おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
他業界から学ぶ。
とても大切なことだと思うんです。
どうしても自業界だけですと
発想も思想も限定されがちなんですよね。
時々は意識的に
他業界の方と話したり、
全然違う業界の本を読んだり、
これはすべきことのひとつだと思います。
今回ご紹介する書籍は、
【 全米№.1クリニックが教える最強のマネジメント 】 です。
本書をピックアップした理由
『 全米№.1クリニックが教える最強のマネジメント 』
レナード・L・ベリー、ケント・D・セルトマン
訳 近藤 隆文 を読みました。
本書はいつ、どこで、どう手に入れたのか、
全く覚えていません(笑)。
いつか読まなきゃとは思っていたのでしょうけど
かなり分厚い本ですし、
なかなか手が出なかったんですけど
一応、経営コンサルタントとして
病院やクリニックをサポートすることもありますので
そろそろ積ん読から解放せねばと思いまして
真面目に学ぶ気で読み始めたのでした。
目次
第1章 100年ブランドの誕生
第2章 患者第一という遺産を守る
第3章 チーム医療を実践する
第4章 デスティネーション医療の実践
第5章 リーダーシップのための提携
第6章 価値観と才能で雇う
第7章 品質の手がかりを編成する
第8章 ブランドをつくり、広げ、守る
第9章 明日の組織に投資する
第10章 人間の潜在能力を発揮する
感想
率直に言って
とても勉強になりました。
私の仕事柄というのもありますが、
これは経営やマネジメントに携わる人にとって
実に参考になる有益な本であると感じましたね。
メイヨー・クリニックの中心的なふたつの価値感、
”患者のニーズが第一”と
”医療は協力の科学として実践すべし”は、
他の全てを律するものだ。
(P.130)
もうここに尽きるのですが、
なぜ?そうするのか、
そのプロセスはどうだったのか?
結果はどうなのか?
これらが全て手に入ります。
我が国の医療機関、
すべてが真似できるわけではありませんし、
似たような展開を作ることができる企業も
そう多くはないでしょう。
それでもメイヨークリニックが
100年を掛けて作り上げてきたものから
学ぶべき点、真似るべき点は
とても多いんじゃないかと思います。
実際に私自身も弊社に組み込みたいと
思うところが多かったです。
またこれは偶然ですが、
ちょうど本書を読んでいる間に
ある病院さんから経営コンサルティングの打診を受けたり、
開業準備を進める先生とお会いしたので、
本書は超おススメですとお伝えしました。
皆さんメモを取ってましたので
おそらく購入してお読みになられると思います。
それくらい私が熱く語っちゃいました。
医療機関の経営はもちろんのこと
経営に関わる人には是非とも読んで欲しいです。
では恒例の私がグッと来た箇所をご紹介いたします。
ヘルスケアの顧客は多くの場合、
他のサービスの顧客よりも全体的に
カストマイズされたサービスを求める。
ヘルスケアサービスは患者固有の病状だけでなく、
患者の年齢や精神状態、性格、嗜好、学歴、家庭環境、
財政上の制約にも合ったものでなくてはならない。
重大な病気では「全人的」なサービスが強く求められる。
(P.46)
医療特有な事情は
カストマイズされたサービスであり、
その追求こそが
医療機関のマネジメントなのだなと感じました。
人と人の関係ですからね。
しかも究極的に…。
労働集約型のサービス組織は
年をへるにつれて
効果的ではなくなるのが普通だ。
官僚的で規則主導に傾き、
柔軟さと機敏さに加えてハングリーさも薄れる。
サービス組織はサービスに従事する人々の
個人的な献身とエネルギーがなければ、
すぐれた組織となることも、
その状態を維持することもできない。
ありがちなのは、こうした人々が活気、
”ボランティア精神”、
サービスに対するより一層の努力を失うことだ。
結果として、成功していた、
もしくは非常に有望な事業がつまづくことになる。
(P.52~53)
うちのコンサル事業も
労働集約型だけに身に沁みました。
要はマネジメントの欠如であり、
経営の機能不全なのですよね。
我が国の場合は、
一部の大学病院や自治体病院に
こういった傾向が強いでしょうか?
