ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

帳簿の世界史

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

私は子供の頃から

わりと読書をするほうでした。

 

小学生当時は、

星新一さんと、江戸川乱歩シリーズを

貪るように読んでいた記憶があります。

 

たまたま当時住んでいたマンションの隣に、

児童館みたいな施設があって、

そこに図書館が併設されていたのです。

 

お金もかかりませんし、

時間もつぶせますし、

飽きたら他で遊ぶこともできたので、

イチ時期は入り浸っていました。

 

中学生から本格的に野球を始めて、

練習が多い野球部だったものですから、

しばらくは読書熱は冷めていました。

 

しかし大学生になり、

あまり授業にも出なかったものですから

暇な時間ができたのですね。

 

それで久しぶりに本でも読むかと思い、

当時は落合信彦さんや、村上龍さんにハマりました。

 

これがちょうど二十歳前後の頃です。

 

それから早くも35年が過ぎますが、

おかげさまでずっと読書を続けています。

 

だいたい週に1冊ペースで、

これだけ長く続いていますので、

自分で自分を褒めたいと思います(笑)。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 帳簿の世界史 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 帳簿の世界史 』

ジェイコブ・ソール 村井章子 訳

文春文庫 を読みました。

 

長く読書を続けていると、

時々いい意味で羽目を外したくなると言いますか、

自分があまり読まないカテゴリーの本を読みたくなります。

 

なにせ積ん読本棚には、

常時200冊くらいの本が眠っていますので、

最近は本を買うのを控えてはいるのですが、

それでも面白そう!と思う本を見つけると

ついポチポチ購入しています。

 

本書もそのなかの一冊です。

 

帳簿の世界史ですよ。

実に興味深くないですか?

 

私は一応商学部を出ていますが、

簿記も苦手だったし、

会計にも興味は持てませんでした。

 

今は経営者をしておりますが、

営業的な数字の強さは多少あっても、

財務会計的な数字の強さはありません。

 

しかし毎月決算書に目を通していますので、

多少なりともその「意味」は理解しているつもりです。

 

それに「世界史」が加わると。

 

歴史好きを広言しているわりには、

日本史に偏っていて、

折に触れて世界史を学んでいるところです。

 

何かのSNSで、

どなたかが本書を紹介しており、

5秒後にはポチリました。

 

しばらく積ん読本棚で眠っていましたが、

満を持しての登場です。

 

とても楽しみにしながら、

読み始めたのでした。

 

目次

■序 章 ルイ一六世はなぜ断頭台へ送られたのか

■第1章 帳簿はいかにして生まれたのか

■第2章 イタリア商人の「富と罰」

■第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家

■第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき

■第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記

■第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問

■第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作

■第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析

■第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官

■第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち

■第11章 鉄道が生んだ公認会計士

■第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性

■第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか

■終 章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている

■日本版特別付録 帳簿の日本史(編集部)

■解説 山田真哉

 

感想

まず率直な感想としては、

「点」と「点」が「線」になったという感じです。

 

私は学生時代から日本史専攻で、

その後もずっと日本史ばかり学んできました。

 

私の持つ世界史の知識は、

非常に断片的なものだったのですが、

なぜか「帳簿」を学んだことにより、

あ、あれはここから始まったのか…とか、

おお、あの要因はここにあるのか…というように

知識が結びつく内容が

あちらこちらにあり、

とても有意義で、面白かったです。

 

特に、イタリア、オランダ、フランス、イギリス、

そしてアメリカに至るまでの

世界の主導権の移り変わりに

帳簿、つまり会計の役割が大きかったという点は

実に興味深いものでした。

 

フランス革命の要因などは

とても勉強になりました。

まさか「帳簿」から

ここまで世界史を学ぶことができるなんて

想像もしていなかったので、

非常に面白かったです。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。

 

ダティーニの帳簿の数と広範な内容には圧倒される。

これだけの帳簿を維持するには、

強固な意志と経営規律が必要だ。

(中略)

