おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
キャリアは中長期戦です。
そして人生はさらに長い視点で考えないと
時に私たちは自分を間違えさせることになりますよね。
もちろん今だって大切だし
今を丁寧に生きることで
未来に繋がっていくのですから
今と未来は1本の線で繋がっています。
言葉にすると簡単なのに
それでも見誤ることが多いのが
我々人類の「業」というものでしょうか。
ほとんどの大人が
毎日仕事をしているわけですけど
誇りを持って仕事ができている人は
それほど多くないかもしれません。
会社や、上司や、組織に翻弄されて
やりたくもないことをせざるを得ない。
食べていくためには
それでも仕方ないのだ。
そう自分で自分を思わせて
何とか日々を生きている感じでしょうか。
そういう世の中なのですから
サバイバル戦略としては
わりかし有効とも言えるでしょうけど
本当にそれでいいのか?
今のままでいいのか?と
自分に問い掛け続けることが不可欠ですし、
時には勇気を出して1歩を踏み出すことも
必要にはなると思うのですね。
迷った時には
人間とは何だ?
なぜ私たちは生きていかねばならないのだ?
生きて何をなすべきなのか?
そんな哲学的なアプローチも必要ですし
生命を考えることもあって然るべきでしょう。
医療本、医療小説には
そういうヒントが隠されているように思います。
今回ご紹介する書籍は、
【 外科医、島へ 泣くな研修医6 】 です。
本書をピックアップした理由
『 外科医、島へ 泣くな研修医6 』
中山 祐次郎 幻冬舎文庫 を読みました。
泣くな研修医シリーズも
ついに6冊めです。
本書が発行されたのは
2024年1月ですから
この書評を書いている8月時点では
まだ新作と言ってもいいでしょうか。
毎度楽しみに読ませてもらっている
このシリーズですけど
医療従事者ではないにも関わらず
医療従事者と毎日やり取りをする私としては
大変に参考になるところが多いです。
著者である中山祐次郎先生とは
面識を持つことができましたので
さらにストーリーにも没頭できるようになってます。
過去作は下記に書評を書いています。
泣くな研修医の7冊めも
とても楽しみにしていますし、
中山先生の著書は
すでに積ん読になっている本も数冊ありますので
適宜、機会を見ながら読み進めていくつもりです。
本作は「島へ」とついているように
どうやら離島医療について書かれているようです。
外科医の主人公が
離島でどんなことに遭遇するのか?
これはこれで大変に楽しみにしながら
読み始めた次第です。
目次
Part1 神仙島診療所
Part2 島外の患者
Part3 祭りの夜
Part4 緊急手術
Part5 島で生きる
エピローグ
感想
う・う・う、面白い。
一気に物語に吸い込まれてしまい
あっという間に読み終えてしまいました。
さすがの中山節とでも言うのでしょうか。
本作品も愛溢れる内容となっており、
主人公の雨野先生に感情移入しつつ
シンプルに読書を楽しんでしまいました。
しかし単なるストーリーテラーなだけではなく
そこはやはり現役の医師である中山先生です。
離島医療への問題を浮き彫りにしつつも
魅力的な登場人物たちを上手く動かしながら
医療とは何だ?
医療従事者とはどういう人たちだ?という点を
鋭く追求してくれています。
想像上では離島医療やへき地医療の課題など
それなりの知識を持っているつもりでしたが、
やはり現場はそんな甘っちょろいものではありません。
島にたった1件しかない診療所を中心に起きる
様々な事件、出来事が
離島医療の課題を広く知らしめることにもなり、
中山先生が本書で言いたいこと
何を書きたかったのかが自ずと理解できるような気がします。
読み物としても優れていますが、
私には人間模様と言いますか…
その点がすこぶる感心できました。
そんなことあるわけないだろう…というものではなく
まるで事実をありのままに書かれているような
リアリティが高いところが素晴らしい。
丹念に取材を重ねて
小説に落とし込んだ感じがして
医療を学ぶ1人の人間としても
大変に好感が持てましたし、
小説ではあるのですが
知識を身につけることもできたように感じます。
やはり私たちは
自分の生きている世界以外は
どうしても想像力を持たねばならず、
でもそんなきっかけはそうそうあるものではなく
それが現場の課題を放置することにも繋がり、
社会全体の課題が
置き去りにされたままになってしまっています。
本書を読めば離島医療の課題が
多くの人に知らしめることになり、
何らかの改善に繋がるのかもしれない…。
そんなことを考えさせられました。
あともうひとつは
これは私の勝手な解釈ですけど
医師のキャリア論としても
本書は有効に機能するのではないかと思いました。
もちろん多くのドクターが
離島やへき地の医療を経験すべきだなんて話しではなく
まずは知るということが大事なのだと思うのです。
多くの医師がそれなりの知識はお持ちでしょうけど
