ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

浮世の画家

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

先日、facebook

こんな投稿をしました。

 

視野を広げる。

複数の視点を持つ。

視座を上げる。

 

この順序で自分を導いていくと

気づけば器の大きな人になっているものです。

 

いきなり視座は上がりません。

まずは視野を広げること。

 

すると、これまで気づけなかった

新しい視点が持てるようになります。

 

視点が増えれば増えるほど

自然と視座も上がっていくのです。

 

人の数だけ視点はあります。

 

だからこそ、

特に自分より格上の人の視点を

素直に受け入れることが大切ですね。

 

「自分はこう思う」に縛られていると

その自分視点が、かえって邪魔になることも。

 

もちろん「私はこう」も大事です。

 

でも、「あの人はこう考えるかもしれない」と思えたとき

視座はもう一段、上がっているものです。

 

いかがでしょうか?

 

私はfacebook、X(旧twitter)、

インスタグラム、スレッズ、noteブログなど

様々なSNSで毎日何らかの投稿をしているのですが

どこかの誰かが

少しでも参考にしてくれたら嬉しいなという気持ちと

「自省」と「自戒」の意味も込めています。

 

自分自身がもうワンランク上に視座を上げるためには

やはり視野を広げて、

複数の視点を持たねばならないだろうなと考えたい次第です。

 

私にとって読書は人生の勉強です。

 

今回ご紹介する書籍は、

浮世の画家 です。

 

 

本書をピックアップした理由

浮世の画家

カズオ・イシグロ(著) 飛田 茂雄(訳)

ハヤカワepi文庫 を読みました。

 

前述したように

読書は人生の勉強です。

 

しかしどうしても偏りが出てしまいますよね。

 

私なんぞは昔は村上龍さんにどっぷりハマり、

今は内田樹さんに夢中なわけですけど

所詮、1人の人間に

読める本なんて限られているわけですけど

できるだけ幅広い知見を得たいと考えています。

 

意識的に、まだ読んだことがない作家さんとか

苦手意識のあるジャンルであるとか

そういうものにも積極果敢にチャレンジしたいです。

 

そこでふと思ったのが

カズオ・イシグロさんです。

 

ノーベル文学賞を取るほどの方なのに

恥ずかしながらまだ読んでいない。

 

これはよろしくないなと考えて

まずはWikipediaカズオ・イシグロで検索。

 

ja.wikipedia.org

 

これでは全然足りないですけど

もともとカズオイシグロさんのことは

ほとんど知らなかったものですから

基本的な知識を得た上で

さあ、何を読んでみようかなと

いろいろ調べてみて

たどり着いたのが本書でした。

 

カズオ・イシグロさんのファンの方には

なぜその本を選ぶ?と不思議がられるかもしれませんけど

何となく今の私に必要な気がしたんです。

 

ま、あくまでも何となくなのですけど

下記の紹介文などは心に響いてきました。

 

1986年にウィットブレッド賞を受賞した、

カズオ・イシグロ出世作

 

終戦後の日本を舞台に、

戦時中の戦意高揚に協力した画家が

己の人生を回想する長編小説です。

 

2019年に俳優・渡辺謙主演で

ドラマ化もされています。

 

ほっほー、出世作なんだ。

しかもアート志向が求められる現代社会の中で

画家について書かれているなんていいんじゃないか?

 

また一応歴史好きを広言している私ですから

終戦後の日本というのも

何となくいい感じじゃない。

 

なおかつ渡辺謙さんが主演でドラマ化だと。

 

謙さんは、ラストサムライを観て以降、

とても好印象を持ってるんです。

 

ja.wikipedia.org

 

ま、そんなこんなで本書をピックアップ。

楽しみにしながらよ見始めたのでした。

 

目次

・一九四八年十月

・一九四九年四月

・一九四九年十一月

・一九五〇年六月

 

感想

カズオ・イシグロさん。

 

初めて読んだので他の作品を知りませんから

本当のところは何とも言えませんけど

アンニュイですね~。

 

独特の物憂げさを感じます。

 

正直、「ノーベル文学賞」という

あまりにもご立派な冠がついていましたから

読む前から多少のハードルの高さを感じていましたし

「やはり意識高い系なのか?」みたいな思いもありましたが、

意外や意外、いい意味で裏切られました。

 

う~ん、何と言うんでしょうね…

めっちゃしっとり系人間ドラマなんですよね。

 

物語の舞台は戦後の日本。

主人公は、小野益次という老画家。

 

同じ小野性ということで

多少なりとも親近感を持ってしまいましたが、

画家という私とは程遠い世界…。

 

かつては国家主義的な絵を描いて

社会に大きな影響を与えたけれど、

戦争が終わって時代が変わり、

今やその「過去の栄光」は、

ちょっと恥ずかしい過去になっている感じ。

 

本人もそれを完全には認めていないけれど、

なんとなく察している…

そんなグレーなモヤモヤの中で物語が展開します。

 

小野さん、娘の縁談を前にして、

「そういえば俺、昔いろいろあったよな」と、

思い出の中に飛び込んでいく。

 

