おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
当ブログは、
「読書好き医療コンサルタント」と
図々しくも名乗っておりますので、
医療系のコンサルタントを代表しているつもりで、
必死に続けております。
そこにどんな価値があるのかはわかりませんが、
こうして書評を書くことで、
読書の「実り」が増しているのは確かです。
いつまで続けられるのかはわかりませんが、
できるだけ末永く続けてまいる所存です。
今回ご紹介する書籍は、
【 経営リーダーのための社会システム論
構造的問題と僕らの未来 】 です。

本書をピックアップした理由
『 経営リーダーのための社会システム論
構造的問題と僕らの未来 』
宮台 真司 × 野田 智義 光文社 を読みました。
私は内田樹さんを
心から敬愛していますが、
その次は?と考えると
宮台真司さんは筆頭候補です。
本書を見つけたときには、
宮台さんが経営リーダーに向けて書いた?と
とても気になって、すぐに購入しました。
「経営」と「社会学」。
どうつながっていくのか、
宮台さんが何を考えているのか
大変に興味深く、
非常に楽しみにしながら読み始めたのでした。
目次
プロローグ 社会という荒野を仲間とともに歩く
第1章 構造的問題とは何か
第2章 2段階の郊外化とシステム世界の全域化
第3章 郊外化がもたらす不全感と不安
第4章 3段階めの郊外化と人間関係の損得化
第5章 「われわれ意識」が喪失した社会をどう統治するか
第6章 神格化するテック、動物化する人間
第7章 あなたにとって「よい社会」とは?
第8章 共同体自治の確立とリーダーの条件
エピローグ 天才・宮台真司の絶望と希望
感想
非常に面白かったです。
とても勉強になりました。
宮台さんには珍しく、
経営リーダー、
ビジネスパーソンに読んで欲しいという
意図や意味がよくわかりました。
これは私の持論ですが、
今後の「AI時代」には
今までの常識が覆ると思っています。
知識はAIが相当部分を成り代わりますので、
私たち人間に問われるのは、
まさに「人間性」の部分であり、
「人格」や「人柄」ではないかと考えています。
人間が集まって社会ができあがると考えれば、
「社会学」は必須の学問とも言えそうです。
宮台真司という名前、社会学という学問、
ここにピンとくる人は
本書を読むと三段階成長すると思います。
ピンとこない人でも
読む価値は相当にあります。
ただネックなのは、
本のサイズが大きくて重いこと。
でも内容はそれに比して
たっぷり詰め込まれていますので
心よりお勧めいたします。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
「社会はビジネスを必ずしも必要としないが、
ビジネスは社会を必要とする」。
社会なくしてビジネスは存在しないし、
ビジネスは社会からライセンス・ツー・オペレートを与えられて
存在するにすぎない。
(中略)
企業は株主のものだという主張に対し、
「社会の一つのステークホルダーとして企業が存在し、
企業の一つのステークホルダーとして株主が存在するのだ」
と警報を鳴らし続けた。
(P.7)
会社には「事業」が必要で、
その事業から恩恵を受ける「顧客」が必要で、
事業を作り顧客開拓をする「社員」が必要です。
勘違いしている株主は少なくないし、
その最たるものが
事業承継されない企業のオーナーであり、
その結果としての休眠会社のオーナーであり、
結局、廃業していく恥ずべきオーナーです。
現場から離れた人は
もう経営者としても、オーナーとしても、
存在してはいけないでしょう。
資本主義は変わり始めています。
もうポスト資本主義を編み出さないと
痛い目に遭うような気がしますよ。
社会学は、
社会が思い通りにならない理由を究明することで、
どの範囲で、どんなアプローチを採れば、
複雑な社会に対峙しうるかを探求する学問です。
社会の複雑さに絶望することなく、
極端な思い込みを排しながら探求するのです。
(P.46)
本書は「経営リーダーのための」と謳っていますが、
その理由はまさにここにあるのではないでしょうか。
思い通りにならないという前提に立ち、
社会の複雑さから事業を抽出する。
私は、これからの社会は、
「資本家」ではなく、「事業家」の価値が
爆上がりするように考えています。
世界中に資本はあり余っていますが、
真の事業家は圧倒的に少数です。
僕らは、日本の現状を
「社会の底が抜けている状態」と表現する。
あるいは
「経済が回っていても
社会が回っていない状態」と言い換えてもいい。
こうした状況は、
僕らの期待する社会の姿からはほど遠く、
相当危機的だ。
社会に生きる僕ら一人ひとりに
かなり深刻なインパクトをもたらしており、
けっして他人事と笑っていられない。
(P.60)
この問題提起を軸にして
ここから先の展開が始まるのですが、
正確な問題意識を持つためにも
ここは非常に重要と思います。
我が国の現状を鑑みれば、
まさに「底が抜けた状態」です。
だからこその構造的な問題。
素晴らしい問題提起であり、
議論の出発点としては正しいと思いました。
日本では最近
「グローバルで戦えるような強い個人を育てよう」といった
スローガンが掲げられますが、間違いです。
人は強くありませんし、
強く見えても病気や事故でヘタレます。
弱い個人を包摂する共同体、
つまり代替不可能な人間関係を備えた
ホームベースが維持されて初めて、
システム世界で強く生きられます。
また、共同体に恩義を感じる者は、
共同体にリターンを返そうという強い動機を持ちます。
