ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

ペルソナ 脳に潜む闇

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

最近使われる用語で「ペルソナ」がありますね。

 

普通に訳せば「人格」でいいのでしょうけど

我が国ではどちらかと言うと

マーケティング用語になってしまっているでしょうか。

 

商品やサービスのターゲティングとか

いわゆる属性とか、購入可能性が高い人とか

ちょっと違う意味になってしまっていますよね。

 

私はむしろ心理学的な「ペルソナ」に興味があって

そういう本を読みたいという欲求もありましたので

ちょうどタイミングが良かったのです。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 ペルソナ 脳に潜む闇 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 ペルソナ 脳に潜む闇 』

中野 信子 講談社現代新書 を読みました。

 

ここ最近の私はテレビをあんまり観ません。

子供の頃は良く観ましたけど、

最近はめっきり観なくなりました。

 

朝食を食べながらニュースを見たり、

夕食を食べながらバラエティ番組や

スポーツ番組を観たりくらいはしますけど、

毎週必ず欠かさず観るとか

そんな番組はほとんどありません。

 

しかし「英雄たちの選択」という番組だけは

毎回録画をして時間がある時に観ています。

 

歴史好きとしては

この番組だけは見逃すわけには行きませんし、

とても勉強になっています。

 

そしてこの番組のいいところのひとつに

ゲストがその道の専門家であり、

コメントが非常に学びとなるんですね。

 

もちろん司会の磯田道史さんもいいですし、

歴史家も数多く出演されるんですけど

そのなかで非常に気になるのが中野信子さんなんです。

 

最近はいろんな番組に出演されているらしいですが、

私はこの英雄たちの選択でしかお見受けしません。

 

しかし番組内の中野信子さんは

歴史を、人物を、脳科学という観点から解説し、

非常に興味深いコメントをするのですね。

 

また服装や髪の色も個性的で

何だか気になる存在です。

 

あくまでも私はこの番組内の彼女しか知らないのですが

多くの著書を出しているようですし

いつか読んでみたいとは思っていました。

 

実際にAmazonなどで

どれを買おうかと選んだこともありました。

 

何せ著書が多いので

なかなか決めきれずにいたのですが

ようやく決めたのが本書「ペルソナ」です。

 

脳科学者が「ペルソナ」を語るって

かなり興味深くないですか?

 

しかも本書は中野信子さんの自叙伝的な

位置づけでもあるようです。

 

彼女のコメントに面白味を感じていますし、

キャラクターもユニークなので

これは読む価値ありと判断し、

購入、即、読み始めたのでした。

 

目次

はじめに わたしは存在しない

1章 サイコマジックー2020

2章 脳と人間について思うこと

   ー災害と日本 2010~2019

3章 さなぎの日々

   ー塔の住人はみな旅人である 2000~2009

4章 終末思想の誘惑

   ー近代の終わり 1990~1999

5章 砂時計

   ー1975~1989

おわりに わたしモザイク状の多面体である

 

感想

う~ん、面白い。

私にとっての期待は裏切られませんでした。

それどころか、中野信子さんという人物に

さらに興味が湧いてきました。

 

自叙伝だけあって

かなりご自身の人生を赤裸々に語っていますけど

ストレートな物言いもあれば、

複雑な自分との向き合ってきた経験など

いろいろご苦労なさってきたのがよくわかります。

 

特にジェンダーの問題や

東京大学在籍時や博士課程で学んでいた頃の話しは

こちらも考えるところが多かったです。

 

そして中野さんの考え方、

常識を覆すというか、

伝統や文化を疑い

新時代に適応するプロセスなどは

キャリアや人生を考える私としては

とても良い考えるきっかけになりました。

 

私はバリバリ文系人間なので、

一部にわかりにくいところはあったけど

逆にわかりやすいところもあり、

まあ、いい年して、

文系理系の違いなんてありませんが、

学問への探求の仕方みたいなものも学べましたね。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介いたします。

 

わたしのペルソナ(他者に対峙する時に現れる自己の外的側面)は、

わたしがそう演じている役である、

といったら言い過ぎだと感じられるだろうか?

あなたが、わたしだと思っているものは、

わたしではない。

一時的に、そういう側面を

見て取ってもらっているだけのことである。

(P.9)

 

そうそう、そういうペルソナを追求したいのよ。

中野さんらしさ満載でここから楽しみ。

 

この人たちは、

すでに自分の中に答えを持っているのだ。

それは自我を守る形で感情と結びつき、

かなり強固に構築されてしまっていて、

それを否定し去ったり解体したりすることは、

自分を傷つけることにつながるから、

他の答えを受け入れることが容易ではない。

それが反発につながってしまう。

(P.41)

 

これは中高年男性に多い傾向がありますね。

あとはtwitter民にも多いでしょうか。

安易な答えを知るよりも、

問い続けることのほうが価値がありそうです。

 

もはや世間から見た成功と

人生の満足度とは違うと、

自らの満足度の方に重きを置く

生き方を模索できる時代に今はなってきている。

(P.61)

