ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

サル化する世界

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

恐竜のように絶滅した生物も少なくない中で

人類はよく生存し続けたものだと

驚きとともに感動しますね。

 

ご先祖さまよ、有難うと。

そのおかげで私も今生きています。

 

ですけど、おそらく、

今までの長い歴史を振り返ってみれば

紙一重」だったことは少なくなかったでしょうし、

ひとつ間違ったら絶滅していたというシーンも

結構あったんじゃないかなと思うんですよね。

 

そして現代社会を振り返ってみると

生存戦略はより難解になっていますし、

人類は進化するどころか退化してしまい、

絶滅の方向に進む程度の知性しか持ち合わせない人も

少なくないようにすら感じます。

 

驚くようなバカもいますし、

これからの世の中はどうなるのだろうかと

不安は大きくなるばかりです。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 サル化する世界 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 サル化する世界 』

内田 樹 文芸春秋 を読みました。

 

内田さんらしいタイトルと言えばいいでしょうか。

私としては即購入したわけですけど

嫌がる人も少なくないのだろうなとは思いました。

 

ただこの帯にある

「今さえよければ、自分さえよければ、

 それでいい」という部分はですね、

私が良く使う…

「今だけカネだけ自分だけ」に似ていて

それを内田さんが語るのであれば

これは絶対に読まねばならないと思いまして

非常に楽しみにして読み始めたのでした。

 

目次

1 時間と知性

2 ゆらぐ現代社

3 “この国のかたち”考

4 AI時代の教育論

5 人口減少社会のただ中で/特別対談 内田樹×堤未果

  日本の資産が世界中のグローバル企業に売り渡される

  ー人口減少社会を襲う“ハゲタカ”問題

 

感想

もうさすがのひと言です。

 

内田さんのこうあるべきという考えが

私にはビシビシと心に訴えかけてきて

自分には何ができるか?

どう生きればいいのか?を

心底、考えさせられました。

 

もちろん私ごときにできることは

とても限られた小さなものですけど、

それでも何かをしたいと、

行動を起こしたいと思わせてくれるのが

内田さんの言葉です。

 

まるで魔術に掛けられたかのように

私のモチベーションは上がり、

知性が起動して

早く何かをせねば…と思わせてくれます。

 

もう30年も給料が上がらず

経済的にも低迷が続いていますけど、

財界と政治が結託し

ごく一部だけ潤っているという

ふざけた状態じゃないですか。

 

しかも庶民にはさらなる増税が待ち受けていて

バラまいて票を獲得し、

足りなくなれば増税するという

この国のやり方には正直反吐が出ます。

 

でも選挙に勝っちゃうから

誰も止められません。

 

この国を止めるのは

下からの圧力しかないのだろうなと思います。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介します。

 

それは今の日本社会が、

「成熟する」ということが

「複雑化」することだということを

認めていないからだと思います。

逆に、成熟することとは

「定型に収まって、それ以上変化しなくなること」だと思って、

そう教えている。

でも、そんなわけがないじゃないですか。

(P.7~8)

 

ホントその通りだと思います。

今の日本のエリートって

すでにエリートではなくなっているんですよね。

 

旧態依然とした昔ながらの物差しにはハマってますけど

現代社会にはそぐわないものになっている。

 

だから出てくる策がピント外れで

やればやるほど悪くなる。

 

早くそういう構図に気づいて変革しないと

先進国からズリ落ちるのは時間の問題でしょう。

 

株式会社は徹底的に非民主的な組織です。

そして、気がつけばそれが社会組織の過半を占めるようになった。

産業構造や企業組織に基づいて人間は

「社会はどうあるべきか」を理解します。

民主主義が衰徴したのは、

一つには僕たち戦後民主主義の受益者たちが、

その大切さを全然ありがたがらなかったからであり、

もう一つは農村共同体が消滅し、

株式会社が社会の基本モデルに採用されたからです。

(中略)

それはわれわれの家庭も、学校も、企業も、

どこにも民主的な合意形成で運営されている

組織なんか存在しないからです。

民主主義を知らない人たちが

国会に民主主義がないことを怪しんだり、

不満に思うことはありません。

(P.46)

 

