ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

【実学・経営問答】高収益企業のつくり方

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

最近ですね、

資本家と労働者についてや

資本主義社会について考えることが多いです。

 

別にそんなに難しい話しではないんですけど

マルクスが現代でも廃れない理由や

先進国で唯一と言っていいほどに

国民の給料が上がらない日本経済や

二極化が進み治安の悪化が止まらない現代社会を鑑みると

このままでいいとは思えないんですよね。

 

かつてウィンストン・チャーチル

「民主主義は最悪の政治といえる。

 これまで試みられてきた

 民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」と

述べたそうですが、

この民主主義を資本主義に、

政治を経済に置き換えても

言わんとするところは正しいような気もします。

 

資本主義を拝金主義とまで言うつもりはありませんが、

社会の構図として

資本家が圧倒的に有利であるのは間違いなく

それが果たしていいのか、どうか…。

 

私自身は現在と、過去も含めて

2度、社長をしております。

 

1度めは完全なサラリーマン社長でした。

現場レベルのことは任されても

経営的な重大な決断は

親会社の意向を無視するわけにはいきませんでした。

と言うか、親会社のなすがままでした。

 

現在は株式を半分持ち、

ほとんど自分の考えで経営できていますから

最初の時とは全然違うんですけど

完全なオーナー社長ではありませんし、

起業家というわけでもありません。

 

ちょうど資本家と労働者の真ん中的な

立ち位置とでも言うのでしょうか。

 

私のようなポジションだからこそ

見えるもの、わかるものもありますし、

どんな形でも社長は社長です。

 

生活を支えるべき社員のためにも

もちろん私の家族のためにも

会社を潰すわけにはいきません。

 

まあ私は私なりに実にいろんなことを考えながら

日々経営者として精進をしておるのです。

 

今回ご紹介する書籍は、

『【実学・経営問答】高収益企業のつくり方 』 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『【実学・経営問答】高収益企業のつくり方 』

稲森 和夫 日本経済新聞社 を読みました。

 

もともと経営者の大先輩として

個人的にとてもリスペクトしていた稲森和夫さん。

 

昨年、お亡くなりになった時は

非常に残念に思いましたし、

心からのお悔やみを申し上げました。

 

稲森さんもさすがに90歳でしたので

その成し遂げたこと、

社会への貢献度の大きさを考えれば

大往生と言っていいと思います。

 

と同時に…

私はなぜかAmazonで稲森和夫で検索を掛けて

まだ未読の本をポチポチと数冊購入しました。

 

お亡くなりになっても

稲森さんのお考えは書籍として遺されています。

 

きっといつか読むだろうな…

読みたくなる時が来るだろうな…

買っておいたほうがいいよな…

 

そう考えて私の積ん読本棚に

大切に眠らせておきました。

 

今までも何冊か稲森さんの著書は読んできて

経営とは何ぞや?

経営者は、何をどう考えて行動すべきか?

ある種の指針のようなものを与えてもらっていました。

 

今回はたまたま私自身に

経営上の課題が出てきたこともあり、

その時が来たかもしれないと思い、

本書を手に取ったのでした。

 

目次

序章 会社の存在意義を問う

第1章 高収益の基盤を築く

第2章 挑戦し続ける企業を目指す

第3章 パートナーシップで経営する

第4章 自ら燃える集団をつくる

終章 高収益経営を目指す

 

感想

本書は盛和塾が中心となっているようで、

稲森さんの考えを書くというスタンスではなく

総論として大事なところは述べていますが

メインとなるのは

盛和塾の会員の社長からの質問や悩みに答えるという

今までにはないスタイルになっています。

 

これが実に面白かったです。

さすがに盛和塾の会員になるくらいの社長で

直接稲森さんに質問するレベルでピックアップされるのですから

やはりそんじょそこらの社長とは比較にならぬほど

高度な内容が多かったです。

 

そして稲森さんの回答がまた素晴らしい。

時には一刀両断し、

時には共に考えてくれる感じなのですが

とにかく理由がしっかりしているので

スーッと頭の中に入ってきます。

 

稲森さんの経営哲学がベースにあるので

そこに共感できると

なるほど、確かに…と素直に頷くことができるのです。

 

当然、少し古い本にはなるのですが

上っ面の流行り廃りの話しではなく、

根本的、根源的な話しですので

全く古さを感じないどころか、

昨今の表層的な錬金術とは異なりますので

学びとなるところが「大」でした。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介いたします。

 

値決めは事業の死命を決する重大な判断であり、

最終的には経営者が決断すべきであると私は考え、

そのことを「値決めは経営」であると申してきました。

(P.30)

 

医療の世界のように

保険診療で値段が決まっているものは別として、

値決めは経営者がすべての責任を背負うべきです。

 

しかし、お客様と接する従業員が

説明できない値決めはただの独善ですよね。

それではお客様から総スカンを食らうかもしれません。

 

需要と供給のバランスを見ながら

自社のサステナビリティを考えながら

ウンウン唸りながら最終決断すべきものでしょうね。

 

