おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
一応、私も経営者の端くれですから
経営本はそれなりに読みます。
30代後半から40代半ばの頃は
それこそ貪るようにして読んでいました。
最近はもう少し深い世界というか
哲学や社会学を学ぼうとしていますので
ひと頃と比較すると
経営書を読む頻度は減りましたけれど
それでもやっぱり時々は
じっくりと読みます。
もちろん自分のためであり
自社のためでもあるのですが、
最近はクリニックの開業支援や
経営コンサルティングに関わることにより
医師の皆さまのために
経営を勉強する必要も出てきています。
ビジネスパーソンとしては
ポジションには関係なく
経営は学ぶべき対象と言えるでしょう。
経営って難しいですけど
面白いものでもありますので
引退するまで継続して
経営本は読み続けたいと考えています。
今回ご紹介する書籍は、
【 経営改革大全 企業を壊す100の誤解 】 です。
本書をピックアップした理由
『 経営改革大全 企業を壊す100の誤解 』
名和 高司 日本経済新聞社 を読みました。
何で知ったのかは忘れましたけど
なぜか私の心にぶっ刺さりました。
この本は読め!という神の声が
聞こえたような気がしました。
私はこういう第六感というか
直感にはわりと素直に従うほうです。
すぐに楽天ブックスでポチッとしたのですが
届いてみたらビックリです。
デカい。そして分厚い。
おお、こりゃ相当に気合いを入れて
読まなきゃいけない本だぞ…と。
でも一応経営者の私ですから
逃げるわけにはまいりません。
気合十分で手に取った次第です。
目次
第1部 迎合から先導へ
第1章 株主にへつらうな
第2章 従業員にへつらうな
第3章 顧客にへつらうな
第4章 世間にへつらうな
第2部 シフトからアップグレードへ
第5章 「デジタル」の先へ
第6章 戦略論に飛びつくな
第7章 グローバル経営の落とし穴
第8章 事業モデルというコモディティ
第3部 進化する世界
第9章 経済モデルの進化
第10章 組織モデルの進化
第11章 人財モデルの進化
第12章 ガバナンスの進化
第13章 経営モデルの進化
第4部 日本企業の未来
第14章 岐路に立つ日本企業
第15章 共感を生む日本的価値観
第16章 志本経営を目指せ
感想
いや~、ガッツリ経営を勉強しました。
心からそう思える素晴らしい経営本でした。
相当に読み甲斐がありますよ。
そして大変に勉強にもなりました。
今まで数多くの経営本を読んできましたが
本書はベスト3に入ると言っても過言ではありません。
ひと言で言うなら
広く、深く、経営を追求しています。
すべからく経営者の方にはおススメできますし
経営を学びたい方には必読の書と言えるでしょう。
えっと、恒例の私がグッと来た箇所ですが
今回は多いです。
たっぷりとご紹介いたします。
ハーバードビジネススクール
ジョセフ・バウアー教授
「健全な資本主義のためのコーポレートガバナンス
エージェンシー理論から企業主体の理論へ」
エージェンシー理論の5つの誤謬
①会社法上、株主は会社の所有者ではなく、
株式の所有者にすぎない
②株主(特に投信などの受益株主)は
企業経営に関心を寄せるインセンティブがない
③株主は企業活動に責任を持たず、
企業利益を守る責任もない
④株主中心主義は、経営の視野を極端に狭める
⑤株主の目的はさまざまであり、
十把一絡げに経営主体するのは不適切
(P.17)
アメリカでもこういう論説が
それなりに力を持ち始めているのですね。
資本家が力を持つのが資本主義。
でもまともな資本家であればいいですが
労働者を奴隷のように扱う資本家であれば
ハッキリ言って存在悪です。
ダメな資本家を排除するような
そんな仕組みが必要ではないでしょうか?
