ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

世界秩序 グローバル化の夢と挫折

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

世界はこれからどうなっていくのか?

 

自分なりの理屈を述べることはできても、

本当にどうなるかは、誰にもわかりません。

 

どうなるかわからないから、

どうなるかを知りたい。

 

人の欲望とは

なかなか難しいものですね。

 

こんなときは、

歴史を知り、哲学を学び、

世界を知るのが適しているでしょうか。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 世界秩序 グローバル化の夢と挫折 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 世界秩序 グローバル化の夢と挫折 』

田所 昌幸 中公新書 を読みました。

 

どこかで、どなたかが本書を紹介しており、

おお、面白そうと思い、

すぐにポチッと購入しました。

 

しばらく積ん読本棚で眠っていましたが、

そろそろ読めよという神の啓示を受けまして、

学ぶ気満々で読み始めた次第です。

 

目次

はじめに

第1章 統合の条件

1 グローバル化の波動 
2 構造 
3 権力 
4 制度 
5 文化と規範 

 

第2章 広域的秩序の興亡

1 前近代のグローバル化 
2 ローマ帝国と中世ヨーロッパ 
3 ユーラシア大陸の統合と分解 
4 西洋の興隆と自滅 


第3章 アメリカ主導のグローバル化
1 戦勝国としてのアメリカ 
2 戦後経済の制度化 
3 勝利の逆説 
4 露呈した「リベラリズム」の限界 


第4章 四つの世界秩序
1 一つの世界再グローバル化 
2 三つの世界新しい冷戦 
3 多数の世界再近代化する世界 
4 無数の世界中世は再来するのか 


第5章 ポスト・グローバル化と日本
1 大国でも小国でもない日本 
2 仲間を増やし、敵を減らす 
3 「自立」を迫られる日本 
4 「日本」の生き残りとは何なのか


おわりに
主要参考文献

 

感想

なるほど、非常に勉強になりました。

 

地政学的な観点でも、

世界史という視点でも、

とてもわかりやすくまとめられていて、

私の程度の知的レベルの人間には

まるで教科書のように学ぶことができました。

 

世界秩序というものは、

所詮は軍事力と、

それを後押しする経済力があってこそですけど、

もうそろそろ人類は

「幸福」や「安定」や「共存」など

他の要素を優先すべきかもしれない。

 

そう強く思うとともに、

やはりグローバル化が叫ばれるようになってから

二極化はあまりにも拡大し、

もう是正できないところまで進んでいます。

 

これも歴史を振り返ってみると、

一気に革命が起きるのだろうなと思いますし、

もし起きないのであれば、

人類はごく一部の人を除いて

破滅に追い込まれるかもしれません。

 

私はポスト資本主義が必要だと考えて、

自社内では反資本主義のようなところも多いですが、

もうひとつポストグローバル化の流れも

どこかで沸々とマグマのように溜まっている気がします。

 

秩序は整えられたり、

破壊されたりの繰り返しですが、

これからの10年、20年、

はたしてどうなるのか、なかなかに不安です。

 

だからこそ学んでおかねばと思う次第です。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。

 

集団が巨大化すると、

単位集団そのものが肥大化して

統御できなくなるか、

単位集団が幾重もの階層を持つ構造になり、

中枢と末端の距離が遠くなる。

いくつものフィルターを通るうちに、

上の階層からのシグナルは

下の階層によって都合よく解釈されたり、

無視されたりすることが起こりがちになる。

いかに通信技術が進んでも、

巨大な集団に政治的意志を統一し

有効な手段に移すのに、

固有の困難があるのは避けがたい。

(P.21)

 

これは国の問題だけではなく、

企業でも、行政でも、

組織というのは同じ問題を抱えていますね。

 

組織は大きくなってはいけません。

 

だから稲盛さんのアメーバ経営という

斬新な発想が結果を出したのではないでしょうか。

 

距離は思いを断絶します。

 

しかし、グローバル化とは、

共通の市場や制度、

規範に基づいて人々が

自由に経済的、文化的に交流する秩序であるため、

主権国家秩序が想定していた

最低限の共存のルールより、

多くの様々なルールを共有する必要がある。

広域的秩序を、

域内の多様な規範や文化と

どのように折り合いをつけながら維持するのかは、

これまでも様々な主体が、

それぞれの方法で解こうとしてきた難問である。

単一の普遍的宗教や「世界文明」が成立しない限り、

異なったアイデンティティを

いかに共存させるのかという課題は、

世界秩序のためには

避けて通れない課題なのである。

(P.33)

 

それが可能なのか?

それが必要なのか?

