ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

図書館には人がいないほうがいい

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

最近、図書館に行ってますか?

 

読書好きを広言する私ですが

実は最近はほとんど行っていません。

 

娘が小さな頃は

毎週土曜か日曜に

日課のように行ってましたけど

成長するにつれて行かなくなってしまいました。

 

私の住む練馬区の図書館は

10冊まで借りることができましたので

毎度10冊返して、10冊借りる。

 

そんなことをしていたのが

実に懐かしいです。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 図書館には人がいないほうがいい 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 図書館には人がいないほうがいい 』

内田 樹 (編・訳) 朴東燮

アルテスパブリッシング を読みました。

 

敬愛する内田樹さんの新著です。

私にとっては読まない理由がありません。

 

しかも今回は「図書館」がテーマのようです。

読む前から内田節が炸裂するのが想像できます。

 

とても楽しみにして

読み始めた次第です。

 

目次

図書館について

 

図書館とは、そこに入ると「敬虔な気持ちになる」場所

図書館の戦い

学校図書館はなぜ必要なのか

Ⅰ 図書館は巨大なアーカイブの入り口である

Ⅱ 図書館は新しい世界への扉である

Ⅲ 図書館には魔法使いの居場所を確保しなければならない

 

書物と出版について

 

本の未来について

書物は商品ではない

倉吉の汽水空港でこんな話をした

自戒の仕掛け──無知の自覚について

朝の読書運動

ScanとReadの違い

本が読む

リテラシーの高い読者を育てる方法

活字中毒患者は電子書籍で本を読むか?

 

書物の底知れぬ公共性について

 ー すごく長いあとがき

李龍勳(イ・ヨンフン、図書館文化批評家)

「図書館的時間」を取り戻すために──本書を推薦する

朴東燮(バク・ドンッソプ)

「伝道師」になるということは──編訳者あとがきに代えて

 

感想

読書家の皆さんには

本書を手に取ることをおススメいたします。

 

きっとそうだ、そうだと思うでしょうし、

まだ言語化できていなかった

自分の価値感がクリアになり、

自信が持てるように思います。

 

読書家ではない皆さんにも

本書を手に取ることをおススメいたします。

 

人生が一変するきっかけが手に入るかもしれず、

これからすべきことが見えてくるかもしれません。

 

私たちは日常的な忙しさにかまけて…

目の前にある仕事に翻弄されて…

大事なものを見失っていることも

なきにしもあらずだと思います。

 

しかし本書を読めば

あ、ここからやり直そうと思えるかもしれません。

 

仕事とか、ビジネスとか、

収入とか、職場とか、

そんなものより人間として大事なものがあります。

 

それを知れば

働き方も変わってくるでしょうし、

自分の価値が上がるんじゃないでしょうか。

 

みんな同じじゃつまらない。

常識を疑う目を持ちたいですね。

 

それでは私がグッときた箇所をご紹介いたします。

 

たぶん人がいない、

静まり返った空間でないと

書物が人間に向かって

シグナルを送ってくるという

不思議な出来事が起きにくいからだと思います。

ほんとうにそうなんです。

本が僕に向かって合図を送ってくるということがある。

でも、それはしんと静まった図書館で、

書架の間を遊弋しているときに限られます。

というのは、そういうとき、

僕は自分がどれくらいものを知らないのかという

事実に圧倒されているからです。

(中略)

これらの膨大な書物のうちで、

僕が生涯に手に取るものは、

ほんとうに限定されたものに過ぎません。

でも、僕が読むことになる本は

それだけ「ご縁のある本」だったということになる。

そう思って、書棚の間を歩き回っていると、

ふとある書物の題名や著者名に目が止まり、手が伸びる。

そして、そういう場合は、高い確率で、

そこには僕がまさに知りたかったこと、

そのとき僕がぜひとも読みたいと思っていた

言葉が書かれている。

ほんとうに例芸的に高い確率で、そうなんです。

(P.22~24)

 

非常によくわかりますし、素直に同意します。

そして本を読めば読むほどに

当たりの確率が増していくのが面白いところです。

 

別に図書館ではなくとも

私の積ん読本棚だけでも同じ思いを味わいます。

 

超越的なもの、

外部的なもの、

未知のものをある場所に招来するためには、

そこをそのために「空けておく」必要があるということは

わかってもらえると思います。

(中略)

空間的に「何もない」こと、

時間的に「何も起きていない」ことが

ある場所を「調える」ために必要なんです。

(P.26)

 

これもよくわかります。

科学が万能かのように言われますが

こういう感覚を失ってしまうと

大事なものを見失うような気がします。

それが人間社会ではないでしょうか。

 

図書館にいる人たちは、

自分たちが「この世ならざるもの」との

インターフェイスにいるなんて

思っていないかもしれませんけれども、

実はそうなんです。

(中略)

なんであの人たちは

図書館をこんなに憎むんだろうと考えたんですけど、

当然理由がある。

今の新自由主義的な政治家たちやビジネスマンたちが

最も憎んでいるものは

「この世ならざるもの」などというものは

あってはならないんです。

(P.46)

 

う~ん、これもよくわかります。

要は「カネ」なんですよね。

手っ取り早く「カネ」を生み出さないものは

不要と断定するほどに知性が欠如している。

 

面白いのが、

その結果として未来の「カネ」を失っている。

これは国も、会社も、組織も、個人も、

そうではないでしょうか?