今の会社で一割の利益率が出せない人は、

どんな会社の経営を任せられても

一割の利益率を出せないでしょう。

それはその人が、

「いやあ、それは無理だ」と思っているから、

それが心理的なバリアとなり、

一割の利益率が出せないのです。

「必ず出せる」と思ってとことん取り組めば、

どうすれば利益を出すことができるのか、

自ずと見えてくるはずです。

そうして会社の規模と利益が大きくなってきたら、

今度は進んだ経営の仕組みをつくっていけばいいのです。

(P.49)

 

一割の利益率というのは

業種、業界、業態によって異なるかもしれませんが、

少し精神論にはなりますけど

「必ず出せる」と自分が信じて

必死で取り組めば可能性は高まるでしょう。

 

錬金術のような経営をするなら話しは別ですが、

真っ当な経営をするのであれば

ベースに必要な考え方なのだと思います。

 

稲森さんの精神論は個人的に好きです。

 

将来のために勇気を奮い起こして

多角化の道を進もうとするなら、

私は自分の得意技の延長線上で

多角化を進めるべきだと考えています。

(中略)

多角化の際、決してトビ石を打ってはいけない。

 相手に切られないように、

 今生きている石につないで多角化の手を打ちなさい」

と教えています。

(P.119)

 

やはりこれが定石なのでしょうね。

もちろんイレギュラーな事例もあるでしょうけど

普通に考えたらリスクが高いですし、

失敗事例のほうが多そうです。

 

得意技の延長、トビ石を打たない。

多角化を検討する際の大事な考え方ですね。

 

人間には、理屈で分かっていても、

感情の面で割り切れないことが実に多いのです。

(P.136)

 

これだけですとわからないと思いますが、

業績スライド給に対して反対する稲森さんの根拠です。

 

給料の問題は本当に難しいですが、

意外と「安定」が求められているように思います。

 

インセンティブや賞与はいいですが、

月給が上下に乱高下するのは避けたほうがいいかもしれません。

 

あなたが作った会社を

個人のための回り舞台にするのではなく、

全従業員が心をひとつにして、

みんなの幸せを追求する舞台にすべきだと思います。

(P.162)

 

稲森さんの時代とは

会社そのものの役割や価値が変わってはいますし、

働き方の多様化は進む一方ですから

舞台自体はひとつやふたつではなくなっています。

 

しかし長く続く会社というのは

おそらくこういうものであると思うんですね。

 

あっという間に消え去ったり、

M&Aされたりしていいのであれば話しは別ですが、

それこそ100年続く企業というのは

経営者と社員の信頼関係が大原則なのでしょうね。

 

一番難しいのは、

会社が好きでがんばってくれていても、

仕事はあまりできないという人を

どう遇するかという問題です。

同じ給料ならば、

もっと仕事ができる人を雇ったほうが、

割がいいに決まっていますが、

それでも、私は会社が好きで一生懸命働いてくれる人であれば

大事にすべきだと考えています。

(P.198~199)

 

この前後も含めて

本書において私が最も学びになった箇所です。

 

時代はシビアになり、

弱肉強食が進んでいますが、

せめて会社内では

心のつながりを大事にしていきたいと

強く、強く、思いました。

 

京セラが今日のような企業に成長したポイントは、

二つあります。

一つは、しっかりした経営理念を持っていること、

もう一つはきちんとした経営管理システムを確立していることです。

よく「中小企業とデキモノは大きくなるとつぶれる」と言われますが、

それは中小企業の多くは管理手法に問題があるからです。

(P.205)

 

経営管理システムですか…。

これ、たぶん、システムの問題ではなく、

ましてどこかが作ったシステムを導入すればいいものではなく、

徹底的に自社に合った

経営分析に直結する

社長が知りたいことがすぐさまわかり、

そして現場がさらに良くなるものを

実装しなければならないのだろうと考えました。

 

よく現場がやりにくくなるだけのシステムとか、

現場の業務量が増えるだけのシステムを導入し、

悦に入っているバカ経営者がいますが、

これでは何の意味もありませんからね。

 

そういう意味では各省庁が企業に求めている管理などは

まあ役に立たない管理のための管理、

そして実質管理できていない管理と言えますね。

 

やはり管理は自社ならではの適切なものを

編み出していかねばなりませんね。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

久しぶりに稲森さんの経営哲学に触れて

とても刺激になりました。

 

どうしても現代社会とはズレはあるんですけど

むしろ今がいいとは決して思えず、

事実、今のほうが社員たちは苦しい思いをしているわけです。

 

そりゃ政治や行政の問題は大きいのですけど、

民間人は、民間人で、すべきことがあるはずですよね。

 

少し道が見えてきた気がするのが

稲森さんの言葉の重みなのですが、

私自身もモチベーションが上がり

よしやるぞ!と思わせてくれるのが

稲森さんのスゴイところですね。

 

それでは、また…。

 

 

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