おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
70年も平和に過ごしてきた我が国ですが、
これは世界的に見れば奇跡みたいなもので
世界では紛争は絶えませんね。
ロシアのウクライナ侵攻を例に出すまでもなく、
内戦が続いていたり、
政府が国民を攻撃したり、
もっと言えば無政府状態になっている国もあり、
日本という国は良くも悪くも幸せですよね。
でも、そうは言ってられなくなっているのも事実。
隣国は騒がしい。
憲法9条についても賛否両論となり、
変えたくてしょうがない一派の発言力は増しています。
江戸時代を見ればわかるように
260年も平和が続いた我が国は
もっと世界に平和という観点で貢献できると思いますけど
どうやらそういう考えは排除される方向にあるようです。
今回ご紹介する書籍は、
【 世界「最終」戦争論 近代の終焉を超えて 】 です。
本書をピックアップした理由
『 世界「最終」戦争論 近代の終焉を超えて 』
敬愛する内田さんと
論客として名高い姜尚中氏の対談です。
タイトルが「最終戦争」とくれば
これは読まねばならないと思いました。
近代の終焉というのもいいですね。
時代の転換期である現代は
まさに近代と次世代の狭間にあるのではと思います。
新書だし、一気に読むぞと
気合いを入れて読み始めたのでした。
目次
序章 問題提起 世界は「最終戦争」に向かっているのか
第2章 我々は今、疑似戦時体制を生きている
第3章 帝国再編とコミューン型共同体の活性化
第4章 グローバリズムという名の「棄民」思想
第5章 シンガポール化する日本
第6章 「不機嫌な時代」を暴走させないために
感想
さっすが~というのが最初の感想です。
まあこのお2人が対談して
つまらないわけがないと個人的には思うのですが
もともとの期待値が高かった私にとっても
充分に満足できる深い内容でした。
何だか疑問に思っているとか、
これからどうなるんだろうと不安だという方は
現代ではかなり多いんじゃないかと思います。
これを言語化してくれているのが本書です。
あ、そう考えればいいんだとか、
なるほど…そう捉えればわかりやすいなとか、
私たちが普段、悶々とすることを
ズバッとわかりやすく教えてくれます。
これがまたスゴいんですよ。
言語化ってまさにこういうことだねという
ハイレベルな話し合いがなされています。
私があーだこーだ言うよりも
下記の私がグッと来た箇所をご覧下さい。
きっとそのほうが伝わると思います。
誤解している人が多いですけれど、
知識人の知性は、
他人の欠陥をあげつらうときの
舌鋒の鋭さによってではなく、
自分の犯した失敗や罪過について、
その由来や成り立ちを明快に
説明できるかどうかによって判定されるべきものなのです。
(P.44)
戦争はトップリーダーの過ちです。
プーチンを見ればわかりますよね。
きっと超優秀で政治力を持った
ロシア史上でも有数の人だと思いますが、
知性は欠如していますね。
日本の政治家を見ると
知識や知性は欠片もなくて、
あるのは政権維持への執着と
既得権死守だけのように思えますけど
これは言い過ぎですかね?