自分たちで勝ち取った権利ではなく、

アメリカに、GHQに与えられたというところが

最も大きな要因でしょうか。

 

これは日本の弱さなのでしょうね。

その結果として

経済一流、政治は三流と言われていたものが

経済三流、政治は五流に落ちぶれましたね。

 

会社は経営者がバカなら潰れるだけですが

国は潰れるわけには行かないんですよね…。

 

「金がすべてに優先する」というのは

ひとつの原則的立場だからである。

「すべては金だ」で人生を首尾一貫させているなら、

それはそれで整合的な生き方だと言えるだろう。

(P.63)

 

たぶんですけど

金はすべてにならないと思います。

 

だから金がすべてだと言う人は

大事なものを見失っているか、

見ようとすらしていないか、

混乱しているかではないでしょうか。

 

首尾一貫とすれば整合的ですけど

どこかで無理が掛かるような気がします。

 

「制度がある限り、

 ルールに沿って制度は粛々と運用されるべき」

だという形式的な議論に私は説得されない。

それは「そもそもどうしてこの制度があるのか」という

根源的な問いのために

知的リソースを割く気のない人間の言い訳に過ぎないからだ。

(P.84)

 

私も説得されません。

結局、大企業病であったり、

硬直化し過ぎた官僚制度であったり、

現代社会ではマイナス面のほうが大きくなってますからね。

 

私たちが新しい社会を切り拓くためには

根源的な問いこそが必要不可欠と考えます。

 

今の日本の状況で一番僕が困っていることは、

みんながシンプルでわかりやすい

単一解を求めているということです。

たった一つの「正解」があって、

それを「選択」して、

そこに全部の資源を「集中」するという

選択と集中」の発想をしたがる。

だから、切り口上でまくし立ててくる。

「この案に反対なんですか?反対なら、対案出しなさい。

 対案なければ黙っていなさい」と。

そういう非常にシンプルな問題の設定の仕方をしてくる。

そのことがわれわれの生き方を

とても息苦しいものにしていると思うんです。

民主主義というのは、例えば投票して、

51対49で多数を得た方の案が

採択されるというだけのことです。

「多数を制した」ということと、

その案が「正しい」ものだったということは

別のレベルのことです。

後から振り返ってみたら

少数派のほうが正しかったということは

しばしばあります。

(P.94)

 

さすがの慧眼ですね。

私たちは損得勘定に翻弄されずに

知的に物事を判断すべきなのだと思います。

 

正解を求めることで

正解から遠ざかっていくことは

世の中に意外と多いのでしょうね。

 

オルテガ・イ・ガセットという

スペインの哲学者がおりましたが、

この人がデモクラシーとは何かということについて、

非常に重要な定義を下しています。

それは「敵と共生する、反対者とともに統治する」ということです。

それがデモクラシーの本義であるとオルテガは書いています。

これはデモクラシーについての定義のうちで、

僕が一番納得のいく言葉です。

(P.94)

 

ス・スゴイですね。

その意味では私たちは今だに民主主義を

実践できていないということなのですね。

 

強行採決して通した法案なのに

全然機能していないものが多いのは

ここに理由がありそうです。

 

アメリカの「成功」例から僕たちが学ぶことができるのは、

しっかりとしたカウンターカルチャーを持つ集団は

復元力が強いという歴史的教訓です。

僕はこの点については「アメリカに学べ」と言いたいのです。

(中略)

アメリカの歴史的成功の理由はまさに

「一枚岩になれないように制度を作り込んだ」という点にあるのです。

でも、日本のアメリカ模倣者たちは、

それだけは決して真似しようとしない。

(P.161~162)

 

権力者に任せ切りではいけない。

権力は腐敗するし、

権力者は既得権を守ることが第一義になる。

そうさせない仕組み。

カウンターカルチャー

どうすれば我が国に導入できるでしょうか。

 

この文章を読んでわかるのは、

今の日本の英語教育において、

目標言語は英語だけれど、

目標文化は日本だということです。

今よりもっと日本的になり、

日本的価値観にがんじがらめになるために

英語を勉強しなさい、と。

ここにはそう書いてある。

目標文化が日本文化であるような学習を

「外国語学習」と呼ぶことに僕は賛成できません。

(P.196)

