ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

院長選挙

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

小説は事実より奇なり。

そう言われますよね。

 

これを逆に捉えると

小説で起こるようなことを想定しておけば

多少なりとも厳しい事実に直面したときに

心の準備ができているのではないか。

 

そんなふうに考えたりするのですが、

果たしていかがなものでしょうか?

 

私の場合は

仕事柄、医療系の小説はそれなりに読みます。

 

もちろん、そんなバカな…みたいな

奇想天外なストーリーがあったりもしますけど

概ね、そういうシーンって

実際の医療現場にもあるかもしれないな…と

そんなケースのほうが多いように感じています。

 

実際、多くの医師と話しをしていると

ああ、やっぱり小説通りだな…とか

時には小説よりも大変な環境だなと思ったりしますが、

自分の想像力を豊かにするためにも

小説は読んでおいたほうが良いと考えています。

 

ただ、どちらかと言うと

小説よりもノンフィクションだったり、

エッセイやコラムのようなものを好む傾向にある私ですが、

医療系の小説は読もうという気になります。

 

あとはビジネス系ですね。

当書評ブログでもお馴染みになっている

城山三郎さんの作品は読みたくなります。

 

医療系ですと海堂尊さんですね。

海堂作品を読んだことが

医師であり作家である方の著書を

読みたくなるきっかけだったかもしれません。

 

できるだけ視野を広げて、

様々な作家さんの本を読んでいきたいです。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 院長選挙 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 院長選挙 』

久坂部 羊 幻冬舎文庫 を読みました。

 

久坂部先生の著書は、

過去2冊だけですが読んだことがあります。

 

ka162701.hatenablog.com

 

こちらは大学病院について書かれた内容ですが、

とても素晴らしく勉強になりました。

 

ただタイトルがセンセーショナルにし過ぎていて

出版社に対して疑問を持つこととなりました。

 

もう1冊は…

 

ka162701.hatenablog.com

 

こちらは著者が医学部に入学してから

医師として経験を積みながらも

なぜか作家となっていった過程を書かれています。

 

かなりフランクな内容で、

これはこれで面白かったです。

 

本書はたまたま本屋で見つけたのですが

久坂部先生の小説はまだ読んでないと気づき、

これは1度読んでおかねばならないでしょうと思いました。

 

しかも院長選挙というタイトル。

果たしてどんなストーリーが展開されるのか、

非常に興味深く思いながら読み始めたのでした。

 

目次

第1章 伝説の教授室

第2章 手術部風呂

第3章 犬猿の仲

第4章 アンフェア・プレー

第5章 謝罪会見

第6章 コメディカル

第7章 面白い巨塔

 

感想

いやはや非常に面白い内容でした。

ただ一般の方受けはしないかもしれません。

 

だって医療業界の内部事情と言いますか、

もっと言えば医師の愚痴が多いです(笑)。

 

あるあるなんですけどね、

私の立場上、あんまり言えないんですけど

〇〇科と△△科の関係は良くないケースが多いとか、

◇◇科は□□科をバカにしているとか、

そんな話しの連発です。

 

私には興味深かったですし、

医療業界に携わっている人にとっては

まあそんなもんだよね…という程度なのですが

多分、一般の方がこういう話しを聞いたら

ちょっとショックを受けるかもしれません。

それくらいに良くも悪くもあからさまでした。

 

ストーリーはシンプルなんです。

ある大学病院の院長がお亡くなりになり、

院長選挙が行われることになります。

 

医療崩壊について取材をする若手のフリーライター

院長候補の副院長である教授たちに取材をするなかで

なぜかドップリと巻き込まれてしまい、

ハラスメントやゴルフ接待や

船上パーティーやらに参加して、

そのなかで医療の深いところに引きずられていく。

 

副院長の4名だけでなく、

その他の診療科目の教授たちや

コメディカルの責任者に取材を進めていくなかで

良くも悪くもそれぞれの個性に直面し、

失望するやら、辟易するやら。

 

とにかく登場人物である医師たちが

あまりにも飛び抜けて個性的ですから

言葉は悪いですが相当にバカバカしいんです。

 

しかしおそらくこういう人たちは

医療現場に普通に存在するでしょう。

 

いや、さすがにここまではいないだろうと思いたいですが、

私が今まで医師から聞いた話しを振り返ってみても

充分にあり得そうな話しだなとは思います。

 

また辛辣だったのは

看護部長、薬剤部長、技師部長でしたが、

これもわりと現実的でしょうか。

 

それぞれの副院長の欠点をあげつらい

その内容が驚くようなひどいものではありますが、

きちんとその裏側の長所も理解していたり、

でも医師としてというか

人としてどうなの?という部分もあり、

どうしても疑問は持ってしまいますけど

別に医療業界に限った話しではなく、

どこも上層部はこんなもんかな?と思うところもあり、

微妙な思いを持ちつつ

一気に読み終えてしまいました。

 

唯一、事務部長だけは

副院長たちに驚くほどに好意的です。

 

これはいわゆる「ザ・忖度」なのでしょうけど

人間社会の複雑さというか、

人間関係の嫌なところでもありますけど

現実社会でもよくあることですし、

ストーリー的にもアクセントとなっていて

良い悪いは別にして

あるあるだなあと思いました。

 

個人的にはとても勉強になりました。

ただ悪口が多いので

そこに辟易とする方は少なくないと思われます。

 

逆に言うと信憑性が高いとも言えるのですけど

小説とはいえどもあんまり悪口は聞きたくないという人には

少し不向きかなと思いましたね。

 

でも現実的ではありますし、

悪口もユーモアとして捉えれば

本書は非常に面白くなってきます。

 

おそらく医療従事者が本書を読めば、

普通だよ、こんなもんだよ、と言うでしょうからね。

 

それくらいにリアルですし、

ここは医師であり、

作家である著者の腕の見せ所とも言えますね。

 

第7章は「面白い巨塔」と題されてますが、

お菓子の白い恋人をモジって

面白い恋人という商品が流行ったことがありましたけど

これなんかはブラックユーモアですね~。

 

フィクションとはいえ、

これおそらくモチーフとなる人が

確実にいたと思うんですね。

 

ある1人とは言いませんけど、

あの人とこの人をこんな登場人物として出したら

ちょっと面白いんじゃないか?と

著者がニヤニヤしながら着想していった感もあり、

医療現場のブラックな部分を

ユーモア化した点には拍手を送ります。

 

ちょっと好き嫌いが出そうですけど

ある意味ではかなり笑えて、

ある意味では深刻でもあり、

医療現場を学ぶには良い小説ではないかと感じました。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

一気に読ませてしまうというのは

作家の力量として重要であると思います。

 

その意味では本書はまさに一気読みできます。

特に大学病院とか、大学教授とか、

少しでもその実情を知っている人にとっては

あるあるの連発ですし、

あ、うちの〇〇教授にそっくり…

なんてこともあるかもしれません。

 

医師のキャリア支援として

転職やクリニック開業をお手伝いしている弊社としては

本書を必読の書として

社員の課題図書にしようかと思ってます(笑)。

 

それでは、また…。

 

 

*ジーネットTV 毎週新着動画をアップしています!

医師キャリア相談

*ZOOMキャリア相談を無料で行っています。

 

ジーネットが発信する情報提供サイトはこちらです!>
ジーネット株式会社 公式ホームページ
医療ビジネス健全化協議会<IBIKEN>ドクター向け情報提供サイト
ジーネット株式会社 <社長のtwitter>
ジーネット株式会社 <社長のfacebookページ>

よろしければ下記もポチっとお願いします!
      にほんブログ村 転職キャリアブログへ

診療圏調査バナー