ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

コロナと生きる

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

この2~3年。

私たちの生活は変わりました。

コロナの影響がここまで大きいとは

当初は全然思いませんでした。

 

何とかかんとか生き抜いてきてはいますけど

まだまだ予断を許しませんね…。

 

今回ご紹介する書籍は、

【  コロナと生きる 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 コロナと生きる 』

内田 樹 岩田 健太郎 朝日新書 を読みました。

 

コロナ、内田樹、岩田健太郎…。

もうこれだけで読む必要を感じました。

 

以前に読んだ下記の本も非常に勉強になりましたし、

感染症内科を専門とする岩田健太郎先生が

内田さんと対談するなんて見逃せるはずがありません。

 

ka162701.hatenablog.com

 

本書を見つけた時は即買いし、

前の本を読み終えた瞬間に

パッと手を伸ばしました。

 

目次

第1章 リスクとともに生きる

   ー2020年5月14日、凱風館にて

第2章 葛藤とともに生きる

   ー2020年6月10日、凱風館にて

第3章 偶発性とともに生きる

   ー2020年7月6日、凱風館にて

 

感想

本書は2020年9月に発行された本です。

ちょうどコロナの第1波の後くらいでして、

第2波が来る前のようです。

 

私にとっては敬愛する内田樹さんだけでも

充分に読む理由になるのですが、

コロナについて語るなら

やはり岩田健太郎先生でしょ!ってなものです。

 

岩田先生のtwitterもフォローしていますし、

facebookでもお友達になっていただいている私です。

 

医クラでは喧々諤々、

様々な意見があるのは承知していますし、

岩田先生も直言される方なので

時には炎上することもあるようですが、

全く恐れていないんですよね。

 

それだけ正々堂々と逃げも隠れもせずに

自信を持って発言しています。

 

そこに内田さんの知見が上乗せするのですから

面白くないわけがありません。

 

率直に「超」勉強になりましたし、

とても刺激になりました。

心から本書をおススメします。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介します。

 

「医療は商品である」という

原理そのものの無効性を

今回のコロナ・バンデミックは

はっきり可視化したと思うんです。

医療に関しては新自由主義的な発想は

適応できないということがよくわかった。

それはたぶん他の領域についても同じだと思うんです。

グローバル資本主義

「必要なものは、必要なときに、必要なだけ、

 市場で調達することができる」ということを

不可疑の前提に組み上げられたシステムですけれど、

今回の各国の医療資源の奪い合いで、

いくら必要でも市場で調達できないものがあるという

当たり前のことを人々は思い知らされた。

ジャストインタイム生産方式とか、

「在庫ゼロ」とかいうのが

いかに机上の空論に過ぎないか、思い知らされた。

医療資源の戦略的備蓄が十分であれば、

感染症を早い段階で抑え込むことができる。

一報、医療資源を「在庫ゼロ」にして

「コストカットができた」と喜んでいると、

簡単に医療崩壊が起きる。

それで経済が停止したら、

「コストカット」で浮いた分なんか

一瞬で吹き飛んでしまう。

それくらいの損得の算盤は誰でも弾けるはずなんです。

(P.67~68)

 

インフラとビジネスは明確に区分けしないといけないわけで、

医療にしろ、教育にしろ、

インフラをビジネス化しておかしなことになっていると思います。

それが新自由主義なのか、グローバル資本主義なのかは

正直、私にはわかりませんが、

実行して不都合が出たなら早急に変える。

それだけではないでしょうか?

それが今必要なのではないでしょうか?

 

社会全体でパイが大きくなっているときには、

分配方法について文句を言う人は少ないんです。

各自の取り分が前日より増えていれば、

とりあえず文句はないんです。

でも、パイの拡大が止まったり、縮小が始まると、

いきなり手元のパイから隣のパイに目が移る。

「おい、この切り分け方はおかしいんじゃないか。

 どうしても隣のやつがオレより取り分が多いんだよ」

というようなことを言う人が出てくる。

必ず、出てくる。

「パイをどうやって大きくするか」より、

「誰もが納得できる合理的な分配ルール」とか

「厳正な格付け基準」という話に話題がシフトする。

でも、分配方法をどれほど合理的にしても、

格付け基準を厳格化しても、

それはパイの増減には何の関係もないんです。

どうやってパイを大きくするかについて、

みんなで創意工夫をこらすべきときに、

その時間とエネルギーを

分配方法の策定に浪費しているわけですから、

パイは日々縮んでゆくに決まっている。

そして、パイが縮むほど、

分配方法についての議論はさらにかまびすしくなる。

僕はそれがこの四半世紀にわたる

日本の凋落の実相だと思いますね。

(P.101~102)

 

成功は失敗の元とでも言うのでしょうか。

高度経済成長からバブル経済まで

一気に成功体験を味わってしまい、

バブルが崩壊した後も

成功体験に引きずられてきた。

でも根本から変える必要があったのですよね。

 

取り分が云々よりも

パイをいかに大きくするか?

もう1度ここに戻らなきゃいけないように感じます。

 

人と違うことに耐える、

そして誰かが人と違うことをやっても許せる。

この二つの姿勢を僕らが身につければ、

コロナ対策にもなるし、

日本社会のヘンな同調圧力から

脱却できる契機になると思うんですね。

(P.103~104)

 

社会の在り方が変わる。

別に悪いことではありませんし、

良さを残しつつ悪いところは変える。

過去の伝統や習慣や文化に固執せずに

今より良くして行こうという姿勢は必須ですよね。

 

誰かが「いい思い」をしているように見えると、

激しい嫉妬と憎悪が渦巻くというのは、

今の日本社会の際立った特性ですね。

もともと同調圧力の強い社会でしたけれど、

ここに来て、嫉妬を鎮めるために

サービスを均質化するということが

ほとんど自己目的化してきましたね。

(P.106)

 

いくら激しく嫉妬しようが憎悪しようが、

声高に叫ぼうが暴力を奮おうが、

自分には何も手に入らないどころか

今後益々誹謗中傷が厳しく取り締まられるのですから

意味がないどころか

自分が損だということに気付かねばなりませんね。

 

目的はどう考えたってそこじゃない!

