おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
最近、資本主義の限界を感じることが多いです。
実際にそういう書籍も増えていますし、
システムとしても、結果としても、
このままでは持たないんじゃないか?という
漠然とした危機感を持つこともあります。
そういう時代の転換期に
何を考え、どう行動するか?
いかに働き、どう生きるのか?
そんなことを考えていましたら
本書と出会いました。
今回ご紹介する書籍は、
【 世界は贈与でできている
資本主義の「すきま」を埋める倫理学 】 です。
本書をピックアップした理由
『 世界は贈与でできている
資本主義の「すきま」を埋める倫理学』
近内 悠太 ニューズピックス を読みました。
スレッズで見掛けて購入した本です。
なかなか興味深そうだなと思いました。
資本主義と贈与。
この相反するものをどう捉えるべきか。
楽しみにしながら読み始めた次第です。
目次
第1章 What Money Can't Buy ー「お金で買えないもの」の正体
第2章 ギブ&テイクの限界点
第3章 贈与が「呪い」になるとき
第4章 サンタクロースの正体
第5章 僕らは言語ゲームを生きている
第6章 「常識を疑え」を疑え
第7章 世界と出会い直すための「逸脱的思考」
第8章 アンサング・ヒーローが支える日常
第9章 贈与のメッセンジャー
感想
近内悠太さん。
若手の哲学家というポジションでしょうか?
たまたま知って興味を持ち
ついポチっとしたわけですけど
内容が面白そうなので
前の本を読み終えた時に
私の200冊もある積ん読本棚から
迷わずに本書をピックアップしました。
私たちの日常の営みや
人間関係にひそむ「贈与」という視点から、
資本主義の隙間にある温もりや
倫理をすくい取るとても価値の高い一冊と思いました。
経済では測れない「与えること」の意味を、
神話や哲学、教育、医療といった切り口で
丁寧に紐解いてくれます。
専門的でありながら語り口は親しみやすく、
読後には世界の見え方が少し変わる。
哲学は苦手だという方にも
大変に読みやすく、わかりやすく、
静かに深く心に沁みる本です。
誰かの役に立ちたいと願う人にこそ、
読んでほしい名著と言っても過言ではありません。
「役に立つこと」だけが価値とされる社会で、
無償の贈与はなぜ必要なのか――。
著者は、損得を超えた関係性にこそ、
人間らしい希望が宿ると語ります。
読みながら自分の生き方も
静かに問われるような知的で優しい哲学書でした。
贈与=何かを与える。
これだけではなく贈与の本質論と考えると
本書は私たちの生き方にも
大きな好影響を与えてくれるように感じました。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
お礼がしたいと言う紳士に、
男性はこう告げます。
「お礼はいいから、次へ渡しなさい」
自分ではなく誰か別の3人に
「善い行い」をすることで恩を返すように。
そう伝えたというのです。
(P.35)
資本主義社会は
こういう概念を吹っ飛ばし
お礼を求めるどころか
どこまでも求めるようになっていますね。
果たして現代社会で「贈与」は成り立つのか?
市場の拡大、資本の増強。
そのためには、
あらゆるものが「商品」でなければならない。
したがって、資本主義のシステムの内部では
「金で買えないもの」はあってはらないことになります。
資本主義を徹底し、完成させようとするのならば、
僕らは金で買えないものを排除し続けなければなりません。
(中略)
それは言い換えれば、
もし仮に金で買えないものがあったとするならば、
それは、「買えない」と思い込んでいる
僕らのほうが間違っていると主張する立場のことです。
だとするならば、
資本主義とは経済システムのことではなく、
一つの人間観です。
そして、その思想はたしかに「自由」と相性がいい。
(P.57)
資本主義を長年続けてきた結果、
勝ち組と負け組の差は広がり
二極化は看過できないレベルになってきています。
しかし勝者はそれを当然と思い
敗者は敗北感に苛まれ生きる気力を失っている。
こんなシステムは生物学で考えたって
間違いなく永続しませんよね。
ポスト資本主義が待たれます。
「常識を疑え」
テレビCMやビジネス書などで
毎日のように目にするフレーズです。
たしかに一見すると格好いい。
熱っぽく語られれば、そうだな、
常識なんて壊してしまえ、とつい思わされます。
しかし、「常識を疑え」というのは無理な注文です。
簡単に壊せるような常識なら、
それは常識ではありません。
単なる「ローカルルール」です。
いわば学校の「校則」のようなものです。
(P.138)
なるほど。
疑えないから常識。
壊せないから常識。
疑い、壊せるなら
それは常識ではない。
確かにこういうロジックも成立しそうです。
常識を舐めるなよという感じでしょうか。
「異常なこと」とは、
通常では起こりえないことが起こる、
あるいは起こってしかるべき
できごとが起こらないことを指しています。
これこそアノマリーです。
(P.162)
前者はわかりやすいですけど
後者は非常にわかりにくい。