トップが天下りじゃダメでしょう。
責任が取れる現場を知る人じゃないといけませんね。
とりわけ声を大にして伝えたいのは、
診断を下すためには
綿密な診察が必要不可欠であることです。
わたし自身の経験からいうと、
世間の人々は診断ミスよりも治療ミスに寛大ですし、
診断の誤りの半分以上は
軽率あるいはぞんざいな診察によるものだと
確信しています。
結論に飛びつくのではなく、
予断を排し、毎回、徹底した念入りな診察をするよう
肝に銘じることで、
成功は保証されるのです。
(P.54)
素直にスゴイと思いました。
こういう医師がメイヨークリニックという
名門病院を紡いできたのですね。
医療の不確実さとの戦いは
真摯な姿勢が根底に必要なのですね。
第一の価値観は組織をその「存在理由」に集中させる。
複雑になりかねない意思決定の正しい道筋を明らかにし、
あらゆる組織 ー とそこで働く人々 ー が経験する
苦しい時期に大局観を示してくれる。
価値感は実際の考動によって守られるのだ。
(P.99)
何のために、誰のために。
価値観をうわべのもので終わらせないために
そこで働く個々の思いに浄化させていく。
組織運営の鏡だなと思いました。
メイヨーの文化に引かれる人たちは
こう考えています。
医療がもっともうまく実践されるのは、
専門医たちが融合して
チームとして機能するときだと。
それこそわれわれがもっとも得意とするところで、
そこに魅力を感じる者がほとんどです。
何より励みになるのは、
分野の異なる専門医のグループの
チームワークによって成功したときで、
まるで野球でホームランを打った気分になります。
(P.108~109)
日本でもチーム医療が広まりつつありますし、
別に医療業界だけでなく
どんな組織でもチームワークは必要ですね。
合わない人は
ここじゃない場所で活躍してもらうのがいいですね。
「教えよ、責めるなかれ」
(P.114)
原則というのは
正しいものこそシンプルですね。
教育とはこうあるべきと思いました。
メイヨーには院長がひとり、
副院長が1500人いる。
(P.188)
これ、スゴクないですか?
こういう組織って強いです。
私もこんな組織を作りたい。
管理者は複数のものをくっつける接着剤や、
それらをなめらかに動かす潤滑油を供給しています。
(中略)
パートナーとして協力すると
単独でするより良い仕事ができるのが普通だ。
(P.192)
これもいいですよね。
マネージャーや経営者って
こうあるべきなのだろうなと率直に思いました。
卓越することが目標なら、
つくりもののインセンティブが
本物のモチベーションにかなうことはない。
すぐれた仕事をする人間にとって報酬は喜びになり、
その報酬が負ければ喜びはさらに大きなものになる。
それでも、彼らは給料をもらうために働くのではない。
彼らが働くのは仕事を愛しているからだ。
(中略)
ドクター・ブルベイカーは、
自分は働いたことが一日としてないと書いていました。
病院内のオフィス、診察室、手術室、研究室に
出かけて働くことを楽しんでいました。
だからこそ、
メイヨーでの30年をリクリエーションとみなし、
自分の人生には一日として働いた日がないと言ったのです。
(P.217)
素直にスゴイと思いました。
働く人たちがこう思えたら
きっとステキな日々が過ごせるでしょうし、
こんな職場が増えたら
とてつもない社会への貢献であると思います。
我が国にもこんな医療機関が増えたら
ホントにいいですよね~。
サービスはパフォーマンスであり、
パフォーマーの個人の価値観がとても重要になる。
それは医療業界の内でも外でも変わらない。
(P.268)
だからこその価値観の共有。
人が集まって仕事をするのですから
これは最重要と言っても過言ではないでしょう。
自分の会社もこうありたいと思います。
メイヨー・クリニックは
成長よりも品質と一貫性を重んじる
慎重な団体であり続ける。
守られるべき評判は
もはや創設者であるメイヨー家の評判ではなく、
4万2000人以上の職員の良い仕事のおかげで
今日繁栄を続けている組織としての評判だ。
メイヨーブランドは信頼されているブランドだ。
クリニックの指導者たちは患者と紹介医からの信頼こそ、
なんとしても守りぬかねばならない
貴重な資産だとみなしている。
(P.370~371)
組織として何を守るべきか。
軽薄なブランディングや
浅慮なマーケティングに頼ってはいけませんね。
薄っぺらい世の中だからこそ
メイヨーの強固なポリシーが素晴らしく感じます。
医療は米国のためになる最大の要素になり得る。
国のもっとも大切な財産は国民の健康だからだ。
(P.436)
私は医療は国の根幹であり、
あらゆる経済活動の源であると考えていて、
それを支える医療従事者は国の宝物であると考えています。
アメリカでも、
まあメイヨークリニックだけかもしれませんけど
似たような考えが出てくるとは思いませんでした。
我が国も、特に政府や官僚から
こういう言葉が出てくるべきだと思いますけどね。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
ボリュームもたっぷりで読み応えもありましたけど
内容が実に興味深かったので
あっという間に読み終えてしまいました。
メイヨーには
メイヨーにしかできないものが多いと思いますけど、
大事なエッセンスを取り入れて
自分のところらしく改革をすることはできるはずです。
目指せメイヨーなんて簡単には言えませんし、
本書を読む限りは
素晴らしいところばかりなんですけど
内情では欠点、短所もなくはないと思うんですね。
それでも知っておくべき経営論であると感じました。
それでは、また…。
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