部下の管理職の一人に充てて、

昼夜を分たず自分の仕事のことを考えよ、

つねにメモをとれ、

心構えとして帳簿をつけよ、と

手紙を書いている。

(P.53)

 

別に会計の領域に限らずに、

一流の仕事をする人は

特有の執念がありますね。

 

帳簿づけのようなミスの許されない仕事だと

なおさらだと言えるでしょうか。

 

不正会計を起こすような企業の経営者は

ここから学び直さねばなりません。

 

ダティーニは自分が神のために

金儲けをしているわけではないことをわきまえており、

そのことは繰り返し手紙にも書いている。

彼は自分の富と罪を数え上げ、

神に対する負い目(dept)を計算した。

ただし勘定を締めるのは、

人生の最後を迎えたときだけである。

この「心の借り」を返すことが改悛だとすれば、

これもまた会計的概念の一種と言ってよかろう。

このように金銭の会計は

心の会計と対をなしており、

精神生活の重要な部分でもあった。

(P.57~58)

 

このダティーニさんというのは

トスカーナの商人で巨万の富を築いたそうです。

 

現代と中世では、

あらゆるものが比べようがないと思いますし、

今よりも不便であったことでしょうけど、

ここで私が学びとするのは

金儲けと精神世界を分離して

両方を成立させようとする人生観です。

 

お金を持ちすぎて、

ハチャメチャな人生になる人も

少なくない現代社会では、

会計という領域だけではなく

「心」という人としての大事な部分を

冷静に振り返ってみてもいいのかもしれませんね。

 

人間を神の高貴な被造物であると定義づけるとともに、

人間の知性を讃え、

数学は自然を理解するための神聖な学問であるとした。

ただし数字は純粋でなければならず、

商売の世俗的な利益などという

不純なものに関わるべきではないという。

「聖なる数学を商人の算術と混同してはならない」と

ピコは警告した。

(P.87)

 

このあたりは日本人的な感覚とは異なりますけど、

非常に興味深く思いました。

 

私は数学が大の苦手科目だったのですが、

自然を理解する学問と受け止めることができていたら、

もう少し勉強できたかもしれません。

 

そして数字は純粋でなければならないのは、

安易に金銭と結びつけるのではなく、

科学的であることを戒めとしていたようです。

 

カネ、カネ、カネという拝金主義者が

我が世の春を謳歌していますけど、

あまり幸福そうに見えないのは、

そういう姿勢の問題なのかもしれません。

 

すなわち、

経営者は支配人の監査をしなければならない、

ということである。

(P.111)

 

私も経営者の端くれとして、

経営者の仕事とは何だ?と問い続けていますが、

これは素直に受け入れねばならないかと思いました。

 

現代で言えば、

支配人とは支店長とか、所長とか、

場合によっては経理部長とか、財務部長になるでしょうか。

 

企業の不祥事が一向になくならないのは、

経営者が監査をしていない、

監査部が機能していない、

そういうことなのかもしれません。

 

十七世紀に誕生した世界初の株式会社では、

組織的な複式簿記はついに根付かなかった。

会計慣行の重要性を十分認識し、

専門家がたくさんいたにもかかわらず、である。

それでも会計の精神は社会に根付いており、

内部監査は試みられた。

会計計算や利益・損失の予想、

評価に最新の注意を払った形跡もある。

(P.164)

 

結局のところ、

人間は「欲」との戦いですね。

 

全体にとって素晴らしいルールやシステムでも、

たった一人の強欲な人間の欲望が

すべてをぶち壊してしまう。

 

現在社会だって、

会計ルールを逸脱することは少なくなく、

しかもそれが立派な大企業だったりするのが

お笑い草だなと思います。

 

「足るを知るは富む」のに、

どこまで言っても満足ができない人は

とても恥ずかしい人間と言わざるを得ません。

 

