ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

石原莞爾 その虚飾

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

歴史は勝者によって作られる。

 

よく言われますし

それは事実とも思いますけど

なぜか敗者なのに

語り続けられる人物もいますね。

 

どう伝えられるのかの問題はありますけど

なぜか変に美化されることもあります。

 

それがいいのか悪いのかはわかりませんが

やはりそういう人には

何らかの理由があるとは思うんですね。

 

そしてその理由を探ることは

今の時代を生きる私たちにも

とても有意義なことではないでしょうか。

 

今回ご紹介する書籍は、

石原莞爾 その虚飾 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

石原莞爾 その虚飾 』

佐高 信 講談社文庫 を読みました。

 

間違いなく敗者な人物だと思います。

 

しかし現代でも石原莞爾は偶像化されており、

もし石原が陸軍内で権力を握り続けていたら

日本は太平洋戦争に突入しなかったのでは?なんて

語られることもありますよね。

 

半藤一利さんの昭和史を読んでから

なぜか昭和初期について興味が高まりました。

 

良くも悪くも石原莞爾への関心は高いです。

 

そんな時に佐高信さんが

石原莞爾について書いた著書があることを知り

すぐさまポチっといたしました。

 

佐高さんはどうやら石原莞爾

ネガティブに捉えているようです。

 

これはこれで面白そうだなと思い

楽しみにしながら読み始めたのでした。

 

目次

・二人の女性の対照的な石原観

・驚くべき写真

・青年元帥

・分身、花谷正

・一九〇四年秋、仙台

・予一個ノ責任

・渇しても…

・短慮な暴れん坊

アラビアのロレンスとの比較

・『奉天三十年』

 

感想

陸軍の石原莞爾

海軍の山本五十六

 

私は当時の双璧の人物と思ってましたけど

本書を読むかぎりは

山本五十六の圧勝でしょうか。

 

どうも石原莞爾

有能で、優秀なのは間違いなさそうですが

人格的には欠陥が大きかったように思います。

 

稀有な戦略家として名を連ねていますが

佐高さんに言わせれば

それも間違いだらけのような感じですね。

 

板垣征四郎と組んで

満州国を作ったのはいいですが、

その結果として

我が国を相当に窮地に陥れたのは事実でしょうか。

 

途中で石原莞爾

中国への深入りを戒めるようになりましたが

激流に巻き込まれてしまった以上

石原の思うようには行かずに

陸軍中央から外されて

しかも日中戦争は止まらない。

 

そのきっかけは間違いなく満州国にあり

それを作った石原の責任は

どう見たって大きいのは自明の理でしょうか。

 

戦線は広がる一方で

勝ちは見えずに

そのまま太平洋戦争に突入していくのですから

軍人に引きずられ

我が国はどこまでもドツボにハマっていったのですね。

 

石原のような優秀な人は

このままではマズイ、

自分の思っていた方向ではないと

確実に気づいていたと思われますが、

権力をはがされてしまった石原には

もう止める力はありません。

 

別に敗戦を石原1人の責任とは思いませんけど

関わってしまったのは

史実として受け止めるべきでしょうか。

 

本書では触れておりませんでしたが

その後の東京裁判では

石原は責任は自分にあると明言したのに

審理に取り上げられることはなく

まるで予定調和のように

裁かれるべき人は裁かれて

石原は何らお咎めを受けることはありませんでした。

 

アメリカから見たら

石原など些細な人物であり

他に責任を問うべき人が多かったということでしょう。

 

ただ石原の潔さなどは

これを見てもわかるところであり

石原一生の不覚という判断ミスだったのでしょうね。

 

さてさて、佐高信さんですけど

私の勝手なイメージですけど

鋭い批評家であり、

ターゲットにされるのは勘弁して欲しいくらいに

徹底調査して厳しく突っ込む方と思ってます。

 

石原莞爾に対しても

よっしゃ、やったるぜ~という意気込みであり、

確かにところどころに

さすがと思わせるところはあるのですが、

正直かなり「甘く」感じました。

 

そこまで石原莞爾は悪人ではないし、

大きなミスは犯したけれど

石原個人というよりも

関東軍自体が激流となっていたのですから

もうどうしようもない状態だったかと思います。

 

いろいろ突っ込みは入れてますけど

私にはわりと「些細な」ことに思えてしまい、

石原莞爾を貶めるところまでは行っていない。

 

あれ、佐高さん、

今回は鋭さが足りなくない?と思えるほどで

これは佐高さんの問題というよりは

石原莞爾という人物が

良くも悪くもですけど

石原莞爾らしく生きたということかと。

 

