ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

田中角栄 政治の天才

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

一応、歴史好きを広言している私ですが、

別に学問として学んだわけではなく、

ただ好きであるというだけです。

 

テストを受ければ

きっと大した点数は取れませんが、

自分の人生に活かしているという点では

わりと胸を張れるような気がしています。

 

とはいえ私の知識や興味は

日本史に偏っていて、

世界史は詳しくありません。

 

また時代的にも、

戦国時代と幕末から明治が好きなので、

それ以外の時代は

ごく一般的な知識しかありません。

 

ただ最近は「昭和」を学ぶべきと思うことが多く、

半藤一利さんの昭和史を読むなど

意識的に昭和に目を向けています。

半藤一利 の検索結果 - ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

 

そこで昭和を考えるさいには、

必ず通らねばならないだろう人物を

思いつきました。

 

今回ご紹介する書籍は、

田中角栄 政治の天才 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

田中角栄 政治の天才

岩見 隆夫 人物文庫 を読みました。  

 

失われた30年と言われる

我が国の経済状況ですが、

その要因は一つや二つではないと思います。

 

政治も、行政も、企業も、

それぞれに反省すべきところはありますし、

私たち個々も

深く考えたほうがよいところはあるでしょうか。

 

今だからわかる当時のこともあり、

〇〇だから、と

安直に決めつけることは到底できません。

 

おそらく当時の関係者は

必死で何とかしようとはしていたと思うんです。

 

でも何とかならなかったんです。

それが今でも続いているんです。

 

なぜ変革できないか?

やはり過去の積み重ねがあるのでしょう。

 

良くも悪くも、

長年続いてきた文化や伝統は

そう簡単には変えられません。

 

よく昭和にあった出来事は

幕末や明治維新からの継続性を振り返らないと

本当の意味で理解することができない。

 

そんなふうに言われたりしますけど、

この失われた30年を知るためには

田中角栄の時代を振り返るべきだ。

 

何となくそんな気がしました。

 

そこで私の好きな人物文庫を調べてみましたら

田中角栄があるではありませんか。

 

これ幸いとすぐにポチッと購入し、

楽しみにしながら読み始めたのでした。

 

目次

第1章 「アーウーとヨッシャ」

 ー田中角栄の政治力学

第2章 ロッキード隠し

 ー田中角栄の延命策

第3章 サンクレメンテの怪

 ー田中角栄とニクソンの宿縁

第4章 白昼夢「40日抗争」

 ー田中角栄支配の一断面

第5章 「大福」の研究

 ー田中角栄権力の周辺

第6章 竹下登の研究

 ー反面教師としての田中角栄

第7章 三木武夫の研究

 ー反田中角栄の政治力学

第8章 自民党のたそがれ

 ー田中角栄時代が終わる

 

感想

ちょっと思っていたのと違う…。

これが最初の感想です。

 

田中角栄を読みたかったんです。

 

大平さんや、福田さんや、

三木さんや、中曽根さんはいいんです。

 

田中角栄が中心の本が読みたかったんです。

 

それこそ幼少の頃から、

立身出世をしながら

今太閤と言われるところまで上り詰めて、

ロッキード事件で没落するまで。

 

そんな展開を予想していたので、

この点は少し残念でした。

 

ただ裏を返せば、

池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、

三木武夫、福田赳夫、大平正芳、

伊東正義、鈴木善幸、中曽根康弘

竹下登、宇野宗佑と続く歴代総理の背景が

かなり深く理解できました。

 

大平正芳さんは田中角栄と盟友だったようで、

本書においても

相当に大平さんの件でページが割かれています。

 

でも、角栄さん「中心」ではないやん…。

タイトルはどうやねん?というのは

どうしても残りました。

 

えっと、気を取り直して…

これもひとつの昭和史だなと

その点では私も大変に勉強になりました。

 

本書から学んだのは

次の3点です。

 

ひとつめは、

総理大臣という職業について。

 

総理大臣は「偉い人」というより、

国家の意思決定を束ねる

「究極の調整役」なのだと痛感しました。

 

政策や理想だけで動ける仕事ではなく、

党内力学、官僚機構、派閥、世論、外交――

 

あらゆる利害の交差点に立ち、

最終判断の責任だけを背負う。

 

しかも任期は不安定で、

明日には足元が崩れるかもしれない。

 

そんな椅子に座る人に必要なのは、

清廉さや人格だけではなく、

相手の腹を読み、落としどころを作り、

必要なら泥をかぶる胆力か。

 

だからこそ「総理に向いている人」と

「政治家として優秀な人」は一致しない。

 

理想を語る人が必ずしも国を動かせないし、

動かせる人が必ずしも綺麗ではない。

 

総理大臣という職業は、

能力と業(ごう)を

同時に引き受ける仕事なのだと思いました。

 