かくして利益計算から始まった簿記の科学は、

幸福や満足や個人の価値を

考える手段に到達したわけである。

(中略)
ビジネスにおいてと同じく人生においても、

快楽と苦痛の収支尻を合わせ、

富のみならず幸福を増やすことは困難な課題である。

(P.239、240)

 

やはり何ごとも「目的」があってこそで

この目的がぶれると

結果は目を覆うことになりかねません。

 

ビジネスに美学がないと

ただの金儲けになり、

それは悪いことではないけれど、

「だけ」になるとよくありません。

 

会計の原則を学び、

それを子孫に伝えていく姿は、

プロテスタント的職業倫理の一つの理想像と言えるだろう。

フランクリンにとって、

会計は生活の秩序を確立する重要な手段だった。

財産の管理だけでなく、

思想や執筆や心の平和にも会計が役に立った。

フランクリンが「心の会計」を

帳簿につけていたことはよく知られている。

自分のした善行を個別の欄に記載しており、

十三の徳目を定め、

十三の横線を引き、

左の欄にそれぞれの徳の頭文字を記入していた。

(P.275~276)

 

これはベンジャミン・フランクリンについて

書かれた箇所ですが、

プロテスタントの価値観は私にはわかりませんが、

人として、とても面白く感じました。

 

「心の会計」という発想は、

現代社会でも必要不可欠のように思います。

 

権力とは、

要するに財布をしっかり握っていることだ。

(P.293)

 

これはアレクサンダ―・ハミルトンの言葉ですが、

言い得て妙でしょうか。

 

「だけ」とは思いませんけど、

重要であることは間違いありませんね。

 

数字に弱いというのは、

権力者としての弱点になりそうです。

 

ブッシュ大統領は、

「低い規範と虚偽の利益の時代はこれで終わった」と

誇らかに述べ、

「アメリカではいかなる企業の経営者も

 法を超越することはない」と断言している。

さらにすくなくとも会計士にとって審判の日は訪れた、

とおごそかに付け加えたものである。

「自由市場というものは、

 恥知らずだけが生き残り、

 強欲者だけが勝つような弱肉強食のジャングルではない…

 自由経済を実現するためには、

 法を犯す者、公正の原則を破る者は、

 たとえどれほど富裕で地位が高かろうと、

 代償を払わねばならない仕組みが必要だ」。

(P.354~355)

 

サーベンス=オクスリ法(SOX法)が

制定されたときのブッシュ大統領の言葉ですが、

その後も何度も企業不祥事があり、

残念ながら思うようにはいかなかった事実があります。

 

ここで思うのは、

人間というものは何と欲深いものか?ということです。

 

欲望のコントロールは、

個人の問題に収まることなく、

私たち社会全体の問題ですね。

 

本書で見てきたように、

ルネサンス期のイタリアやスペイン、

フランスといった強大な王国から、

オランダ、イギリス、アメリカなどの商業国家にいたるまで、

会計の発展には一つのパターンがある。

最初にめざましい成果を上げたかと思うと、

いつのまにかあやしい闇の中に

引っ込んでしまうのである。

(P.360)

 

本書での最大の学びはまさにこれ。

歴史は繰り返してしまうものですね。

 

その根底にあるものは人間の「欲」です。

 

資本主義は人間の欲を活かした制度ですけど、

行き過ぎは戒めねばなりません。

 

自戒できるか、ルールで縛るか。

 

私自身も経営者の端くれとして、

自戒と自省を常として、

欲に絡めとられないようしなければと

強く思いました。

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点です。

 

もう文句なしで、

すこぶる勉強になりましたし、

ある意味では人生訓としても大事な内容です。

 

帳簿や会計、そして監査というものが

こんなにも奥深く、

そして何百年も前から人類の課題になり続けていて、

何度も何度も同じような失敗を繰り返していることに

幻滅するとともに、

ここからいかに学ぶのか?

 

我が国でも粉飾決算などは頻繁に耳にしますから、

リーダーには「必読の書」であると思いました。

 

それでは、また…。

 

 

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