おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
知らないことが多すぎる。
世の中わからないことだらけだ。
生きるというのは
なかなかに大変ですね。
本屋さんとか
図書館に行くと
こんなにも多くの本があるなかで
自分が読めるものは
ごくごく一部でしかないことに
何だか愕然とするんです。
私は、それなりに読書家だと思うし、
子どもの頃も、
大人になってからも
まあまあの本を読んできたのですけど
一向に追いつかないどころか
どんどん突き放されていく感じを受けます。
一生掛かっても追いつけない存在。
それが知性とか教養というものでしょうか。
人生の達観であると思うし、
それだけに価値があるとも思いますけど
一抹の寂しさを感じるのも確かです。
自分の人生のなかで
たまたま手にした1冊の本。
大事に、大事にしたいものですね。
ま、たまにはハズレもあるでしょうけど(苦笑)
今回ご紹介する書籍は、
【 楽園のカンヴァス 】 です。

本書をピックアップした理由
『 楽園のカンヴァス 』
原田 マハ 新潮文庫 を読みました。
どうしても読書傾向と言いますか、
好きな作家とか、ジャンルとか、
必要とする知識や学びというのは
偏ってしまうものだと思うんですね。
それは致し方ないとしても
意識的にその壁を突破して
幅広い知識や経験を求めるということは
とても大事な姿勢だと考えています。
とはいえ、なかなかできない。
最近、私は、本の情報を
なぜかスレッズから得ることが多いです。
アルゴリズムの問題なのでしょうか。
なぜかタイムラインに
様々な人の本に関する投稿が上がってくるんです。
それはそれで大変に有用で
実際に購入に至ることも多いですし、
買わずとも学びになることもあります。
そこで最近よく出会うのが
「原田マハ」さんというお名前です。
正直、今までの私の人生には
まったく関わりがありませんでしたし、
存在すら認識していませんでした。
ところがスレッズで
お名前を見掛けることが多くて、
あまりにも多くて、
つい興味を持ってしまいました。
これも知らないことを知るという
実にいいチャンスじゃないかと感じまして
ChatGPTに相談したんです。
私が好みそうな
原田マハさんの著書をピックアップしてと。
何冊かのなかで
よし、これを読んでみようと思ったのが
本作、「楽園のカンヴァス」でした。
原田マハさんのこともよく知らないし、
本書の事前知識もほぼゼロです。
ま、これくらいのほうがいいかと思い、
初、原田マハを楽しもうと読み始めたのでした。
目次
第一章 パンドラの箱
2000年 倉敷
第二章 夢
1983年 ニューヨーク
第三章 秘宝
1983年 バーゼル
第四章 安息日
第五章 破壊者
1983年 バーゼル/1908年 パリ
第六章 予言
1983年 バーゼル/1908年 パリ
第七章 訪問―夜会
1983年 バーゼル/1908年 パリ
第八章 楽園
1983年 バーゼル/1909年 パリ
第九章 天国の鍵
1983年 バーゼル/1910年 パリ
第十章 夢を見た
1983年 バーゼル
最終章 再会
2000年 ニューヨーク
感想
まず、ストーリー展開の面白さについて。
本書は、現在と過去が呼応しながら
交互に進む二重構成となっていて、
しかも物語全体を覆い包むテーマが
「芸術への愛」であり、
その思いが温かく散りばめられています。
時間軸が入れ替わっても
ストーリーがわかりにくくならずに
段々と核心に近づいている感があって
ワクワク感満載で読むことができます。
私たち読者は、
登場人物たちの会話や小さな所作、
場面の陰影の変化から、
何かが少しずつ“ズレている”感覚を受け取り、
次の章へ自然に誘導されていくのですが
それが何だか心地よいのです。
情報の出し方がとても巧みで、
章ごとに小さな手がかりが置かれ、
読み進めるほどに
未解決の問いが増えるのに、
同時に「解ける気配」も高まっていくのです。
その緊張と緩和の入れ替わりが抜群です。
しかも、いわゆる
大仕掛けのトリックで驚かせるというより、
人物の動機と美術作品の語りを軸に、
しっとりと、しかし確実に
段々と物語を形作っていく手法が素晴らしい。
その上品さが心の安らぎとなります。
小説の快感の源泉を、
追い詰めるスリルではなく、
わかっていく喜びに置いているのが、
読後の満足感を高めていると感じました。
第二に、アンリ・ルソーを取り巻く史実と
フィクションの狭間が生む面白さが秀逸です。
ルソーについて
一般的に知られている事柄は
素朴派、独学、パリの周縁、批評と冷笑、
そして「夢」へと至る
イメージというところでしょうけど、
美術史の教科書的な語りに
留めてしまいがちです。
本書は、その知っているつもりの空所に、
創造的な仮説を流し込みます。
どこまでは創作で
どこが真実なのか。
そんな想像力を搔き立ててくれるのです。
来歴、鑑定、逸話、
同時代人のまなざし。
いずれも実証の文体と
物語の文体が縫い合わせられ、
真実と虚構の境目が
きれいにぼかされています。
だから私たち読者は、