 

葛藤の中で人は成熟する。

技術や制度もそうです。

両立し難い二つの要請に同時に応えようとすることで、

イノベーションやブレークスルーが起きる。

(P.131~132)

 

何でも自分の思い通りに行っちゃいけなんです。

むしろその葛藤と戦い続けることで

そこから生まれるものにこそ価値が生まれるのですよね。

 

「他人の基準で自分の生き方を決めるな。

 自分の生き方の基準は自分で決めろ」と言われて、

実際にそうやって生きています。

(P.150)

 

自己責任の時代なんですから

自分の基準で自分の生き方を決めなきゃいけません。

すべての責任は自分が取るのです。

それが嫌なら社畜になるしかありませんね…。

 

僕は医療やウイルスの専門家以外の方から

イデアや意見が出てくるのは大歓迎です。

ただヒートアップして

「あいつの意見は間違っている」と

個人を攻撃する人も増えているので、

それはよくないと思います。

(P.157)

 

私もそう思います。

建設的な意見と、誹謗中傷には

天と地ほどの差がありますよね。

感情的になったら議論になりません。

 

資料が何も残っていない。

どういうデータに基づいて、

誰がどういう指示を出し、

どこで機関決定したのかがわからない。

だから、誰も責任を問われようがない。

でも、いったいシステムのどこに瑕疵があったのか、

どのデータの解釈を間違えたのか、

どの対策が失敗だったのかが一切わからないままにしていると、

次の感染症が襲来したときに、

政府部内には

「すべきこと、してはいけないこと」についての記録が

何も残っていない。

だから、たぶん今回と同じ失敗を繰り返すしかない。

でも、失敗を認めない科学に進歩はあり得ない。

(P.160)

 

政治の腐敗、官僚の怠慢、

記録を残さない、記録を改竄する、

もうこれは許し難い暴挙です。

我が国の歴史上でも

こんなにヒドイ時代は他にないと思います。

私は保守が好きですけど

今の自民党は全く支持できません。

野党も支持できませんが…。

 

コロナは科学で扱える問題であり、

科学的な態度とは、

事実に対して背を向けないことですから、

それがたとえ、都合の悪い事実でも、

きちんと直視することが大切です。

(P.179)

 

ホントおっしゃる通りですよね。

それを捻じ曲げる政治の存在価値とは?

実に恥ずかしく思います。

またこの国は大東亜戦争と同じ失敗を繰り返のかと

情けない限りです。

 

要するに日本は、

問題をどう解決するかよりも、

その場をどう丸く収めるか、

というのを会議の目的にしているんですね。

(P.185)

 

若手官僚よ、ここをぶっ壊せ!と

心から応援したいですね。

 

上の世代のやっていることはもう古いんです。

だから世界から遅れるんです。

国内だって誰も支持していません。

 

どんなに反対が出ても

問題を解決するのが目的のはずなんです。

やっちゃえ、若手官僚!

 

日本人の場合は、

国難的状況に対して、

ライフスタイルを切り替えるということに

慣れていない。

「正常性」バイアスが強い国民性だと思います。

だから、感染症に対応するときに、

政治家たちが

「この状況からどういう政治的浮揚力を引き出すか?」

ということをまず考えるというようなことが起きる。

平時の損得勘定を平気で、

非常時局面に適用しようとする。

上に立つ人間が

「どうやって感染拡大の責任を回避し、

 感染抑制の手柄を独り占めにするか」と

いうことばかり考えている。見苦しい限りです。

こういう場面で民主主義の成熟度が露呈するんだと思います。

(P.226

 

与党も野党も全然ダメ。

 

これは内田さんの持論ですが、

大政奉還と廃県置藩でやり直す。

そのほうがよほどいいと思います。

 

私たちが私利私欲のために権力に近づき、

おこぼれをもらおうとするのではなく、

徹底的に政治家を叩き直さねばならないでしょう。

 

日本がここまで落ちぶれた要因の多くは

政治にあると思います。

 

ここで論じられた2020年のコロナウイルスについての

一連の出来事は少し時間が経ってしまったら

「昔の話」として忘れられてしまうと思います。

ですから、本書もあと半年もしたら

速報性・時事性という意味では

あまり価値のない書物になる可能性があります。

でも「科学的な態度」が

どういうものかを知るための資料としては

時間が経ってもその価値を減じることはないと思います。

(P.234)

 

もうホントおっしゃる通りです。

確かに本書には古さを感じる部分もありました。

 

しかしそこだよ!そこ!という

「科学」との向き合い方の基本があって

それを政治と行政がいかに機能させないように

暗躍してきたのか。

 

社会の仕組み、構図や構造がよくわかりました。

 

 

評価

おススメ度は ★★★★★ といたします。

 

コロナに苦しんできた今だからこそ

逆に読む価値があるように感じました。

 

今なら冷静に振り返ることができますからね。

まだまだ今後どうなるかわかりませんが、

私たちは「科学的」に事態を捉えて

政府や自治体にプレッシャーを掛けていくべきと

心から思いました。

 

それでは、また…。

 

 

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