ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60冊以上の本を通じて、人生や社会の構造を読み解いています。 読書感想にとどまらず、キャリアや人生に彩りを与える言葉を綴っています。読書好きな方と繫がりたい!

西郷の首 伊東 潤

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

書籍の起源は、

紀元前3200年頃の

メソポタミアと言われるようです。

 

人類は気が遠くなるほど前から、

文字を記し、読み継いできたのですね。

 

我が国では出版不況と言われながらも、

年間に約72,000冊の本が出版されています。

ちなみにGoogleの高度なアルゴリズムによると、

世界中には約1億3000万冊の本があるそうです。

さすがのGoogleさんも、

すべてを数えたわけではありませんので、

人類は驚くほどの本を出版してきたことでしょう。

 

この100倍や1000倍はあってもおかしくありません。

人が一生で読める本なんて

そのなかのほんの少しであり、

今まで出会ってきた一冊一冊や

これから出会う本たちも

まるで奇跡のような出会いなのかもしれません。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 西郷の首 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 西郷の首 』

伊東 潤 角川文庫 を読みました。

 

最近は伊東潤さんの小説が好きです。

ka162701.hatenablog.com

 

まだ読み始めの範疇ですが、

すでに私の積ん読本棚には、

10冊を超える伊東さんの書籍が

今か今かと待ち受けています。

 

今回は「西郷の首」です。

 

もうタイトルからして

非常に面白そうではないですか?

 

西郷ファン、幕末好きの私としては

とても楽しみにしながら読み始めたのでした。

 

目次

プロローグ

第一章 蓋世不抜

第二章 鉄心石腸

第三章 気焔万丈

第四章 擲身報国

エピローグ

解説 大野敏明

 

感想

え~と、よく調べずに

読み始めた私が悪いのですが、

このタイトルだったら

西郷隆盛か、薩摩藩について

たっぷり書かれていると思うじゃないですか。

 

しかし、冒頭から加賀藩の話であって、

なかなか西郷が出てこない。

 

あれ?どうしたんだろうと

多少疑問に思いながら読み進めていくと、

いつの間にか西郷のことは忘れてしまい、

ストーリーにのめり込んでいました。

 

それは、それで心地よく、

幕末について書かれた本は、

どうしても薩摩、長州の話が多いので、

加賀藩の志士というのが

とても新鮮で非常に面白く読めました。

 

しかし、後々しっかり西郷が出てくる。

きっちりストーリーに意味がある。

 

なるほど、そういう展開かと思いつつ、

しかも最後の最後には、

驚くような展開が待っている。

 

ほっほー、実に面白い。

 

と思うけれども、

いっそのこと、タイトルも加賀藩に

ぐぐっと寄せても良かったんじゃないかな。

 

たぶん幕末好き、歴史好きの方々は、

薩摩、長州は少しお腹いっぱいなところがあるので、

幕末の加賀藩「推し」のほうが

もっと多くの読者を獲得できたのではないか。

 

つい、そんなことを考えてしまいましたが、

本書がどの程度売れたのか、

どんな評価を得ているのかは

私は全然知りませんので、

読後の今は率直に面白かったし、

幕末の加賀藩の知識はほとんどなかったので

とてもよい勉強にもなりました。

 

本書の感想としては、

やはり伊東潤さんは、

歴史の中に埋もれてしまいがちな人物に

光を当てるのが実に上手い作家さんだと思います。

 

本書も、タイトルだけを見れば

西郷隆盛を中心にした物語だと考えてしまいます。

 

しかし読み進めていくと、

むしろ主役は西郷その人ではなく、

西郷という巨大な存在に翻弄され、

あるいは引き寄せられ、

時代の奔流の中で

自分の生き方を問われた人々なのだと

しみじみと思い知らされます。

 

幕末維新という時代は、

どうしても薩摩、長州、土佐、会津といった

強い色を持つ藩に目が向きがちです。

 

もしくは崩れゆく江戸幕府、

徳川家の崩壊が多いですよね。

 

しかし、当然ながらそれ以外の藩にも、

時代を見つめ、悩み、苦しみ、

行動した人々がいました。

 

加賀藩もまた、その例外ではありません。

 

前田利家から続く

100万石を超える大藩でありながら、

幕末史の主役として

語られることはほとんどない加賀藩。

 

その中で生きた若者たちが、

何を見て、何に怒り、何に憧れ、

何を守ろうとしたのか。

 

本書はその視点を通して、

幕末維新を少し違った角度から見せてくれます。

 