単に利己的な者は
そうした動機を持つ者に負けます。
(P.126)
結局のところ、
経団連をはじめとした財界が
政治家と結託してやらかしたことが
私たちの社会を壊したのかもしれない。
そう思わざるを得ません。
全体の水準を極めてタフなメンタルと
希少なスキルを持つ人に合わせてどうする?と。
すでにグローバリゼーションは
幻想というか、
失敗だったという論調も出てきていますが、
財界はまだ諦めていません。
彼らは自社や自業界を守ることが最優先で
国民生活を軽視しているように思えてなりません。
ルソーが理想としたのは民主制の社会、
それも直接民主制の社会でした。
といっても、彼が擁護していたのは、
直接民主制という制度のそのものではなく、
直接民主制がもたらす帰結です。
具体的には、統治者も行政官も不要な、
「みんなでみんなを統治する社会」の実現です。
そのために必要となるのが、
「個人が、自分のことだけを考えるのではなく、
みんなのことを考える」という感情的能力で、
それがピティエです。
(P.160)
民主主義にしても、資本主義にしても、
そろそろ限界だなと感じている人は
意外と多いように感じます。
もちろん共産主義や社会主義がいいというものではなく、
ポスト民主主義、ポスト資本主義が
求められているように思うのです。
意図的につくるものではなく、
自然とブラッシュアップするように予想しますが、
現代を生きる我々大人が何を考え、
どんな行動を起こすかに掛かっているでしょうか。
少なくとも、既得権にしがみつき、
若者を犠牲にし続けてはいけないと強く思います。
「まとも」に生きる人間と
「うまく」生きる人間の
どちらを仲間にしたいかという問いかけであり、
「まとも」に生きる人間を生み出す社会と、
「うまく」生きる人間を生み出す社会の
どちらを選択するかという問いかけでもあります。
(P.235)
何気ない文章ですけど、
これは非常に重要な「問い」のように感じました。
おそらく「うまく」生きようとする人が
年々増えているように感じますし、
その結果が戦争であり、殺人事件であり、
二極化であり、貧困化につながっているでしょうか。
分け合えば余るのに、
奪い合えば足りなくなる。
後世に私たちは何を残すか?
「今だけカネだけ自分だけ」という価値観のままでは
100年後に現代人は恨まれるかもしれません。
つまりテックの発達は、
フィジカルな意味での「人間か、非人間か」という
境界を消去していきます。
人間的な人間、人間的なAI、
人間的な改造哺乳類と、非人間的な人間、
モンスター化した改造人間が、
横並びになります。
するとどうなるか。
「人間であること」より
「人間的であること」の方が大切になっていきます。
「人間であっても人間的でなければ価値はない」
「人間でなくても人間的であれば価値がある」というふうにです。
(P.240~241)
これ、恐ろしくないですか?
でもリアルな現実として
私たちは直面しているのかもしれません。
人間的な人間であるために、
私たちは何を学ぶべきか?
うまくいってもいかなくても
結局は何かに依存している。
ということは、共同体自治を確立していく
プロセスにおいて求められているのは、
そういうエリートではないということです。
むしろ「縁の下の力持ち」です。
陰からサポートし、自分は目立ちません。
自分の手柄も、相手に渡す人です。
(P.267)
アンサングヒーロー。
そんな言葉が頭に浮かびました。
ホワイトカラーの生きる道は
年々少なくなると思います。
そう簡単に既得権を放さないのは
歴史が証明するところですが、
相手は「AI」です。
自然淘汰されるでしょう。
これからの時代に生き残るのは、
汗をかくホワイトカラーか、
知的なブルーカラーではないかと考えています。
トーキングチーフがそう告げると、
人々は「確かにこれがみんなの意見だな」
というふうに体験できるのです。
これは、ルソーの言うところの「一般意志」に当たります。
トーキングチーフが告知するのは、
みんなの意志を集計した最大公約数的な意見でも、
多数決的な意見でもありません。
しかしトーキングチーフの意見が、
みんなの意見である一般意志だというふうに信じられるから、
誰もがそれに従うわけです。
(中略)
では「立派な人」の要件は何でしょうか。
それは、利他的、倫理的であることです。
人は利己的な人やあさましい人に感染しないということは、
実験心理学の研究データからわかっています。
ミメーシスは、
利他的・倫理的な人のみが惹起することができます。
その利他的・倫理的な人も、
周囲に利他的・倫理的なロールモデルが存在して、
ミメーシスが惹起されてきた経験があるからです。
(P.278・279)
組織のあり方も変わりそうですね。
そしてその中心になるのは、
「AI」に足りないものを持っている人。
権力なんてものは通用しなくなるでしょう。
こすっからい人もダメでしょう。
道徳的で、倫理的で、利他の心を持つ
ごく真っ当な人。
そういう人の価値が
「AI」によって浮上すると思います。
まことに情けない話ですが…
評価
おススメ度は ★★★★★ と文句なしの満点です。
宮台さんの著書は今までも
何冊か読んできました。
宮台真司 の検索結果 - ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!
本書はそのなかでも
ベスト3に入る良書です。
読後、とても清々しく、
充実感を得ることができました。
それでは、また…。
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