ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

ネット社会の未来像

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

未来なんて

誰にもわからないものではあると思いますけど、

ここ3~4年で

さらに先が見えなくなっていますね。

 

賢者は歴史に学び、

愚者は自らの経験に学ぶと言われますが、

まさに先行き不透明な時代である現代は

歴史に学ぶ必要があるんじゃないかと思います。

 

ただ歴史と言っても

戦国時代や明治維新など

大きな出来事ではなくて、

いやそれも大事なんですけどね

少し前から学ぶこともあるんじゃないでしょうか。

 

特にネット関連ですと

ここ10年、20年に急激に広まったものですし、

その頃にどんな課題があって

何を言われていたのかは

知っておくのも良いかと思うんです。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 ネット社会の未来像 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 ネット社会の未来像 』

宮台真司神保哲生東浩紀水越伸

西垣通池田信夫 春秋社 を読みました。

 

本書のタイトル、

ちょっと興味深く思いませんか?

 

まして宮台真司さんと東浩紀さんが

執筆陣に名を連ねているとなると

私の興味はグングン上がりました。

 

本書が発行されたのは2006年なんです。

 

さすがにちょっと古いかなと思うものの

この当時にネット社会がどうなると思われていたのか、

その点は知っておきたいなと思ったのです。

 

それが冒頭の歴史から学ぶということなのですが、

私の世代ですと

ポケベルが広がって

次にガラケースマホという流れを

それなりの大人になってから実感してきました。

 

Windows3.1からWindows95

社内に閉じ込められていたネットワークが

インターネットを通して世界中と繋がるようになるのも

パソコンというハードの進化も含めて

実体験することができたのですね。

 

今、思えば貴重な体験ではありましたが

あんまり深く考えずに

ごく普通に意識することなく

どんどん便利になってしまったのですね。

 

おそらくこのプロセスにおいては

様々な社会的な課題を乗り越えてきたはずですし、

もしかしたらそのまま放置された問題も

あったかもしれません。

 

どんなふうに現代に繋がったのかを知るためにも

この頃の本を読むのもありかと考えた次第です。

 

目次

第1章 「動物化」と監視社会の奇妙な関係

     ー忍びよる情報化の影

第2章 NHK問題から見る日本のメディア

     ー権力の介入とメディアの公共性

第3章 メディアの生態系

     ーフジテレビ騒動からメディアの未来を考える

第4章 テレビとインターネットの仁義なき戦い

     ーホリエモンのビジネスモデル

第5章 著作権のかげにあるもの

     ーウィニー開発者逮捕に見る権益の相克

終章 ネット社会の未来像

     ー小泉自民党圧勝に見る日本社会の変容

 

感想

これはこれで面白いというのが

率直な感想です。

 

上記の目次をご覧になっていただければ

お分かりの通りに古いんです。やはり。

 

でもその後のネット社会を鑑みると

ここから、こういうところからスタートしたんだなと

感慨深くもあります。

 

もともと新聞社がテレビ局やラジオ局を持ち、

独占状態でうまい汁を吸っていたのが

この国のメディア界でした。

今でもそうです。

 

メディアが機能していないのは

そのせいです。

 

それをネットがぶっ壊すかと思いきや、

そこまでの大きな変化にはなっていないと思われます。

 

むしろ今も過渡期と言えるでしょう。

 

本書を読むと

社会の問題、メディアの問題、

それにネットがどう関わるのか?

理想的な未来像とはどんな状態なのか?

そんなことを考えさせられます。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。

 

他人に尊敬されたいとあまり思っていないこと、

これが僕の言う「動物化」の本質です。

他者関係において

自分の欲望をコントロールしていないということです。

(中略)

これはすべて、

コミュニケーションによって、

自分の初期の感覚を訂正しているわけです。

人間の文化はそうやって成立している。

(P.36)

 

コンテンツに対して

どう反応すべきか?が動物化していて

人として劣化しているのではないかという

宮台さんの問題提起ですが、

テレビでも、ラジオでも、ネットでも

非常に興味深い観点であると思いました。

 

著作権侵害やプライバシー侵害という名目で、

ある種の言論弾圧ができてしまう。

だとすると、むしろこちらこそが監視社会と言えないか。

つまり監視社会に反対するひとが、

容易に監視社会の担い手になってしまう。

それが現代社会です。

(P.57)

 

まさに矛盾でありますし、

複雑系とも言えるでしょうか。

これはいかに法律に落とし込んでいくのか?