でもその回想も、

なーんかこう、ふわっとしてる。

 

都合の悪いことは濁しつつ、

「まあ、あの頃はあれが正しかったと思うし…」と

自分をなだめつつ進んでいく。

 

これがまたリアル。

人間なんてこんなもんかと。

 

「過去の失敗をどう受け止めるか」って、

たぶん誰にとっても身近なテーマなんですよね。

 

小野さんを読みながら

うわ〜、自分もこうやって

過去の黒歴史をなかったことにしようとしてる時あるわ…と、

ちょっとドキッとします。

 

自分に甘くて、

他人に寛容そうでいて実は不安いっぱい。

 

そんな“心の隙間”が

めちゃくちゃ巧妙に描かれています。

 

あと、この小説、

静かすぎて逆に怖いのです。

 

バトルもラブロマンスも

謎解きも一切ありません。

 

なのに「本当にこれ、何も起きてない?」と

疑いたくなる静かなる緊張感。

 

登場人物たちが妙に遠回しな言い回しをしてきて、

読者だけがじわじわと

「もしかして…これって…」と気づかされていく。

 

この「あえて説明しない」スタイルが

何だかクセになりそうです。

 

しかも、この小野さん、結構ズレてる(笑)。

 

人間的には嫌いじゃないんだけど

「それ今言う!?」とか

「いや、それ気づいてないの!?」という場面が

多々出てきます。


でもこのズレこそがリアリティなんですよね。

現代社会でもよくあることです。

 

昭和の時代に活躍した人が

その頃の価値観のまま

平成、令和を生きてしまい、

ハラスメントと認定されたり

DX化やIT化、AIが全然理解できずに

今だに精神論だけで考えていたり。

 

時代の変化に遅れてしまうというのは

非常に恐ろしいことですね。


人って、自分のことは意外と見えてないし、

都合の悪いことは

ちょっとオブラートに包みたい生き物です。

 

カズオ・イシグロのすごいところは、

そんな「人間の曖昧さ」を絶妙に描くところ。

 

明快にスパッと描くのではなく

ふんわりと柔らかく

わかる人にはわるるよね…という

他にはあまりない表現の仕方が

何だかたまりません。

 

誰もが正義でもなく、悪でもなく、

ただその時代の空気の中で懸命に生きている。

 

善悪の狭間で揺れる人間の姿に、

なんとも言えない哀愁がにじんでいます。

 

これが冒頭述べたアンニュイかなと。

 

そして、もう一つ面白いのが、

日本人の価値観を

「外からの視点」で描いているところでしょうか。


イシグロ自身が日系イギリス人という

バックグラウンドを持っているからこそ、

日本人なら当たり前すぎて見えなくなっているような

「空気」「メンツ」「家族内の沈黙」みたいなものが、

すごく鮮やかに描写されています。

 

たとえば、小野さんと娘のやりとり。


「え、これケンカしてる?

 それとも気を遣いすぎて逆に気まずいだけ?」みたいな

微妙な距離感が絶妙です。


日本の「言わない文化」を、

これほどまでに描ききった小説はなかなかありません。

 

外部の目を持って

日本を知り尽くすという

バランス感覚が我々日本人の心には

スッと入り込んでくるでしょうか。

 

あと、タイトルにもなっている

「浮世」という言葉ですね。

 

これは「はかないもの」とか

「世俗のわずらわしさ」みたいな意味を持ちますが、

まさに小野さんの人生そのもの。

 

過去の栄光にすがりつつも、

今の現実と向き合おうとする姿に、

人間の儚さと強さが同居していてグッときます。

 

最後にひと言。

 

小野さん、もし現代に生きていて

SNSでもやろうものなら、

たぶん何度か炎上してると思います(笑)。

 

でも、その炎上の中でも

「いや、俺は俺の信じたことをやってきた」と呟いてそう。

 

そんな彼の姿に、

なんだかんだで共感してしまう自分がいるんですよね。

 

そんな私は昭和44年生まれ。

社会人になった時には平成の時代だったけど

やはり昭和の文化を引き継いでいるでしょうか。

 

だからこそわかる部分、

だからこそ嫌気が差す部分。

両方を感じる実にユニークなストーリーでした。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

浮世の画家』は、

アクションもサスペンスもないのに、

読み終わると

心の中でじわじわ効いてくる

「静かなる衝撃」の1冊と言っていいでしょうか。

 

過去を振り返る怖さ、

自分の信念と社会とのズレ、

人との距離感。

 

それらすべてがしっとりと丁寧に描かれていて

「ああ、こういう小説が文学なんだな」と

腑に落ちる読書体験でした。

 

さすがノーベル賞作家と言えそうです。

 

昨今ではカスハラをするのは

60代、70代の男性が多いと言われていますが

本書にはその理由が隠されていますね。

 

それがいいのか悪いのか、

どうすればいいのかはわかりませんけど

人間ってそんなもんでしょ…とは

言えそうな気もしますし

もしかしたら全世界共有なのかもしれないな。

 

カズオ・イシグロの作品だからこそ

そんなことも考えてしまいました。

 

それでは、また…。

 

 

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