結局ビックモーターの奴らは逃げ切ったし
小林製薬の会長は高給で居座っているし。
「働き方」改革というネーミングそのものに、
ボタンの掛け違いがある。
生産性を高めるためには、
働き方というHowを論じる前に、
働く中身というWhatを見直す必要がある。
働く中身にやりがいを感じるかどうかで、
従業員の生産性は大きく変わる。
コンサルティング会社
面白い調査結果を発表している。
やる気溢れる社員は、
「不満」社員の3倍以上、
「満足」社員の2倍以上、
そして当事者意識のある社員の1.5倍
高いパフォーマンスを出すというのである。
しかも、日本の企業にはやる気溢れる社員は
10%にも満たないのに対して、
「不満」社員は30%に上るという。
社員のモチベーションを上げることこそが、
生産性向上のカギとなることは明らかだ。
(P.35~36)
ホントここだよね…とつくづく思います。
やる気のない社員を前提に
法律や仕組みやシステムを構築するから
おかしなことになるんであって
やる気溢れる社員を前提に
すべてを構築すれば
やればやるほど得になる制度を作るのだから
自ずと生産性向上に繋がりますよね。
最近ジェフ・ベゾスCEOは、
新入社員に対して、
WorkーLifeーBalanceという幻想は
捨てるように明言しているという。
なぜなら、その言葉はWorkとLifeが
トレードオフ関係にあることを前提としているからだ。
そしてWorkーLifeーHarmonyこそが
目指すべき姿であると唱えている。
WorkとLifeは、
シンメトリー(左右対称)の関係にあり、
かつサークル(円環)状をなしているというのである。
デジタル時代の旗手が語るこの東洋的な思想に、
日本のリーダーも今一度
しっかり耳を傾けるべきではないだろうか。
(P.48)
日本人ってなぜか極端なんですよね。
白黒ハッキリ付けたがる。
仕事か人生かという発想自体がおかしくて
両方大事に決まっているじゃないですか?
ワークライフバランスを実現している人が
本当に人生を謳歌しているのか?
仕事は人生のためにあり、
人生は仕事が充実するとより良くなる。
たったこれだけの話しです。
ワークライフバランスを見間違えて
仕事のモチベーションを下げて
人生を棒に振っている人はあまりにも多いですね。
マーケティングの教科書は、
マントラのように「顧客起点」を唱えてきた。
これは、企業がともすれば
「商品・サービス起点」に走りやすいことへの戒めでもある。
プロダクト・アウトではなく、
マーケット・インという発想である。
単に商品を並べて顧客を待っている酒屋が
プロダクト・アウトだとすると、
御用聞きをする三河屋はマーケット・インの先駆者だ。
(中略)
モバイル端末で顧客が情報武装し、
SNSを通じて顧客が情報発信源となっている。
デジタル時代には、
顧客を中心に置く企業しか生き残れない。
(P.53)
だいたい業績の悪い企業は
プロダクト・アウトなのですよね。
傲慢になっていると。
これからの時代は会社も組織も
そして個人もマーケット・インの発想を持たなければ
没落していくんじゃないでしょうか?
業界全体が転職をあおるなか、
私たちは『転職は慎重に。』という
真逆のメッセージを発信してきました。
当初は私個人の主観的な主張でしたが、
考え方を地道に伝えていくうちに、
求職者も企業も世の中も支持してくれるようになりました。
ある程度、業界全体にも
良い影響を与えられたのではないでしょうか。
周りから認められるようになったことで、
自分なりの仮説の正義が、結果として、
『社会正義』に近づいていると思います。
(P.74)
これはエン・ジャパンの越智通勝会長の言葉ですが
まあそのエン・ジャパンも大企業になって
随分変わってしまったように感じます。
当たり前のことは当たり前に言い続ける。
売上や利益に魂を奪われない。
業界やビジネスの常識よりも
モラルや社会正義を貫き通す。
経営者たるものそうあるべきですね。
デジタル技術の専門家である
バブソン大学のトーマス・ダベンボート教授は、
AI時代の人間の役割は5つ
(Step Up、Step Aside、Step In、Step Narrowly、Step Forword)
あると語っている。
いずれもStepという言葉で表現しているところが
なかなか面白い。
この5つの役割のうち、
AIには簡単に担えないものが2つある。
1つ目は、最初のStep Up。
大局観を持って高度な判断を行うというもの。
AIは個別具体的なものを
ディープラーニングすることは得意だが、
