ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

国商 最後のフィクサー 葛西敬之

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

この世の中は

自分の思い通りに行くことなんて

そう滅多にないですよね。

 

でもごく稀に思うように行くから

それは人生の面白さであると思います。

 

しかしあくまでもごく稀であって

いつも思うようにしようと思うと

権力に取り憑かれてしまいます。

 

歴史を振り返ればわかるように

こういった権力欲をほしいままにした人間たちは

果たして世の中を良くしたのか、悪くしたのか。

 

必要だったのか

必要悪だったのか、

果たして自分はどうなのか。

 

知っておかねばならない

人間の本質なのかもしれませんね。

 

今回ご紹介する書籍は、

国商 最後のフィクサー 葛西敬之 です。

 

 

本書をピックアップした理由

国商 最後のフィクサー 葛西敬之

森 功 講談社 を読みました。

 

なぜ本書を購入したのか?

 

別に葛西敬之という人物に興味なんてないし

安倍政権がドロドロなのは百も承知ですし、

申し訳ないけど著者に関心があったわけでもありません。

 

ただ何となく気になった。

こういう第六感は大事にしたほうがいいかなと。

 

反面教師になるかもしれず

まあ、買ってみるか、読んでみるか程度ですけど

どんなもんか楽しみに読み始めたのでした。

 

目次

・国策づくり

・鉄道人生の原点

国鉄改革三人組それぞれの闘い

・「革マル松崎明との蜜月時代

動労切り

・ドル箱「東海道新幹線」の飛躍

・安倍政権に送り込んだ「官邸官僚」たち

首相官邸と通じたメディア支配

美しい国づくりを目指した国家観

リニア新幹線実現への執念

・「最後の夢」リニア計画に垂れ込める暗雲

・覚悟の死

国益とビジネスの結合

 

感想

ジャーナリストの森功氏の迫真に迫るレポートです。

 

正直、森さんのことは

どこかで聞いたことがあるかなくらいの

薄い認識であったのですが、

wikipediaでチェックしましたら

非常に興味深い作品を連発しているじゃないですか?

 

今まで知らなかったことを恥ずかしく思いましたが

超ポジティブ人間である私としては

今ここで知れたのは良かったと思う次第です。

 

いずれ他の作品も読んでみたいと素直に思いました。

 

ja.wikipedia.org

 

本書、「国商 最後のフィクサー 葛西敬之」は

日本の近現代史を背後で動かし続けた

「見えない手」の正体に鋭く迫る一冊です。

 

とはいえ無知な私は

葛西敬之さんについても

何となく聞いたことがあるかなというレベルでしたし、

安倍政権のフィクサーと言われても

そういう人は多いんじゃね?と思いますし、

良くも悪くも政官財が権力にすり寄ってきた

そんな時代であったのでしょう。

 

タイトルにある

「国商(こくしょう)」とは

国のために商(あきない)を為す者という

意味にも取れますし、

「国家と商業の間に立つ者」という

ニュアンスもあるでしょうか。

 

いずれにせよ、

JR東海の名誉会長として知られた

葛西敬之という人物が

単なる一企業のトップではなく、

国の枠組みや政治、経済の構造

そのものに深く関わる「国家的人物」であったことを

著者は豊富な取材と綿密な構成によって描き出している。

 

まず、本書の最大の読みどころとしては

葛西が果たした「フィクサー」としての役割を、

神話化や英雄化することなく、

時に辛辣に、時に冷静に

あぶり出している点にありますね。

 

どんなに優秀な人であったとしても

もともとイチ国鉄マンであった葛西が

最初から国商であったとは思えません。

 

きっかけとなったのは

やはり「瀬島龍三」との出会いだったのでしょう。

 

そんなに詳しいわけではないですけど

この「瀬島龍三」という人物は

我が国の戦後のフィクサーとしては

相当に名の知れた人物と言わざるを得ません。

 

その流儀というかノウハウを

葛西は瀬島から受け継いだのかなと思いました。

 

1987年の国鉄民営化から

リニア中央新幹線の推進、

そして安倍晋三元首相との強固な関係まで

国のインフラと政治の力学の狭間で、

彼がどのように立ち回り、

意思決定を誘導してきたのかが多面的に綴られます。

 

ただ私としては

それが本当に国のためになったのか

国民にとって良かったのかは

ちょっと微妙だなと思いながら読み進めました。

 

森さんは葛西の歩みを、

経歴や肩書きの羅列で済ませることはせず、

むしろ、彼の思想の根源に遡ろうとしています。

 

このなぜ?どうしてという姿勢こそが

本物のジャーナリストというか

これこそがルポタージュだという

正真正銘のリアルさをまざまざと感じました。

 

名古屋大学から旧運輸省(現・国交省)に入り、

エリート官僚としてのキャリアを歩みながらも、

彼の野望は「官」で終わらなかった。

 

東京大学法学部を卒業し、

当時の国鉄に入社。

 

鉄道網という

国家の血管に等しいインフラをどう守り、

どう発展させるか。

 

時は国営から民営への転換期。

国鉄改革三人組」と称されて

苦労をしながらも「JR」を生み出します。

 

後にJR東海のなかで

出世街道を驀進し

社長、会長になるわけですが、

その過程のなかで「政治的決断」を求められつつも

「現場の意思」を反映させるという

実に難易度の高い舵取りをしてきました。

 

そこにあったのは葛西流の「強烈な意志」でしょうか。

いかにも戦後日本を生き抜いてきた

強烈な個性、そして功利と使命感の混合物のような

人間像が浮かび上がります。

 

