ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

心の底をのぞいたら

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

心のコントロール

現代社会では非常に高次元で求められていると言っても

過言ではないと思います。

 

とはいえどうコントロールするか?は

意外と私たちはノウハウとして持っておらず、

何となく今はバランスが取れているけれども

何かの拍子に急激にメンタルを病むことも

なくはないと言えるかもしれません。

 

時代の進化はさらに早まり、

先鋭化は止まるところを知りません。

 

このまま行ったら

人類全体の精神が持たなくなる日が

もしかしたら来てしまうかもしれませんよね。

 

もっと心を学んでおかねば…。

そんな思いを強くすることもあります。

 

心を科学的に考えれば

精神科医の知見は非常に参考になるでしょう。

 

もちろん科学であるとは思うのですが

それだけでもないような気もしますし、

その辺りもバランス感覚を持って

知的に対処しなければならないとも考えます。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 心の底をのぞいたら 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 心の底をのぞいたら 』

なだいなだ ちくま文庫 を読みました。

 

過去、なだいなださんの著書は

2冊読んでことがあります。

 

ka162701.hatenablog.com

 

ka162701.hatenablog.com

 

独特の言い回しと言いますか、

ニュアンスというか

アンニュイな雰囲気が私は好きです。

 

私が知ったのが遅かったので

まだまだ読みたい興味深い本は多いのですが、

2013年にお亡くなりになられていますので

これ以上著書が増えることはなく、

焦らずにコツコツと読み続けようと思ってます。

 

私にとっては精神科の医師であり

作家であるという点が実に興味津々です。

 

本書はたまたま見つけたものですが、

精神科医であるところを踏まえて

とても面白そうだと期待して手に取ったのでした。

 

目次

1 こころの底は深い

2 おばけがこわいのは…

3 二つのこわさ

4 三十六計、逃げるにしかず

5 痛いと、手をひっこめる

6 あいつはくさいぞ

7 人間と動物のこころ

8 人間が忘れてきたこと

9 無意識の世界

10 自我の構造

 

感想

本書は1971年4月に刊行されたものです。

私が1969年生まれの53歳ですから、

50年以上も前に出されたのですね。

 

ス・スゴイ。

そして恐ろしい。

まさか「なだいなだ」さんも

ご自身で書いた本が50年を過ぎても

読まれているなんて

想像しなかったんじゃないかと思います。

 

ただ本書は「人間の心の底」の話しです。

これが全然古くないんですよ。

それどころか今でも充分に通用するというか、

逆に今の時代が見忘れたことが

ここにはあるようにも思いました。

 

とても深い深い話しをしているのですが、

これが小学生や中学生に優しく語り掛けるような

そんな文体なものですから

不思議とスラスラ読めてしまい、

何だか心地良くもあるんです。

 

私は読みながら不思議な感覚に捉われつつ

ふんわりのんびり読み終えてしました。

 

ヒューマニズムってこういうことかな…と。

フロイトユングなどについても取り上げられていますが

難解なところは一切なく、

むしろフロイトユングの本を読むよりも

なだいなださんの文章を読むほうが

わかりやすくていいんじゃないかと感じました。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介します。

 

こわさとか不安とかの感情は、

人間のほかの感情と、

とくべつにちがったところがある。

どこがちがうか、

君はもう気がついただろうか。

たとえば、好きだ、きらいだという感情がある。

うれしい、悲しいといった感情もある。

それと、こわい、不安だ、という感情と、

どこがちがうだろうか。

そう、もう君にはわかっただろう。

ほかの感情は、

磁石に二つの極があるように、極があるのだ。

好きの反対にきらいがあるし、

うれしいの反対のところに悲しいがある。

ところが、こわいという感情には、

反対の極がない。

こわいか、こわくないかだ。

こわさがゼロということで、

その中間にゼロがあるのではない。

そこが、こわさや不安の感情と、

人間のほかの感情との、

いちばんのちがいだし、

根本的なちがいなのだ。

(P.56)

 

別に何てことのない文章とも言えますが、

素直にこんなことを考えたことがなく、

私たちの感情、つまりまさに本書のタイトル、

「心の底をのぞいたら」なんですよね。

 

現代社会はあまりにも便利になり過ぎて、

ネット社会という昔はなかった

新たなコミュニケーションが浸透したことにより

「心」を大切に、深く考えるということが

非常に少なくなっているように思えるのですね。

 

こわさとか、不安というのは

ごく普通の日常的な感情ではありますが、

こわいって何か?不安とはどういう状態なのか?

