おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
いつの時代でも、
いい点も悪い点もあるのが
リアルな現実であると思います。
しかし現代社会では
とにかく「二極化」が気になります。
そりゃ持つ者はいいでしょう。
でも持てない人はどうすればいいでしょうか?
自己責任と突き放すんですか?
それでも同じ人間ですか?
別に理想論を言うつもりはありませんし、
いい人であろうとも思いませんけど、
グローバリズム以降の世界、
とりわけ日本は、
かなり危うい方向に突っ走ってしまっているように
強く危惧しております。
今回ご紹介する書籍は、
【 上級国民/下級国民 】 です。

本書をピックアップした理由
『 上級国民/下級国民 』
橘 玲 小学館新書 を読みました。
古本屋さんで
たまたま本書を見つけました。
何となく手に取り、
まあ買っておくかと思い、
積ん読本棚でしばらく眠っていました。
それほど読みたいという
強い願望があったわけではなかったのですが、
ずっと何となく気になっており、
そろそろ読まねばならんかと
ようやく手に取った次第です。
目次
1 「下級国民」の誕生
2 「モテ」と「非モテ」の分断
3 世界を揺るがす「上級/下級」の分断
エピローグ 知識社会の終わり
感想
「上級国民/下級国民」というタイトルとは、
マッチしているような、していないような、
少し微妙な内容でしたが、
その着眼点はところどころ非常に興味深く、
新書にしては深い考察があって
とても好感の持てる一冊でした。
私は先日57歳になりまして、
世の中全体で見ればすっかりおじさんです。
しかし下降線をたどっているおじさんではなく、
まだまだ毎日学びを続けていますし、
相当にハードワークをしながら
人生を思い切り謳歌しているおじさんです。
と自分では思っていますが、
はたしてどうでしょうか?
それは置いておいて、
私の年代ですと
昭和に生まれ、昭和に育ち、
平成で社会に出て、平成で働き、
その結果を令和で味わっています。
そこそこ長く生きてきて思うのは、
日本が没落した要因は
分厚い「中間層」をなくしたことです。
その結果、二極化が進み、
富裕層はさらに富裕に、
中間層は貧困層に落ちて、
貧困層はさらに貧困になりました。
財界が政治に働きかけて、
政治が行政と結託して仕掛けてきたことです。
日本社会がこのまま落ちぶれ続けるか?
もう一度復活するか、
いまはその瀬戸際にあり、
中間層の復活こそがそのキーになると考えています。
裏を返すと、
富裕層や財界が欲をかけば、
日本社会は取り返しのつかない状態になるでしょう。
もう一つはジェネレーションギャップです。
この国は高齢者に手厚すぎます。
こんなことを言ったら申し訳ないですが、
老い先短い人にどうしてそこまで手厚くするのか?
昨今ようやく少子化対策や
就職氷河期年代への支援が始まりましたが、
遅すぎるし、規模が小さすぎます。
そのすべては、
高齢者支援が手厚すぎるのが要因ではないでしょうか。
ま、難しいことは私にはわかりませんが、
富裕層、財界、高齢者、
ここに属する人たち次第で
日本の未来が決まりそうです。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
日本のサラリーマンは世界(主要先進国)で
いちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、
世界でいちばん長時間労働をしており、
それにもかかわらず
世界でいちばん労働生産性が低いということになります。
これがかつての経済大国・日本の「真の姿」です。
平成の30年間、
この国では右(保守派)も左(リベラル)も
ほぼすべての知識人が
「ネオリベ」や「グローバリズム」に
呪詛の言葉を投げつけ、
年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行こそが
日本人を幸せにしてきたとして、
「(正社員の)雇用破壊を許すな」と
叫びつづけてきました。
事実(ファクト)に照らせば、
こうした主張はすべてデタラメです。
日本的雇用=日本の社会の仕組みこそが、
日本人を不幸にした元凶だったのです。
(P.21)
うむ、言い得て妙ですね。
ある意味では核心をズバリと突いている。
そう言えそうです。
もう少し視野を広げて考えると、
サラリーマンという働き方が
もう古くなっているのでしょう。
だって絶望しかありませんもの。
さらに言うならば
資本主義の限界が近づいている。
そういうことではないでしょうか。
2000年代の日本には、
働き方を見直す気もなく、
「手厚く与えられている既得権益」に
しがみつく中高年がものすごくたくさんいました。
いうまでもなく「団塊の世代」です。
このひとたちにとって、
「中高年が若者の雇用を奪っている」という批判は
とうてい受け入れがたいものでした。
そこで、「世代間格差を煽るのは
世代間の分裂を狙うグローバリストの陰謀だ」とか、
「正社員になれないのもすぐに辞めてしまうのも
すべて若者の自己責任だ」とかの
「宣伝(あるいは「洗脳」)を始めることになります。
(P.56)
団塊の世代は現在70代の後半です。
すでに引退した方もいるでしょうけど、
まだしがみついている人も少なくないでしょうか。
とても罪深い年代だと思います。
なかには人格者や、
素晴らしい人物もいらっしゃるでしょうから、
すべての人とは言いませんけど、
それが農業という巨大なイノベーションで
カロリー生産量が急激に高まったことで、
紀元前1万年から西暦1年までのあいだに
世界人口は100倍まで増加します
(推定値は40~170倍)。
これにともなって世界全体の富は大きく増えましたが、
そのぶんだけ人口も増加しているため、
一人当たりのゆたかさはほとんど変わらなかったのです。
(P.150)
豊かさとは何か?