いや石原莞爾以外には

こんな生き方、考え方をすることはできなかったでしょうし、

激動の時代のなかで

巻き込まれてしまったのは確かでしょう。

 

歴史は感情を抜きにして

真摯に受け止めるしかありませんし、

石原莞爾のしたことが正しいとは思いませんけど

彼は彼なりの信念を貫き通したわけで

しかもその結果は陸軍内部からも弾かれたわけで

ある種すでに断罪されていたとも言えるかと思います。

 

ではなぜ石原莞爾は現代に至るまで

それなりの人物として語り継がれているのか?ですが

佐高さんの論調からは逆説的にでも辿り着けていません。

 

後半生は好々爺のように

静かな日々を過ごさざるを得なくなっていましたし、

私の持つ知識では理解が追い付きません。

 

強いて言うならば

やはり満州国という

一国を作ったことではないでしょうか?

 

もちろん石原1人で成し遂げたことではありませんし

関東軍の横暴とも言えるのですが、

裏を返すと陸軍の中央が認めないなかで

いやそれどころか政府も後追いするしかなかったので

こんな展開は世界史を見ても

ほとんどなかったのではないでしょうか。

 

国を作るなんていう発想自体が

スケールの大きな話しですし、

正否の問題はさておき

それを実現させたこと自体は

すごいことだったと言わざるを得ません。

 

その後は大したことはしていないし、

東条英機との権力争いに敗れてからは

泣こうが喚こうが

誰も聞く耳は持っていなかったわけです。

 

現代を生きる我々から見れば

中国に深入りするなとか

太平洋戦争には反対していたなど

ややもすればまともな人だったかのように思われますが

別に戦争自体に反対だったとは思えません。

 

彼は当時を生きていた他の人々と比較して

時空を超えた

発想を持つことができていたように思います。

 

だから東京裁判の時に

戦争責任はペリーにあるとか

日清・日露戦争にまで遡るとか

物の見方が他の人とは明らかに異なっていましたし、

「世界最終戦論」を唱え続けていたなど

ただの軍人の範疇にはなかったように感じます。

 

それが陸軍内でウザがられたのでしょうし、

東条英機のような人とは

決定的に合わなかったのでしょうけど

もったいないと言えばもったいなかったですね。

 

板垣征四郎のように

石原を守り、好き勝手やらせてくれる

防波堤のような人がいれば良かったのですが、

板垣も結果的には守り切れなかったのですし、

その後は上司にも恵まれなかったと言えるでしょうか。

 

私なんぞの持つ知識では

ここらあたりが語る限界なのですけど

最後に石原から何を学ぶべきか?を考えます。

 

この方はやはり「超」のつく

エリート中のエリートだったのは間違いありません。

 

自分はエリートではないから関係ないや…と

私たちはつい思いがちですが、

そうは言っても長い人生のなかで

やたらと物事が上手く進んで

周囲に羨望の眼差しで見られたり、

逆に足を引っ張ってやろうと思われたりという

こういうことはあると思うのです。

 

もちろん石原のような大きなものではなく

とても小さなものであっても

誰にでもあるのではないでしょうか。

 

その時にどうするか?

それが私たちが石原から学ぶところではないか。

私はそう思いました。

 

石原は有能で優秀なだけに

周囲の人間を下に見て

バカにする傾向にあったようです。

 

それが結果的には自分に跳ね返ってきて

自分の回りには誰もいなかったと。

 

こんなんはよくある話しですし、

石原には大きな未来は見えていても

そこで暮らす民のことなど

自分より下の人には

目もくれなかったように思います。

 

きっと乱世には強いのでしょうけど

平時では邪魔な存在になってしまうのでしょう。

 

歴史に「もし」はありませんが

石原がもっと民の生活を意識できていれば

昭和史はだいぶ違うものとなったかもしれません。

 

今回は石原莞爾を通して

昭和を学ぶことができましたが、

この時代は現代を生きる我々は

もっと学ぶべき必要があるように感じます。

 

私としては

今後も多角的に昭和を学ぶ所存です。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

おそらく石原莞爾をヨイショする本は

かなり多いのではないかと思います。

 

しかし本書は石原莞爾を否定的に見る

珍しい本なのですね。

 

批評家として一流と言える

佐高信さんですら

否定しきれなかった感を私は持ったのですが

それはそれで非常に面白かったです。

 

それでは、また…。

 

 

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