企業で言えば社長と同じです。

医療機関なら院長ですね。

 

一筋縄ではいきません。

 

ふたつめは、

政治と経済の関連性について。

 

政治と経済は別物ではなく、

互いの「原因」であり「結果」でもあります。

 

政治がルールを作り、

予算配分で勝ち筋を決め、

公共投資や税制で産業構造を変える。

 

一方で経済は、

雇用と生活を通じて世論を形づくり、

企業や業界の利害が政策に圧力をかけ、

政治の選択肢を狭める。

 

だから「経済が悪いのは政治のせい」

「政治が悪いのは国民のせい」と単純化すると、

構造が見えなくなるのだと思います。

 

高度成長の成功体験は、

公共事業・規制・分配の仕組みを強化し、

強化された仕組みは変化に弱くなる。

 

変革が必要な局面ほど、

既得権の抵抗も強くなる。

 

つまり、経済の停滞は

「仕組みの老朽化」であり、

政治はその老朽化を先送りもできれば、

更新もできる。

 

失われた30年を理解するには、

当時の政治が何を選び、

何を先送りしたかを

見つめ直す必要があると感じました。

 

日本列島改造論に冠しても、

当時の勢いがすごいものがあったと予想しますが、

その功罪も大きかった。

 

今の日本経済の低迷の要因のひとつは、

政官財が談合と忖度をして、

国民生活をないがしろにしてまでも

カネまみれになっていることはなくはないか、と。

 

最後のみっつめは、

田中角栄とは何だったのか?

 

田中角栄は、英雄か悪役か――

その二択では語れない存在でした。

 

彼は地方の現実を知り、

数字で国を動かし、味方を増やし、

敵を抑え込む「術」を持っていました。

 

人を見抜き、使い、守る。

 

政治を「理念」より先に

「実装」として捉えた人だったのでしょう。

 

一方で、その強さは利権と派閥を肥大させ、

政治の信頼を傷つけ、

ロッキード事件で象徴的に崩れました。

 

つまり角栄さんは、

戦後日本の成長モデルの「推進力」であり、

その副作用を体現した「影」でもあるのですね。

 

私が本書を読んで感じたのは、

角栄という人物の是非よりも、

角栄を生んだ時代と、

角栄を必要とした社会の姿です。

 

彼は一人の天才であると同時に、

構造が生んだ現象でもあった。

 

だからこそ、角栄を理解することは、

昭和を理解することに直結するのだと思いました。

 

 

総じて本書は、

田中角栄という「天才」を礼賛する本というより、

角栄を軸に昭和政治の力学を立体的に見せる本でした。

 

総理大臣とは理想を語る職ではなく、

党内・官僚・世論・外交の利害を束ねて決断し、

結果責任を引き受ける究極の調整役です。

 

政治と経済は分離できず、

成長モデルの成功体験が制度を強化し、

その制度が変化に弱い「老朽化」を生み出します。

 

田中角栄は、

その推進力と副作用を同時に体現した存在で、

英雄/悪役の二択では捉えきれない。

 

失われた30年の理解も、

誰か一人のせいにせず、

当時の選択と先送りを構造として

冷静に捉えることが出発点になる――

そんな学びが残りました。

 

評価

おススメ度は ★★★☆☆ といたします。

 

本書の魅力は、

田中角栄を「伝説」や「事件」で切り取るのではなく、

角栄を取り巻く人物相関と政治力学の中で、

昭和政治の肌感を具体的に描き出している点にあります。

 

角栄“単体”の立身出世物語を期待すると肩透かしですが、

(私はまさにそのパターン 笑 )

逆に言えば、角栄がなぜ強かったのか、

なぜ憎まれ、なぜ残ったのかが、

同時代の総理・派閥・官僚・外交の文脈から

厳然と見えてきます。

 

一方で、通史的な面白さはある反面、

田中角栄本人の内面や生い立ちの厚みは薄めで、

読後の焦点が散る印象も否めません。

 

よって評価は★3。

 

ただ、昭和政治の「構造」を掴む入口としては、

十分に読む価値がある一冊です。

 

それと解説が面白かった。

政治記者の後輩である早野透さんという方が

まるっとまとめてくれていますが、

ここだけ読んでも十分なくらいの内容です。

 

最後に、もし角栄後に、

揉めに揉めた自民党が割れていたら

今頃どうなっていたのか。

 

歴史にもしもはないけれども、

政治とカネの問題は

現在でも連綿と続いているのを見ると、

このときに自民党は分裂したほうが良かったかもしれない。

 

多少なりとも清廉な政治が行われたかもしれず、

裏を返すと今の自民党議員は

まだ角栄さんの亡霊に絡めとられているのではないか…

そんなことを考えたりもしました。

 

それでは、また…。

 

 

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