おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
偏った考えを持つこと自体は
本人の自由であるし、
好きにすればいいと思います。
ただ、それを人に強要したり、
同意できない人を敵認定して叩くのは
ちょっと違うなと感じます。
人をリスペクトしなくなると
大抵自分は窮地に陥るんじゃないでしょうか。
今回ご紹介する書籍は、
【 日本型コミューン主義の擁護と顕彰
権藤成卿の人と思想 】 です。

本書をピックアップした理由
『 日本型コミューン主義の擁護と顕彰
権藤成卿の人と思想 』
内田 樹 K&Kプレス を読みました。
本書の存在を知ったときに
まあ、私の敬愛する内田樹さんの著書ですから
予約してまで購入したわけですが
私の中では相当に大きな期待を持ちました。
世間一般的に、内田樹さんは、
「右寄り」な思想を持つと思われているでしょうか?
それとも「左寄り」でしょうか?
私が思いますに、
右寄りな思想を持つ人には左寄りに感じて、
左寄りな思想を持つ人には右寄りに感じる。
結論としては、いずれでもなくて
右とか左という範疇を飛び抜けた方であると
私は感じています。
人類は何度失敗しても
イデオロギーで争いますけど、
そろそろそれを超える知性を持つべきではないか?
そんなことを思うのですが、いかがでしょうか?
内田樹さんくらいの知性があると
右でも、左でも、
ロジックを組み立てることができますが、
おそらくその結論は、
右でも、左でもない、超越したものになると思います。
そんな内田樹さんが
何を考えて本書を執筆したのか?
楽しみにしながら手に取った次第です。
目次
まえがき
はじめに 三島由紀夫からの「宿題」
第一章 アジアとの邂逅
権藤成卿の系譜
明四事件
天祐侠
玄洋社と民権論
水戸学と国民国家
玄洋社と来島恒喜
福沢諭吉の「脱亜論」
第二章 日韓合邦の夢
一進会と日韓合邦論
樽井藤吉と『大東合邦論』
合邦論の挫折
大高麗国構想
自治学会の思想
『南淵書』の論理構成
第四章 昭和維新の黒幕
晩年
おわりに 「21世紀の権藤成卿」たちへ
感想
内田樹さんの本は何でも読む方針の私ですが、
本書は相当に異質であると感じました。
しかし、さすがは内田さんが関心を示すだけあって
大変に深く、考えさせられるところが多かったです。
単に「右か左か」で
人や思想を裁く姿勢をいったん脇に置き、
地域共同体=社稷を基盤にした
“共に治める”感覚を取り戻そうと促します。
国家や制度の完成形を急ぐより、
暴力を生む「身内/外」の線引きを和らげ、
生活を支える現場の合意形成を積み重ねる。
そのプロセス自体が政治だ、
という静かな提案にうなずきました。
明治から大正、昭和と続く
激動の時代の息吹を感じながらも
当時の最高傑作とも言えそうな
「思想」に触れることができて大満足です。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
その暴力は「身内だから」という
一言で正当化される。
理解と共感をベースにした家族関係は
しばしば抑制の効かない家庭内暴力を引き起こすが、
同じことは国と国、民族と民族の間でも
おそらく起きる。
「身内」だと思うからこそ
「連帯の意識」は生まれ、
「身内」だと思うからこそ
歯止めの効かない暴力がふるわれる。
親密さと暴力がシームレスに交替する
この病的な心理は
あるいは日本人の集団的痼疾なのかもしれない。
(P.46)
戦前や戦中を考えても、
高度経済成長の息苦しい同質化を考えても
確かに「身内」という意識は
相当にやっかいなものなのかもしれません。
以前に、何かで殺人事件は家族間が最も多いと知り、
かなり愕然としたこともありました。
(真偽不明ですのでお気をつけて)
でも、現在のアメリカや中国、ロシアとか
ナチスドイツなどを見ても
強固な「身内」意識が暴力に直結することは
かなり多いのではないかと思われ、
極端な思想の恐ろしさを感じますね。
皇室を敬愛すべし
本国を愛重すべし
人民の権利を固守すべし
(P.57)
これは玄洋社の憲則に書かれたそうですが
ここまではわかるんです。
だからと言って
そう思えない人を攻撃する論理がわからない。
現代でも同じような風潮が強くなっていますけど
自分の考えは正しい、
お前は間違っているという
そんなシンプルな構図で
物事を判断するのは危険です。
歴史を振り返るまでもなく、
政治的に白黒をはっきりつけるというのは
怨恨を遺すだけではないでしょうか。
誰かが決断せねば先に進みませんけど
それは自分を主語にするのではなく、
国家、国民、社会といった
自分も含めた総体的な決断とすべきです。
世界的に「右」と「左」で争う時代ですが、
私にはいずれもが誤りのように思えてなりません。
人の「変節」を咎めるということは
それまで深い信頼を寄せていた
人間に対してしか起こらない。
(P.71)
