ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

銀の匙

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

文学とは何か?

 

実に様々な答えがあるとは思いますが

私が勝手に思うのは

「言葉の芸術」であります。

 

私たちは日常的に言葉を使っているわけですから

言葉自体は意思疎通のツールでしょうか。

 

ただ才能のある人が

ある目的を持って言葉を使うと

それが芸術の範疇に入り込むことができるのですね。

 

しかも人の心を動かし

時には笑わしたり

穏やかな気持ちにさせたり

夢中にさせたり

涙を流したり

感情をグラグラ動かしてしまうのですね。

 

もうひとつ思うのは

日本語の美しさです。

 

文学と呼ばれるレベルの書物は

すべからく日本語がきれいなのですね。

 

ああ、自分もこんな言葉を使えるようになりたいなと

素直に思えるようなステキな言葉をチョイスし

そこに意味づける内容が

これまた実に趣があるのですね。

 

いとおかし。

 

最近はアート志向が

ビジネス界でも求められるようになってますけど

何だか流行りは終わりつつあるようにも感じます。

 

ビジネスパーソン

本物の芸術を理解できなかったということでしょうか?

 

いや芸術を理解するなんて

そもそもおこがましいことであり、

芸術をビジネスに…なんていうのも

あってはならない冒涜なのかもしれません。

 

ビジネスなんてものは

経済活動の一環であって

そんなに大層なものではない。

 

私たちの暮らしには

よほど芸術のほうが必要じゃないですかね。

わかりませんけど。

 

少なくとも私は言葉のスゴさには

いつも敏感でありたいし

自分自身も言葉で人の支えになりたいと

強く思う次第です。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 銀の匙 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

銀の匙 』

中 勘助 岩波文庫 を読みました。

 

先日ご紹介しました

下記の本で紹介をされていたのが本書です。

 

ka162701.hatenablog.com

 

実は前々から気になってはいたんです。

 

最近はあまり行かないですけど

イチ時期は暇さえあれば

ブックオフさんに行ってました。

 

私が必ず立ち寄るコーナーは

岩波文庫が並んでいるところです。

 

どうしても私は哲学的な本を

買うことが多かったのですが、

銀の匙」という変わったタイトルが気になって

パラパラとページを捲ったことは

何度かありました。

 

何となく…特に理由もなく

買わなかったのですが

齋藤孝さんが

「読書する人だけがたどり着ける場所」で

本書を紹介するなかで

あの文豪夏目漱石が絶賛したと書いており

え、そうなの?

漱石が絶賛するほどにいいの?と思い

こりゃ読まなきゃあかんなと思ったのです。

 

楽天ブックスで探して

すぐにポチっとして

届き次第に読み始めたのでした。

 

目次

銀 の 匙

前  篇

後  篇

解 説(和辻哲郎

 

感想

う~ん、何だかすげえ。

なかなか言語化しにくいけれど

すげえものはすげえ(笑)

 

心が洗われるというか

ほのぼのした気分にさせられるというか。

 

作家さんによって

いろんなスタンスがあると思いますし、

文体とか、文脈には

個性が出ると思うんですね。

 

その意味では中勘助さんって

きっとこんな人なんだろうなという

予測が付くような文章が心地よかったです。

 

本書は著者の自叙伝らしいですが

まあそうでないとこれは書けないよねという

緻密さと豊かさが内包されています。

 

読みながら…

これは映画化したら良さそうだけどなと思って

ググってみましたら

やはりされてました。

 

しかも2014年公開と

意外と最近であるのが驚きです。

 

昭和初期とかに

撮影されていてもいいような内容です。

 

eiga.com

 

もうひとつ驚いたのは

何とアニメ化もされてるじゃないですか。

 

youtu.be

 

確かにアニメ化して

多くの子供たちにも知って欲しいですけど

でもなあ、やっぱり本を読んで欲しいな。

 

個人的には勘が当たって嬉しいですが

機会があれば映画は見たい気がします。

 

気を取り直して…

本作品を何と形容するか

どう表現するかはなかなか難しいです。

 

なぜならばありきたりの「日常」だから。

つまり生活、暮らしなんですよね。

極端に言えば人生とも言えるでしょうか。

 

現代社会とは異なるところは多いけれど

作品内ではごく普通のこと

誰しもが似たような経験があるようなこと

それがツラツラと書き連ねられているのです。

 

ちょっとした出来事はあっても

特筆すべきようなトピックスはない。

 

登場人物の心情を丁寧に表わしているけど

そこに極端な揺れ動きまではない。

 

ただ淡々と日常が描かれている。

しかしそこにはリアリティと緻密さがあり、

何だか共感してしまうのですね。

 

それが昔ながらの懐かしさと

日本ってこんな国だったよねというのを

思い出させてくれるのです。

 

いや私の世代でも

リアルではないので

本当はわかってないんですけど

三丁目の夕日ではないですけど

きっとこんな感じだったんだよね…と

なぜだか懐かしい思いにさせてくれます。

 

今の時代は

カネ、カネ、カネと

拝金主義も極まれりという感じですし

人の命よりも

経済が優先されかねないじゃないですか。

 

この頃の日常はいったい…

どこに消え去ってしまったんでしょうか。

誰が消したのでしょうか。

 

世知辛い世の中が進み

高齢者を強盗するような残虐な行為が

普通のバイトがてら行ってしまう輩が増えている。

 

政治や行政は

国民生活を苦しめても

税金と社会保険料を多く取るために

詭弁を弄して

騙し討ちをし続けているわけですけど

何だか大切なものを見失っているように思えて

仕方がありません。

 

国破れて山河あり。

国破れて財務省あり?