具体的な現場の苦労などまでは
想像ができないのではないでしょうか。
神仙島に行かないか?という
部長先生からの提案に
主人公の雨野先生は
ほぼ即決するような形で
「行きます!」と決断します。
急性期病院で外科医として働き
毎日忙しくオペの技術を磨いてきた医師として
なかなか即決することはしずらいはずです。
まあ小説だからというのはありますが
一応キャリアの専門家としての私としては…
「キャリアの80%は
予期しない偶然の出来事から形成される」
こんな言葉を思い出しました。
キャリアプランに沿って
キャリアアップするのは
あくまでも理想であって
むしろキャリアアップは
実は偶然の出来事が果たすことが
意外と多いというのは
これは現場で働く私の実感としてもあるのです。
雨野先生は
離島で医師として働くことに
何かチャンスと言いますか
自分の成長のきっかけになるのではないかという
予感を感じたのでしょう。
こういうことって
私たち誰にでも必ずあるはずなのですね。
でもその時に「やります!」「行きます!」と
突っ込んでいける人は多くはありません。
そりゃ環境が許さない事だって
少なくはないと思いますし、
そこに未来が見えないとか
何らの価値も感じないとか
どういう意味があるんだ?と思い
スルーしてしまうことは多いことでしょう。
しかし大した理由もなく
そこに突っ込んでいける人というのは
やはりそれだけの経験値を身につけることができますし、
失敗を恐れずにチャレンジすること
もうそれ自体に大きな意義があるのだと思います。
実際に本書では
神仙島で雨野先生は様々な経験をして
医師としてひと回り大きくなったのではないでしょうか。
私たち個々も
「やります!」「行きます!」と
偶然の出来事を活かすような
そんなキャリアの積み方ができると
本当はいいのだろうな…なんてことも考えました。
それと離島について。
よく考えてみると
私たちの暮らすこの日本列島は島なのですよね。
本土に住む我々から見ると
小さな島はたくさんあれど
世界から見たら
日本自体が離島みたいなものでしょうか。
この観点は見失ってはいけません。
私たちは離島に住む民族なのだ。
そこを思考の出発点にすべきかもしれません。
中山先生の著書は「優しい」と
私の書評では何度か述べていますが、
本書におきましても
この「優しさ」は全開です。
人が亡くなったり、
辛い思いもたくさんするのですけど
その根底にある「優しさ」ことが
中山先生の真骨頂なのだろうなと感じました。
是非とも離島医療の現実を知るためにも
現場で奮闘する医療従事者へエールを送るためにも
多くの方に本書をお読みいただきたい。
素直にそう思える良書でした。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
なぜか中山先生の著書は満点が多いです。
それだけ私自身がファンになっているというのもありますが
ここで声を大にして言いたいのは
医療業界で働くビジネスパーソンには
是非とも中山先生の著書を読んで欲しいということです。
それは我々の仕事を面白くするため
やり甲斐を持つためでもありますし、
我々の仕事に「価値」を持たせるためにも
必読の書と言えるのではないかと思うからです。
事実、弊社では中山先生の著書は大人気でして
全社員が競うようにして読んでいるのです。
きっとそれがモチベーションアップにも繋がり
仕事の意義を知ることにも繋がっているように感じます。
そんなきっかけを与えてくれる本なんて
世の中に何百万冊という書籍があっても
そう滅多にあるものではありません。
医療関係者に限った話しではありませんけど
中山先生の著書にはプロとしての矜持とか、
仕事をするにあたっての大事な考え方とか、
医療とは何だ?
生きるとは何だ?
生命とは何だ?という
私たちが問い続けねばならない大命題が
隠されているように感じるのです。
これは読まないのは損失だと思うのですよ。
なので私は書評で大々的におススメをいたします。
別に私に利害のある話しではないのですけど
いいものはいい!と素直に伝えたいのですね。
最後にこの泣くな研修医シリーズですが
これからの展開がさらに楽しみです。
すでに研修医ではなくなっていますけど(笑)
雨野先生がどんな医師になっていくのか?
結局ゴールなんてあり得ないのですけど
別に医師だからという話しではなくて
職業人としての生き方とか、生き様とか、
そういうものを感じることができるのも
このシリーズの素晴らしいところだと思います。
中山先生には
是非ともライフワークの一環として
泣くな研修医シリーズを続けていただきたいですし、
おお、そう来たか!とか
え、そんな展開もありなの?という
意外な構想もおそらくお持ちになっていると思われますので
思う存分、中山先生自身が大いに楽しみながら
続けて下さったら嬉しいなと思ってます。
それでは、また…。
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