おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
100年後の未来がどうなるか。
日本は今後どんな社会になるのか。
どう考えても、
こうなるだろうということは
とても述べることができません。
こうなったらいいかもね。
この程度のことなら言えるかもしれませんが、
おそらく予想する通りにはならないでしょう。
だから面白いという側面もありますが、
わからないという状態は不安になります。
私たち人類が生き延びていることには、
何らかの意味があるのだろうなと思います。
そして、その意味を活かさねば、
いずれ人類が滅亡することもあるかもしれません。
私なんぞは、どう考えたって、
あと20年や30年くらいしか生きられませんけど、
生きている間は、いろいろと考えて、
しっかり勉強を続けようと思う次第です。
今回ご紹介する書籍は、
【 贈与論 】 です。

本書をピックアップした理由
『 贈与論 』
マルセル・モース
吉田 禎吾 江川 純一 訳
ちくま学芸文庫 を読みました。
個人的な見解ですけど、
現代社会に最も足りないものは
「贈与」ではないか。
時どき、そんなことを考えたりします。
私の敬愛する内田樹さんも
よく「贈与」について語っていますので、
いずれ贈与についても学ぼうと思っていました。
ひょんなことから本家本元と言っていいのかな。
マルセル・モースの「贈与論」を手に入れました。
これはしっかり読み込みたいと考えながら、
学ぶ気満々で読み始めました。
目次
序論 贈与、とりわけ贈り物にお返しをする義務
第1章 交換される贈与と返礼の義務(ポリネシア)
1 全体的給付、父方の財産と母方の財産(サモア)
2 贈られた物の霊(マオリ)
3 その他の主題:贈る義務と受領する義務
4 追記:人に対する贈り物と神に対する贈り物
第2章 贈与制度の発展ー鷹揚さ、名誉、貨幣
1 気前よさの規則、アンダマン諸島(注記)
2 贈与交換の原則、理由、強度(メラネシア)
3 アメリカ北西部
第3章 古代の法と経済におけるこうした原則の残存
1 人に関する法と物に関する法(最古のローマ法)
2 古代ヒンドゥー法
3 ゲルマン法(抵当と贈与)
第4章 結論
1 道徳上の結論
2 経済社会学上および政治経済学上の結論
3 一般社会学上および道徳社会学上の結論
訳者あとがき 吉田禎吾
感想
本書は、ひと言で言えば
「贈ること」と「返すこと」から、
人間社会の成り立ちを考える本です。
私たちは普段、物を買う、売る、
貸す、借りるといった経済活動を、
かなり当たり前のものとして
ほとんど意識をせずに実行しています。
しかし本書を読むと、
その前にあった人間同士の関係性が見えてきます。
まるでもともと私たち人類に備わっていたかのような
自然な営みとして書かれています。
誰かに何かを贈る。
贈られた側は、
ただ受け取るだけではなく、
何らかの形で返そうとする。
そこには単なる損得勘定では片づけられない、
義務や感情や信頼のようなものが含まれています。
現代を生きる私たちが
いつの間にか見失ってしまったもの。
そんなふうにも言えそうです。
率直に申し上げれば、
文章はかなり硬めです。
文化人類学や社会学に慣れていない人には、
少し読みにくく感じるかもしれません。
私は正直読みにくかったです。
ただ、扱っているテーマは
決して遠い世界の話ではありません。
お中元やお歳暮、
差し入れ、応援、寄付、恩返しなど、
私たちの日常にも
「贈与」はいくらでもあります。
そう考えると、本書は古典ではありますが、
現代の私たちにも
かなり身近な問いを投げかけてくれる一冊です。
お金だけでは測れない人間関係や、
社会を支える見えないつながりについて考えるには、
なかなか刺激的な本だと思いました。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
気前よく人に与えることは義務なのである。
というのは、女神ネメシスが貧者と神々のために、
幸いと富をやたらに持っているのに、
それを全く手放すことをしない者たちに
復讐するからである。
それは古代の贈与の道徳が
正義の原則になるということである。
(P.46)
西洋の神々については、
正直、私はかなり疎いのですが、
それでも倫理として
贈与が必要だというのは理解はできます。
現代社会では
あまり流行らない考え方ですけど、
それだけに、むしろ価値があるのかもしれません。
私自身も、自分で可能な範囲で
贈与することを意識したいと思います。
「買うと売る、貸すと借りるを
意味する語が一つしかない」ことを指摘している。
反対の行為が「同じ語で示される」のである。
「厳密に言えば、
われわれが用いる意味での貸すと借りるという
区別を彼らは知らなかったが、
借りた場合にはお礼の形で何かを贈り、
しかも借りを返す時にそれを戻した」。
これらの人々は売るという観念も
借りるという観念も持たないが、
それにもかかわらず、
同様な機能を果す法的、
経済的活動を実施している。
(P.92)
経済活動とは何なのか?