ズームアウトして全体を見渡し、
そこから本質を見抜く判断力を身につけるには、
ロジックを超えた洞察力が必要となる。
もう1つは、最後のStep Forword。
先を読む先見力を持って、
先述した「未」を「既」に変えていく創造力である。
ビッグデータは所詮、過去と現在のものでしかない。
そこから未来は或る程度予測できても、
データがない未知の世界を読み解くのは不可能だ。
(P.80)
ちょっと長いですけど
こういうことだと思います。
シンギュラリティを恐れるよりも
AIの進化に恐怖を感じるよりも
私たちがすべきなのは人間力を上げること
もうこれしかないのでしょうね。
知識ではなく、知性。
日本の現場の実践力は、
確かに世界に冠たるものかもしれない。
しかし、そのような現場からたたき上げて
トップに立つ経営者には、
戦略脳が備わっていない。
KKD(経験と勘と度胸)だけでは、
戦略的な意思決定が必要な近代戦は戦えない。
ましてや、先が読めない時代において、
非連続的な成長はリードできない。
日本の次世代リーダーは、
弱点である戦略脳を徹底的に鍛え上げなければならない。
そのためにはビジネススクールで、
戦略の千本ノックを受ける必要がある。
戦略コンサルをブレインに引き入れて、
戦略的指向をコーチングしてもらうのも有効だろう。
場合によっては、
戦略立案に長けたプロ経営者を迎え入れることも、
選択肢に入れるべきだ。
(P.139~140)
こちら、前半はそうだよな…と思ったのですが
後半は違うだろう?そうじぇねえだろうと思いました。
確かに経営者にとって戦略脳は必要不可欠ですが
ビジネススクールに通ってMBAを取ったり
戦略コンサルやプロ経営者を入れても
逆に翻弄されるだけではないでしょうか?
もっと自分の頭で考えて
哲学や歴史から学び
企業とは何だ?経営とは何だ?と
深く深く問い続けるほうが
よほど重要ではないかと感じました。
組織の競争力の源泉とはいったい何か。
決してカネではない。
カネは競争力をつくるための1つの要素にすぎない。
最も大切なのは、
そこで働くヒトの知恵とエネルギーだ。
(P.174)
若者が絶望するようではダメですよね。
金で縛って無理矢理働かせてきたのが
高度経済成長とも言えるでしょうか。
時代は変わり
これからは知恵とエネルギーを中心に
働きがいを持ってもらうように
資本は変わらざるを得ないと思います。
資源も時間も、限定性が高い。
限られた時間のなかで、
限られた資源をいかに有効に活用するかが、
経営の要諦となる。
このような高度な意思決定こそが、
経営者の最大の使命と言ってもいい。
そこで求められるのが決断力である。
(P.188)
Z世代などは優しさを求めていますが、
経営はそんなことは言ってられません。
社員を食わせていく。
会社を継続させる。
そのためには…
鬼にならねばならないこともあり得ますね。
経営には知性と感性が求められる。
合理的な判断を下すには、知性は必須だ。
一方、顧客、従業員、コミュニティメンバーなど、
多様な関係者の共感を得るためには、
感性も兼ね備えていなければならない。
(中略)
科学的経営は、知性、左脳、IQに偏りがちだ。
一方、感性、右脳、EQに傾きすぎると、
合理性や一貫性から大きく逸脱してしまう。
この両者のバランスをいかにとるかが、
経営の要諦となる。
(P.219)
鬼にならねばならない時もあれば
仏であらねばならない時もある。
いずれか片方ではなく
両者のバランスを取ることが
経営者の個性と言えるでしょうね。
ステークホルダーから支持される経営が必要です。
AIはディープラーニング(深層学習)を得意とする。
そのAIを活用すれば、
垂直方向への深化を加速させることができる、
一方、飛び地間を結ぶ
トランスファーラーニング(転移学習)は、
AIがまだ十分太刀打ちできない領域だ。
そしてこのような水平思考こそ、
人間がますます独自にスキルを磨くべき分野である。
(P.230)
AIに仕事を奪われるのではなく
AIを使う側に回ろうとすれば
人間にしかできないことをするのがいいですね。
30年先、そして100年先も存続し続けたいのであれば、
そのような未来の姿を思い描き、
そこからバックキャストして
これからの企業戦略を構想する必要がある。
そうすると、今の延長上で描いている2025年ビジョンなるものが、
いかに陳腐なものであるかに気づくはずだ。
(P.247)
キャリアも同じですけど
積み重ねは絶対に必要です。
必要ではあるのですが
それだけでは不足であり
目標やプランからの逆算という発想こそが