できた法律が逆に監視社会を助長するとなると

それはかなり悩ましいことになりそうですね。

 

多くの人間が、思考停止状態で、

矛盾する要求を出しすぎています。

ということは、自分たちを/自分たちが、

支えているアーキテクチャーについての自覚や、

それに基づく想像力が、

だらしなく欠如しているということです。

「風が吹いたら桶屋が儲かる」が重要です。

自分が何をしていて、

それが何に繋がってどんな帰結をもたらすか。

因果や機能を、

波及効果に至るまで見渡す力をつけないと、

矛盾する要求群から恣意的にピックアップされた上、

政策担当者や警察に利用されてしまう。

(P.60)

 

う~ん、確かに…と唸ります。

ずっとこういうことが行われてきて

私たちは自分で自分の首を絞めてきたのかもしれません。

 

自分が何をしているかをわかっている。

それが何に繋がっているかを知っている。

こういう思考がないと暮らしにくくなるでしょうし、

事実、現代社会はその方向に進んでいるのでしょう。

 

いつでも但し書きをつける立場をとります。

何ごとにつけ「絶対反対」も「絶対賛成」もありえない。

但し書きをたくさんつけて、

付帯効果に注目しながら、

是々非々で選択してもらうしかありません。

(P.64)

 

これは思わず膝を打ちました。

昨今では何でもわかりやすくし過ぎなんですよね。

だから二極化が進む。

そこにあるのは賛成か、反対か、という二択です。

 

でもそんなに世の中は単純ではないし、

賛成と反対の間というポジショニングもあるはずです。

 

二択は危険です。

それは今の政治状況を見れば

よくわかりますよね。

 

日本の右とか左といっても、

実際は、国際水準ではどれも、

まんなかあたりに固まっているわけです。

いきなり社民主義を掲げたり、

天皇中心の政治を提唱しているわけでもないですからね。

だからこそ、いきなり凄く右とか左の番組が出てくれば、

バランスを欠くと批判されるのもわかりますが、

普段は自分たちの都合で

まんなかあたりに固まっているのですから、

それは自業自得じゃないかと思う。

(P.83)

 

日本のメディア、

五大紙と系列テレビについて語っているですが、

そうなんだ、日本の右や左は世界的に見れば

まんなかなんだ…と思いました。

 

世界情勢はわかりませんが、

確かに日本は右が左っぽく、

左が右っぽいところもありますね。

そうなんだ、まんなかなんだ…。

 

公共性が「お上に従うこと」から

「自分たちのことは自分たちで解決すること」に

シフトしなければ社会システムが機能不全に陥るのが、

近代成熟期なのです。

それに対応して、

NHK的な「上からの公共性」を、

市民メディア的な「自分たちの公共性」に

置き換える必要があります。

(P.129)

 

果たして我が国に近代成熟期が来るのか?

正直、心許ないところがありますけど

いつまでも国に頼っていたら

これからの時代は益々窮地に陥る気がしますね…。

 

僕も若い頃、

市民運動や左翼運動に関わったこともありますが、

僕たちのなかには

まだムラ的なメンタリティが残っているせいか、

ちょっと活動が成功すると、

その中で溺れてしまうんです。

お祭り騒ぎで元気になるのは大歓迎だけど、

そのために外部が見えなくなるんです。

「喜ぶのもそこそこにして」という

「内心」が不在なんですね。

(P.132~133)

 

何となくわかります。

別に私は市民運動に参加したことはないですが、

ビジネスでも一緒です。

成功体験が次の失敗に繋がるのですね。

だから成功って恐ろしい。

視野が狭くなるのですね…。

 

本来、エリートになる以外にも、僕は、戦後の日本が、

自己実現のタイプをあまりに貧しくしてしまったことが、

敗者の数を増やしてしまったと思うんです。

もし学校が全然おもしろくないというなら、

不登校になるより、

どこかの職人に弟子入りしたほうがいい。

彫金をやってもいいし、

コックさんをめざしてもいいと思う。

多様な自己実現の形態があるはずなんです。

(P.199)

 

その通り!と思いました。

私はキャリアの世界で長く生きてきましたので

仕事とか、働くとか、

そういう点については熟慮してきました。

 

我が国はもう教育の時点から

公務員とサラリーマンを育成することになっていて

それが今だに変えられていないんですね。

 

そして公務員とサラリーマンが足かせになって

経済成長がストップしている。

もう教育制度から変えなきゃダメでしょうね…。

 

これからはますます多くの人が誤情報に踊らされ、

その結果失敗を体験するでしょう。

そうやってようやく、

メディアの情報を真に受けずに

フィルタリングしたり

解釈したりする必要性を認識するようになり、

そのためのツールやメソッドが探索されていくでしょう。

そのツールのひとつが

「信じられる人を探す」ということです。

(P.305)

 

メディアの凋落により信頼が失われ、

誰を信頼していいのかわからない。

情報リテラシーがないと

物凄く生きにくくなるわけで、

詐欺が横行しているのも

その結果のひとつかもしれません。

信じられる人がいるかどうか、

本来は家族や親戚が果たすべきでしょうけど

ここも崩壊してしまっていますね。

大丈夫でしょうか、この国。

何も信じることができない…。

 

人々を呪術から解放した目的合理の志向が、

内発的な価値志向から見放される結果、

何を最終目的とした目的合理なのかを見失うことで、

事実的なシステムのなかでのサバイバル動機だけに従属する、

という堕落を批判します。

(P.313)

 

目的は何か?

現代社会では私たち個人もそうですし、

多くの組織も同様かもしれませんね。

 

評価

おススメ度は ★★★☆☆ といたします。

 

面白かったんです。

勉強にもなりました。

 

部分部分ではとても良かったですし、

文句のつけようがないのですが

さすがにネットについて語るとなると

古さが隠せません。

 

それだけ変化の激しいものなんですよね。

まあ、これはこれでいいっか。

そんな感じです。

 

それでは、また…。

 

 

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