ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

経済学を知らずに医療ができるか!? 医療従事者のための医療経済学入門

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

いつもうちの社員にも言ってるのですが、

医療は深いぞ、永遠に学びだぞ、

焦るなよ、焦らずにコツコツと学び続けようね…と。

 

これは当然私自身に対してもそうなのですが、

ホント守備範囲が広いですし、

奥が深いですし、

常に、ずっと学び続けねばならないと

強く強く感じています。

 

そりゃそうです。

ただでさえ頭の良い人たちが

物凄い競争を勝ち抜いて

何とか医学部に入り、

その後、6年間もビッシリ学び、

大きなプレッシャーのなかで

医師国家試験を突破して初期研修から専攻医、

その後も認定医、専門医、指導医と資格を取得、

資格を取っても取らなくても

最新医療にキャッチアップし

度重なる変更がある

医療制度にも通じていかねばなりません。

 

まあまあ大変というか、

いえいえとんでもなく大変なことだと思います。

 

私のような凡人というか

一般人には決して全てを理解できるものではありません。

 

とにかく医療という大きな枠組みを学ぶこと、

医学は専門家である医師に任せて、

話しがしっかり噛み合うように

医療という広い分野を

継続的に勉強しなければいけないと

自分に責務として課しています。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 経済学を知らずに医療ができるか!?

 医療従事者のための医療経済学入門 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 経済学を知らずに医療ができるか!?

 医療従事者のための医療経済学入門 』

康永 秀生 金芳堂 を読みました。

 

本書はたまたまtwitterである医師が紹介をしており、

お!これは興味深いと関心を持ったのです。

 

よくよく見てみると著者である

東京大学大学院医学系研究科教授である康永先生は

facebookで繋がらせていただいており、

まあ特別なやり取りはないのですが…

それでも親近感はありますからね、

一応、ビジネスパーソンとして

もう30年も仕事をしてきた私としては

基本的な経済学は大丈夫だろうけど

医療経済学は下記にある書籍で勉強しているレベルです。

 

ka162701.hatenablog.com

 

ka162701.hatenablog.com

 

ka162701.hatenablog.com

 

さて、読み切れるのか?

理解できるのか?と若干を不安を持ちながらも

学ぶ気は満々で読み始めたのでした。

 

目次

Ⅰ 基礎編

 

1 高等学校「政治・経済」レベルの経済学の基礎知識

1-1 自由主義の経済学

(1)古典派経済学

(2)価格の自動調節機能

1-2 マルクス経済学と社会主義体制

(1)マルクス経済学

(2)社会主義体制

(3)マルクス経済学に対する評価

1-3 修正資本主義

(1)ケインズ革命

(2)大恐慌と修正資本主義

(3)修正資本主義に対する批判

(4)日本の財政赤字

1-4 新自由主義

(1)小さな政府・大きな政府

(2)フリードマン新自由主義

1-5 市場の失敗

(1)市場メカニズム

(2)市場の失敗の原因

 

2 今さら人に聞けない医療介護制度の基礎知識

2-1 社会保障制度の概要

(1)社会保障制度とは

(2)国民負担率

2-2 医療保険制度

(1)公的医療保険

(2)医療費の支払い方式

(3)医療機関へのかかり方

2-3 医薬品の諸制度

(1)医薬品の位置づけ

(2)薬機法

(3)薬価制度

2-4 介護保険制度

(1)家族の役割とその限界

(2)介護保険制度の概要

(3)介護保険サービスの実際

(4)地域包括ケア

 

3 医療経済学の基礎

3-1 医療サービスの特殊性

(1)医療サービス需要の不確実性

(2)必需財と奢侈財

(3)探索財・経験財・信頼財

(4)公共財と私的財

3-2 医療サービスにおける情報の非対称性

(1)保険の理論

(2)医師誘発需要

3-3 モラル・ハザード

(1)モラル・ハザードとは

(2)患者自己負担引き上げの影響

3-4 医療分野の規制

(1)規制と規制緩和

(2)医療サービスにおける規制の根拠

 

Ⅱ 応用編

4 国民医療費

4-1 国民医療費抑制政策

(1)国民医療費の年次推移

(2)医療費抑制政策が必要とされる理由

4-2 先進各国の医療比較

(1)先進各国の医療費の比較

(2)先進各国の健康指標の比較

4-3 医療費増加の要因

(1)医療費増加の要因とされてきたもの

(2)人口高齢化の影響

 

5 医療の無駄

5-1 過剰な検査・治療

(1)大型医療機器の非効率配置

(2)ガイドラインに基づく画像診断

(3)過剰な治療

5-2 過剰な薬剤使用

(1)かぜに対する抗菌薬

(2)ポリファーマシー

(3)後発医薬品

(4)認知症治療薬

5-3 多すぎる病院

(1)病床数と平均在院日数

(2)地域医療構想

 

6 医療技術の効果と費用

6-1 エビデンスに基づく医療

(1)EBMに対する誤解

(2)エビデンスがない医薬品9

6-2 医療技術の費用効果分析

(1)費用効果分析とは

(2)費用効果分析の政策応用

(3)費用効果分析に対する批判

6-3 高額医薬品の問題

(1)オプジーボ騒動

(2)高額薬価の記録更新中

6-4 予防医療と医療費

(1)「予防で医療費削減」のウソ

(2)予防で医療費を減らせない根拠

(3)日本における議論の整理

 

7 医師不足問題

7-1 医師数に関連する諸問題

(1)患者数と医師数

(2)外科医は要らなくなる?

(3)出生数が減れば産科医は減る?