生きるとは何か?
私たちは経済的な側面を優先し過ぎて、
「人として」
大事なものを見失っているのかもしれません。
1960年代以降の
「後期近代」の中核に位置する価値観は
「自分の人生を自由に選択する」、
すなわち「自己実現」です。
そしてこれが「平等」と結びつきます。
なぜそのようになるかはとてもシンプルで、
「他者の自由を認めなければ自分の自由もない」からです。
これが「自由な社会」の根本原理です。
(P.155)
こういう言語化は興味深いです。
今は当たり前になっていることも、
その前段階や、プロセスや意味があり、
きちんと振り返っておかないと
今を理解できずに
流されてしまうことになりかねませんね。
誰もが自己実現できるリベラルの理想社会は、
究極の自己責任の世界なのです。
(P.162)
自己責任という言葉も
近年急激に使われるようになりましたが、
それがいいのか悪いのか、
まだ何とも言えません。
もう少し慎重に吟味しないと
個人の問題に留まらず、
社会全体に対する影響が大きそうです。
「社会」から「個人」へと
視点が変わる再帰的現代では、
「自己」を正しく把握・管理することが
重要になってきます。
これが「自己分析」「自己コントロール」で、
自己の価値の最大化を目指すのが
「キャリアビルディング」です。
このように現代社会のさまざまな現象は、
「自分以外に参照するものがなくなった」
という再帰性から説明できるのです。
(P.170)
前の自己責任の延長ですけど、
「自分を守るのは自分だけ」という
冷たい社会になりつつあるのでしょうか。
でも「自分」だけで何とかはなりません。
「人は一人では生きていけない」という
ごく当然のことから
再出発したほうが良さそうです。
1970年代以降の右傾化は
「反知性主義、保守化、排外主義」のことですが、
これは行き過ぎた
「知識社会化、リベラル化、グローバル化」への
バックラッシュ(反動)なのです。
(P.178)
「歴史は繰り返す」と言われますが、
所詮は、右へ左へ行ったり来たりで、
なるようにしかならないとも言えそうです。
願わくば、螺旋階段を登るように
上昇していけるといいのですが、
どこかで階段がなくなるような
そんな事態は何とか避けたいですね。
徹底的に社会的な動物であるヒトにとって、
「私」は社会のなかに埋め込まれています。
(P.203)
自分と他者、
自分と社会。
このバランスを賢く取らないと
自分が壊れてしまう、
そんな難しい時代なのかもしれません。
世界を「俺たち(善)」と「奴ら(悪)」に分割し、
善悪二元論で理解しようとするのは、
それがいちばんわかりやすいからです。
古代ギリシャの叙事詩からハリウッド映画まで、
人類はえんえんと善が悪を征伐する
物語を紡いできました。
世界を複雑なものとして受け入れることや、
自分たちが「悪」で
相手が「善」かもしれない可能性を疑うことは、
この単純な世界観をはげしく動揺させるのです。
現代社会を蝕む病は、
脆弱なアイデンティティしか持てなくなった人たちが、
ますます増えていることです。
彼らは名目上はマジョリティですが
意識のうえでは「社会的弱者」で、
だからこそ自分より弱いマイノリティには
はげしい憎悪を向けます。
(P.211~212)
まあ、こういうことですよね。
いまを生きる私たちが後世につなぐのは、
はたしてどんな社会でしょうか。
分断と憎しみに溢れる絶望的な社会なのか、
共生と優しさに溢れる希望を持てる社会なのか。
責任重大です。
評価
おすすめ度は ★★★★☆ といたします。
本書は、単なる格差論や分断論にとどまらず、
現代社会の構造そのものを考え直す
きっかけを与えてくれる一冊でした。
上級国民、下級国民という
刺激的な言葉に目を奪われがちですが、
本質はそこではなく、
自己責任、自己実現、グローバリズム、
世代間格差といった複数の問題が
複雑に絡み合っている現実をどう見るかにあります。
すべてに賛同するわけではありませんが、
考える材料としては非常に豊富で、
今の日本社会を
少し引いた視点から見つめ直したい方には
十分に読む価値のある本だと思いました。
それでは、また…。
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