内田樹さんが述べていたのですが、
確かにそうだなとつくづく思いました。
どうでもいい人なら
何をしようが構いませんけど、
どうでもよくない人だから
何かをしたら咎めたくなります。
ただ、これは前述した
「身内」というところにつながりますし、
物事には表と裏があるんだなと
その難しさをしみじみと感じました。
あらゆる政治権力は
つねに暫定的・過渡的なものとして
自己規定する。
「いずれその歴史的使命を果たした時に、
われわれは権力を
粛々と聖王と民の共治に委ねるであろう」という
「(決して履行されない)手形」さえ切れば
権力者はいつでまでも、したい放題だという
政治技術はまさに「南淵書」が指嗾した
大化の改新の成功体験が教えたことだったのである。
(P.138)
これは別に政治権力に限った話ではなく、
人の上に立つ場合は
ありとあらゆる場合に適応できそうですね。
権力は必ず腐敗します。
ずる賢い人はそれを悪用します。
本当に真っ当な人だけが
自ら権力と距離を取るでしょう。
どいつもこいつも
権力を手放さない悪人だらけですけど。
しかし、テロリストがどこを探しても、
「敵」の本体には出会うことができない。
「敵の本体」は資本主義経済体制という
非人間的で無機的なものだからである。
システムのどこを探しても、
その体制を「マニピュレイト」している
「オーサー」はいない。
たしかにシステムを「ハック(hack)」して
利益を得ている政治家や資本家や
その走狗たちはいくらでも見つけることができる。
でも、「システムから受益している」ということと
「システムを操作していること」は別のことである。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということから、
「桶屋」には気象を操作できる超能力があると
推論することはできない。
「桶屋」を殺しても、
相変わらず「風」は吹き続ける。
それがテロリズムの限界である。
(P.147)
物凄くスッキリしました。
本当の原因を取り除かないと
結局、何も変わらないのですよね…。
今、人々は原子化し、富は偏在し、
「官治」が「共治」に取って替わっている。
それが現実である。
その現実を「本来あるべき姿からの逸脱」と
見立てる人たちは、
現実を変えるために立ち上がるはずである。
まさに「永遠の静態」をめざして
「今、ここで、現実を変える」という
権藤の思想は右翼的な革命思想としては
きわめて正統的なものであるように
私には思われる。
(P.195)
明治政府以降、
官が民を統治しやすいように、
そこに戦いやテロが起きないように
「原子化」させたのでしょうね。
右翼的革命思想と言うよりは
真正の保守思想ではないかと
個人的には思いましたが。
日本の政治的未来は天皇制と
立憲デモクラシーの共生を可能にする
力動的なプロセスの先にしかない。
それは「プロセス」であって
具体的な「制度」のことではない。
「君民共治」は日本人がそれに憧れて、
必死で求めて、だが手が届かないという
未完了形において
おそらく最も生産的になるタイプの政治思想である。
私はそれでいいと思う。
すでに日本には300万人の外国人がいる。
これから後、その数はさらに増えてくるだろう。
この人たちと穏やかに共生し、協働し、
世界に「善きもの」をもたらしきたすためには
「国家」という、
私たちがそこにしがみついてきた政治的擬制を
どこかでヴァージョンアップする必要がある。
国家を超え、
国家の枠組みを脱臼させるような共同体を
基礎的政治単位として立ち上げる必要がある。
「社稷」という概念は
この歴史的課題を引き受けるための
一つの手がかりになると私は思う。
(P.198)
少し長いですが、
これが本書の最重要なところと思い、
できるだけ長く記述しました。
私は内田さんの考えに同意します。
昨今のあまりにも安直な日本ファーストは
本当に日本のためになるとは思えません。
大事なのは「社稷」という概念であると
本書から学びました。
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
実は本書の「帯」に
「私は、どうして日本の極右思想に惹かれるのか。
三島由紀夫からの宿題を本書で果たせたと思う。」
と書かれていました、バリバリ右の内容か?と
若干の心配をしていたのですが、
そこはさすが内田樹さん。
良いものは良い、悪いものは悪いと
非常にバランスの取れた思考で説明してくれました。
いきなりこれを読んだらチンプンカンプンだったと思います。
内田さんの解説をたっぷり読んだ後だからこそ
少し理解ができたかな。
「農は天下の大本なり、
民の以て生を恃むところなり」
この国の未来を憂うのは
まさにこの点ではないでしょうか。
それでは、また…。
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