 

図書館の使命は「無知の可視化」だと思うんです。

自分がどれほど無知であるかを思い知ること。

今も無知だし、

死ぬまで勉強しても

たぶん無知のままに終わるのだ、と。

その自分自身の「恐るべき無知」を前に

戦慄するというのが、

図書館で経験する最も重要な出来事だと僕は思います。

だからこそ、あらゆる映画において、

図書館は無限の知の空間として表象されて。

図書館というのは、

「蔵書が無限である」ということが前提なんです。

蔵書が無限であるので、

あなたはこの図書館のほんの一部をちょっとかじるだけで

一生を終えてしまい、

あなたが死んだ後も、

この巨大な図書館には、

あなたがついに知ることのなかった

叡智や感情や物語が眠っている。

(P.68~69)

 

実によくわかります。

読書家って謙虚ですよね。

知らないことがたくさんあることを知っているから。

まさに無知の知

 

逆に傲慢な人は本を読まないでしょう。

自分が最高で、自分は何でも知っていると思っているから。

 

それを味合わせてくれるのが

図書館であり、本屋さんなのかもしれません。

 

図書館というのは、

そこに行って有用な知識を得るための施設ではないんです。

結果として、

もちろん豊かな情報や知識を得ることはできますけれど、

豊かな情報や知識を得るためには、

その前段として自分の無知を思い知って、

もう少し賢くなりたい、

もう少し成長したいという気持ちが

発動しなければ意味がない。

(P.86~87)

 

本当によくわかります。

ここまで来ると人生論なんですけど

図書館というのは神聖な場所なのですね。

 

表層的な費用対効果でしか

物事を考えられない人には

理解不能の足を踏み入れてはいけない場所です。

 

仮に行政が図書館を閉鎖、縮小しても、

確実に私設図書館ができ上がるでしょう。

それは人間の「業」のようなものです。

 

学びの姿勢として一番良くないことは、

頭の中にガラクタな知識や情報が詰まっていて、

もう新しい知識や情報が入る余地がないということです。

「無知」というのはそのことなんです。

(P.103)

 

確かに頭のいい人は

いつもスポンジのように知識を吸収しますね。

それは「隙間」を空けているから

スッとできるのでしょう。

 

不要な知識は捨てるに限ります。

何を捨てるのかは難しいですけど。

 

書物というのは外部への回路です。

書物は読者を

「いまではない時代」「ここではない場所」に

連れてゆく力を持っています。

(P.135)

 

だから読書をする人は賢い。

バカにならない。

知らない世界があることを知っている。

学び続けることができる。

 

最近は読書をしない人が増えているそうですが

物凄いリスクを自分に与えているのではないでしょうか。

 

自分が読んでいない本というのは

要するに可視化されたおのれの無知のことだからである。

(P.142)

 

可視化された無知に対して

誠実に向き合わない人ほど

拝金主義になっていくと思うな。

 

こんなにわかりやすい指標はないですからね。

お金は大事ですけどただのツールです。

たくさん本を買って読めばいいのに。

 

人間は必ずその人が必要とするときに

必要とする本と出会う。

(P.164)

 

本当にその通りだと思います。

素直に署名捺印いたします。

 

私自身も今まで何度も味わってきたし、

多くの読書家の方も賛成することでしょう。

 

人間の知的好奇心には

引き寄せの法則のようなものがありそうですね。

 

書物は商品であり、

かつ公共財である。

そういう両義的な性格を持っています。

だから、「書物はこうあるべき」というふうに

一意的に断ずることができない。

書物はそのつどの環境によって性格を変える。

ある環境では商品的にふるまい、

別の環境では公共財であるかのようにふるまう。

そのわかりにくい挙動のひとつひとつについて

丁寧な対応をとることを

書物は僕たちに要求する。

(P.198)

 

すごい発想だなと思います。

書物が公共財だなんて。

 

でも良く考えるとそうだなと納得しますし

公共財は書物以外にもたくさんあって

現代を生きる我々は

何でも自分の物にしようとして

公共を見失っているとも言えそうです。

 

人類なんてのは

所詮1人では生きていけませんし、

支え合わねば絶滅してもおかしくないと思います。

 

もう1度公共とは何か?

大人の責務として

ここを考えなければならないと感じました。

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。

 

何だか図書館に行きたくなってきました。

 

いつも行っていた近所の区が運営する

小さな図書館ではなくて、

それこそ国会図書館のようなところで

1日ゆっくり過ごしたいな。

 

自分の「知」と「無知」に

謙虚に向き合う時間を大切にしたいですね。

 

そんな気にさせられる良書です。

 

本書は先に韓国で出版され

それを日本語に訳したそうです。

 

訳者が韓国の若者に

内田さんの考えを知って欲しいと

数多くの内田さんの文章を集めたようです。

 

それは素晴らしいと思いますけど

私は日本の若者にも

内田さんに触れて欲しいぞと思いながら

この書評を書きました。

 

それでは、また…。

 

 

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