そんなことをこれっぽっちも考えることなく、

怖がったり、不安になったりしているのですね。

 

そうか、もっと自分の感情を深く考え、

それにどんな意味があるのか、

もっと考えて行かないと

感情に寄り添うことができなくなりそうだな…と。

 

私は仕事柄、人の感情に寄り添うことが多いので、

現れた言葉の裏にある感情を

もっと大切に受け止めねばならない。

そんなことを考えました。

 

人間のこころの底をのぞくと、

おもいがけないことが見つかる。

そのことが君にもわかったろう。

人間のこころは、動物のこころと、

つながった面がちゃんとある。

人間も動物のひとつだから、

それも当然のことなのだ。

しかし、だからといって、

人間も結局動物にすぎないのだと思ってはいけない。

人間も、動物とおなじような

こころの本能的な動きを持っている。

だが、その本能に動かされるままだったら、

人間は動物のままだったろう。

しかし、人間は、動物とたしかにちがっていた。

そして、どこがちがっているかを知ることは、

人間の人間らしさを、よく知ることになる。

(P.122)

 

う~ん、なるほどですね。

人間の人間らしさ。

動物と似ているところと、

動物と異なっているところ。

 

そこを知らねば、

人間の人間らしいところは理解できない。

 

今までも何度か書いてきましたけれど、

私の学びの目的は

人間を知る、社会の仕組みを知るということですから

このような考え方は

人間を知るために必須なのかもしれないな。

しみじみとそう感じました。

 

こうしたところがあるから、

人間は、ほかの動物とちがって、

いくらちがった民族の間でも、

なんとなく共通なものを持っていて、

わかりあえるような気がするのだし、

おなじ民族の人間に、

なんとなくこころの通いあいが、

あると感じられるのだ。

また、ちがいの点だけを見つめれば、

逆に、おなじ人間でも、人間が変り、

歴史や環境がことなっていると、

これほども変っているのか、

とうていちがった民族の間では、

わかりあうことはできないという気持にもなる。

ところで、もし、ぼくたちが、

どうしておなじ人間であるのに、

このようにちがってきたのか、

つまり自分たちの忘れ去られたこころの部分、

無意識の部分を知ることができれば、

ちがっていることを知りながらも、

おたがいになぜちがったのか理解することができるだろう。

こうした、ぼくたちのこころの中にある忘れ去られた部分で、

おなじ歴史や環境に関係していたところが、

集合的な無意識と呼ばれている。

(P.143)

 

人間を深く知るためには、

意識と無意識の違いにアプローチして

それぞれを明確に切り分けることが必要かもしれません。

 

意識は見えやすいですけど、

無意識は相当に注意深く観察しないと

なかなか理解できないものでもありますよね。

 

だからこそ無意識を追求しなければならず、

なおかつ個人と団体、

場合によっては組織の無意識にまで

踏み込む必要があるのかもしれません。

 

この辺りは心理学的になってきますね。

 

ぼくたちの知らない無意識というものに、

自分が動かされているのはたしかだが、

それでも、ぼくたちが、

わけのわからないことを

年じゅうしでかしているわけでないことも事実だ。

それがどうしてだろうと考えれば、

ニュートンが引力を発見したように、

きっと無意識の中にある構造を発見できたはずだ。

(P.149~150)

 

無意識の中にある構造。

う~ん、これはまた含蓄がありますね。

 

無意識もただ存在しているのではなく、

そこには構造があり、

それによって私たちは動かされているとなると

さらに心の奥底を覗かねばならなくなりますね~。

 

もし、みんなが、

そうした自分のこころのなかにある危険をよく知って、

気をつけるなら、ぼくたちの社会は、

平和に保たれる。

しかし、残念なことに、

現在の人類は、まだ人間のこころを、

あまりにも知らないでいる。

ことに、無意識の部分を知ることは、

とても勇気のいることだし、

むずかしいことでもあるからだ。

(P.189)

 

前述したように

本書は50年以上前に書かれたものです。

果たしてこの50年で

私たちは「心の問題」を

どこまで解明できたのでしょうか?

 

もちろん科学としては

相当に進んだように思いますが、

それと比較したら

私たちの心はまだまだわからないことが

多いんじゃないかと思いました。

 

人間を知るだなんて

そんなに簡単なことではありませんし、

きっとわかるなんてあり得ないのでしょう。

 

だからこそ学ぶ価値があるのでしょうけど。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

1度読み終えて、

この書評ブログを書くために

ところどころ振り返ってみて、

本書の凄さをさらに感じています。

 

グローバリズムだとか、

新自由主義だとか、

拝金主義だとか、

個人主義だとか、

そういうことがバカバカしくなります。

 

なんてくだらないことに

私たちは汲々としているんだろうかと。

 

50年も経って

時代は進化したのか?

むしろ退化したんじゃないか?

 

そりゃ科学やテクノロジー

とんでもないレベルで発展したとは思いますけど

私たちの「心」はどうなのか?

 

おそらく50年前と比較すれば

うつ病などで精神を病んでしまった方は

とんでもなく増えているのではないでしょうか。

 

つまり私たちは「心」を今だ捉えられていない。

どう扱っていいのかわかっていない。

そういうことなのかもしれません。

 

「心」の問題に関しては

それこそ50年前に立ち戻って

やり直すべきなのかな。

 

ついそんなことを思うほどに

とても衝撃的な子供向けの内容でした。

 

それでは、また…。

 

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