ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

すらすら読める風姿花伝

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

どんな分野でも

「古典」って敬遠しがちですよね。

 

いや、そんなことないぞという方も多いでしょうけど

そうなんだよね~読みにくいもんね~という

私のような人も少なくないでしょうか。

 

ただ不思議なもので

年齢を重ねるごとに

広い意味での「古典」に対して

徐々に興味が湧いてくるから人生って面白い。

 

もちろん若い頃から

しっかり読み込んできた方もいらっしゃるでしょうから

そういう方と比較したら遅きに失しているのですけど

それでもこの年代になって

少しでも「古典」に触れられるようになった自分を

ちょっとだけ褒めてあげたいっす。

 

レベルは低いですけどね(苦笑)

 

今回ご紹介する書籍は、

【 すらすら読める風姿花伝 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 すらすら読める風姿花伝

林 望 講談社+α文庫 を読みました。

 

何かの本で

世阿弥の「風姿花伝」の存在を知り、

あ、これは読みたいと思ったのですね。

 

でも「古典」ですから読みにくそうだし、

どこまで理解できるのか不安でしたし、

楽天Amazon

わかりやすい「風姿花伝」はないかと探して

これだ!と思ったのが本書です。

 

いくら「古典」といえども

これならさすがに読めるだろうと思い

すぐさまポチっとして読み始めたのでした。

 

目次

古典はむずかしくない

風姿花伝

風姿花伝第一 年来稽古条々

風姿花伝第二 物学条々

風姿花伝第三 問答条々

第五 奥儀云

花伝第六 花修云

花伝第七 別紙口伝

風姿花伝』とは何か

 

感想

恥ずかしながら

私は別に世阿弥のことを

それほど知っているわけではないし、

能に興味があるわけでもありません。

 

ただ世阿弥が天才と呼ばれたこと、

そしてたまたま知った風姿花伝

なぜか関心を持っただけの話しなのです。

 

しかし本書はとてもわかりやすく、

元の文章と解説の両方を読むことで

理解度がかなり上がりました。

 

そのおかげで世阿弥の凄さを感じましたし、

風姿花伝の価値も理解することができました。

 

別に芸事に限った話しではなく、

風姿花伝は人生論でもありますし

ビジネスとしても現代社会で通用する

物事の考え方があるように感じました。

 

特に部下や後輩を持つ方には

風姿花伝から学べるところは大きいと思いますし、

何より世阿弥の思想から手に入るものは大きそうです。

 

そうは言っても世阿弥自身は

晩年はかなり厳しい状況に追い込まれていたことを知り、

それも天才の馴れの果てかとしみじみ思いました。

 

ある種の悲劇の主人公のようなところがあるからこそ

この風姿花伝は現代に伝わっているのかもしれません。

 

室町時代に書かれたものが

現代人にも学びとなるなんて

とんでもなくスゴイことですよね。

 

いや~風姿花伝は読んでおいて良かった。

世阿弥を少し知れて良かったです。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。

 

したがって、この時分の稽古は、

年齢相応のやりやすいところを舞台で

華やかに見せるようにして、

一方、一つ一つの基礎的な技を

丁寧に稽古することが肝心である。

すなわち、動作を確実にし、

謡いは発音を正しく明瞭にするように心がけ、

舞も一つ一つの所作をきちんと守って、

大事に大事に稽古しなくてはいけない。

(P.20~21)

 

これは12~13才の

少しセンスのある少年たちに向けての注意点というか

その年代の子たちを育成しようとする大人に向けて

注意喚起というところでしょうけど

ビジネスパーソンにも通用しそうですし、

若手の医療従事者も同様でしょうか。

 

少子高齢化の時代ですし、

若手の育成は多くの組織での課題でしょうか。

 

世阿弥の考え方から学ぶ教育論。

意外といいかもしれませんよ。

 

一時かりそめの花を

ほんとうの花だと思い込んでしまう心が、

真実の花に遠ざかる心である。

そんなふうにして、誰も彼も、

この一時かりそめの花を褒められて

有頂天になる結果、

すぐにその花は失せてしまうのだということも

悟らない。

(P.35)

 

人間というのは

いつの時代でも変わらないものですね。

 

謙虚さを失い大失敗する。

ずっと続いている歴史と言えるかもしれません。

 

好事魔多し。

上手く行ってる時ほど

謙虚に自分を省みたいですね。

 

一、好色、博奕、大酒。

(これ、古人の掟なり。)

一、稽古は強かれ、情識はなかれとなり。

(P.54)

 

これなんからも昔から言われることですし、

今でもこういう人は少なくありません。

 

そう考えると

世阿弥は人間の本質というか

そこに斬り込んでいたのだなと感じます。

 

ふたつめのところは

稽古はどんなにしてもし過ぎることはない、

しかし、自我に拘泥して諍う心は去るべしという意味だそうです。

 

ほんとうに技術も優れ

工夫努力を窮めた名人上手であれば、

たといそれが下位の者の芸であろうとも

学ばずにおくということはありえない。

今お尋ねのように

上手のシテが下手の技を学ばないというような

現実があるというのは、

つまり今述べたような技術工夫を窮めたシテが、

万人に一人もいないから、

それでそんなふうに見えるのであろう。

どうしてそういう人がいないのかというと、

誰も彼も、

ちょっと上達すると

もはや工夫をする真摯な心が失せて

慢心してしまうからである。

(P.108~109)