特に印象に残ったのは、

「志」や「正義感」というものの危うさです。

 

若い頃に共有した思いがあっても、

時代が変わり、立場が変わり、

背負うものが変われば、

人は同じ道を歩き続けることができなくなる。

 

かつて同じ方向を見ていた者同士が、

いつしか別々の道を進み、

場合によっては対立する側に立つこともある。

 

これは幕末という

特殊な時代だけの話ではありません。

 

現代を生きる私たちにも通じるものがあります。

 

正しいと思って始めたことが、

いつの間にか誰かを傷つけることがある。

 

大義を掲げたつもりが、

ただの執着や怨念になってしまうこともある。

 

理想を持つことは大切ですが、

その理想が人間を縛り、

視野を狭めてしまうこともあるのでしょう。

 

そして、本書の面白さは、

西郷隆盛という人物を「偉人」としてだけ

描いていないところにもあります。

 

西郷は大きすぎる人物です。

 

大きすぎるがゆえに、

近くにいる人間にも、

遠くから見つめる人間にも、

さまざまな影を落とします。

 

誰かにとっては希望であり、

誰かにとっては畏怖の対象であり、

また誰かにとっては

乗り越えるべき存在でもあったのでしょう。

 

「西郷の首」というタイトルは、

物騒でありながら、非常に象徴的です。

 

首とは、単なる肉体の一部ではなく、

その人物の存在そのもの、

時代の終わり、

そして新しい時代への決着を

意味しているようにも感じます。

 

明治維新は、

華々しい近代国家の始まりとして

語られることが多いです。

 

しかし、その裏側には、

報われなかった人、取り残された人、

納得できないまま

時代に押し流された人たちがいたはずです。

 

本書は、そうした人々の情念や誇り、

悲しみまで含めて、

幕末から明治という時代を立体的に描いています。

 

歴史小説の醍醐味は、

史実を知ることだけではありません。

 

その時代を生きた人間の息遣いを感じ、

自分ならどうするかと考えることにあります。

 

大きな時代の転換点で、

人は何を信じ、何を捨て、何を守るのか。

 

忠義とは何か。

友情とは何か。

正義とは何か。

 

本書は、そんな問いを

読者に投げ掛けてくる一冊でした。

 

西郷隆盛を描いた小説でありながら、

同時に加賀藩の若者たちの物語でもあり、

さらに言えば、

歴史の主役になれなかった人々の物語でもあります。

 

そして最後は大久保利通の暗殺。

 

ああ、そう言えば、

石川藩士が犯人だと言われていたなと思い出し、

おお、つまり加賀藩かと気づく始末。

 

加賀藩士と、西郷や大久保がつながり、

そういうことだったのかと深く納得させられました。

 

歴史は主役たちだけのものではありません。

 

だからこそ、読み終えた後に、

幕末という時代の見え方が

少し変わったように感じました。

 

派手な英雄譚ではありませんが、

じわじわと胸に残るものがあります。

 

歴史の表舞台だけでなく、

その周辺で懸命に生きた人々にこそ、

時代の本質が宿るのかもしれません。

 

主人公の二人の「人間くささ」を

まざまざと感じながらも、

大きな時代の変化という流れのなかで、

命を懸けて必死に生きてきた若者の物語。

 

とても感じ入るところが多かったです。

 

西郷隆盛を

正面から描いた小説を期待すると、

少し肩透かしを食うかもしれません。

 

しかし、幕末維新を別の角度から眺めたい方、

薩長中心史観だけでは物足りない方、

そして時代に翻弄される人間の矜持や

哀しみを味わいたい方には、

かなり刺さる一冊だと思います。

 

評価

おすすめ度は ★★★★★ と満点といたします。

 

とても面白い歴史小説でした。

 

私の知識では、

どこまでが史実で、

どこからが創作なのか、

完全には見極めがつきませんけど、

主人公は実在の人物らしいですから

多少のフィクションはありながらも、

かなりの部分は「史実」なのだろうと

勝手に解釈しています。

 

それが伊東潤さんの筆力と言いますか、

ストーリーテラーぶりでもあるでしょう。

 

かなりの満足を得るとともに、

次は何を読もうかとワクワクしてきました。

 

少し間をおくことにはなりますが、

伊東潤さんの著書を読むのが

とても楽しみになってきました。

 

そして読み終えるよりも

新しい本を購入することになってしまい、

私の積ん読本棚が一向に減らないことだけが

若干、不安になります。

 

それでは、また…。

 

 

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