知識と知性を持った人に
政治家になって欲しいですね。
病識さえあれば、
ではどうやって治療しようかという
具体的な話になる。
でも、「俺たちは健康だ」と言い張っている限り、
治療は始まらない。
フランスもアメリカも
自分たちが罹患している病気から目を背けている。
それが、彼らが様々な問題に遭遇しながら
解決の糸口を見い出せないでいることの原因だと思います。
(P.70)
このフランスとアメリカの議論は
非常に興味深かったです。
テロを受ける国にも要因というものがあり、
ある意味では防止できなかった為政者たちは
罪深いと言えるのでしょう。
いや、難民を拒絶できるわけがないです。
だって、難民って、
そもそも欧米が主導したグローバル化の帰結ですからね。
(P.73)
グローバリズムの弊害が
世界のあちこちで散見されます。
それでもまだグローバリズムにしがみつく
失敗を認められない人もいます。
難民は世界中で問題視されていますが、
ただ排除しようとするのではなく
その根本的要因を追究せねばならないでしょう。
右傾化し過ぎた勢力は
その点を軽視し人心を乱しているように見えます。
まだまだ混乱しそうですね…。
戦争をこの世からなくすとか、
この世からテロをなくすというと、
そのためには必ず
「この世から戦争をなくすための最終戦争」が
起案されることになる。
(中略)
「戦争を根絶するための最終戦争」などというものは、
この世に人間が生きている限りあり得ないんです。
だから、原理と原理が衝突して、
お互いに相手の原理を許容できないという
非妥協的な対立場面では、
とりあえず死者があまり出ない方法を考える。
どちらに理があるのかという原理の問題では、
とりあえず死者があまり出ない方法を考える。
(P.89)
そっか、そうだよな。
そりゃ戦争やテロが完全になくなるなら
それに越したことはないけれど、
現実的にゼロになるとは思えない。
悲しいけれど。
であるならば少しでも死者を減らすという
この方針は決して間違っていないと思うのです。
ところがそんなことを言っている人は皆無ですよね。
政治家や財界人というのは
戦争をしたがっているのかもしれませんね。
「生きるためになくてはならないもの」は定義上、
どんなことをしても、命を削っても、
未来を担保に入れても、
手に入れるしかないからです。
だから、「生きるためになくてはならないもの」を
選択的に破壊している限り、
経済成長は終わらない。
ストックは破壊されますよ。
でも、フローは潤沢に流れる。
地球環境はどんどん汚染され、
貧しくなってゆくけれど、
商品や資本の流動性は高まる。
経済成長論者たちだって、
そういうメカニズムだということは
わかっているはずです。
経済成長するためには戦争するしかない。
(P.95~96)
我が国が敗戦、廃墟から復活できたのは
朝鮮戦争の特需があったからですもんね。
トリクルダウンに頼った経済政策が
大失敗に終わってしまった今、
日本経済復活のために戦争を求める
政治家や経済人がいても不思議ではないでしょう。
完全に悪魔に魂を売っているとは思いますけど
それも人間ではありますからね…。
藩主として行政経験の豊かな人たちが
順番に国政を担当する。
幕末の四賢侯のように、
国難のときに国政の舵取りができるだけの器量と
見識がある藩主たちが制度的に育成されていた。
これは多くの大統領が州知事で州政の経験を積んだ後、
アメリカの州だって、いきなりできたわけじゃない。
まず独立して、それから準州になって、
最後に議会で承認されて州に昇格した。
だから、日本もそのやり方でいいんじゃないですか。
みんなが「自分のくに」と思えるエリアがある。
それを独立的に運営する。
それは日本における「ステート」になる。
それが連合して
「ユナイテッド・ステーツ・オブ・ジャパン」を形成する。
それでいいじゃないですか。
(P.113~114)
内田さんの持論である廃藩置県の反対、
「廃県置藩」から話しが膨らんでいますが、
これ、凄いなあと思いませんか?
賛否両論はあるかもしれませんが、
でも「否」なのは行政サイドだけかもしれません。
私たちの暮らし、生活を最優先すれば、
単なる統治の問題だけではなく
ある種の人生論でもありますね。
明治時代から続く国や社会の構図、構造が
かなりの金属疲労を来たしています。
ここらで総合的に変化を促してもいいかもしれませんね。
理解や共感の上に
コミュニケーションを基礎付けるのではなく、
理解も共感もできないけれど、
現に傷ついたり損なわれたりしている
生身の人間が目の前にいたら、
「人として」放置しておくわけにはいかない。
そのレベルでの共生。
(P.205)
世界中の人々が手を取り合って仲良くしていく。
理想ではありますが、
それがそう簡単ではないのは
歴史が証明していると言わざるを得ませんね。
そんなの理想論だよ…と言うだけではなく
今、すぐにできることと言えばこの辺りなのでしょうか?
でもこれができたら
今よりも世界は良くなる気もしますが…。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
少し前にカントの「永遠平和のために」という
本を読みました。
今、この時代ですから
もう1度じっくり考えたい平和。
平和を考えるためには
戦争を知らねばなりません。
我が国も大東亜戦争から70年が経ち、
かなり風化してしまっていますよね。
だからこそ識者の見解を学びたいし、
カントを読んだその流れで
戦争を内田樹さんはどう語るのか?
姜尚中さんは内田さんから何を引き出すのか?
とても興味深く思ってましたが
「ブラボー!」と言いたくなるほど
素晴らしい展開でした。
おススメです。
それでは、また…。
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