なかでも印象深かったのは、

リニア中央新幹線という

巨大プロジェクトをめぐる葛西の執念です。

 

それはもはや「事業」というより

「国家建設」に近いスケールで構想されています。

 

採算性や環境問題など、

批判的な意見があっても押し通す

「やるべきものはやる」という

トップダウンの姿勢を貫く姿勢は

ある種の経営者としての鏡とも言えますし、

それが政治家や官僚と近づく契機になったのでしょう。

 

その背景には新自由主義的な価値観の広がりを感じますし、

国鉄の分割・民営化」に象徴される国家機能のスリム化と、

民間のダイナミズムによる社会改造という

時代の大きな流れを作り上げてきたようにも思えます。

 

しかし森さんは、

葛西を手放しで賞賛するわけではなく、

むしろ本書では至る所に批評の目が光っています。

 

その姿勢に私は感銘を受けましたし、

正直、葛西という人物を知れば知るほどに

現代社会に通じる停滞の源でもあったように思えるのです。

 

失われた30年は

この頃から始まったのではないかと。

 

もちろん葛西1人の責任ではありませんが

新自由主義というイデオロギー

利権という魔力が加わり

政官財のエリートたちがワラワラと集まり、

未来を先食いするほどに

私利私欲を満たしていった。

 

私にはそう思えて仕方ありませんし、

葛西を立派な人物としてリスペクトするなど

到底できないと感じました。

 

例えば本書では、

葛西が安倍政権に急接近し

特定の政治勢力との結びつきを強めた過程や、

官邸と企業の距離感が曖昧になっていくことへの警鐘が、

随所ににじんでいます。

 

また、組織内でのトップダウン的な意志決定スタイルが

異論を排しやすくするという危うさも

さりげなく指摘されているのですね。

 

これは真実の歴史として

受け継ぐべきリアルな実態ですから

森さんのスタンスには好感が持てますが、

なぜこの人たちは

こんなにも勘違いしたのか…

その根幹にあるものが

「欲望」と「自己顕示」にしか思えず、

こやつらが今の若者に絶望を与えていると

そう感じてしまいました。

 

言葉では、

日本の「国家」や「公共」など

偉そうなことを言ってますけど

結局は自らの主義主張を押し通したいだけ。

 

国民を軽視した政官財の罪は

あまりにも大きいように思います。

 

あんたらの考えの結果が今の日本なんだよと…

これほど強く問い直される時代にあって、

葛西敬之のような人物の存在は

賛否を超えて考察に値するとは思いますけど

私が本書を通じて強く感じたのは、

「権力欲」と「老害」でした。

 

国を守るために

命を懸けて特攻に散った若者たちは

彼らの少し上の世代ですよね。

 

どんだけ落ちぶれたんだ…と

心底ガッカリします。

 

民間人でありながら

国家に最も近い場所で動いた人間の存在が

これほど日本という国のかたちに

影響を与えてきたかという事実は重いです。

 

結局、肝煎り事業のリニアについても

今だ目途は立たず

何兆円ものお金がつぎ込まれ続けています。

 

国民の負担は重くなるばかりで

費用対効果が取れるのかもわからず、

静岡県とはいつになっても話しが付きません。

 

葛西が政治家や官僚と一体となって推し進めた

大事業が国民を苦しめているとも言えそうです。

 

この後、リニアがきっかけになって

日本経済がダイナミックに回復する可能性は

果たしてどれくらいあるのでしょうか?

 

一方で、読者としては

なぜこのような人物が長らく裏方にい続けたのかという

漠然とした問いも残ります。

 

それは日本社会の「空気政治」や

「強いリーダーシップ」を求める風潮、

あるいは記者クラブ制度などの

メディアの在り方とも密接に関係しているのでしょう。

 

森さんはこの点にも触れており

権力の正体が可視化されないまま、

無自覚に受け入れられてしまう

日本社会の「盲点」を浮かび上がらせています。

 

これは今も変わらない悪弊と言えるでしょうか。

 

このように「国商」は、

単なる個人評伝ではなく、

日本の政治経済の構造を映し出す一枚の鏡であり、

社会学的、歴史的な含意にも富んだ骨太な作品です。

 

特に30代~50代のビジネスパーソンや、

経営者、官僚を目指す若者こそ読むといいかもしれません。

 

否定的な視点で

こいつらのせいで今の日本は…と

そういうのもありだと思います。

 

現代日本のリーダーシップとは何か

真に「公益」を思うとはどういうことか、

組織と国家の関係性とはいかにあるべきか?など

そうした問いが、きっと胸に残ることでしょう。

 

最後に強調したいのは

本書が「成功者の物語」ではなく、

「時代と共犯関係にあった男」の

全体像を描き出そうとした問題採だということです。

 

善悪の二元論に還元せず、

光と影を併せ持つ一人の人物の生き様を通じて、

読者に「日本とは何か」を問いかける

森功さんの筆力と綿密な取材に

私は深く敬意を表します。

 

評価

おススメ度は ★★★☆☆ といたします。

 

著者はとても丁寧な取材をしており

多くの関係者からコメントを取り

非常に好感の持てる内容でした。

 

個人的には葛西敬之のしてきたことを

少しも認めることができませんが、

そういう時代だったとは言えるのは承知です。

 

しかし50年後、100年後の日本のために

もう少しやりようがあったのではないか。

 

そう思えるのが非常に残念です。

 

森さんに対しては星4つ、

葛西に対して星2つということで

間を取って3つにしました。

 

それでは、また…。

 

 

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