ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

いつの時代もそうなのですけど、

しかし人間の社会は

ゆったり落ち着くということがありませんね。

 

どこかで必ず争いがある。

 

同じ人間で

そんなにいがみ合う必要はないと思いますけど、

人の欲望というのは本当に恐ろしいものです。

 

必ずしも自分に関係するものではありませんけど、

それでも「人間を知る」ということを

ライフワークにしている私としては、

この争いの背景にあるものは知っておきたいと思います。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 』

内田 樹 中田 考 集英社新書 を読みました。

 

前の本を読み終えて、

また内田樹さんの本を読みたくなりました。

 

私にとって内田さんは原点のような存在ですから、

何かわからないことがあったりすると、

学びの源泉として内田さんに戻ります。

 

積ん読本棚には、

まだ数冊の内田本があるのですが、

本書は少し前に購入して放置されていました。

 

イランの問題などもあり、

今読むべきはこれだろうと思い、

勉強する気が満々で読み始めたのでした。

 

目次

序 レヴィナシアン・ウチダ、ムスリム中田先生に出会う

第1章 イスラームとは何か?

第2章 一神教の風土

第3章 世俗主義が生んだ怪物

第4章 混迷の中東世界をどう読むか

第5章 カワユイ カリフ道

補遺 中東情勢を理解するための現代史

跋 未だ想像もできないものへの憧憬

 

感想

実に勉強になりました。

 

本書の良さは、

イスラームを単体で説明することにとどまらず、

国家、宗教、資本主義、

グローバリズムといった大きな枠組みの中で、

その意味を立体的に捉えようとしている点にあります。

 

しかも対話形式ですので、

難解なテーマでありながら、

読む側も思考を促されます。

 

ただ知識を増やすための本ではなく、

自分の見方そのものを問い直される一冊でした。

 

イスラムに対して

報道程度の知識では

まったく足りていないどころか、

相当の誤りがあることもよくわかりました。

 

本書が発行されたのは

2014年2月ですから、

古いと言えば古いのですけど、

内容が深く、本質を貫いていますので、

少しも古さを感じません。

 

しかも中田考さんは、

ご自身もイスラム教徒であり、

イスラムの学者、専門家です。

 

そこに内田さんが斬り込むのですから、

単なるイスラム本ではなく、

人間や世界、そして真実に対して、

非常に鋭く迫っていました。

 

もちろんお二人の主張が

すべて正しいとは思いませんけど、

本書を読むと

現代の中東情勢の根幹が理解できます。

 

本当に大変勉強になりました。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。

 

自分が欲しいものはまず他者に贈与して、

他者から反対給付を受けるかたちで手に入れるというのは

共同体の基本ルールだったと思うんですけどね。

(P.54)

 

これがイスラムの考え方とは思いませんが、

いわゆる資本主義社会に生きる我々よりは

その傾向はあるのかもしれません。

 

贈与というのは、

これからの時代を生きるキーワードでしょうか。

 

決断力のあるリーダーが

「他の人たちには見えていないもの」を

個人的慧眼によって洞察して、

おのれの直感に基づいて部族を

「あっちへ行く」と引き連れてゆく集団と、

一人ひとりがコツコツ地べたを耕して、

食べ物を手作りできる集団では

組織の成り立ちがまったく違ってくる。

遊牧民の場合の組織の元型的イメージは

「羊の群れを牧者が導いてゆく姿」だと思うんです。

(P.78)

 

こういう歴史や伝統を見ずして、

自分たちの価値観を押しつけてはいけませんね。

 

アメリカがやっているのは、

自分たちの正義や価値観の「押しつけ」であって、

他者へのリスペクトに欠けています。

 

世界中を敵に回して戦争を仕掛けて、

本当にうまくいくと思っているのだろうか。

 

ミッションスクールに二十一年間勤めていましたから、

クリスチャンと袖触れ合う機会が多いのは

当然なんですけれど、

学内であれやこれやの事件が起こった時に

しみじみ思ったのは、

「ぶれないプリンシブルがある人」って、

やっぱり頼りになるなということでした。

クリスチャンとマルクス主義者、

やっぱりぎりぎりのところで首尾一貫性があるのですよ。

普通の先生たちは

自分の主張に一貫性があるかないかなんて、

気にしない。

その場の空気で言うことコロコロ変わるし。

(P.104)

 

言い得て妙と言いますか、

非常に面白い物の見方ですね。

 

確かにプリンシブルのある人間は強いと

私も同意します。

 

ただクリスチャンとか、

マルクス主義者である必要はありません。

 

私たちは宗教やイデオロギー以外で

どのようにプリンシブルを持てるでしょうか。

 

リベラルの真骨頂は、

「自分たちは

 『まあまあ、そんなにとげとげしくならずに、

 どうです、ここは一つナカとって』」という

寛容と和解のノウハウにあるわけで、

思想的な真偽とはレベルが違うんです。

リベラルは思想じゃなくて、態度なんです。

僕はそれでいいと思うんです。

そういう限界というか、

「身の程」をわきまえている限りは、

リベラルは有用だと思う。

(P.109)

