おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
本を読むことが日常化すると、
さまざまなメリットを自分に与えることができます。
ただ、やはり「やらされ」ではなくて、
そこには「自主性」や「自発的」であることが
とても重要になってくるでしょうか。
嫌々やらされても身につきませんし、
隙あらばサボろうとしてしまうのが人間の弱さです。
やはり読みたくて読むというのが最善ですね。
先日「X」にて、
こんな投稿をしました。
自分は読書が苦手だったけど、
苦手なのは縦書きであり、
横書きの本は読めることに気づいた。
こんな投稿を見て、
ふむ、なるほど…と。
100人いれば100通り。
でも社会的な常識に縛られて、
自分の個性やポテンシャルを
知らずにスポイルしていることは、
意外と多いのかもしれません。
可能性は無限大だ。
イニシアティブを握りましょう。
自分を活かせ。
自分を信じろ。
何かを成し遂げろ。
これ、興味深くありませんか?
縦書きは読めないけど
横書きは読めるって。
ああ、人は本当にそれぞれであって、
ちょっとしたきっかけで
急に読書家になったりするのかもしれません。
読書をする人が年々減っているらしいですし、
出版不況とも言われます。
社会全体で、
さまざまな「きっかけ」を提供できると良さそうです。
当書評ブログが、
ほんの少しでもその契機になったら嬉しいです。
今回ご紹介する書籍は、
【 私の盲端 】 です。

本書をピックアップした理由
『 私の盲端 』
朝比奈 秋 朝日文庫 を読みました。
最近は、現役医師であり、
作家として小説を書く方が増えているように感じます。
医療業界の片隅で、
ひっそりと仕事をする私としては、
今までも、今も、医療に関する書籍は
できるだけ読むようにしています。
特に医療小説というジャンルは、
医療現場の実態を赤裸々に表していますし、
そこでの人間の感情の動きについては、
すこぶる関心を持っています。
ひとり一人の医師と話す時に、
意外と役立つことが多いのですね。
病気やケガという
非日常的なシーンに追い込まれた人々は
普段とは違う人になることもあるでしょう。
まして「死」がすぐそこに来たとなると
平常心でいられるほうが難しいかもしれません。
医療機関にお世話にならない人は
ほとんどいらっしゃらないと思いますし、
私の場合は、公私ともに関わりを持っていますので、
医療を学ぶというのは
私の人生にとってもプラスになっています。
本書の著者である朝比奈秋さんは、
下記の本を読んで存在を知りました。
これで興味を持ちまして、
せっかくの機会だから
他の著書も読んでみようと検索をかけて、
まずはこの本を読んでみようと購入しました。
いつもの如く、
事前の知識はほとんど持たないままに
期待をしながら読み始めた次第です。
目次
・私の盲端
・塩の道
感想
「盲端」という言葉の意味が、
頭の中にパッと浮かぶのは
医療従事者の皆さんくらいではないでしょうか。
一応、毎日のように医師と話す私ですが、
何となく意味は想像できても、
正確には知りませんでした。
本書は、「私の盲端」と「塩の道」という
二つの作品が収められています。
最初に「私の盲端」を読み始めたときに、
普通の女子大生が病気のために人工肛門になり、
生活が一変していく物語。
「オストメイト」という言葉を知り、
まだまだとはいえ、
意外と社会環境は整っていることには驚きました。
今まで、消化器内科、消化器外科の先生とは
何十人とお会いしてきたのに、
無知があまりにも恥ずかしかったです。
次の「塩の道」については、
こちらは論点が複数あり、
とても考えさせられる内容でした。
我が国の医療制度の問題、
進む一方の高齢化に潜む大きな課題や
私たち人の終わり、つまり「死」についてなど、
普段はあまり深くは考えないことだけに、
多少の恐ろしさとともに
これも現実なのだろうと苦しくもなりました。
両作品ともに、
なかなか心の痛い内容でしたので、
正直どっと疲れてしまったところがあります。
いくらこれが厳然とした社会の現実とはいえ、
私としてはなかなかに苦しくて、
途中で読むのを休憩しようかと思うこともありました。
何とかかんとか読み終えましたが、
結構つらい思いをしました。
最後に両作品ともに
ネタバレにならない程度の感想を書いておきます。
<私の盲端>
「私の盲端」は、
読む前に想像していた以上に、
身体と心の距離について考えさせられる作品でした。
病気によって身体が変わるということは、
単に生活が不便になるという話ではありません。
昨日まで当たり前だった
自分の感覚、自分の姿、人との距離感、
社会の中での立ち位置までが、
静かに揺らいでいくのだと思います。
人工肛門やオストメイトという言葉について、
私は知識としては何となく知っているつもりでいました。
しかし本書を読むと、
それがいかに表面的な理解だったのかを
思い知らされます。
トイレの問題、衣服の問題、においや音への不安、
人にどう見られるかという恐れ。
ひとつひとつは日常の小さな場面であっても、
当事者にとっては
人生全体に関わる切実な問題なのだと感じました。
特に印象に残ったのは、
病気そのものの苦しさだけではなく、
「普通の自分」から
少しずつ遠ざかっていくような孤独感です。
周囲から見れば
元気そうに見えるかもしれない。
でも本人の中では、
言葉にしにくい違和感や喪失感が積み重なっている。
医療とは身体を治すだけではなく、
その人が再び自分の人生を生きていくための
支えでもあるのだと、改めて考えさせられました。
この作品は、
決して読みやすいだけの物語ではありません。
むしろ読む側にも痛みを突きつけてきます。
しかし、その痛みを通して、
私たちが普段どれほど「健康な身体」を前提に
社会を見ているのかに気づかされます。
知らないことは罪ではないかもしれませんが、
知らないままでいることの怖さはある。
医療に関わる者としても、
ひとりの生活者としても、
深く反省させられる作品でした。
<塩の道>
評価
おすすめ度は ★★★☆☆ といたします。
とても有益な内容だとは思いますが、
率直に言うと「重かった」です。
両作品ともに
心が苦しくなりました。
でも、その経験はあるべきだと思いますし、
もしかしたら明日にでも役立つかもしれません。
医療をテーマにした小説は、
単に知識を得るためのものではなく、
自分の想像力を試される
「読書」でもあるのだと思います。
病気になること、身体が変わること、
老いること、死に近づくこと。
どれも普段はできれば避けて通りたいテーマですが、
私たちは誰も完全には無関係でいられません。
本書を読んで感じたのは、
医療とは病院の中だけで完結するものではなく、
その人の生活、家族、尊厳、社会とのつながりまで
実に幅広いものが含んでいるということです。
だからこそ、読むのは苦しい。
でも、その苦しさの中に学ぶべきものがあります。
明るく楽しい読書ではありませんが、
人間を知る、社会を知る、
医療を自分事として考えるという意味では、
とても価値のある一冊でした。
医療従事者の皆さんにとっては、
ごくありふれた日常かもしれません。
しかし一般人にはきつい話です。
それだけにリアルでもあり、
またいつか通らねばならない道でもあります。
重いというのは悪くない。
少しつらいけど知っておいて損はない。
そんな希少な一冊でした。
それでは、また…。
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