(4)将来医師数は過剰に

7-2 医師の配置の非効率

(1)医師数増加が地域格差を助長

(2)なぜ医師は都市に集中するのか?

(3)医師の地方勤務を強制できるか?

(4)医師偏在対策

(5)医師の働き方改革

(6)地域医療構想とのリンク

7-3 医師のタスクシフティング

(1)タスクシフティングとは

(2)アメリカにおける医師補助職

(3)日本でのタスクシフティング

 

8 貧困の問題

8-1 貧困の定義

(1)絶対的貧困相対的貧困

(2)潜在能力

8-2 貧困問題への対策

(1)日本の貧困問題

(2)生活保護制度

8-3 子どもの貧困と医療費の問題

(1)子どもの貧困の影響

(2)貧困が少子化の原因の一つ

(3)子育て支援

(4)子供医療費助成の弊害

 

9 持続可能な医療システム構築

9-1 現状の医療費抑制政策の問題点

(1)財政主導の医療費抑制政策の限界

(2)政府による規制の在り方

9-2 医療のアクセス・質・費用

(1)アクセスを制限し質・費用を担保する

(2)現場の医療者にできること

9-3 社会的共通資本

(1)社会的共通資本とは

(2)社会的共通資本としての医療

(3)宇沢理論の表層的引用は慎むべき

(4)宇沢理論の具現化に向けて

 

感想

ちょっと目次が長くなってしまいましたが

敢えて全部書きました。

 

この目次を見る限りは

私でも何とかなりそうかなと思いつつ、

基礎編に関しては難なくクリアして

応用編はどうかな?と心配はあったものの

意外と何とかクリア。

 

これは私がスゴイのではなく、

本書がとてもわかりやすく書かれており

難しい内容もかみ砕いてくれているということです。

 

医薬品の名称や病名などは

正直わからないところもありましたけど

それ以外はほぼ問題なくすらすらと読みました。

一般人としては合格でしょう(笑)。

 

本書は経済学の基礎を学び、

そこから医療経済学に足を延ばして

医療を経済的観点から見ることで

現代日本の医療が抱える問題の解決策を

導き出していきましょうというスタンスです。

 

こういう観点はわりかし得意です。

今までそこそこ勉強してきていますので

理解度もまあ高いほうかと思います。

 

取り上げる課題も

医療費増加の問題だったり、

過剰な検査、治療、薬剤の問題、

病院の集約化、進化し続ける医療技術、

医師不足や適正配置の問題など

医療界ではポピュラーなものが多く

経済学的観点からしっかり学ばせていただきました。

 

コロナが発生してから

医療崩壊

医療現場の負担増が取り上げられることも増えて

一般の方の問題意識も高まっていることと思います。

 

厚生労働省も次々と手は打っているものの

1歩遅れている感はありますし、

むしろ1歩先んじなきゃいかんだろうとは思うものの

言うほど易くはないですね。

 

国家の財政問題でもあり、

社会保障をどうするかの問題でもあり、

医療だけで解決できるわけではありませんから

問題提起があまりにも大きすぎます。

 

複雑な背景を理解しておかないと

非常に近視眼的な安易な発想になりかねず、

特に私のように医療従事者ではないのに

医療に関わっている人間は

中途半端な知識で余計なことを言ってはいけない

自分を戒めています。

 

実際に中途半端な発言をして炎上したり、

誰にも相手にされず無視されたりしている人を見ると

実に悲しくなりますね。

 

やはりきちんと知識を付けること。

謙虚に学び続けることが必要不可欠でしょう。

 

康永先生は

ご自身の意見を主張すると言うスタンスではなく、

三者の立場で両論併記、

冷静に分析した上で

時に少しだけ意見を表明するという

その静かさがすごくいいなと思いました。

 

そのほとんどに納得できましたし、賛同しますが、

実はひとつだけ疑問に思った点がありました。

 

子ども医療費の助成に関してです。

康永先生は反対の立場であり

少子化への対策や子育て支援に繋がらないと

お考えになっているようですが、

これだけ少子高齢化が進み

社会や国がぶっ壊れるほどの状況で

子育て世代への支援を断ち切るならば

医療費という財政面では寄与するでしょうけど

益々子どもを産まないという選択肢を取る人は

増えてしまうのではないでしょうか?

 

その頃にオレは生きていないという考えなら

もう何も言えないですけど、

少子化対策はもう打てる手は全て打たないと

間に合わないんじゃないかと思うんですね。

 

今、対策しても効果が出るのは

20年先、30年先なのですし、

経済的にも持たないでしょう。

 

本書は経済学の書籍ではありますけど

高齢者ばかりの国なんて

経済的に成立しないと思われます。

 

その点以外は納得し理解できたのですが

ここだけ残念でした。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

経済学と経営学の切り分けが

医療においては非常に難しいと思います。

 

全体的な経済学的な課題と

医療機関ごとの経営学的な課題は

一緒くたにしてはいけないでしょうし、

でも医療サイドからすると

つい混同してしまうケースが

少なくないようにも感じます。

 

本書のタイトルは

経済学を知らずに医療ができるか!?という

少し刺激的なものですし、

医療従事者の皆さんのための医療経済学入門ですから

若干いいから読め!的な上から目線を感じますが、

内容は非常に平易であり

経済学に苦手意識がある方でも

それほど苦戦はしないんじゃないかと思います。

 

厚生労働省のお役人たちが

医療と経済をどのように考えているのかは

私にはわかりませんけど、

正直、付け焼刃の対策しか打っていないようにも思え、

そろそろ医療経済学という観点から

50年先、100年先のための改革が

待ったなしで必要ではないでしょうか。

 

そんなことを考えさせられました。

 

それでは、また…。

 

 

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