積み重ねをブラッシュアップしてくれるでしょう。
リスクマネジメントは、
経営の基本動作である。
なぜなら、リスクを積極的にとることによって、
初めて超過利潤がとれるからである。
そのためには、正しくリスクがとれる
マネジメントの仕組みがカギとなる。
(中略)
VUCA時代には、
リスクをとらないことが
最大のリスクとなる。
(P.261~262)
取るべきリスクと
取ってはいけないリスク。
正しくリスクをとること。
経営者としては頭に叩き込んでおきたいですね。
日本人はトライ&エラーという言葉を好んで使う。
試行錯誤の意味である。
しかし、シリコンバレーでは、
トライ&ラーンが好まれる。
エラーばっかりしていたのでは、
懲りないだけで終わってしまう。
失敗から学ぶことに価値があるのだ。
(P.298)
ま、そりゃそうですね。
失敗は成功の母とも言うのだし。
株主第一主義は、
今やアメリカにおいてすら市民権を失いつつある。
そして従業員、地域社会を含む
マルチステークホルダーに対応すべきとの論調は、
アメリカにおいても着実に根を下ろしつつある。
ROEを第一義とするような
日本のコーポレートガバナンス改革は、
キャッチアップどころか、
周回遅れの真逆の動きになってしまっているのである。
(P.309)
これこそグローバリゼーションの弊害でしょうか。
本家のアメリカですら改善しているのに
いつまで日本はしがみつくのでしょうね。
官僚や学者に任せてはいけない。
彼らは未来ではなく過去を見る仕事だから。
ワークとライフを切り離す発想こそ、
諸悪の根源である。
ワークをライフの貴重な一部に
組み入れることができるかが、
本質的な問いなのである。
(P.314)
ブルシットジョブとも関係がありますが
要はワークにやり甲斐がないんですよ。
だからワークとライフを切り分けたがる。
やり甲斐あるワークであれば
自然とライフの一環となると思いますけどね。
これも資本家次第じゃないでしょうか。
強欲な資本家じゃ
ワークライフバランスは一層鮮明になるでしょう。
大変革の時代には、
本業を否定しても守っても、
勝ち目はない。
では、どうすればいいか?
答えは1つしかない。
新しい事業機会に向けて、
本業で培った本質的な強みを
「ずらす」のである。
ずらす際には、
従来大きく2つの方向性が考えられた。
市場をずらすか、
製品・サービスをずらすか。
(中略)
セルフディスラプションは破滅への第一歩ではない。
いかに自らの強みを、
新しい現実や事業機会に向けて
ずらせるかが勝負となる。
このような動きを「ピボット」と呼ぶ。
軸足はしっかり自分の本質的な強みに置きつつ、
もう一方の足は、
360度自由度を確保して、大きく踏み出す。
(P.393~395)
これからの経営は立ち止まることができませんね。
だから面白いとは言えそうですが。
最大限の柔軟性と
自社ならではの個性のバランスですね。
危機に陥った時には、
すでに手遅れである。
変革をスタートするベストなタイミングは、
むしろ絶好調の時なのである。
最高益の時に手を打たなければ、
あとは下り坂が待っているだけである。
新社屋建設など言語道断、
配当や自己株買いなどで
株主のご機嫌をとっている場合でもない。
そのような時こそ、
次世代成長に向けて
大きな変革を仕掛ける絶好のチャンスである。
(P.403)
好事魔多し。
調子の良い時ほど
いざという時に備えておく。
それどころか
変革を自ら起こすチャンスということ。
経営者とは
一生走り続ける人種なのですね。
問題はどこに?なぜ?どのように?
そして何を?誰と?の追求です。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
いや~、ガッツリ経営本を読んだという
達成感がありますね。
かなり読み応えがありましたし、
ところどころ、ん?と疑問に思うところはありましたが
概ね学びにはなりましたので大満足です。
本書は単なる経営本の範疇を超えて
ある種の哲学書であり
歴史書でも、心理学でも、
実に様々な分野を学ぶことができます。
病院の経営陣や幹部、
クリニックの開業医、
その他経営に携わるものや
いずれ経営に踏み出そうと考える人には
超絶おススメできる素晴らしい良書です。
読むのに時間が掛かるとは思いますけど
むしろたっぷり時間を掛けて
じっくりお読みになるのがいいでしょう。
ちょっと横文字多くて疲れますけど(笑)
それでは、また…。
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