 

この二つの問いだけで、

グローバル化は論破できそうです。

 

むしろ権力を持つ強欲な一部の人間にしか

メリットがないのは明白なのですから、

ここは人類の叡智として、

反グローバル化の流れが

今後、加速していくのだろうなと予測します。

 

競争は活力を生み

進歩を推し進める原動力だが、

必然的に勝者とともに敗者も作り出す。

そして敗者も競争という制度の枠内にとどまり、

それに参加し続けなければ、

競争という制度そのものが持続できない。

市場での競争に敗れた人々や、

時代の波から取り残された人々にとっても、

市場経済という枠組みが

受け入れられるようにするには

何が必要なのだろうか。

一つは、ゲームの勝者や強者が

その地位を乱用しないように

制度的制約を課すことである。

また敗者の痛みを緩和する

再分配が求められるだろうし、

競争から保護される領域も

設けられねばなるまい。

ところが、グローバル化の大波は

多くの国々の人々に大きな機会を提供したが、

それによって社会に

大きなストレスが生じることも避けられなかった。

とりわけグローバル・サウスと呼ばれる開発途上国は、

国家が提供できる再分配機能が弱体だから、

こういったストレスには脆弱だ。

(P.100~101)

 

もともと資本主義は、

競争が活力を生み、

全体の進歩を促進するものですけど、

グローバル化は

資本主義をさらに強く推し進め、

限界を突破しても、

緩めることを許さない

非常に強力で、いや強力すぎる

問題の大きな経済システムだと思います。

 

ごくごく一部の極めてタフなメンタルを持ち、

財力と運と政治経済のバックアップを手に入れた人しか

恩恵を受けなくしてしまいました。

 

近いうちに逆襲を受けるような気がしてなりません。

 

アリストテレスは、

国家の規模は

声の届く広場に集まれる人数が限界だと主張した。

そうでないと民会で

国家の意思を決めることができないからだ。

拡声器やビデオ通話といった技術、

代議制や連邦制といった制度的工夫によっても、

スケールに起因する困難は克服できない。

プレーヤーの数が多くなると、

それらの相互の関係の組み合わせの数は、

指数関数的に増加するからだ。

巨大な数の多様な人々の関係は

どうしても形式的になるので、

気心の知れた信頼できる仲間によって

下位集団が形成されることになる。

つまり集団が大きくなると、

必ず内部で「他者」が生成されるので、

空間の統一性は失われ、

異質で独立した要素を

内部に含む構造が形成されるようになる。

以上のように、

世界が統合されるためのハードルは高い。

たとえある時期に統合度が高まったとしても、

多数の多様な主体を

なんとかまとめ上げていた力が弱まると、

分解への力学が作用する。

(P.109~110)

 

アリストテレスの時代とは異なりますけど、

人間社会というものは、

「スモール・イズ・ビューティフル」ではないでしょうか。

 

そのもっとも足るものが「家族」であり、

深い友人関係などではないかと思います。

 

人類の歴史を見れば一目瞭然であり、

「大は小を兼ねる」というのは

あくまでも一過性のものであり、

中長期的にはもたないような気がします。

 

アメリカの国力をめぐる通念が

激しく変化してきたことを思い出すことは賢明だ。

どう見てもアメリカは非常に国力に恵まれている。

しかもその国力は、経済や軍事だけではなく、

バランスのよい国力の在り方そのものにある。

地政学的にはアメリカ大陸内に

アメリカを脅かす存在はないし、

その広大な大陸は天然資源にも恵まれていて、

食料とエネルギーの巨大な生産力を誇る。

(中略)

アメリカの優位の源は民間の力である。

(中略)

しかもアメリカは様々なグローバルな

ネットワークの中心に位置しているので、

アメリカ人は世界中どこに行っても母語で仕事ができ、

自国通貨でモノを買い、

カネの貸し借りもできる。

言葉や通貨といった自国の制度が

そのまま国際的に通用するのだから、

世界中どこでもホームグラウンドで

試合をしているようなものだ。

(中略)

アメリカが享受している

こういった特権的立場は、

一過性のものではなく

制度化された構造的なものだ。

様々な国際制度がアメリカ中心であることに

世界中で不満はあるが、

いったん出来上がってしまった制度に

代わるものを作るのは容易ではない。

(中略)

このような条件が失われると、

アメリカはグローバルな秩序に関心を持つ帝国ではなく、

目先の利害に汲々とする

「普通の大国」として振る舞うことを選んでも

不思議はないのかもしれない。

(P.114・115・116)

 

少し長いですが、

ここは世界を考える際に抜きにはできない

アメリカという国を的確に表現しており、

とても大事な箇所を感じました。

 

そしてトランプ大統領は、

国内を分断し、世界を分断し、

史上最低の大統領として

長く記憶されそうだなとも思いました。

 

世界一の国を「アメリカファースト」と

わがまま放題にいじくって、

世界中の人々を混乱に巻き込んだ

私利私欲だけの恥ずべき人物ではないでしょうか。

 

評価

おすすめ度は ★★★★☆ といたします。

 

本書は、グローバル化を

単純に善悪で裁くのではなく、

歴史・制度・権力・文化という複数の視点から

世界秩序の成り立ちと揺らぎを

丁寧に読み解こうとする一冊でした。

 

アメリカ主導の秩序がなぜ成立し、

なぜ綻び始めたのかを俯瞰できる点が大きな魅力で、

世界の今後を考えるための土台を与えてくれます。

 

派手さよりも、

腰を据えて考えるための良質な新書だと思います。 

 

それでは、また…。

 

 

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