルされてしまっているのかもしれません…。
僕も「祈らなければいけない」と思っています。
「祈る」という行為は、
言い換えれば「立ち止まれ」ですよね。
僕たちはここまでハイパーアクティブに動き過ぎてきた。
「チェンジ」とか「変化を」とか「成長だ」とか、
とりあえず目先をどんどん変えて、
絶えず状況が変化することが
絶対善であるかのようにずっと突っ走ってきた。
でも「祈る」というのは、
もちろん自分の外部に対象があることもありますが、
基本的には内観ですよね。
自分の内側を静かに見つめて、
呼吸を整えて、動悸を抑えて、
それからゆっくりと自分の内側の様子をモニターしていく。
身体のどこかに強ばりや詰まりや痛みがないか。
丁寧にチェックする。
内側を見つめて初めて、
自分が今どんな状況にいるのか、
自分の心身がどんな状態かわかってくる。
どんな場合も同じですが、
特に今回のような地殻変動的な危機に際して、
浮き足立って、大慌てして、
怒鳴り散らしても、喚いたり叫んだりしても、
それによって事態が好転するということはありません。
(P.187)
「祈る」って
本当はもっと日常的であっていいと思います。
無宗教の人が多い日本人は
ある意味では祈り下手と言えるかもしれませんね。
でも自分自身の精神を健全化するためにも
もっと普通に祈ったほうがいいのでしょうね。
うつ症状などは祈りが治癒に近づけてくれるかもしれないと
つい夢想してしまいました。
よくメディアでは
「勝ち組の人生を送るには」ということが紹介されますが、
その答えは非常に簡単で
「負け組をつくること」なんですよね。
全員が勝ち組になれるわけはないのに、
あたかも全員が勝ち組になれるような言い方をする。
(P.188)
結果的に負け組がどんどん増えているのが
今の日本社会です。
今、勝ち組の人も
いつまで勝ち組でいれるものか。
そのうち日本国民全体が世界の負け組にならないかと
心配ですし、その可能性は低くはありません。
ちょっと恐怖ですね。
上司は基本的に「神輿」であるわけで、
「担がれ上手」が
やっぱり上司の一番大事な能力だと思うんですよね。
(P.226)
賛成。
裏を返せば部下は上手く担いで
上手く利用するのがいいと思います。
日経新聞に出てくるビジネスマンたちの話を聴いていると、
ほんとに自分の企業のこと、
それも3カ月先半年先のことしか考えていない。
5年後、10年後のことなんか頭にないよ。
でも、それは責められない。
だって、会社は今期業績が悪ければ、
株価は下がるし、経営者は責任問われるし、
不渡り出せばつぶれちゃうんだから。
先のことよりまず今期をしのげるかどうか。
それを最優先するのは、
彼らにとっては合理的なふるまいなんだから。
(P.272)
これ、全国のビジネスマン諸君は
本気で考えなきゃいけませんよ。
(私も含めてですけど)
松下幸之助さんや稲森和夫さんが
草葉の陰で泣いていますよね。
戦後の焼け野原から復興した我が国は
ビジネスマンも公共心を持って、
国、社会、そして後世のために仕事をしてきたはずです。
それが今では「今だけカネだけ自分だけ」という
恥ずべき存在に落ちぶれていますよね。
その結果が先進国から落ちようとする現代なわけですから
これでいいわけがないはずです。
自分が生きていること
そのもののうちに「疚しさ」を感じるというのが、
人間の倫理の基本だから。
自分がいるせいで、誰かから奪っている。
自分が日向にいる時は、
誰かが陰になっている。
それに気づいて心を痛めるのが人間だから。
(P.283)
人間の倫理の基本。
ここから外れてしまっている人が
残念ながら多いのかもしれませんね。
強欲ジジイにここを読ませたい(笑)
何でもお金をかけないでやる。
確かに、そのせいで広がりが限定されたり、
不便なこともいろいろあるかもしれないけれど、
「自分がしたいことは自分の金でやる」くらいの
腹の括り方をした方が、
いいものができるような気がするんだけどなあ。
(P.348)
これ、個人的にスゴくわかります。
「いいもの」を世に出したいなら
こういう考え方に限ると思うんです。
ただ儲けたいならこれは通用しません。
だから資本主義社会では多数派にならないでしょうね。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
率直に申し上げて
ラジオという気楽さからか
とても面白い話しが多く、
また非常に勉強にもなりました。
はあ?そんなのありなの?という
突拍子もない話しもあり、
またおお、それこそ本質だ!と
深~い話しもあり、
さすが辺境から伝えるだけのことはあります。
タイムリーではありませんけど、
今だから冷静に考えることができたりもするので
ちょっとでも関心が持てた方には
是非とも読んでいただきたいなあと思います。
それでは、また…。
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