わかりにくいものは後回しにされがちな現代社会。
しかし想像力を働かせた人だけが
気づき、触れることのできる何かが確実にありますね。
ある主張が仮にどれほど正しく、
合理的で知性的な判断だとしても、
それを大声で叫べば
相手を納得させられるかというと
そうではありません。
というよりも、
たとえどれほど正しかったとしても、
大声で叫べば叫ぶほど、
聴衆に対して
「これがわかっていないお前は間違っている」
というメッセージを送ってしまいます。
それでは聴衆をこちら側に誘うことはできません。
(P.175)
当たり前のことではありますが
現代でもあちこちで普通に行われていますね。
知性の欠如ということでしょうか。
それとも欲望の強行でしょうか。
アンサング・ヒーローは
自分が差し出す贈与が
気づかれなくても構わないと思うことができる。
それどころか、
気づかれないままであってほしいとさえ思っているのです。
なぜなら、受取人がそれが贈与だと気づかないということは、
社会が平和であることの何よりの証拠だからです。
自身の贈与によって
災厄を未然に防げたからこそ、
受取人がそれに気づかないのです。
アンサング・ヒーローは、
自身の贈与が一切気づかれないことを望んでいる。
気づかれないことが、
自身の贈与が向こう側に届いたことの
何よりの証拠となるのです。
だから、僕らが気づいていないだけで、
この社会には無数のアンサング・ヒーローが
存在しているのです。
その純然たる事実に気づいた人だけが、
その前任のアンサング・ヒーローから
贈与のプレヒストリーを与えられ、
自身がふたたびアンサング・ヒーローの使命を
果たしていくのです。
アンサング・ヒーローは僕らの見えないところで、
語られることなく、
連綿と受け継がれていく。
それはまるでサンタクロースのようにーー。
(P.213)
少し長いですが
本書において最も大事な部分と思い
できるだけ長く載せました。
どんなに世知辛い社会でも
街のどこかには必ずアンサング・ヒーローがいる。
強欲な資本家や
カネの亡者のような人よりも
私たちの人間社会で最も機能しており
安全や信頼の源になっていると言えそうですね。
他者から贈与されることによって
「商品としての履歴が消されたもの
(値段がつけられなくなったもの)」も、
サービスではない「他者からの無償の援助」も、
市場における交換を逸脱する。
それゆえに、僕らはそれに目を向けることができ、
それに気づくことができるのです。
だから、贈与は市場経済の「すきま」に存在すると言えます。
いや、至上主義のシステムの中に存在する
無数の「すきま」そのものが贈与なのです。
(P.224)
そうか、資本主義が悪なのではなく
「すきま」を拡大し機能させればいいんだな。
そういう社会システムを作り
ルール化や、仕組み化をすればいい。
まずは半径5メートルの世界から。
いろいろアイデアが出てきそうです。
贈与はすべて、「受け取ること」から始まります。
「自分はたまたま先に受け取ってしまった。
だからこれを届けなければならない」
メッセンジャーはこの使命を帯びます。
だから「生きる意味」「仕事のやりがい」といった、
金銭的な価値に還元できない一切のものは、
メッセンジャーになることで、
贈与の宛先から逆向きに与えられるのです。
そして贈与は、受け取っていた過去の贈与に気づくこと、
届いていた手紙の封を開けることから始まり、
それは「求心的思考/逸脱的思考」という
想像力から始まるのでした。
(P.238)
等価交換という発想からいかに離れるか?
欲しければ与えよではなく、
この社会に生きる1人の人間として
後世のために与え続ける。
無意識的にでも
そう生きている人がたくさんいて
こういう人ほど
金銭的には恵まれていない。
資本家って何なんだろう?
価値がないから政官財でタッグを組むんだな。
社会悪だもの。
「仕事のやりがい」「生きる意味」の獲得は、
目的ではなく結果です。
目的はあくまでもパスをつなぐ使命を果たすことです。
だから僕は差出人から始まる贈与ではなく、
受取人の想像力から始まる贈与を基礎におきました。
そして、そこからしか贈与は始まらない。
そのような贈与によって、
僕らはこの世界の「すきま」を埋めていくのです。
この地道な作業を通して、
僕らは健全な資本主義、
手触りの温かい資本主義を生きることができるのです。
(P.243~244)
手段と目的を混同しないというのは
私の戒めでもあるのですが、
目的と結果を混同しないというのも
生きるにおいて大事になりそうです。
結果を気にせずに
目的を果たすために生きる。
だから目的を大事にする。
そういう思考回路が必要なのかもしれません。
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
資本主義と贈与。
なるほど、そう来たかと
頭の整理になりました。
本書を読むと
日々の苦しみが軽減されて
生きる目的が見えてくるかもしれません。
少なくとも私は少し心が軽くなり
明日への活力が手に入りました。
それでは、また…。
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