ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

すべての男は消耗品である。最終巻

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

誰にでも昔懐かしいものってありますよね。

 

人は過去に生きるのではなく、

未来に生きるべきだとは思いますけど、

でも、懐かしいものは懐かしいし、

あの時の情景が思い浮かんできて

心がほんわかと温まることは

決して悪いことではありません。

 

過去・現在・未来という時間軸。

 

これだけは万人に共通して与えられていますし、

抗うこともできません。

 

過去があるから今があり、

今が未来につながっていく。

 

たまには過去を振り返ることで

今の見直しとなり、

より未来のためにプラスとなる

今の行動になっていく。

 

こんなふうに暮らせたらいいですね。

 

今回ご紹介する書籍は、

すべての男は消耗品である。最終巻 です。

 

 

本書をピックアップした理由

すべての男は消耗品である。最終巻

村上 龍 幻冬舎文庫 を読みました。

 

私は20代の頃から

村上龍さんのファンであって、

ほとんどの著書を読んでいると思います。

 

30代の頃なんて

むさぼるように読んでいましたし、

新刊が出るとすぐに購入して

あっという間に読んでいました。

 

さすがに40代、50代となるにつれて、

龍さんの出版ペースも

それまでよりゆるくなってきましたし、

私自身の関心も少しずつ薄くなったのは事実です。

 

それでもたまに未読の書籍を発見すると

ついポチっと買ってしまいます。

 

もちろん小説も好きでしたが、

実はエッセイのほうがさらに好きでした。

 

龍さんテイストが如実に浮き出て、

考え方や発想に影響を受けてきたのですね。

 

ちなみに当書評ブログを書くようになってからも

ちょいちょい読んでいるようです。

 

ka162701.hatenablog.com

 

さて、本作品は

龍さんの代表的なエッセイシリーズと

断言してもいいでしょうか。

 

おそらく私はほとんどを読んでいるはずですが、

先日「最終巻」と書かれている本書を発見し、

ん、最終巻は読んでないと思い、

すぐに購入してしまいました。

 

シリーズの最初の頃を考えると、

「すべての男は消耗品である」というテーマが

若干そぐわなくなっている感もありますが、

それでも村上龍が何に興味を示し、

何を考え、どう感じているのかがよくわかる

このシリーズは読まないわけにはいきません。

 

満を持して、

物凄く楽しみにしながら読み始めたのでした。

 

目次

・今、何も流行っていない

・早起きが苦手で作家になった

・「偏愛」が消えてしまった

・欧州チャンピオンズリーグと、将棋

・ワインに詳しくなるよりセックスを

・ビールに替えて体重が減った

・たまにはサッカーの話を

・政治とチーズについて

藤井聡太への期待

・久しぶりにキューバ音楽を聞いた夜

・誰が「軽音楽」という言葉を作ったのか

・「おいしいものを食べる」以外、他に興味を持てない人々

・オヤジバンドへの共感と違和感

・確かに美空ひばりだ、すごい、そう思った

・「お前、オリバー・ストーンの新作、見たか」

・老眼鏡がかっこいいわけではなく、ゴダールがかっこよかったのだ

・「撃ちたくならない?」

・小学生から、「気をつかって」話してきた

・昔より今が「普通」

・永遠なるヒース・レジャー

 

感想

う~ん、懐かしいテイスト。

相変わらずの龍さん節。

 

サッカーやキューバ音楽など

龍さんの歩みを振り返ることもできます。

 

素直に、めちゃくちゃ面白かったし、

大いに楽しませていただきました。

 

とにかく龍さんのすごいところは、

わからないものをわからないと

はっきりと断言できることです。

 

龍さんくらいの知性と教養があれば、

それなりにわかっているはずなのです。

 

でも、わからないと言えるという

これはもう知性的な人の特性かもしれません。

 

わからないけれども、

わかっている範囲で文章を書く。

 

そもそもの発想が個性的であるし、

人と違う見方をしているから、

わからなくても、わかっていても、

どちらにしても面白い。

 

長年にわたって続いてきたエッセイ集ですが、

これぞ村上龍と言える傑作ではないかと思いました。

 

最終巻ということが残念ですが、

どうせなら帰ってきたとか、復刻とか、

そんな展開があってもいいかなと。

 

その時はまた読むことになりそうです(笑)。

ホント、大好きなシリーズでした。

 

読みながら感じたのは、

「消耗品」という言葉の響きが、

若い頃に読んだときよりもずっと静かで、

どこか優しくなっていたことです。

 

世界も、龍さんも、

そして私自身も歳を重ねて、

同じフレーズを別の意味で受け止め直している。

 

だからこそこの最終巻は、

シリーズの総括というより、

「これからどう生きる?」と

静かに問い直してくる一冊だと感じました。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。

今回は少なめですけど…。

 