 

人生の二大失敗要因は

「焦り」と「慢心」であると

何かの本で読みましたけど

本当に「慢心」というのは避けねばなりませんね。

 

それが頭でわかっていても

「慢心」してしまうのが人間の性みたいなものでしょうか。

 

きっと賢い人は

ここをセルフコントロールするのでしょうね。

 

世阿弥は間違いなくその1人だったのかと。

 

されば上手にだにも、

上慢あらば、能は下がるべし。

いはんや叶はぬ上慢をや。

よくよく公案して思へ。

上手は下手の手本、

下手は上手の手本なりと工夫すべし。

下手のよきところを取りて、

上手の物数に入るること、

無上至極の理なり。

(P.114)

 

この箇所以外は「訳」した文章をご紹介していますが

ここはよく知られていることもあり、

あえて古語体でご紹介します。

 

上手は下手の手本、

下手は上手の手本なり。

 

自分が上手なことでも

下手なことでも

永遠に学ぶことがあるという状態が

圧倒的に望ましいのでしょうね。

 

まずは基礎、

なにはともあれ自分の専門を固めよ、と。

万事はそこから始まるので、

それ以外の道はありえない。

(P.137)

 

これなども日本全国の部下を持つ方々が

そうだ!と言いたいところでしょうけど、

肝心な部下たちの価値感では

なかなか理解できなかったりするのですね。

 

キャリア論とも言えそうです。

 

自分のできることと

やりたいことはだいたいイコールではありません。

 

プロとしてお金をもらうのであれば

できることを確実にすべきですが、

できないくせにやりたいことをやろうとして

上司と部下の関係性が悪くなると言うことも多いでしょう。

 

とにかく基本基礎、原理原則、

そして自分の専門、できること、強みを持つこと。

 

これだけでも時間は掛かりますけど

それをした先にしかやりたいことをやるという世界は

やってこないんじゃないでしょうか。

 

実際、能というものは、

人の生死、恋愛、親子の情、君臣の義、神仏の理、

喜怒哀楽、生きとし生けるもののすべてのありようを

過不足なく描き出す芸能である。

そこには、さまざまに変容する無数の技を

適切に用いて演能することが求められる。

それがためには、いつ使うかは考えずに、

いつでもすぐに取り出して使えるように

技を日ごろから磨いておかなくてはならないという

心掛けを説いているのである。

(P.166)

 

能とは何ぞや?と問われたら

これが回答になるかなと考えてご紹介いたします。

 

もっと深みのある答えも必要でしょうし、

その歴史を見ないといけないとも思います。

 

ただシンプルにわかりやすくと考えたら

かなりいい線を行っているかなと。

 

生きとし生けるもののすべて。

それを演じる。

スゴイことですね。

技術に終わりもないでしょう。

 

秘めておくからこそ、

それが花になる。

あからさまに公開してしまったら、

もはや花ではない。

(P.185)

 

芸とは何か?

人を喜ばせ、感動させ、

心を動かすものだとすれば

最初からすべてを出してはいけない。

 

出すべき時に

必殺技を出すべきなのだ。

 

これなどもビジネスにも通じそうですね。

商談や、交渉にも言えることでしょうか。

 

「花」ということには、

因果の通りがあるということ、

これが本書究極の主旨である。

万物一切、みな原因があって結果がある、

というこの理を逃れることはできない。

(P.189)

 

さらっと読めば

その通りだよね…ということですけど

私たちが日々味わる結果には

必ず原因があるのですよね。

 

わかっているようでわかってない。

結果を変えたければ

まず原因にメスを入れなければなりません。

 

自分が嫌な思いをしているなら

人に嫌な思いをさせていないか?

ここからよく考えるべきですよね。

 

まさに因果応報です。

 

少しの時間のあいだにも、

隆運発展の「男時」と

衰運停滞の「女時」という変化があるだろう。

私たちの努力ということとは無関係に、

能にも、よい時があれば、悪い時も必ずある。

これは人間の力ではどうにもならない因果である。

(P.190)

 

人生楽ありゃ苦もあるさ。

最近では知らない人のほうが多いでしょうけど

昔の水戸黄門の歌でした。

 

バイオリズムの問題というか

私たちの毎日には良い時もあれば悪い時もあり、

世阿弥のこういう時にどうすべきか?は

大変に読みがいがありました。

 

能も人生なんだなぁ。

 

家は家ではない。

後を継いだものを以て家となすべきものである。

人は人ではない。

道理を知るものを以て人となすべきものである。

(P.205)

 

世襲議員とか、

親の七光りとか、

そういうバカな人たちに

世阿弥から学べと言いたいですね。

 

化けの皮はすぐに剝がれるのだから。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

まずこのすらすら読めるシリーズを選んで

大正解でした。

 

とてもわかりやすく

ポイントを絞ってくれているので

理解度はかなり高いと思います。

 

部下や後輩を持つ人には

世阿弥の考えはとても参考になるでしょう。

 

また巻末の「『風姿花伝』とは何か」は

とても勉強になりました。

 

世阿弥の生涯や

風姿花伝の書かれた背景がわかり

最後に本書の価値を高めてくれました。

 

やはり古典から学ぶところは多いですね。

素直に読んで良かったと思えました。

 

それでは、また…。

 

 

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