深く考えさせられます。
本当は私たちの生活を良くするために
経済は存在するべきもののはずですが、
昨今では「一人歩き」してしまっていて、
経済のための経済、
それこそ政治のための経済になって、
生活とか暮らしからは
かけ離れてしまっているように感じます。
未開の社会にこそ、
本来の経済活動があるのかもしれない。
そしてそのほうが人間らしいのかもしれない。
そんなことを考えました。
そこでは、物質的、
精神的生活と交換が打算的ではない、
義務的な形で行われている。
さらにこの義務は、神話的、想像的、
あるいは象徴的、集団的な方法で表現されている。
しかもこの義務は
交換される物に結びついた関心という形をとる。
交換される物は、
交換を行う者から完全に切り離されることはない。
交換される物によって作られる人間の交わりや
結合関係は比較的崩れない。
実際に、社会生活におけるこのような象徴
――交換される物に対する執着の持続—―は、
これらのアルカイックな類型に属する、
分節化された諸社会の下位集団が互いに錯綜し、
しかも、自分達が互いに義務づけられていると感じる
その有様を明確に表わしている。
(P.93~94)
少し難解な文章ではありますが、
交換とか、贈与の原型と言いますか、
人間のあり方のようなものを感じました。
交換とは何だ?という問いへの
文化人類学的な一つの回答でしょうか。
物を人に与えれば、
そのよい報いがこの世であれ、
あの世であれ生まれることになる。
この世では、贈り物はそれと同じ物を
自動的に贈り主にもたらす。
贈り物は失われることなく、再生する。
あの世では贈り主が送った物を再び見出すが、
それは増えているのである。
この世では、贈った食物は贈り主に戻ってくる。
あの世でも贈り主が見出すのは同じ食べ物である。
それは贈り主が生まれ変る過程の食物になる。
(P.209)
こちらも少しわかりにくい文章ですが、
贈り物はこの世とあの世に
簡単に分けられるものではありませんけれど、
人類の営みを霊的な領域まで含めて考えると、
現世だけでは説明しきれない
不思議な世界があってもおかしくないと思いました。
giftという語が
「贈与」と「毒」の二義を併せ持つことを
説明している。
(中略)
贈り物は貰った。
だが、善意の贈り物ではなかった。
真心のこもったものではなかった。
そんな不吉なものと前からわかっていたら。
お前たちの生命はなかったところだ。
(P.222)
なるほど、何事も単一の意味だけではなく、
両義的であったり、複合的であったりするのですね。
「贈与」はサイクルであって、
「毒」は最初から排除するしかありません。
われわれの道徳や生活の大部分は、
いつでも義務と自由とが入り交じった
贈与の雰囲気そのものの中に留まっている。
幸運にも今はまだ、
すべてが売買という観点から
評価されているわけではない。
金銭面での価値しか持たない物も存在するが、
物には金銭的価値に加えて感情的価値がある。
われわれは商業の道徳だけを
持っているわけではないのである。
いまだ過去の風俗を持ち続けている人々や
階級が残っているし、
われわれの殆どは一年のある時期
もしくはある機会に過去の慣習に従う。
返礼なき贈与はそれを受け取った者を貶める。
お返しするつもりがないのに
受け取った場合はなおのことである。
(P.260)
この文章は、個人的にかなりガツンと来ました。
それこそ後頭部をハンマーで叩かれたような衝撃です。
私たちは、経済的には損得勘定に
絡め取られざるを得ないのですが、
人としては損得よりも善悪を基準に
物事を考えなければなりませんね。
貰ったのと同じだけ施しなさい。
そうすれば万事うまくいく。
(P.270)
施しという言葉。
最近は宗教の世界でしか耳にしません。
逆に言えば、
それが社会の停滞を生みだす
ひとつの要因と言えるでしょうか。
小さな施しの積み重ねが、
意外と大事になるような気がします。
投資の世界とは
真逆かもしれませんけど。
評価
おすすめ度は ★★★☆☆ といたします。
正直、ちょっと読みにくかったです。
また注釈があまりにも多くて、
まあそれは著者の意図を理解するためですが、
読みにくいことには変わりません。
せっかくいいことを言っているのですから、
出版社のほうで工夫できなかったのかな。
まあ、それは別として、
「贈与」や「交換」ということの意義や
今後の社会のなかで、どう発揮するかを
自分なりに考えるよいきっかけになりました。
それでは、また…。
<ジーネットが発信する情報提供サイトはこちらです!>
・ジーネット株式会社 公式ホームページ
・医療ビジネス健全化協議会<IBIKEN>ドクター向け情報提供サイト
・ジーネット株式会社 <社長のtwitter>
・ジーネット株式会社 <社長のfacebookページ>
