おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
ふと冷静に振り返ってみると
世界が平和だった時代なんて
皆無と言わざるを得ないんですよね。
現代社会においても
ロシアのウクライナ侵攻以来、
世界中の危機感は高まるばかりです。
まあその前から北朝鮮のミサイル発射の問題やら
中国の尖閣諸島への威嚇であったり、
我が国の周辺だけを見ても
かなり危なっかしい状況ではあったわけですね。
これを世界全体に視野を広げれば
私が知らないだけで
どこもかしこも一触即発とも言えるでしょうか。
人類というのは
何とバカなのでしょうか。
地球単位で見れば
何と迷惑な存在なのでしょうか。
だからこそ…
いつの時代も平和が希求されるのですよね。
今回ご紹介する書籍は、
【 永遠平和のために 】 です。
本書をピックアップした理由
『 永遠平和のために 』
カント 岩波文庫 を読みました。
前述したように
平和がこれほど求められる時代は
そうそうないのかもしれません。
逆に言うと
平和じゃないから
平和が求められるわけでして
人類は歴史から何も学んでいないとも言えますし、
いつまで殺し合いをするのか……
ホントいい加減にしなきゃいけないですよね。
別に戦争というシーンだけでなく、
昨今ではニュースを見ていても
なぜそんなことをするのか?と疑問に感じるような
とんでもない事件も多いじゃないですか。
このままでいいとは思えない。
でも何ができるのか…
例え小さな1歩でも
せめて何かできないものか…。
そんなことを考えていましたら
私の積ん読本棚で
随分前に購入した本書がピカピカ光って見えました。
永遠平和…。カントか。
なかなか難しそうではありますが、
薄い本だし、いいきっかけだし、
今、読まねばずっと読まないかも(笑)と思って
チャレンジで読み始めたのでした。
目次
第一章 この章は、国家間の永遠平和のための予備条項を含む
第一条項 将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、
決して平和条約とみなされてはならない。
第二条項 独立しているいかなる国家
(小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、
継承、交換、買収、または贈与によって、
ほかの国家がこれを取得できるということがあってはならない。
第三条項 常備軍(miles perpetuus)は、
時とともに全廃されなければならない。
第四条項 国家の対外紛争にかんしては、
いかなる国債も発行されてはならない。
第五条項 いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、
暴力をもって干渉してはならない。
第六条項 いかなる国家も、他国との戦争において、
将来の平和時における相互間の信頼を
不可能にしてしまうような行為をしてはならない。
第二章 この章は、国家間の永遠平和のための確定条項を含む
第一確定条項 各国家における市民的体制は、
共和的でなければならない。
第二確定条項 国際法は、
自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである。
第三確定条項 世界市民法は、
普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない。
第一補説 永遠平和の保証について
第二補説 永遠平和のための秘密条項
付 録
一 永遠平和という見地から見た道徳と政治の不一致について
二 公法の先験的概念による政治と道徳の一致について
感想
なかなか読み応えのある
ユニークな内容でした。
カントが書いているわけですから
当然、わかりやすさよりも
本質を追求するような深い考察ではありますが、
どこまで私が理解できたのかは置いておいて
カントの平和論に触れたということ自体に
すでに価値があるかと思ってます(ホントか?笑)。
だいたい平和って
そんなに簡単に理解できるものでもありませんし、
人によって思う平和の形も
実はかなり異なっているようにも思えます。
そうじゃなきゃ戦争なんて起こらないわけですし、
平和の共有こそ
世界の政治家がすべき最重要なことなのですけど
自分の権力を維持するために
相手の平和を踏みにじることは
ロシアの件を見れば一目瞭然ですし、
今までの歴史を振り返っても
ごく一般的なことかもしれません。
情けないですし、
恥ずかしいですけど、
それを支持する人も少なくないわけで
ホント平和というのも難しいものですね。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
一緒に生活する人間の平和状態は、
なんら自然状態ではない。
自然状態は、むしろ戦争状態である。
言いかえれば、それはたとえ敵対行為が
つねに生じている状態ではないにしても、
敵対行為によってたえず脅かされている状態である。