 

面白いですね、内田流リベラル論。

思わず納得しましたし、共感しました。

 

我が国のリベラルは

誠に残念ながら

文句ばかり言っているように見えますが、

思想ではなく態度に転換して欲しいです。

 

そうすれば支持率は上がるように思います。

 

今多くの人が

もう経済はグローバル化したと言います。

しかし、実はそれは希望的観測であって、

グローバル化はまだ完成していないのです。

アメリカはそれを必死に目ざしていますけど、

経済のグローバル化が完了するためには、

世界市場が単一の言語、単一の通貨、

単一の度量衡、単一の商習慣によって

統合されていることが必要です。

世界中の人々が英語を話し、

ドルで売り買いし、

同一の商品に欲望を抱き、

「金があるやつがいちばん偉い」という価値観を

共有する時に初めて経済のグローバル化は完了する。

でも、それはまだ完成していない。

と言うのも、それを阻む巨大な障壁が存在するから。

それが、イスラーム圏なのです。

(P.138~139)

 

だからアメリカは、

イラク、アフガニスタン、イランと

戦争を仕掛けるのでしょうけど、

そんな世界はあり得ないし、

あってはならないと思います。

 

人間軽視としか言いようがないし、

さすが哲学のない国です。

 

すでにグローバリズムは失敗していて、

資本主義には限界が来ているように思います。

 

要するに、貨幣というのは

等価のものと交換する以外には

なんの使用価値もないものだ、

ただ物の交換を加速させるために作られた

装置に過ぎない、ということを

きっぱりと宣言しているわけですね。

貨幣の本務は

「ものをぐるぐる回すこと」なんだから、

貨幣が滞留する理由を作るようなものは

すべて排除する、と。

利子をつけることによって滞留するくらいなら

利子をつけない。

紙幣にすることで退蔵されがちになるなら

金貨を使え、と。

合理的ですねえ。

(P.150)

 

私はイスラム教徒ではないし、

キリスト教徒でもないし、

グローバリストでもない。

だから、すごくよくわかる。

 

イスラムにも、アメリカにも、

よい面も悪い面もある。

いがみ合っている場合じゃないと思う。

 

独裁政権って

初代はそれなりにカリスマ性もあり、

国家ビジョンもあって、

必ずしも悪いことばかりを

したわけではないと思うのです。

しかし、独裁政治には致命的な欠陥があって、

独裁者は必ず後継者選びに失敗する。

独裁者の二代目は初代に比べると

はるかに格が下がる。

だから、時間がたつにつれて、

結果的に中枢に権力だけがあって、

国民を統合できるような

ビジョンを提示できないという状態になっていく。

そして、求心力を失って、崩壊する。

その繰り返しだと思うんです。

(P.185)

 

企業も同じですし、

ありとあらゆる組織に当てはまりそうです。

 

ベストは、独裁者が形をつくって、

さっと譲るということでしょうか。

 

イスラムの聖典『クルアーン』には、

この書は畏怖する者にとっての導きである、

と書かれています。

『クルアーン』から導きを得ることができる者は、

絶対的な他なる者、

謎への畏怖の念を抱くことができる者だけです。

(P.252)

 

イラク、アフガニスタン、イランと続く

アメリカの中東への戦争は、

キリスト教やユダヤ教などの宗教戦争ではなく、

グローバリズムに対して従わない

イスラム諸国への強奪なのですね。

 

「資本主義」対「共産主義」の戦いは、

一応、資本主義が勝ったことになっていますけど、

今は「資本主義」対「非資本主義」なわけです。

 

資本主義陣営から見たら、

まったく理解の範疇にないイスラムという文化。

 

どちらがいいとかの問題ではなく、

武力で従わせようとすればするほどに

理解や共生からは遠ざかり、

また「9.11」のような

テロを生み出すことになるかもしれません。

 

もっと相手を知れば、

落としどころが見つかるかもしれず、

何だか非常に残念な方向に

ここ何十年も進み続けていることに

とても悲しくなりました。

 

でもこの現実を知ることができて、

その点は本当によかったです。

 

評価

おすすめ度は ★★★★★ といたします。

 

本書は、イスラームを知るための本であると同時に、

現代世界の対立構造を考えるための本でもありました。

 

報道や先入観だけでは見えてこない

歴史、宗教、国家、資本主義の絡み合いが、

対話形式で立体的に浮かび上がってきます。

 

簡単に善悪を決めつけるのではなく、

まず相手を知ろうとする姿勢の大切さを、

改めて痛感しました。

 

人間とは何か、国家とは何か、

そして共生は可能なのかを考えるうえで、

とても示唆に富む一冊です。

 

それでは、また…。

 

 

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