 

おっしゃる通りと思います。

価値観の多様化どころか

価値観の一新が近づいています。

若い人はすでに過去の成功の形なんて

興味すらないし。

 

耳障りのいい言葉はほとんどの場合、

不都合な真実とセットである。

短期間のうちに起こされる、

大きな変化の後には、

弱者が犠牲になるものだ。

そしてまた、適応し過ぎた者も

新しい環境では生き延びられない。

多様な可能性を捨て、

選択と集中」戦略を取って環境に適応し、

利得を増やそうとして柔軟性を失った者は、

ひとたび環境が変わると滅びてしまう。

かつて地上を我が物顔にのし歩いた恐竜のように。

(P.109~110)

 

適者生存。

これからのサバイバルはもうこれだけですね。

環境変化に適応するってこと。

 

だから高齢男性は過去にしがみつく。

変化を止めようとする。

でも、止まらないのは歴史が証明していますね。

 

人間は思っているほど

一貫しているわけでもなく、

一つの顔しかもっていないわけでもない。

(P.143)

 

これ、ジーンと来ました。

逆に言うと私たちはなぜか他者に対して

一貫性を求めてしまってますし、

一つの顔を期待します。

 

そうでないとわかりにくいし、

自分が対応できないからなのでしょうけど

でも、そんなわけはないですよね。

 

いろんな人がいて、

いろんな価値観を持っていて、

人は変わるし、

そういう人間の本質に切り込まないと

これからの対人関係って

スムーズにいかないような気もします。

 

本当に溺れている人は

溺れているようには見えない。

溺れる人は、

静かに沈んでいく。

これは比喩ではなくてまさに文字通り、

そうなのだ。

(P.173~174)

 

溺れるというのを

単に海や湖や川で溺れるという意味と

メンタル的に社会に溺れるとか

他人との関わりに溺れるとか、

自分がわからなくて溺れるとか

様々な意味に捉えることもできそうです。

 

溺れる者は藁をもつかむと言いますが、

本当は藁をつかむことすらできないケースが

危機的と言えるのかもしれませんね。

 

うつなどの気分障害は、

人生における諸問題を効果的に分析し、

対処可能にするという目的のために生まれた、

脳に備え付けられた仕組みの一つなのかもしれない。

たしかに気分は良くないものだ。

けれど、抑うつ状態が存在せず、

ストレスもトラウマもなく、

自身の問題について

深く長く反芻的に思考するという習慣がなければ、

人間は、ひとたび自分が困難な状況に置かれたとき、

その苦境を脱することが難しくなってしまうのではないだろうか。

私たちの現在の繁栄は、

ネガティブな抑うつ的反芻によって

もたらされたものかもしれないのだ。

そして、抑うつ的反芻ができるということこそが、

知性の反映であるのかもしれない。

(P.180)

 

医学的に正しいかはわかりませんし、

精神科医神経内科医の医師に言わせれば

また違う見解が出てきそうではありますが

こういう見方もありかなとは思います。

 

歴史を振り返ってみても

うつ的な偉人って存在していたでしょうし。

 

いい歳になってから、

いまさら勉強するなんて遅いという人がいる。

けれど、学ぶことに年齢は関係ない。

いつでも思い立った時に始めればいいのだ。

勉強したいと思った時が適齢期、だと私は思う。

むしろ、ある程度の年齢になってからの方が、

学習効率もよく、

有機的な学びができる可能性さえある。

若い学生の持っていない材料も持っている。

(P.192)

 

大賛成です。

良いことを始めるのに遅すぎるなんてありません。

 

私自身も本当の意味で勉強が楽しくなったのは

30歳を過ぎてからです。

 

ま、言い訳ですし、

早いに越したことはないですけど、

でも「今でしょ!」というタイミングは

いくつになってもあると思ってます。

 

光の当て方によって

人格はさまざまな色に変化し、

見え方も形も変わっていく。

部分の組み合わせ方の妙で、

意外な側面が見え隠れするとき、

それとの出会いが新しい楽しみにもなる。

(P.231)

 

中野さんの自分語り。

実に楽しませていただきました。

ここまで赤裸々に語ることには

おそらく相当の躊躇があったと思います。

 

でも私はむしろ好感を持ちました。

人間とはそんなに浅いものではないし、

誰にだって隠したい恥部や

嫌な思い出があるものですよね。

 

それを乗り越えて書かれたこと

素直に頭が下がります。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

脳科学という領域は

私にとっては正直あまり興味が持てませんし、

そこを学ぼうとは思いませんけど

脳科学を専門とする中野さんの社会の見方や

人間との距離感や付き合い方などは

実に参考になりました。

 

中野さんって

これからの時代を担う

正当な変わり者(もちろんいい意味で)なのかもしれない。

そんなふうに受け止めました。

 

機会があれば

他の著書も読んでみようと思います。

 

それでは、また…。

 

 

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