 

生活。暮らし。日常。

 

経済が大事なのは当然ですけど

それはいったい何のためなのか?

 

経済とは「経世在民」の略であり

「世(よ)を經(をさ)め、民(たみ)を濟(すく)ふ」

という意味があるんですよ。

 

民を救ってますかね?

何のために経済成長が必要なのでしょうか?

 

経済はお金だけではありません。

もちろん何をするにもお金は必要です。

 

ですけど現代社会は

「手段」と「目的」を

見間違えていないでしょうか?

 

生活や暮らしを良くするために

お金が必要なのに

とにかくお金が先行してしまう。

 

お金持ちの人が何をしているかって

豪邸買って、いい車に乗って、

豪勢な食事を食べて

お金に釣られた人たちを引き連れて

さらなるお金を求めて

投資やM&Aをしている。

 

喜びや楽しみは

分かち合うことで倍加すると思いますし、

辛さや悲しみは

分かち合うことで半減すると思いますけど

金銭的な欲望を前にすると

なかなかそうは行かないようですね。

 

これ以上に拝金主義の人が増えれば増えるほど

裕福な高齢者が貯め込めば貯め込むほど

強盗のような犯罪が増えてしまうのではないかと

とても心配しております。

 

えっと、話しがズレました。

 

生活。暮らし。

グローバリゼーションなど忘れて

もう1度原点に立ち戻ることが

必要ではないでしょうか?

 

そう考える私には

本書で書かれている生活、暮らしは

大変に心地良いものでした。

 

日常のほんの小さな出来事。

 

小さな小さなトピックスを

とても大事にされていて、

何億円ものお金よりも貴重な…

まさにプライスレスな価値が

本書には散りばめられているように感じました。

 

いや、比較するのは失礼か。

 

そりゃお金はないと困るし

あって困るものではないけれども

もし日常に対する満足度が上がったら

経済的な行動も相当に変わるのではないでしょうか。

 

もうひとつ思ったのは

日本語の美しさです。

 

私たちは日常的に日本語を使っているわけですから

言語というのはツールとも言えますね。

 

ところが同じ言葉でも

それを研ぎ澄ませて厳選すれば

自ずと文学になるんだな…と。

 

言葉のチョイスであったり

表現力などもそうでしょうけど、

私たちが当たり前と思っているものにも

芸術性があるのだなとしみじみ感じさせられました。

 

確か齋藤孝先生も

是非とも「音読」して欲しいと

書かれていたと思うのですが、

言わんとするところが理解できました。

 

声に出すことで

また違った感覚を手に入れることができそうですし、

ひとつひとつの単語が

イキイキと動き出しそうな気もします。

 

言葉の凄さというか

きれいな言葉、正しい言葉には

とても優しいパワーが内包しているのだなと

暖かい気持ちになりました。

 

本書が書かれたのは大正時代とのこと。

 

それから昭和、平成、令和と時代を経てきたのですが

どこで大事なものを見失ってしまったのか?

 

戦争がいけなかった?

高度経済がいけなかった?

バブルに浮かれたのがいけなかった?

バブル崩壊リーマンショックのせい?

文部科学省の教育が間違っていた?

 

エクスキューズはいろいろあるでしょうし

その要因はいくつもあるのでしょうけど、

まだ完全に失ってしまったわけでもないですし

いつか取り戻していきたい

取り戻さねばならない

そんな生きる上での何かが本書にはありますね。

 

何だかリベラルアーツの神髄というか

その先というか

そういう本質的なものを

なぜか不思議と考えさせられるのが

本書の魅力でもあるのでしょう。

 

他にない独特の雰囲気。

実に優れた独自性があるように感じました。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

別に五つ星でもいいのですけど

こういう淡々としたストーリーですと

グラグラ心を動かされるわけではないので

感動した!とか、驚嘆した!とはなりませんので

あえて1つ星を取りました。

 

でも私の心の中では五つ星ですし

(だったら満点にすればいいのにね)

きっといつか娘にも読んでごらんと

おススメをすることは間違いありません。

 

あとがきを書いているのが

和辻哲郎さんであるのもいいですね。

 

お名前を見て思い出して

和辻さんの著書を思い出しました。

また読みたいと思ってしまいました。

 

ka162701.hatenablog.com

 

こういうステキな本との貴重な出会いを

私自身も大切にしながら

毎日の生活に価値を持たせたいな。

 

そんなことを思わされる

貴重な小説でした。

 

それでは、また…。

 

 

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