「残業」に関しては、

とにかくよくわからない。

残業にどんな成果があるのか、

また成果はまったくないのか、

実感としてわからない。

ただし、「働き方改革」は簡単ではないと思う。

同一労働同一賃金は、

基本的にはまったく賛成だが、

単純作業以外、「同一労働」というのが

実際に存在するのだろうか。

(P.20~21)

 

サラリーマン経験のない龍さんが

残業についてよくわからないというのは当然です。

 

むしろ残業をしている人たちですら、

残業の意味や意義を理解している人は

そんなに多くはないかもしれませんね。

 

私に言わせれば、

自発的かつモチベーションの高い残業は

あって然るべきだと思うけれど、

やらされで致し方なくする残業は

あまり意味がないのでしなくていいと思います。

 

それと同一労働同一賃金については

龍さんとまったく同じ見解です。

 

ぶっちゃけあり得ないんです。

同一労働なんて。

 

似たようなことをしていても、

その中身は全然違うことに

どうしてフォーカスしないのでしょうか。

 

無理矢理ジョブ型雇用を推進しようとして、

同一労働同一賃金をお題目にしていますけど、

これはこれ以上浸透しないでしょう。

 

そもそもあり得ないですし、

ジョブ型雇用には働く側のリスクが大きすぎます。

大企業にとって都合がいいだけです。

 

いずれにしろ、説明は不要なのだと思う。

ただし、相手の好みをイメージした上で、

「勧める」ことはできる。

たぶん小説も同じなのだと思うことがある。

(P.63)

 

これはフレンチレストランで

龍さんがチーズに目覚めた時の話ですけど、

説明とはすべからく押しつけなのですよね。

 

求められたらすればいいだけで、

求められていないのに説明されるのは

さすがにウザいです。

 

していいのは「提案」であり、

「選択肢の提示」ではないかと思った次第です。

 

最近、このエッセイで、

昔のことばかり書いている気がする。

(中略)

飲み食いの相手もほぼ全員年下になった。

だいたい私より年上のメディア関係者は、

ほぼみんな退職している。

わたしは、酒を飲みながら、年下の連中に、

昔の話をするのは好きではない。

自慢話など論外だ。

ただ、私より海外に詳しい人がほぼゼロだし、

いろいろな映画、本、音楽などに

もっと詳しい人もゼロで、

当然わたしがもっとも長くメディア界にいるわけなので、

つい話すことになる。

(P.126・127)

 

ああ、龍さんも年を取ったんだなと

つい感慨深く思ってしまいました。

 

私が村上龍にハマっていたのは、

もう20年も、30年も前のことですから

当然私も年を取りました。

 

それがいいとか悪いとかという話ではなく、

誰もが味わう自然現象です。

 

ここで大事なのは

「自覚」なのだろうと思いました。

 

無自覚で、平気で自慢話をするような

老害にはなりたくないものだ…と

つい思ってしまいました。

 

戦争という甚大な犠牲を払い、

欠乏期から回復したあと、

巨大な需要が生まれ、高度成長が訪れた。

わたしの世代だけではなく、

メディア全体は、高度成長が、

実は異様な時代だったということを忘れがちだ。

あの頃に比べると、

今はとても「普通」なのだ。

(P.138)

 

時代は常に移り変わります。

そして今が過去となり、

過去はいずれ歴史となるのですね。

 

昔を懐かしがるのではなく、

今を生きないと

ただの老いぼれになりそうです。

 

龍さんはしっかり現代を見つめていて、

そして過去を引きずることなく、

冷静で客観的な認識を持っていて、

本物の作家であることが再確認できました。

 

これまで、反省は多々あるが、

後悔はない。

(P.146)

 

この「すべての男は消耗品である」は、

なんと34年間も続けてきたらしいです。

 

本当にすごいことですし、

龍さんにはお疲れさまと伝えたいです。

 

でも、できれば、龍さんには、

最後に超大作と言えるような

長編小説を書いて欲しいな。

 

年齢的にも厳しいかもしれませんけど、

私の好きな「愛と幻想のファシズム」のような

それこそこれの現代版というか、

未来版のような内容の小説に挑戦して欲しいです。

 

必ず買います。読みます。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

もちろん満点でもいいのですが、

何となく昔の龍さんと比べると、

パワーというか、

破天荒さが薄れてしまっています。

 

そりゃ龍さんも年齢を重ねてきて、

いまはそこそこの年齢ですから

いかんともしがたいところですが、

作家としての技術に衰えはありませんし、

内容は懐かしさとともに

着眼点がすこぶるユニークなのですけど、

長年の村上龍ファンとしては

少し残念に感じるところもなくはなかったです。

 

巻末で坂本龍一さんが文章を寄せていましたいが、

これは年を取ったということではなく、

「成熟」したと言えるのかもしれません。

 

とはいいつつも、

大満足の一冊であったことは間違いないです。

 

それでは、また…。

 

 

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