 

この前後は英語学習について

内田さんがかなり熱を入れて書かれていますが、

おっしゃることはホントその通り!です。

 

自動翻訳機がここまで使えるようになった時代に

完全に乗り遅れた…どころか、

完全に迷走しているのが文部科学省ですね。

 

いや迷走どころか、

もう完全にとち狂ってると言えるかもしれません。

 

子供たちの将来を考えるのではなく、

シンプルに知性と教養を

身に付けるだけでいいんじゃないでしょうか。

 

余計な理屈をコネて

日本の未来を壊さないで下さい。

 

門人同士の相対的な優劣を比較することなんか、

修行上何の意味もありません。

優劣を比較する対象があるとしたら、

それは「昨日の自分」だけです。

「昨日の自分」と比べて

「今日の自分」がどう変化したのか、

それは精密に観察しなければなりません。

(P.210)

 

いや~、そうだよな、そうですよね。

人と自分を比べても

成長には繋がりませんし、

まして人を批判し、否定なんかしてたら、

仮に成長したとしても人間性としては最悪ですからね。

 

マウント取って喜ぶバカが増えたら

その集団は没落していきますよね。

ああ、だから日本は…。

 

悲観的にならない、怒らない、恨まない。

そういうネガティブな心の動きは

すべて判断力を狂わせます。

危機的状況下では判断力の正確さが命です。

にこにこ機嫌よくしていないと

危機は生き延びられません。

眉根に皺寄せて、世を呪ったり、

人の悪口を言ったりしながら下した判断はすべて間違います。

すべて。ほんとうにそうなんです。

不機嫌なとき、悲しいとき、怒っているときには

絶対に重大な決断を下してはいけない。

これは先賢人の大切な教えです。

(P.246~247)

 

日本人はイライラが溜まってますからね。

むしろ自分で危機を生み出しているかのようです。

 

歴史に学び、

心を落ち着けて判断しなければなりませんね。

 

これから日本社会は前代未聞の激動期に入ります。

何が起きるか全く予測がつきません。

ですから、若い人たちに伝えたいのは、

「オレはこうやってビジネスで成功した」とか

「こうやって金持ちになった」というような

自慢気な成功事例や経験則には

耳を貸さない方がいいということです。

人口減少社会でどうやったらサクセスできるかについては、

過去に成功事例がありません。

この状況下で若い人に告げるべき言葉としては、

「やりたいことをやりなさい」ということしかありません。

「成功者」の教訓に従って、

「やりたくないことを我慢してやる」ということだけは

しない方がいい。

嫌なことを我慢したあげくに、

なにもいいことがなかったら、

文句の持っていく先がないでしょう(笑)。

(P.277)

 

賛成です。

誰かの真似も出尽くしている時代です。

 

真似が真似を生み、

さらに真似をしていく。

もう限界ではないでしょうか?

 

反面教師にして

今までにないものを作るのがいいですね。

 

おっさんの自慢話など

右から左に流しましょう。

 

スモールサイズの「顔の見える中間共同体」なら

性善説ペーストで回せるんです。

手作業、手作り、手渡しでやっているので、

一見非効率に見えますけれど、

実はほとんどロスがない。

そこで食料を生産したり、

医療や教育や介護などのサービスを

相互支援的にやりとりする。

そういう自律的なコミュニティがいくつかゆるやかに連携して、

もう少し大きなコミュニティを形成する。

そういうところに予算も権限も委譲してゆくことが、

統治機構の効率化と生産性向上に

最も効果的だと僕は思いますね。

(P.324~325)

 

47都道府県を管理する国。

もうこの構図が通用していないんですよ。

 

これも内田さんのアイデアですけど

廃藩置県の逆、廃県置藩をすべきです。

 

スモールサイズで機能させないと

今の日本がそうですけど

何をやっても上手く行かない…が

ずっと続いてしまうんじゃないでしょうか?

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点です。

 

まあ私の場合は

内田樹というだけで

何もかもを受け入れてしまうのですが

本書は特に面白かったですね。

 

物事はどう考えればいいのか?

そのヒントが満載です。

 

是非多くの方に手に取っていただきたい1冊です。

 

それでは、また…。

 

 

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