資料らしき文章を読みながらも、
「これは本当にあったことなのか、
それとも物語上の装置なのか」と
軽い浮遊感のなかで
ページを繰ることになるんです。
ここで重要なのは、
フィクションに史実を従わせるのではなく、
史実にフィクションを寄り添わせる姿勢です。
作者は断定せず、余白を残す。
結果として、
ルソーの絵を前にしたときに
立ち上がってくる不思議な体感、
素朴さの背後にある夢見心地、
祝祭と不安の同居などが、
紙上でも再現されます。
読み終えてから関連資料を検索してみると、
学術的事実と作中の設定が
ピタリと噛み合う部分が少なからずあり、
その「ほどよい一致」が、
逆説的に作品世界への信頼を高めてくれます。
美術小説の醍醐味は、
知識の詰め込みではなく、
作品を見に行きたくなる
衝動を引き出すことだと思うのですが、
本作はその点で実に誠実でした。
第三に、原田マハさんの
ストーリーテラーぶりについて。
まず、語りの視点操作が見事です。
登場人物の専門性や立場の差を、
用語の選び方や
言い回しの温度で繊細に差別化し、
会話のテンポで関係性の距離を可視化する。
人物を“説明”するのではなく、
“会話と振る舞い”で読者に感じ取らせるのは、
作家として成熟した手法のように感じました。
さらに、物や空間の描写、
とても細かいところ、
額縁の角の光、床材の微かな軋み、
紙の繊維のざらつきなどが、
ただの雰囲気づけに終わらず、
物語上の意味を帯びて回収されていく。
これはミステリの技法と
文学的描写の美しい折衷と言えるでしょうか。
言葉が次の言葉を呼び込み、
読者の想像力を自然と膨らませてくれます。
加えて、章題と章末のフックの付け方が巧妙で、
一章ごとに小さな「問い」を残すのに、
読者を過度に焦らせない。
快楽のリズムが安定しているから、
長い一息で読めてしまう。
何より、作中の誰もが、
絵画そのものに対する敬意を失わないのが
とても素敵です。
美術を物語のための道具に矮小化せず、
作品が持つ「沈黙の力」を信じ、
その沈黙に耳を澄ます人物たちを描く。
作者自身の鑑賞者としての態度が、
物語を清潔に保っているのだと感じました。
個人的には、
現在パートの“限られた日数”という枠組みが、
登場人物たちの人生の時間を
強く反射させている点に惹かれました。
期限に追われる審査は過酷ですが、
人生にもまた、各人それぞれの期限があります。
誰もが“いまできる判断”に責任を負い、
時に手放し、時に選び取る。
本作は、絵の真贋や来歴という
「事実」をめぐる争点を扱いながら、
実は自分の信じるものを
選び取る自由についての物語でもあります。
そして、その自由には必ず代償が伴うという
その当たり前の真理を、
美術の光のもとで静かに提示してくれます。
美しいものを前にしたとき、
人はしばし沈黙する。
その沈黙の中で、
それぞれの「楽園」が像を結ぶ。
タイトルの“楽園”が、
地理や画中の風景ではなく、
見る者の内に開かれる場として
結晶していく運びは、
読者に少し遅れて訪れる分かった気がする
歓びをもたらします。
もう一点だけ。
物語は、知識の優劣を競わせて
終わるのではありません。
むしろ、知識が人を謙虚にする方向へ
読者を導いていきます。
自分が何を知らないかを知ること、
知らなかったものに出会って
自分の知識や経験が広がっていくこと。
それを単なる勝ち負けではなくて
人としての“成熟”として描く姿勢に、
大きな感銘を受けました。
私は読み終えてから、
ルソーの作品画像をいくつも見直し、
関連の短い解説をいくつか当たって、
そして本作のいくつかの場面を思い出しました。
小説が現実の鑑賞行為に手を伸ばす瞬間。
この連携が作れている時点で、
ストーリーテラーとしての力量は
すこぶる高いものだと感じました。
多くの人が原田マハさんに言及する
理由の一端を理解することができました。
総じて、本書、「楽園のカンヴァス」は、
次のページが気になり
なかなか本を置けないストーリー構成があり、
史実とフィクションの絶妙なバランスが
美術史の余白を豊かにしてくれる一冊でした。
知識のために読むのではなく、
物語のために読みながら、
結果として知識にたどり着く。
私のように美術の素養がほとんどない人間にも
アンリ・ルソーの絵を見に行きたいと思わせてくれる
貴重かつ価値ある美術小説でした。
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
前述しました通り、
予備知識は全くゼロの状態で読みました。
多少の理解度の問題はあれど
とても面白く読むことができました。
しかし、特筆すべきなのは
読後にウェブ上で
アンリ・ルソーについて調べてみましたが、
本書のおかげで
かなり理解することができました。
むむ、単なるイチ小説のレベルを超えて
美術という私の苦手領域の知識を
自然と身につける手助けにもなったようです。
一粒で二度おいしいと言いますか、
実に有用な1冊となりました。
それでは、また…。
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