それゆえ、平和状態は、創設されなければならない。
なぜなら、敵対行為がなされていないということは、
まだ平和状態の保障ではないし、
また隣りあっているひとの一方が
他方に平和状態の保障を求めたのに、
地方から保障が与えられない場合は
(こうした保障は、法的状態の下でのみ
生ずることができるのであるが)、
かれはこの他方の隣人を敵として扱うことができるからである。
(P.27)
いきなり難しい考察でしたが、
まあ本書の核心はここなのだろうなと思いました。
世界の平和なんて砂上の楼閣みたいなもので
薄氷を踏む思いでギリギリ維持できているという
そんなレベルなのかもしれませんね。
中国や北朝鮮が
自分たちの平和のために
隣国の平和を壊さないことを祈りますし、
ロシアはどんな理由があろうとも
ウクライナから撤退して欲しいと思います。
自分たちだけの平和ではなく
共に平和を実現するために…。
だが戦争そのものは、
なんら特殊な動因を必要としない。
戦争は、むしろ人間の本性に接収されているように見え、
しかもそれは、人間が利己的な動機がなくても、
名誉心に鼓舞されてさしむけられるような、
なにか高貴なものとされているように見える。
(中略)
実際、戦争はしばしば
たんに勇気を示すために開始されるのであり、
したがって戦争それ自体のうちに
内的な尊厳が置かれるのであって、
哲学者たちですら、
「戦争は邪悪な人間を取り除くよりも、
かえって多くの邪悪な人間を作り出すから、
いとうべきだ」という、
かのギリシャ人の格言を忘れ、
戦争をなにか人間性を高貴にするものとして
賛美するのである。
(P.66)
大東亜戦争に突入した我が国も
きっとこういう状態だったのでしょう。
私たちの心理のなかに
戦争があるのであれば、
私たちは戦争状態の悲惨さを
もっと身に染みるほど感じなければなりません。
国家間の諍いを戦争で解決しようとするのは
もう止めにすべきですよね。
道徳性からよい国家体制が期待されるのではなく、
むしろ逆に、よい国家体制から
はじめて国民のよい道徳的形成が期待されるのである。
(P.71)
そうだ、そうだ。
国家の道徳観なんて
ロクでもないことは歴史が証明しています。
でも国家こそが
道徳や倫理感を持たないと
戦争をなくすことはできないでしょうね。
それにしても、こうした遊びを
はるか先の時代まで続けさせるのに
十分な数の人間がいつも生き残るのか、
それは後世のひとが、
いつかかれらを警告事例とするためになのである。
こうして世界の過程における摂理は、
正当なものとされる。
なぜなら、人間のなかにある道徳的原理は
決して消え去ることはないし、
この原理にしたがって法の理念を実現するのに
実用的である有能な理性は、
たとえ文化とともに
かの違反の罪が増大するにしても、
たえず進歩する文化の過程を通じて、
法の理念へとむかって
たゆまず成長していくからである。
(P.103)
憲法9条は世界に誇るべきものですが、
それを導入した国があるとは聞きません。
それどころか我が国も
いつ9条を改悪するかわからず、
かなり心配です。
果たしていつまで法で縛ることができるのでしょうか。
法に頼りきりになるのではなく、
その前に道徳的原理を貫くような
私たちの心や思いの強さが問われているように思います。
たとえ限りなく前進しながら近づくしかないとしても、
公法の状態を実現することが義務であり、
実現の希望にも根拠があるとすると、
これまで誤ってそう呼ばれてきた
平和条約(これは実は休戦状態にすぎない)の
あとに続く真の永遠平和は、
決して空虚な理念ではなくて、
われわれに課せられた課題である。
この課題は次第に解決され、
その目標に
(同じ量の進歩が起こる期間は、おそらく次第に短くなるから)
たえず接近することになろう。
(P.118)
少なくともカントの生きた時代から
ずっとこの課題は解決されてこなかったわけです。
人類が永遠平和を手に入れることができるのか?
かなり心許ないですが、
それでも諦めずに
何度失敗しても、
求めていかねばならないのでしょうね。
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
案の定、私には少し難しかったですし、
平和を理論立てて哲学的に考えるなんて
そんなに簡単であるはずがありません。
どうしても理想論に走りがちですし、
でも理想を追い掛けないと
実現に近づきませんよね。
本書の内容云々は別にして
私は平和を望みます。
だからこそ時々は平和について
考えていかねばならないと思います。
頭のなかがお花畑のような
他国が攻めてきたら殺されればいいと
そんなことを言う人もいますけど、
それじゃ絶対に平和は成り立ちません。
もっと国と国、人と人の神髄まで到達して
法に落とし込まねばなりませんよね。
それができるのかはわかりません。
しかし永遠平和は
その先にしかないのではないかと思いました。
それでは、また…。
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